- 更新日 : 2024年8月29日
育児による時短勤務はいつまで取得できる?制度や法律もあわせて解説!
育児・介護休業法では、育児や介護をする必要がある労働者を支援し、仕事と家庭を両立し、労働の継続ができるように様々な仕組みを設けています。
育児については子が1歳になるまでの育児休業がよく知られていますが、それ以外にも所定労働時間の短縮措置があります。
この記事では、所定労働時間を短縮する時短勤務について制度の概要、いつまで取得できるのかなどについて解説していきます。
目次
育児による時短勤務制度とは?
育児・介護休業法では、
3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていない労働者が申し出た場合には、労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置を講じなければならない
としています(法23条1項)。
所定労働時間の短縮措置であり、通称、時短勤務制度と言われるものです。
時短勤務制度は、次のすべてに該当する労働者が対象となります。
- 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
- 日々雇用される者(1日限りの雇用契約または30日未満の有期契約で雇われている労働者)でないこと
- 短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
- 労使協定により定められた適用除外者ではないこと
4については、次の労働者が該当し、あらかじめ労使協定で定めることにより、時短勤務制度の対象外とすることができます。
イ.その事業主に継続雇用されている期間が1年未満の労働者
ロ.1週間の所定労働日が2日以下の労働者
ハ.業務の性質または実施体制に照らして短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者
以上のうち、「ハ」の労働者については、適用除外とした場合、事業主は代替措置として、以下のいずれかの制度を講じる義務があります。
(a)育児休業に関する制度に準ずる措置
(b)フレックスタイム制度
(c)始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤の制度)
(d)従業員の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
育児による時短勤務はいつまで取得できる?
時短勤務がいつまで取得できるかは、育児・介護休業法に規定があります。また、企業によっては、法律の規定を上回る期間まで延長しているところもあります。
育児による時短勤務について法律上の定め
育児・介護休業法では、
事業主は3歳未満の子を養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けなければならない
としているため、法定の期間としては子が3歳になるまでというのが原則です。
ただし、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子(その子が6歳になる誕生日を含む年度の3月31日まで)を養育する労働者についても措置を講じるよう努力義務としています(法24条1項3号)。
企業によっては特別に時短勤務制度を整えている
3歳以降については、あくまで努力義務であるため、時短勤務制度の適用の強制力はありません。
しかし、従業員の仕事と育児の両立に力を入れている企業の中には、6歳までの努力義務を順守するところもあります。また、さらに独自の制度として子が10歳になるまで、あるいは小学校卒業まで大幅に期間を延長している企業も少ないながらもあります。
厚生労働省では、育児と仕事の両立のためだけでなく、働き方の多様化に向け、決まった日時だけ働きたい入職者、定年後も働き続けたい高齢者など様々な人材が活躍できるように短時間正社員制度の導入を推奨しています。
こうしたことを受け、最近では短時間正社員制度を整備する企業もみられるようなりました。
時短勤務の取得状況
厚生労働省がおこなった正社員に対する調査によると、短時間勤務制度の取得状況は以下の通りです。調査は、男性正社員、女性正社員、女性非正規社員の3者に対しておこなわれています。


「男性・正社員」については、「利用したことはなく、利用希望もない」が 49.0%でもっとも回答割合が高く、次いで「利用したことはないが、利用したかった」が20.3%となっています。
「女性・正社員」では、「現在利用している」が 31.4%でもっとも割合が高く、次に「わからない」が 25.2%となっています。
「女性・非正社員」については、「わからない」が33.0%でもっとも回答割合が高く、次いで「利用したことはなく、利用希望もない」が 28.8%となっています。
「引用:令和2年度 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書 〈労働者調査〉」
育児における時短勤務の所定労働時間
短時間勤務制度を導入する場合、
1日の所定労働時間は原則として6時間とする措置を含むものでなければならない
としています(則74条1項)。
「1日の所定労働時間を原則として6時間」とは、短時間勤務制度は1日の所定労働時間を6時間とすることを原則としつながらも、通常の所定労働時間が7時間45分である事業所において、短縮後の所定労働時間を5時間45分とする場合などを勘案したものです。
したがって、短縮後の所定労働時間について、1日5時間45分から6時間までを許容するという趣旨です。
厚生労働省では、1日の所定労働時間を6時間とする措置を設けた上で、1日の所定労働時間を7時間とする措置や、隔日勤務等の所定労働日数を短縮する措置など、所定労働時間を短縮する措置をあわせて設けるなど、従業員の選択肢を増やすことを推奨しています。
育児短時間勤務申出書の無料テンプレート・ひな形
従業員が育児をするために時短勤務を申請する際には、育児短時間勤務申出書を活用しましょう。育児短時間勤務申出書には、育児を必要とする子の情報や、短時間勤務の期間、状況などが記載されます。
マネーフォードクラウドでは、今すぐ実務で使用できる、テンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。ベースを保ちつつ、自社の様式に応じてカスタマイズすれば使い勝手の良い書類を作成できるでしょう。この機会にぜひご活用ください。
育児による時短勤務の注意点
時短勤務制度では、どのような点に注意すべきなのでしょうか。働く従業員の観点からいくつかポイントを挙げていきます。
時短勤務をしつつも残業したい・したくない場合
育児・介護休業法では、時短勤務の従業員に残業を禁止しているわけではありません。
したがって、法定労働時間を超えない範囲であれば、所定労働時間である6時間を超えて働くことはできます。
しかし、3歳未満の子を養育する従業員が申し出た場合には、
事業主は、事業の正常な運営
を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはならない
としています(法16条の8)。
従業員は、制限の請求は、1回について1カ月以上1年以内の期間について開始の日及び終了の日を明らかにして、制限開始予定日の 1カ月前までにおこないます。なお、請求の通知は、事業主が適当と認める場合には、ファックスや電子メール等によることも可能です。
この制限期間中であれば、残業をせずに帰宅することができます。
時短勤務をすると給料が減る?
労働契約では、「ノーワーク・ノーペイ」の原則があります。労務を提供する対価として賃金の支払義務が生じるため、労務の提供がなければ賃金を支払う必要はない、ということです。
時短勤務では、本来の所定労働時間が8時間だった場合、2時間短縮し、その間は労務を提供していないため、単純に考えても賃金は4分の1カットされることになります。
ただし、時短勤務を利用したことで月額給与や賞与について不当な減額は、育児・介護休業法で定める不利益取扱いに該当し、禁止されています。
会社側は、時短勤務による賃金の減額率については就業規則に明記しておく必要がありますし、従業員側もしっかりと確認しておくことが大切です。
なお、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、標準報酬月額によって決定されますが、時短勤務した場合、その間の社会保険料は時短勤務前の賃金を基準に算出されます。
そのため、時短勤務で賃金がカットされているにもかかわらず、社会保険料が据え置かれているため、手取り金額が少なくなります。
ただし、育児休業を終えて復帰した従業員が時短勤務を申し出た場合は、減額措置の特例があります。特例の対象となるには、次の要件を満たしていることが必要です。
- 復帰後、3歳未満の子どもを養育していること
- 復帰前と復帰後の標準報酬月額の間に1等級以上の差があること
- 復帰後の3カ月のうち、少なくとも1カ月の支払基礎日数が17日以上あること
手続きとしては、日本年金機構に「育児休業終了時報酬月額変更届」を提出します。
これによって、復帰した月から3カ月間の賃金を元に標準報酬月額が改定され、育児休業を終えて4カ月経過すると、社会保険料が減額されることになります。
時短勤務の制度がない場合
時短勤務制度は、育児・介護休業法では所定労働時間の短縮措置として実施を義務づけており、対象となる従業員からの育児を理由とした時短勤務の申し出を拒否することは原則として違法となります。
中には制度自体を知らない事業主もいるため、時短勤務制度があることを話してみてはいかがでしょうか。制度自体は、就業規則に規定がなくても従業員の申し出によって利用することはできます。
また、事業主側が確信犯的に利用を拒否するような場合には、行政機関に相談するとよいでしょう。担当窓口は、都道府県労働局雇用環境・均等室になります。
育児による時短勤務制度について知っておこう!
所定労働時間を短縮する時短勤務について制度の概要、いつまで取得できるのかなどについて解説してきました。
制度導入されて時間を経ているにもかかわらず、利用状況は今一つという印象があります。
まずは、働く従業員自身が男女関係なく、育児のための時短勤務制度の存在をよく知っておく必要があります。労務担当の方は、先頭に立って社内周知を図ることが大切です。
よくある質問
育児による時短勤務はいつまで取得できますか?
子が3歳になるまでです。詳しくはこちらをご覧ください。
育児における時短勤務の所定労働時間について教えてください
原則は1日6時間とされています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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