• 更新日 : 2023年8月25日

内省とは?反省との違いは?ビジネスでの活用方法を紹介

内省とは?反省との違いは?ビジネスでの活用方法を紹介

仕事をする上では、常に自分の行動を振り返り、改善を図ることが大切です。企業における人材育成の場面でも、「内省」を習慣化することは従業員の自己成長につながり、業務改善や業務効率化にも有効となります。

ここでは、「内省」とは何か、反省との違いや内省力を鍛えるメリットを解説するとともに、ビジネスの場面での活用方法を紹介します。

内省とは

内省とはどのようなことを意味するのでしょうか。似た意味を持つ反省や内観との違いから解説します。

内省の学術的背景

内省(ないせい)とは、自分自身の考え・心の状態や行動などについて深く省みることを意味します。「なぜ自分はそう思ったのか」「なぜそのような行動を自分がしたのか」と自分自身に問いかけて、思考や行動について分析する行為が内省です。

臨床心理学や 健康心理学の分野では、内省は発達や精神的健康に対してポジティブにもネガティブにも働く場合があるとの推測から、内省の方法について研究されています。また、発達心理学や青年心理学の分野でも内省について研究されており、青年期に自己を内省することは重要とされています。

人材育成や人材開発の場面では、リフレクション(reflection)などとも呼ばれます。業務の流れや考え方、行動などの良かった点や悪かった点を客観的に振り返り、その中から改善点や対処方法を見つけてより良い未来につなげるという前向きな意味で使います。

内省と反省との違い

反省という言葉も、自分の言動を省みて、良かったのか悪かったのかを考える際に使います。一般的には、自分のどこが悪かったのかを考えて、その原因や理由を探り、改善するという意味で使うことが多いでしょう。

内省は良かった点も悪かった点も客観的にとらえて省みる行為となりますが、反省は悪かった点に重点を置いて省みて、改善する際に使うことが多いところに違いがあります。

内省と内観との違い

内観は、仏教用語にある観心という意味がありますが、心理学では、自分の意識やその状態を観察するという意味で使われます。したがって、自分自身の考え方や行動を省みるという点で、内省と同じ意味で使われることが多いです。ただし、内観は、自己の内面、つまり、精神状態を見つめることに主眼が置かれているといえます。

内省力を鍛えるメリット

内省は、企業における人材育成の方法として有効と考えられており、注目を集めています。企業として社員の内省力を鍛えることには、以下のメリットがあります。

自分自身の能力や状態を客観的に理解できるようになる

仕事に対する考え方や言動を振り返ることで、普段は意識していなかった業務における新しい視点や価値観・改善点に気づくことができます。今後の仕事に対するゴールやビジョンが明確になることはキャリア形成につながります。

ゴールやビジョンが明確になる

自分自身を客観的に理解できるようになると、仕事に対する目標が立てやすくなり、自分自身の将来像を明確に描けるようになります。今後のゴールやビジョンが明確になることは、キャリア形成にもつながります。

企業の業務効率化や生産性向上に寄与する

社員が業務に対する考え方や言動を省みて、自主的に問題解決や業務改善に取り組むことは、社員の自己成長につながります。企業としても、社員の自己成長は、組織全体のパフォーマンスが上がり、生産性向上に寄与します。上司や先輩に言われて気づき改善するよりも、自分自身の力で取り組む方がモチベーション向上とより大きな成長が期待できます。

内省力の鍛え方

内省は本来誰もが意識することなく自然と行っていることです。自分自身の成長のために意識して行うことが大切であり、習慣化することで内省力を鍛えることもできます。

悪かった点を反省するだけでは意味がありません。自分自身の言動・出来事の良かった点・悪かった点を分析して、今後に活かすことが重要です。内省力を鍛えるには、以下の事項を習慣化するのが良いでしょう。

言動・出来事の良かった点・悪かった点を振り返る

何をするにもうまくいくこともあれば、失敗してしまうこともあります。自分の経験論や言い訳を抜きにして、客観的な視点で事実のみ洗い出すことが大切です。

良かった点・悪かった点の原因・理由を考える

成功や失敗には、それぞれ原因があります。成功も失敗も、なぜそのような結果に至ったのかという視点で、原因と理由を客観的に振り返ることが重要です。

良かった点を伸ばし、悪かった点を改善することで今後に生かす

同じ出来事でも人によって原因と結果は異なります。良かった点は改良し、悪かった点は改善するという発想で客観的に分析します。原因と結果を分析することができれば、今後に活かすことができるでしょう。

ビジネスにおける内省の方法

業務においても内省を習慣化し、内省力を鍛えることで、社員の自己成長を促すことが可能です。ここでは、ビジネスにおける内省の方法を紹介します。

自問自答を行う

内省は自身への問いかけでもあります。業務上の問題で悩む人もいれば、人間関係で悩む人もおり、問いかける内容は人それぞれ異なるでしょう。しかし、ビジネスにおいては、良かった点をさらに伸ばし、悪かった点を改善することが重要です。それには、ただ考えるだけではなく、可視化することが有効です。

業務の内容に問題があったのか、業務を行う上でプロセスに問題があったのかを事実と感情とで切り分け、紙に書くなどの方法によって可視化することができれば、考えがより明確になるでしょう。

対話型ワークショップを行う

「対話型ワークショップ」とは、個人ではなくグループなどの参加者で意見を出し合い、新たなアイデアや潜在的なニーズを発見したり、問題解決の方法を見出したりするための方法です。

人それぞれ価値観が異なり、ひとりではいくら考えても行き詰まってしまう場合があります。メンバー同士で話し合うことによって、新たな価値観やアイデアが生まれることも多く、イノベーションを創出する際にも有効とされています。

プランニングと振り返りを適切に行う

普段仕事をしていると、内省に時間をとることができず、問題点や改善点があったとしても計画的に原因や結果を分析することができない場合があります。業務に関する問題点や改善点は、振り返りを計画的に実施することが大切です。そのためには、内省を組織としての活動に組み込み、周りの人と協力して実施する機会を作ることが必要です。

良いことも悪いことも事実を振り返る

内省は、固定観念にとらわれず事実に注目し、振り返ることが大切であり、悪いことばかりにとらわれているとただの反省会のようになってしまいます。「なぜうまくいったのか」という視点が欠けてしまうとネガティブな発想が強くなり、効果がありません。

「どうしてそのような結果に至ったのか」という視点で事実を客観的に振り返り、成功や失敗の原因を解明し、次の活動に活かすことが大切です。

内省力のある人の特徴

物事をじっくりと考えて結論を導き出す人や、多角的な視点で物事を捉える人は、内省力がある人といえるでしょう。しかし、内省は、ポジティブにもネガティブにも働く場合があるため注意が必要です。

完璧主義では物事は先に進まず、固定観念にとらわれると視野が狭くなります。失敗ばかりを気にするとネガティブな発想になりかねません。内省は完璧を負うのではなく、固定観念にとらわれず、広い視野で物事を捉え、柔軟な発想をすることが大切です。本来誰もが行っていることであり、繰り返し行うことで鍛えることができます。

ビジネスにおいて内省を活用するには?

内省は、企業の人材育成・人材開発の方法としても注目を集めており、ビジネスの場面でも有効に活用することができます。先ほど紹介した「対話型ワークショップ」も、グループのメンバーでアイデアを出し合うブレインストーミングの手法と、カードや付箋を用いて出された情報やアイデアを整理するKJ法を併用することが可能です。

組織としての使命や業務目標とすり合わせ、フレームワークに沿って内省を行うプランをつくり、振り返りを適切に行うことも効果的です。フレームワークには以下のようなものがあります。

KPT法

やるべきこと(keep)や問題点を抽出(problem)し、課題解決・改善に挑む(try)方法です。成功も失敗も振り返り、課題解決に挑戦し、今後の活動につなげます。

KDA法

やるべきこと(keep)や止めるべきもの(diskard)を明確にし、取り入れる(add)方法です。取捨選択により取り入れるべき方法を付け加えるところが、KPT法と異なります。

YWT法

「やったこと」「わかったこと」「次にやるべきこと」の日本語の頭文字をアルファベットから取った方法です。成功も失敗も振り返り、その中から次にやるべきことを導き、今後の活動につなげます。

内省のビジネスでの活用は人材育成につながる

内省は「ひとりで行うもの」というイメージがあるかもしれません。しかし、組織やチームのメンバーで協力して行うことで、より大きな効果が期待できます。内省を1つのテーマとしてビジネスの場面で活用すれば、多くの意見を出し、ひとりでは思いつかない考え方や価値観などの気づきが得られるでしょう。

固定観念にとらわれず、広い視野で物事を捉え、柔軟な発想をすることは、企業の人材育成・人材開発においても重要視されるスキルです。内省を組織として実施することは、社員の自己成長、業務改善、組織の活性化など、さまざまなメリットをもたらします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事