• 更新日 : 2026年9月9日

年末調整を自動化するには?国税庁の無料ソフトやアプリでのやり方を解説

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Point年末調整の自動化はどこから手をつける?

専用システムを導入すると、書類の配布から税額計算、法定調書の提出までを一続きで処理できます。

  • 申告書の回収と検算をツールに任せる
  • 従業員にはスマホからも入力できる
  • 法改正の反映が早いサービス・ツールを選ぶ

令和8年分は月々の源泉徴収に改正が反映されず、12月にまとめて精算する点に注意しましょう。

年末調整の自動化は、専用システムを使えば書類の回収から税額計算、法定調書の提出までを一つの流れにできます。申告書の配布と確認、控除額の検算、給与システムへの入力といった作業は年末に集中し、担当者の負担は重くなりがちです。

この記事では、年末調整を自動化するための具体的な方法を解説します。国税庁が提供する無料ソフトの活用法から、Webやスマートフォンを利用したネット申請の手順、さらにはe-Taxとの連携まで、担当者の負担を軽くする方法を理解しましょう。

年末調整の計算の自動化が求められる理由

年末調整業務の自動化は、単に作業が楽になるだけでなく、企業と従業員の双方に大きなメリットをもたらします。

煩雑な手作業の削減

申告書の配布・回収、記載内容のチェック、控除額の検算、給与システムへの入力といった一連の作業は、担当者に大きな時間的、精神的負担をかけます。自動化システムを導入することで、これらの手作業が大幅に減り、担当者は問い合わせ対応や本来注力すべきコア業務に時間を使えるようになります。

法改正への迅速な対応

年末調整に関連する法令は頻繁に改正されます。信頼できるシステムを導入すれば、最新の法令へ自動でアップデート対応するため、担当者が自ら情報を追いかける必要がありません。これにより、法改正の見落としによる申告誤りのリスクを未然に防ぎ、コンプライアンスを強化できます。

計算ミスの防止

システムが控除額などを自動で計算するため、人為的な計算ミスを防ぎ、正確な申告を実現します。担当者は複雑な計算ロジックを都度確認する必要がなくなり、検算や修正対応に費やしていた時間を大幅に削減できます。

ペーパーレス化の実現

申告書や証明書類を電子データでやり取りすることで、紙代や印刷代、郵送費、保管スペースといった物理的なコストを削減できます。さらに、アクセス制限や暗号化が施されたシステムで情報を管理するため、書類の紛失や盗難といったセキュリティリスクを低減させることが可能です。

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年末調整の計算を自動化する方法はどれを選ぶ?

自動化の手段は、国税庁が無料で提供するソフトを使う方法と、民間の年末調整システムや給与計算ソフトを導入する方法に大きく分かれます。

従業員数と予算、既存システムとの連携のしやすさで選び分けます。

方法 費用 向いている企業
年末調整システム
給与計算ソフト
初期費用
月額利用料
従業員数が多く、給与計算とまとめて管理したい企業
国税庁の年調ソフト 無料 費用をかけずに電子化を試したい企業
国税庁の年末調整計算シート 無料 少人数で税額計算だけを効率化したい企業
e-Tax・eLTAX 無料(利用登録が必要) 法定調書や給与支払報告書まで電子で提出したい企業

1. 年末調整システムや給与計算ソフトを活用する

クラウド型の年末調整システムなら、従業員からの申告データの収集、計算、進捗管理までを一つの画面で進められます。年末調整に特化したものと、年末調整機能を含む給与計算ソフトがあります。

導入コストは発生しますが、サポートや他システムとの連携機能が充実している点が特長です。毎月の給与データと連携できるため、給与計算から年末調整までを続けて処理できます。

2. 国税庁の年調ソフトを使う

国税庁は「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」を無料で公開しています。従業員がこのソフトで控除申告書データを作成して勤務先に提出し、企業側がそのデータを給与システムに取り込む流れです。

年調ソフトの入手方法は次のとおりです。

  1. ソフトウェアのダウンロード
    国税庁のウェブサイトにあるダウンロードページから、誰でも無料でソフトウェアを入手できます。Windows版、Mac版、そしてスマートフォン版(Android/iOS)が用意されています。ページの案内に従い、お使いのデバイスにインストールすれば準備は完了です。
  2. マイナポータル連携で控除証明書を自動入力
    このソフトや国税庁の年末調整アプリは、マイナポータル経由で取得した控除証明書データを読み込み、申告書に自動反映させることが可能です。これにより、従業員の手入力の手間とミスを減らせます。
  3. 作成したデータの提出
    従業員は作成した電子データをメールなどで勤務先に提出します。企業側は、そのデータを給与計算ソフトなどに取り込むことで、後の計算作業を効率化できます。

参考:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁

3. 国税庁の年末調整計算シート(Excel)

年末調整計算シートは、給与の総額や控除対象扶養親族の人数を入力すると税額計算ができるExcelファイルです。国税庁の公式サイトから無料でダウンロードできます。

ファイルの種類はExcelブック(拡張子「.xlsm」)で、利用にはMicrosoft Office Excelがインストールされたパソコンが必要です。入力項目が多いため、手元にすべての申告書や源泉徴収票を準備してから使いましょう。こちらも年分ごとに更新され、例年10月頃に最新版が公開されます。

参照:年末調整計算シート|国税庁

4. Webやスマホアプリで従業員に申告してもらう

多くの年末調整システムは、Webブラウザや専用アプリから従業員が申告情報を入力できる仕組みを備えています。従業員は場所や時間を選ばず申告作業を終えられます。

Webブラウザからの入力手順

Webブラウザから入力する場合は、企業から案内されたURLにアクセスしてログインし、画面の案内に沿って扶養家族の情報や保険料の支払額などを入力します。生命保険料控除証明書などは、スマートフォンで撮影した画像やPDFデータをアップロードするだけで提出が完了します。

スマホアプリでの申請手順

スマートフォンを使う場合は、専用アプリをダウンロードするか、スマホ対応のWebサイトにアクセスします。質問に答えていくだけで申告が終わる対話形式の画面が多く、端末を問わず操作しやすい点が特長です。スマホでのやり方を社内で周知しておくと、提出率の向上が期待できます。

ネット申請で準備するもの

従業員がネット申請を行うには、マイナンバーカードや保険会社から届く控除証明書の電子データが必要です。マイナポータルと連携すれば各種証明書データを一括で取得できるため、この利便性を従業員に伝えることが自動化を進める助けになります。

5.e-Tax・eLTAXと連携する

集めたデータを給与システムで計算し、法定調書や給与支払報告書をe-TaxとeLTAXから電子で提出できます。データの収集から行政への提出までを一続きのデジタル処理にできます。

企業は従業員から集めた年末調整の電子データを給与システムに取り込んで年税額を計算し、源泉徴収票や給与支払報告書を作成したうえで、税務署や各市区町村へ電子申告します。印刷と郵送の手間と費用がなくなり、提出期限に追われる場面も減らせます。

参照:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁

最新の法改正に対応したツールはどう選ぶ?

年末調整の計算式は税制改正のたびに変わるため、追随が遅いツールを使うと税額がずれます。改正の内容そのものと、ツールがいつ対応するかの両方を確認しておきましょう。

控除額と所得要件の見直しに対応しているか

令和8年分の年末調整では、基礎控除給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件がそろって引き上げられます。控除額の変更は年税額に直接影響するため、ツールが改正後の金額で計算できるかを確かめます。

項目 改正前 改正後(令和8・9年分)
基礎控除 58万円 62万円
(合計所得489万円以下は最大104万円)
給与所得控除の最低保障額 65万円 74万円
扶養親族等の所得要件 58万円以下
給与収入123万円以下)
62万円以下
(給与収入136万円以下)
勤労学生の合計所得金額 85万円以下
(給与収入150万円以下)
89万円以下
(給与収入163万円以下)

基礎控除の特例分104万円と給与所得控除74万円を合わせると178万円になり、給与収入がこの水準までは所得税がかからない計算です。ただし基礎控除の額は合計所得金額に応じて段階的に変わるため、全員が一律で104万円になるわけではありません。パートやアルバイトを多く雇用している企業ほど、影響を受ける従業員が増えます。

源泉徴収税額表と申告書の様式変更に追随できるか

令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更はなく、令和8年12月に行う年末調整で1年分の税額をまとめて精算します。月々の天引き額と本来の税額のずれが年末に集約されるため、例年より確認作業が増えます。

令和8年12月の年末調整では、引き上げ後の基礎控除額と、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」で計算した源泉徴収税額と精算します。「源泉徴収税額表」そのものの改正は令和9年分以後の適用となります。

あわせて、給与所得者の基礎控除申告書を含む年末調整関係書類の様式も前年分から変更が予定されています。前年の様式のまま配布すると回収し直しになるため、使用するツールが最新様式に切り替わる時期を事前に確認しておきましょう。

改正の適用時期が明示されているか

扶養親族等の所得要件の改正は、令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されます。適用日が年の途中に置かれている点が、この改正の扱いにくいところです。

この改正によって新たに扶養親族等の要件を満たすことになった親族について扶養控除等の適用を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要です。すでに提出済みの従業員にも、家族の収入状況によっては再提出を依頼することになります。

提出漏れがあると本来受けられる控除が反映されないため、対象になりそうな従業員をあらかじめ絞り込み、案内文と回収期限をセットで示す進め方が安全です。改正の適用時期と必要書類が管理画面に表示されるツールであれば、この案内業務も組み立てやすくなります。

参照:令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について|国税庁

年末調整の還付金の計算はどこまで自動になる?

還付金は、1年間に給与から天引きした源泉徴収税額の合計が、年末に確定した年調年税額を上回ったときに生じる差額です。

この計算は年末調整システムや国税庁の計算シートで自動的に処理でき、担当者は入力内容の確認に集中できます。

計算は次の流れで進みます。

  1. 1月1日から12月31日までに支払われた給与や賞与の合計額を確定する
  2. 総支給額から給与所得控除額を差し引いて給与所得を算出する
  3. 給与所得から各種所得控除の合計額を差し引いて課税所得金額を算出する
  4. 課税所得金額に所得税の税率を掛けて算出所得税額を決定する
  5. 住宅借入金等特別控除などを差し引いて年調所得税額を算出する
  6. 年調所得税額に102.1%を掛けて年調年税額を確定する
  7. 年調年税額と源泉徴収税額の合計額を比べて過不足額を精算する

所得税は課税所得金額が大きくなるほど税率も高くなる累進課税が採られているため、手作業では税率の適用を誤りやすい部分です。源泉徴収税額のほうが多ければ差額が還付金として戻り、少なければ追徴となります。

自動化すると、担当者の役割は計算そのものから申告内容の妥当性チェックへ移ります。

参照:年末調整計算シート|国税庁

年末調整の自動化を軌道に乗せるには?

システムを導入しただけでは自動化は定着しません。自社の規模に合った選定、導入時期の設計、従業員への周知をそろえると、初年度から効果が出やすくなります。事前の準備が足りないと、かえって業務が混乱するケースもあります。

自社の規模と課題に合うシステムを選ぶ

年末調整システムは機能と価格帯の幅が広く、従業員数や給与体系の複雑さによって必要な機能が変わります。従業員数が少ない企業ならシンプルな機能で足りますが、複雑な給与体系を持つ企業では対応範囲の広いシステムが要ります。

自社の規模とニーズを整理したうえで、複数のシステムを比べて検討しましょう。既存の給与計算システムや勤怠管理システムとデータ連携できるかも、判断の分かれ目になります。

費用対効果と導入時期を見極める

導入には初期費用や月額利用料がかかるため、削減できる人件費や印刷費と比べて判断します。無料トライアル期間を活用し、実際の使い勝手を確かめてから本格導入を決めるとよいでしょう。

導入時期にも注意が要ります。年末調整の繁忙期に設定や動作確認を進めるのは無理があるため、時期をずらして準備期間とテスト期間を見込んだスケジュールを組みます。

従業員への周知とサポートを整える

申告方法が変わる年は、操作マニュアルの配布や説明会の開催など、従業員が迷わない準備が要ります。事前説明が足りないと、操作に関する問い合わせが担当者に集中しやすくなります。

問い合わせ窓口を一本化しておくと、対応漏れを防げます。デジタルツールに不慣れな従業員への配慮を忘れないことが、円滑な移行のポイントです。

参照:年末調整手続の電子化の概要・メリット|国税庁

年末調整など効率化・自動化成功した事例

年末調整の計算を自動化することで、業務効率化や属人化の解消に成功した企業の事例を紹介します。ここでは「マネーフォワード クラウド」を導入した2社の取り組みを見ていきましょう。

30%超の業務効率化に成功(オリオンビール株式会社)

オリオンビール株式会社では、給与計算を2名体制で行い、源泉徴収票のマイナンバーを手書きで転記するなど、煩雑な手作業が課題となっていました。特に年末調整は従業員の記入が難しく、人事担当者が代理記入を行うケースも多く、本来業務を圧迫していました。

そこで「マネーフォワード クラウド 給与・年末調整」を導入。年末調整がアンケート形式で分かりやすくなり、従業員自身がスムーズに入力できるようになりました。その結果、代理記入が不要になり、書類回収やチェック作業を前倒しで進められるなど、年末調整の計算を自動化したことで30%超の業務効率化を実現しました。

参照:クラウドによるサービス連携で脱・手作業 30%超の業務効率化に成功|オリオンビール株式会社様の導入事例|株式会社マネーフォワード

年末調整1,000人分をほぼ未経験の2名で完了(フレッシュ物流株式会社)

フレッシュ物流株式会社では、従業員1,000名弱の年末調整を従来は5人で3日間かけて書類配布し、データ入力は1名が手作業で行っていました。業務が属人化し、ベテラン退職後の引き継ぎが困難になるリスクも抱えていました。

クラウド型の年末調整システムを導入した結果、ほぼ未経験の担当者2名だけで1,000人分の年末調整を完了。年末調整の計算を自動化することで、残業時間も大幅に削減し、業務のブラックボックス化を解消できました。持続可能な体制づくりに成功した事例といえます。

参照:年末調整1,000人分をほぼ未経験の2名で完了 残業も減りました|フレッシュ物流株式会社様の導入事例|株式会社マネーフォワード

最適なシステムで年末調整の自動化を実現しましょう

年末調整の自動化は、国税庁の無料ソフトから始める小規模な電子化でも、年末調整システムを使った全社的な効率化でも進められます。どの方法を選ぶ場合も、最新の法改正にどこまで追随できるかが判断の分かれ目になります。

令和8年分は11月までの源泉徴収に改正が反映されず、12月にまとめて精算するため、例年より確認作業が増えます。扶養親族等の所得要件の見直しにともなう申告書の再提出も重なります。

自動化する範囲を早めに決め、従業員への案内と並行して準備を進めておくと、年末の負担を抑えられるでしょう。

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