• 更新日 : 2024年12月24日

介護保険法とは?わかりやすく解説!保険料や介護サービスを受けるまでの流れ

介護保険法とは、介護を必要とする人への保険給付について定めた法律です。介護保険の対象者には第1号被保険者と第2号被保険者があり、保険料の計算方法や納付方法、利用できるサービスが異なっています。

本記事では、介護保険法の目的や対象者、介護保険料の納付方法、介護サービスの内容や利用の流れなどについて解説します。

介護保険法とは

介護保険法とは、介護や支援を必要とする人に対する保険サービスについて定めた法律です。ここでは介護保険法が成立した経緯、介護保険の被保険者の種類、納付する保険料や利用できるサービスなどについて、概要を説明します。

介護保険法は2000年に施行され、3年ごとに改正されている

介護保険法は1997年に成立し、2000年に施行されました。

当時、急速に進展する高齢化により、介護を必要とする高齢者が増え、介護期間も長期化していました。介護をめぐる状況が深刻化するなか、家族だけに介護を任せるのではなく、社会全体で介護を支える仕組みが必要でした。

こうした状況を受け「介護保険法」が制定されました。その後も介護保険法は、高齢化率や介護需要など社会環境の変化に柔軟に対応するため、3年ごとに見直されながら、現在にいたっています。

介護保険制度の対象

介護保険は、40歳以上のすべての人が加入する公的保険です。本人の意思にかかわらず、40歳になると自動的・強制的に介護保険制度の被保険者になります。なお、介護保険の保険者は、原則として住民票のある市町村または特別区 です。

介護保険の被保険者には「第1号被保険者」と「第2号被保険者」があり、年齢によって区分されています。

第1号被保険者にも第2号被保険者にも、保険料を納付する義務と介護サービスを受ける権利はありますが、保険料の徴収方法や利用できる介護サービスの内容には相違点があります。

第1号被保険者

介護保険の第1号被保険者は、市区町村の区域内に住所を有する「65歳以上」の人です。

第1号被保険者は、要介護状態または要支援状態になると、介護サービスを利用できます。要介護・要支援状態になった原因は問われません。

要介護状態とは、日常生活の基本的な動作について継続して常時介護が必要な状態をいいます。要支援状態とは、日常生活の基本的な動作について継続して支援が必要な状態や、状態の軽減・悪化防止のために支援が必要な状態のことです。

要介護状態・要支援状態に該当するかどうかは、要介護認定・要支援認定の判定により決定されます。

第2号被保険者

介護保険法の第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の医療保険加入者です。医療保険とは、全国健康保険協会・健康保険組合・国民健康保険などのことです。

第2号被保険者も介護サービスを受けられますが「要介護状態・要支援状態になった原因が加齢に起因する疾病である場合」に限定されています。

加齢による疾病(特定疾病)に該当するものは。2024年現在、次の16種類です。

  1. がん(医師が回復の見込みがないと判断したもの)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

出典 特定疾病の選定基準の考え方|厚生労働省

介護保険制度の目的

介護保険制度には「自立支援」「利用者本位」「社会保険方式」という3つの柱があります。

被介護者の自立支援

自立支援とは、介護される人が自分の能力に応じて自立した日常生活を送れるよう、必要な支援を行うことです。

日常生活のすべての世話をするのではなく、現在ある能力を活かし、できることを可能な限り自分でさせます。そうすることにより要介護状態の悪化を防ぎ、軽減を目指します。

利用者本位のサービス利用

利用者本位とは、利用者(介護サービスを利用する介護保険被保険者)が自分で介護サービスを選択・決定できることです。

介護保険における介護サービスは、介護する側の都合で決めるのではなく、介護される側(利用者)の意思で自由に選択できます。

社会保険方式

社会保険方式とは、加入者の負担する社会保険料によって保険給付をまかなう制度のことです。社会保険方式は、税方式に比べ、給付と負担の関係が明確だという特徴があります。

介護保険においても、支払う保険料に応じた介護サービスが受けられる制度、つまり社会保険方式が採用されています。

介護保険制度の保険料

介護保険料は、全体の50%が税金で、50%が被保険者の負担する介護保険料で、まかなわれています。ここでは、被保険者が負担する介護保険料について説明しましょう。

介護保険料は40歳からの支払いが国民の義務

40歳以上の人は、介護保険料を納付しなければなりません。介護保険料の計算方法について、第1号被保険者と第2号被保険者に分けて説明します。

第2号被保険者の介護保険料

第2号被保険者の介護保険料は、加入している医療保険によって異なります。

会社員が加入する全国健康保険協会や健康保険組合などの介護保険料は、賃金の額に応じた標準報酬月額に介護保険料率を乗じた額です。

介護保険料率は保険者(全国健康保険協会や各健康保険組合)ごとに異なり、毎年見直されています。介護保険料は労使折半で、会社が保険料の半分を負担します。

自営業者などが加入する国民健康保険の介護保険料(「介護分」の保険料)は、前年の所得に応じた「所得割」と加入者人数に応じた「均等割」の合算額です。市区町村によっては、固定資産税額に応じた「資産割」も加わります。

第1号被保険者の介護保険料

第1号被保険者の介護保険料は、市区町村ごとに定められた「基準額」をもとに、所得に応じた率を乗じて計算します。

基準額が市区町村ごとに異なる理由は、高齢者の人数や割合、ニーズの多い介護サービスに違いがあるためです。

介護保険料の平均金額

第1号被保険者の介護保険料は、各市区町村が条例で定める「基準額」と、その人の前年所得をもとにして計算されます。

厚生労働省の発表によると、第9期(2024年度~2026年度)の全国平均の基準額は1ヶ月6,225円でした。最高額は9,249円(大阪府大阪市)、最低額は3,374円(東京都小笠原村)と、市区町村により大きな違いがみられます。

基準額に差異が生じる原因は、介護が必要な高年齢者数や需要の多い介護サービスが市区町村によって異なるためです。

基準額は、原則として3年に一度見直しが行われています。

介護保険料の納付方法

第1号被保険者の介護保険料は、原則として老齢年金や遺族年金などの公的年金から特別徴収されます。ただし年金が年額18万円未満の場合は、納付書による普通徴収です。

第2号被保険者のうち、会社員(健康保険組合や全国健康保険協会に加入)の介護保険料は健康保険料とともに賃金から特別徴収されます。自営業者など国民健康保険の被保険者は、国民健康保険料とともに納付します。

介護保険法に基づく介護サービス

介護保険法に基づく介護サービスは「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類に分けられます。また「居宅介護支援」や「介護予防サービス」もあります。

居宅介護サービス

居宅サービスとは、介護保険被保険者(利用者)が自宅で生活しながら利用できるサービスです。

居宅サービスには「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」があります。

訪問サービス:自宅にホームヘルパーが訪問して身体介護や生活援助を行う

通所サービス:利用者が自宅からデイサービスなどに通う

短期入所サービス:短期間だけ施設に入所する

また、歩行器や車いす、床ずれ防止用具などを貸与する「福祉用具貸与」も、居宅サービスの一種です。

施設サービス

施設サービスとは、自宅を離れ、公的な介護施設で暮らすときに受けるサービスです。施設には、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院があります。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、要介護3以上の利用者を対象とするもので、入居後は終身利用できます。費用が比較的安いことも特徴です。

介護老人保健施設(老健)は、入居してリハビリを行い、在宅復帰を目指す施設です。

介護医療院は、介護療養型医療施設に代わるものとして2018年に創設された施設です。介護医療院では、医療や介護の提供とともに、住まいとしての側面も重視されています。なお、介護療養型医療施設は2024年3月末をもって廃止されました。

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために、その地域のニーズに沿った介護サービスを提供しようとするもので、2005年の介護保険法改正により創設されました。

地域密着型サービスは、医療・介護・予防・住まいなどが包括的に確保される地域包括ケアシステムのなかでも、重要な位置を占めています。

介護事業者の指定や監督は都道府県が行いますが、地域密着型サービスは市区町村が行います。小規模な事業所が多く、地域密着型サービスを利用できるのは、原則として事業所と同じ市区町村に住所がある利用者のみです。

地域密着型サービスの例として、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、地域密着型通所介護などが挙げられます。

介護予防サービス

予防介護サービスとは、状態の悪化防止と改善を目的とするサービスで、要支援1または2の利用者を対象とするものです。訪問サービス・通所サービス・短期入所サービスに分類され、別途、地域密着型サービスもあります。

介護予防サービスとして、次の例が挙げられます。

訪問サービス: 介護予防訪問介護、介護予防訪問リハビリテーション

通所サービス: 介護予防通所サービス

短期入所サービス:介護予防短期入所生活介護

居宅介護支援

居宅介護支援とは、介護保険被保険者(利用者)が適切な介護サービスを受けられるように支援を行うサービスです。

居宅介護支援のうち、大きなウエイトを占めるものが、ケアプラン(居宅サービス計画書)の作成です。ケアマネージャー(介護支援専門員)が利用者や家族と面談し、利用する介護サービスや回数などについて、ケアプランを作成します。

居宅介護支援では、介護事業所や市区町村への連絡調整、利用者の自宅への訪問なども行います。

なお、居宅介護支援の費用は全額を介護保険が負担するため、利用者の負担はありません。

介護サービスを受けるまでの流れ

介護や支援が必要になったときは、要介護・要支援認定申請が必要です。認定を受ける流れや認定後の更新について説明します。

要介護認定申請をする

市区町村または地域包括支援センターの窓口に相談のうえ、要介護(要支援)認定申請をします。

要介護(支援)認定とは、どの程度の介護(支援)が必要かを決めるものです。申請時には、第1号被保険者は介護保険被保険者証、第2号被保険者は医療保険被保険者証を持参します。

一次判定・二次判定

市区町村の認定調査員が自宅を訪問し、本人や家族に認定調査(聞き取り調査)をします。このとき使用される認定調査票は全国共通です。

また、市区町村が主治医に対し、心身の状態について意見書の作成を求めます。認定調査の結果と主治医の意見書に基づき、コンピュータによる一次判定が行われます。

一次判定の結果をもとに、保健・医療・福祉の学識経験者で構成される介護認定審査会により二次判定がされ、どのくらいの介護が必要か判定される流れです。

要介護認定

判定の結果を受け、市区町村が要介護(要支援)度を認定し、申請者に「認定通知書」が郵送されます。

要支援には「要支援1」「要支援2」の2段階、要介護には「要介護1」から「要介護5」までの5段階です。なお、要介護にも要支援にも該当しなかったときは「非該当」とされます。

ケアプランの作成

要介護1から要介護5と認定され、居宅サービスを受けようとする場合は、居宅介護支援事業者と契約し、ケアマネージャー(介護支援専門員)にケアプラン(居宅サービス計画書)の作成依頼をします。

要支援1または要支援2と認定された場合の介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画書)の作成依頼先は、地域包括支援センターです。

更新申請を忘れずに

要介護認定や要支援認定には有効期限があるため、所定の期間内に更新をしなければなりません。また有効期間内でも、身体の状況に変化があった場合は変更申請ができます。

要介護認定の有効期限は、原則として初回認定は6ヶ月、更新認定は12ヶ月です。

介護保険制度を理解し、介護サービスの活用につなげよう

介護保険法は、急速に進展した高齢化に伴う介護ニーズを社会全体で担うことを目的とし、2000年に施行されました。介護保険の被保険者は、40歳から64歳までの第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者に区分され、それぞれ保険料の計算方法や徴収方法、受給可能な介護サービスが異なっています。

介護サービスには、居宅サービス・施設サービス・地域密着サービスなどがあり、要介護・要支援認定を受けた場合は、要介護や要支援度に応じたサービスが利用できます。なお要介護・要支援認定には有効期間があるため、適切に更新申請をしなければなりません。

介護保険の制度をよく理解することが、円滑なサービス活用につながるでしょう。


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