• 更新日 : 2025年2月10日

育休中の給付金が手取り10割とは?要件や期間を解説【2025年4月】

育児休業給付金は、育休を取得する際に賃金が支払われなかったり、減額されたりした場合に、安心して育児に取り組めるよう支援する制度です。雇用保険の被保険者であれば、男女問わず育児休業給付金を受給することが可能です。

2025年4月1日から、育児休業給付金(育休手当)の給付率が引き上げられ、一定の条件を満たすことで「手取り相当額が10割」となる制度改正が行われます。ここでは、新たな給付率や適用条件、期間についてわかりやすく解説します。

【2025年4月~】育休中の給付金が「手取り10割」とは?

2025年4月から始まる「出生後休業支援給付金」により、育児休業期間中の給付金を「実質“手取り10割」に近づけようという仕組みが整備されます。ここでいう「手取り10割」とは、給与明細上の総支給額(額面)ではなく、社会保険料や税金を差し引いた後の実際の手取り額を基準にしたおおよその目安です。

詳しくは、厚生労働省の資料も併せてご確認ください。

1. 給付金が“合計80%”になる仕組み

  • 従来からある「育児休業給付金」(67% or 50%)と、新設される「出生後休業支援給付金」(13%)を合わせて80%となるように設計。
  • この80%はあくまで額面給与(休業開始時賃金日額)に対する割合です。

2. 育児休業中は社会保険料などが免除に

  • 育児休業中は、本人負担分の社会保険料(健康保険・厚生年金)や、通常給与から差し引かれる雇用保険料が免除される場合があります。
  • 加えて、育児休業給付は所得税・住民税の課税対象外
  • 結果として、額面80%でも、実際の手取りベースでみるとほぼ100%相当となります。

3. 上限額には注意

  • 育児休業給付金などには、日額ベースで上限が設定されています。
    • 2025年4月時点での休業開始時賃金日額の上限は15,690円/日
    • それを超える高収入の場合、80%よりも給付率が下がり「手取り10割」に届かないケースがある点は要注意です。

手取り10割相当となる期間は?

「手取り10割相当」となるのは、2025年4月以降に取得する“産後パパ育休(出生時育児休業)”の最大28日間が目安です。

具体的には、「出生時育児休業給付金(67%)」+「出生後休業支援給付金(13%)」=合計80% を給付し、さらに社会保険料免除・非課税を加味すると、実質的に手取りベースで10割相当になるよう設計されています。

手取り10割を実現する要件とは?


1. 雇用保険被保険者であること

  • 一般被保険者または高年齢被保険者として雇用保険に加入している必要があります。
  • フリーランス、自営業、特別職の公務員など、雇用保険の被保険者でない場合は対象外。

2. 「産後パパ育休(出生時育児休業)」を取得し、要件を満たす

  • 14日以上(通算)取得し、「出生時育児休業給付金(67%)」の支給を受けられること。
  • さらに、配偶者も14日以上の育児休業を取得(または「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当)し、「出生後休業支援給付金(13%)」が併給されること。
    • これにより「67%+13%=80%」の給付率が成立。

3. 社会保険料・税金が免除(または非課税)

  • 育児休業中は健康保険料・厚生年金保険料の本人負担分が免除される(申し出が必要)
  • 雇用保険料も給与が出ない場合はかからない
  • 給付金は非課税(所得税・住民税はかからない)
  • 上記の結果、額面80%でも実質手取りに近い水準=“ほぼ10割”になる

4. 事業主が支払う賃金が「80%未満」であること

  • 産後パパ育休中に、会社からの賃金支給が「休業開始時賃金日額×休業日数」の80%以上になると、給付金は不支給となり、「手取り10割」が崩れます。
  • 逆に、13%以下であれば給付金は全額支給され、13%超~80%未満の場合は一部調整されつつ支給されます。
    • 調整されるのは「67%」のほう(出生時育児休業給付金)で、「13%」(出生後休業支援給付金)は減額されない

5. 給付金の上限額を超えない範囲の収入であること

  • 育児休業給付金・出生後休業支援給付金には、日額ベースの上限があります。
    • 2025年4月1日時点で15,690円/日円 (毎年8月1日に改定 )
    • これを超える賃金水準の方は、給付率が実質的に抑えられて「80%」に届かず、手取り10割に達しない場合があります。

6. 就労日数・時間が「不支給ライン」を超えないこと

  • 育児休業給付金の原則として、「休業中に一定以上働く日・時間があると、給付金が不支給になる」ルールがあります。
  • 産後パパ育休については、さらに賃金支給状況とあわせて給付の有無が判断されるため、休業期間中の就労や賃金の発生状況を事前に確認しましょう。

そもそも育休中の給付金とは?

育児休業を取る方のほとんどは産前産後休業も取得すると思われますが、その期間は多くの企業で賃金の支払いがなくなります。

育児休業給付金や出産手当金は休業時の生活費の補填をねらいとする制度です。

育児休業給付金

育児休業給付金は、1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した場合で、みなし被保険者期間が一定の要件を満たすときに支給されます。育休期間の延長・再延長やパパ・ママ育休プラスの取得がある場合は、それに応じた期間が対象となります。

有期雇用労働者は、労働契約期間終了する前で、子どもが1歳6か月(育休を再延長した場合は2歳)になる日までの間に終了する場合は対象外です。

産休でもらえる給付金

出産・産休に関連して受け取れる給付金には次の2つがあります。

【出産育児一時金】

健康保険の被保険者が妊娠4カ月(85日)以上で出産したときに、出産費用として支給されます。早産、流産、人工妊娠中絶、死産でも支給されます。

医療機関が直接受け取る方法もあります。

【出産手当金】

健康保険の被保険者が産休により給与の支払いがなかった場合に生活保障を目的として支給されます。

出産の日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、休業期間を対象に支給されます。

育児休業給付金の受給資格・支給要件

育児休業給付金は、まず申請者の受給資格を確認したうえで、支給要件に該当する場合に給付されます。受給資格、支給要件は次の通りです。

受給資格

①1歳未満の子ども(*1)を養育するために、育児休業(*2)を取得した被保険者であること

*1 パパ・ママ育休プラスを利用する場合は1歳2カ月

保育所待機などの事情がある場合は1歳6カ月または2歳

*2 育休取得中に退職する場合は対象外

  • 産後休業期間(8週間)は対象外です。
  • 対象者は男女を問いません。
  • 有期雇用労働者も支給対象となります。ただし、労働契約において子どもが1歳6カ月(1歳6カ月から2歳までに再延長した場合は2歳)までの間に満了し、更新がない場合は対象外です。

②休業開始日前2年間にみなし被保険者期間(*3)が12カ月以上あること

*3 基本手当の受給資格を確認する際の要件を準用したもの

  • 賃金支払の根拠となった日数が11日以上である月が12カ月以上あること

[ない場合は]

  • 就業時間数が80時間以上である月が12カ月以上あること

≪いずれも満たさないときは≫

産前休業開始日などを起算日として、その日の前2年間に

  • 賃金支払の根拠となった日数が11日以上である月が12カ月以上あること

支給要件

  1. 支給単位期間(育児休業開始日から起算して1カ月ごとに区切った期間)の初日から末日まで継続して雇用保険の被保険者であること
  2. 支給対象期間に就業していると認められる日数が10日以下であること
    10日以上ある場合は就業していると認められる時間が80時間以下であること
  3. 支給単位期間に賃金の支払いがある場合は休業開始時の賃金月額の80%未満であること

育児休業給付金の計算方法

育児休業給付金は、休業開始時賃金日額(*1)、支給単位期間(*2)の支給日数(通常は30日)および給付率(*3)によって計算します。

*1 育児休業開始前/産前産後休業開始前6カ月間の賃金を180で割った額

*2 育児休業開始日から起算して1カ月ごとに区切った各期間

*3 休業開始日から180日目までは67%、181日以降は50%

給付金の計算方法

育児休業給付金は、休業期間中の賃金支払いの有無で異なります。

①賃金の支払いがない場合

支給額=休業開始時賃金日額×支給日数30日(*1)×給付率67%/50%

*1 最後の支給単位期間はその期間の初日から休業終了日までの日数

※2025年4月1日~は、「出生後休業支援給付」によって子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げることとされています。

②賃金の支払いがある場合

【支払い額が賃金月額(*2)の13%/30%(*3)以下の場合】

*2 賃金月額=賃金日額×30日

*3 休業開始日から180日目までは13%、181日以降は30%

支給額=[賃金支払いがない場合と同じ]

【支払い額が賃金月額の13%/30%超 80%未満の場合】

支給額=賃金月額×80%-支払い額

【支払い額が賃金月額の80%以上】

支給なし

給付額の計算例

育児休業給付金の計算を実際に計算してみましょう。

なお、休業開始時賃金月額(賃金日額×30日)には上限・下限があります。変更は毎年8月1日です。

例:休業開始前6カ月の賃金が2,880,000円

①休業開始前賃金日額の計算  2,880,000円÷180=16,000円(賃金月額は480,000円)

ここで注意!賃金日額の上限・下限をチェック!

令和6年8月1日現在の賃金日額の上限:15,690円 ⇒ 賃金月額の上限:470,700円

②休業開始日から181日以降の場合で計算 ⇒ 給付率50%

【賃金の支払いがない場合】【賃金月額の 30%以下を支払いの場合】

支給額=15,690 円×30 日×50%=235,350 円

→賃金日額の上限

【30万円支払いの場合】

300,000円÷470,700円=63.7% ⇒ 賃金月額の30%超80%未満

支給額=470,700円×80%-300,000円=76,560 円

賃金月額の上限

【38万円支払いの場合】

380,000円÷470,700円=80.7% ⇒ 賃金月額の80%以上

支給なし

育児休業給付金は社会保険料の免除がある

産前産後休業中・育児休業中は、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が被保険者、事業主ともに免除されます。

①産前産後休業中

免除の期間は、産休開始月から終了日の翌日の属する月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までです。

産休中の給与の支給・無支給は問いません。

免除期間中も被保険者資格に変更はなく、年金額を計算する際には保険料を納めた期間として扱われます。

②育児休業中

育児休業を延長、再延長した場合や産後パパ育休なども対象となります。

免除の期間は、育児休業などを開始した日の属する月から育児休業などが終了する日の翌日が属する月の前月までです。

  • 住民税

住民税は前年度の所得に基づいて課税されるため、育児休業中でも課税され続けますので注意が必要です。一方、出産手当金や育児休業給付金は非課税となるため、それらを受け取っても所得税や翌年の住民税には影響しません。

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金の申請は、まず事業主が支給申請者の受給資格確認手続を行うことから始まります。

支給申請の提出書類、添付書類、提出期限は次のとおりです。

【提出書類】

  1. 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  2. 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書

【添付書類】

①育休の開始・終了日、賃金の額と支払状況を証明できるもの

賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、タイムカード、育児休業申出書、育児休業取扱通知書など

②育児の事実、出産予定日および出生日を確認できるもの(写し可)

母子健康手帳(出生届出済証明と分娩予定日が記載されたページ)、医師の診断書(分娩(出産)予定日証明書)など

【提出期限】

育休開始日から起算して4カ月を経過する日の属する月の末日まで

育児休業給付金の延長申請について

育児休業の期間は、一定の条件を満たす場合には、子どもが1歳から1歳6カ月までの延長、1歳6カ月から2歳までの再延長が認められます。育休期間の延長に伴い、育児休業給付金の支給も延長されることになります。

延長できる条件

育休期間が延長されるのは、以下の①、②および③の要件をすべて満たす場合です。

①父母のどちらかが子どもが1歳または1歳6カ月到達日に育児休業を取得していること

②以下のいずれかに該当すること

  • 保育所への入所が困難

※ 保育所への入所の困難を理由とする育休延長については、2025年4月以降厳格化され、職場復帰のために入所希望であることの真実性が厳しく確認されます。

子どもの主たる養育者が

  • 死亡
  • 負傷・障害などにより養育が困難な状態
  • 離婚などにより子どもと同居しない
  • 新たな妊娠により6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定または8週間の産前産後休暇の期間に該当

③各延長期間における育児休業の取得が初めてであること

厚生労働省「育児休業給付金の延長手続きの厳格化」

延長の手続きはどうするの?

育児休業給付金の支給延長手続きに必要な書類は次の通りです。

  1. 育児休業給付金支給申請書
  2. 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など賃金額や支払状況を証明する書類
  3. 延長理由の証明書類

延長理由を証明する書類一覧

延長の理由必要な書類
保育所の入所困難◆2025年4月以降の厳格化に対応

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所などの利用申込みを行ったときの申込書の写し
  • 市区町村が発行する保育所などの利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
主たる養育者死亡
  • 住民票の写し
  • 母子健康手帳
養育困難
  • 医師の診断書
同居なし
  • 住民票の写し
  • 母子健康手帳
新たな妊娠・出産
  • 産前産後に係る母子健康手帳

育休手続きに関する各種テンプレート

育児休業給付金の手続きは、育児休業を事業主に申出るところからスタートします。この申出を受けて、事業主は給付金の受給資格確認票や支給申請書をハローワークに提出するなどの手続きに入ります。申出書のテンプレートを用意しましたので活用してください。

また、3歳未満の子どもがおり、育休を取得していない労働者は短時間勤務制度を利用できます。この場合には、短時間勤務申出書により申出ることになります。

育児休業申請書(ワード) テンプレート | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」 (moneyforward.com)

育児休業申出書(ワード) テンプレート | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」 (moneyforward.com)

育児短時間勤務申出書(ワード) テンプレート | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」 (moneyforward.com)

育児短時間勤務申出書(エクセル) テンプレート | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」 (moneyforward.com)

育休給付を使って安心して育児に専念しよう!

産前産後休業、育児休業、産後パパ育休、パパ・ママ育休プラスなど妊娠・出産・育児をめぐる制度は多彩をきわめています。一見すると複雑に感じられるかもしれませんが、どれも子育てを父母が互いに協力し合って担うことにより男性・女性ともに仕事と育児を両立できるよう支援するものです。

育児休業給付金制度もそうした制度の一つ。ここでご覧いただいた記事のほか、産前産後休業や育児休業に関する記事を読んで、子育て応援制度を十分に活用してください。


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