- 更新日 : 2025年1月28日
1年未満の育休期間を延長する方法は?給付金はもらえる?
育休期間を1年未満から延長するには、会社へ申請し、承認を得る必要があります。また、条件を満たせば、延長後も育休給付金も継続して受け取れます。
ただし、延長申請の手続きや給付金の支給状況には細かいルールがあるため、事前にしっかり確認することが大切です。
本記事では、育休1年未満を延長する具体的な方法や手順について解説します。
目次
育休期間は原則1年未満、子どもが1歳になるまで
育児休業の期間は、原則子どもが1歳になるまでの1年未満です。
育児休業とは、育児・介護休業法に基づき、子どもを養育することを目的で子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで取得できる制度です。1人の子どもにつき2回まで分割して育休を取得できます。
育児休業の対象者は、1歳に満たない子どもを養育する男女の労働者で、パートや正社員など雇用形態に関係なく休業できます。また、労働者と親子関係にある子どもであれば、養子であっても休業可能です。
育休を取る際は、取得できる条件や期間についても確認しておきましょう。
【調査データ】育休の取得期間1年未満は約6割
調査データによると、育休を取得した期間が「10ヶ月以上1年未満」と答えた方が20.3%と一番多く見られました。2番目に多かった結果が「育休を取得していない」で、次に「1年以上1年2ヶ月未満」という結果が報告されています。
調査データに基づくと、育休の取得期間が1年未満の方は約6割です。
一方、厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」では、女性の育休取得率は84.1%と報告されています。上記のようなデータから、多くの女性が育休を取得し、そのうちの過半数が1年未満で復職している現状が明らかとなりました。
1年未満の育休を延長できる場合とは?
原則、育休の取得期間は1年未満と定められていますが、条件を満たしていれば延長可能です。1年以上育休を取得したい場合は、以下の方法を確認してみてください。
パパ・ママ育休プラスを利用する
パパ・ママ育休プラスは、両親がともに育児休業する場合に1年2ヶ月まで育休を延長できる制度です。ただし、利用のためには以下の条件に当てはまっている必要があります。
- 育児休業を取得しようとする労働者の配偶者が、子どもの誕生日の前日において育児休業(産後パパ育休を含む)をしていること
- 労働者の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日以前であること
- 労働者の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業(産後パパ育休含む)の初日以降であること
ただし、基本的に子どもが1年2ヶ月になるまで育休を利用できるのは、育休を後から取得した配偶者のみです。たとえば、母親が先に育休取得した場合、1歳2ヶ月までの育休は父親のみが取得できます。
また、パパ・ママ育休プラスの利用条件は、夫婦で育休取得している必要があります。専業主婦や個人事業主などである場合は申請できないため、注意が必要です。
保育園に入れない
子どもが1歳になるまでに保育園に入園できていない場合、1歳6ヶ月、また再延長で2歳まで育児休暇を延長できます。育休の延長をするためには、「保育所における保育の利用希望をして申し込みしたが、保育が実施できなかった場合」に該当していなければいけません。
たとえば、育児休業の延長を目的に保育園への入園を希望しないにもかかわらず、入園を申し込むとします。結果的に入園できず、育児休業の延長を申し出るのは、育児・介護休業法の制度の趣旨に反していると判断される可能性があるため注意が必要です。
そのため、保育園に入園できなかった場合は、希望していたのに入園できなかったことを証明できる書類を用意しておきましょう。一般的には、自治体が発行する入所保留通知で確認可能です。
育児が困難な場合
事情により育児が困難な場合も、育児休業を延長できる場合があります。育児が困難だと認められるケースは「子どもの養育を行っている配偶者であり、1歳以降子どもを養育する予定であったものが死亡、負傷、疾病などにより子どもの養育が困難になった場合」です。
上記のような状況では、育休を最長で子どもが2歳になるまで延長できます。ただし、延長のためには、適切な手続きや証明書類の提出が必要であるため、事前に準備しておきましょう。
1年未満の育休を延長すると給付金はどうなる?
1年未満の育休を延長した場合、育児休業給付金の延長手続きを申し込む必要があります。育児休業給付金は、1歳の誕生日の前々日まで受け取れます。ただし、最大2歳まで育休を延長する際は、必要書類の提出が必要です。
以下では、延長した際の育児休業給付金について解説します。
育児休業給付金(育休手当)の金額
育児休業給付金の金額は、一般的に「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で算出します。正確な金額は、ハローワークに提出する雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書で休業開始時賃金日額が決定し、算出されます。
休業開始時賃金日額は、原則、育児休業開始前6ヶ月間の総支給額を180で割った額です。また、支給日数は原則30日で計算されます。
ただし、181日(7ヶ月)以降は、休業開始時賃金日額×支給日数×50%での計算となります。
育児休業給付金(育休手当)の延長手続き
令和7年(2025年)4月から、育児休業給付金の支給対象期間の延長手続きが変更します。
今までは、保育園の利用を申し込んでも入園できなかった場合、市区町村が発行する入所保留通知書により保育園に入園できなかった旨を証明できていました。しかし、令和7年(2025年)4月以降は、上記の確認方法に加え、保育園の利用申込書の写しが必要になります。
令和7年(2025年)4月以降の育児休業給付金の延長手続きに必要となる書類は、以下のとおりです。
- 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
- 市区町村に保育所等の利用申込を行ったときの申込書の写し
- 市区町村が発行する保育所などの利用ができない旨の通知(入所保留通知書や入所不承諾通知書など)
参考:厚生労働省「2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります」
育児休業給付金の延長を申し込む際は、上記の書類を準備してハローワークで申請しましょう。
1年未満の育休を延長したいときは会社にいつ伝える?
1年未満の育休を延長する際は、保育園に入園できないとわかったタイミングで伝えましょう。また、延長を開始する場合は、延長したい日の2週間前までに伝える必要があります。たとえば、1歳からさらに延長したい場合は、1歳の誕生日の2週間前までに申請してください。
会社に育休の延長を伝える際は、伝え方にも注意が必要です。以下では、具体的な使い方について解説します。
会社への育休延長の伝え方
まずは、会社に育休延長について伝える前に、就業規則を確認しておきましょう。一般的には人事部や上司に延長を伝える場合が多い傾向にありますが、会社により規則は異なります。事前に確認して、スムーズにやり取りできるようにしましょう。
連絡する際は、主に以下の内容を伝えると内容が伝わりやすくなります。
- 育休を延長すること
- 延長する理由
- 延長したい期間
- 今後の対応
上記を中心に伝えることで、育休延長したい旨をより的確に伝えられます。
育休を延長する際に気をつけたい手続きのポイント
育児休業の延長手続きは、従業員から申し出を受けて適切に対応する必要があります。
まず、育休延長を希望する従業員から申し出を受理してください。社会保険料免除の手続きは「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書(延長)」を作成して日本年金機構に提出します。また、育児休業給付金の延長申請をする際は、延長理由に応じて確認書類を添付し、ハローワークに申請します。
ただし、育休延長の手続きには期限が設けられているため、遅延しないように従業員と連携して手続きを進めることが重要です。期限を守っていても、必要書類に不備や不足があると、手続きが遅延する可能性があります。そのため、事前に必要書類を確認し、正確に準備しましょう。
上記の流れで手続きすることで、従業員は安心して育休延長を進められます。
育休の延長が難しいときはどうすればいい?
育休の延長申請ができても、必ずしもすべての人が延長してもらえるとは限りません。場合によっては1年以上延長できないケースもあります。育休を延長できなかった場合は、以下のような対応を取りましょう。
自治体や地域のサポートを利用
自治体や地域により、サポートが提供されている場合があります。各自治体の子育て支援課や福祉課では、保育に関する相談や情報提供を実施しています。育休延長が難しい場合、まず自治体の窓口に相談し、利用可能な支援策を確認してみましょう。
また、一部の地域では、家庭的な環境で少人数の子どもを預かる「保育ママ」制度を実施している場合があります。
保育ママのサービスを利用するための条件は以下のとおりです。
- 保護者が週4日以上、実働5時間以上就労している、または傷病により療養している、就学していること
- 0〜2歳までの子どもであること
保育所に入所できなかった場合でも利用でき、保育所よりも柔軟な対応が可能です。
まずは、自治体や地域で相談し、どのようなサポートがあるか確認してみましょう。
家族みんなで育児を支える
家族全員で協力して育児を支えることも重要です。具体的には、夫婦間で協力したり、祖父母に協力を求めたりするといいでしょう。
夫婦間では、育児や家事の担当を明確に分担し、お互いに負担を軽減します。たとえば、食事の準備や子どもの身の回りのことなど、具体的に役割を分担するとトラブルを軽減できます。また、可能であれば、祖父母に育児や家事の一部を手伝ってもらうことで、育児負担を分散可能です。
家族で協力しながら役割を決めて育児を進めることで、育休延長できなかった場合でも育児と仕事の両立を図れます。
時短勤務・フレックスで働く
短時間勤務やフレックスで働くと、育児と仕事を両立しやすくなります。
短時間勤務制度は、子育てや介護と仕事を両立するための制度です。3歳未満の子どもを養育する従業員は、一定の条件を満たすと、所定労働時間6時間までで働けます。本制度は、申請するかどうかは従業員の判断に委ねられ、希望を受けた場合は、企業は制度を設ける義務があります。
短時間勤務制度の対象者は以下のとおりです。
- 3歳未満の子どもを養育しており、短時間勤務をする期間で育児休業していないこと
- 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
- 日々雇用される従業員でないこと
- 労使協定により適用除外とされて従業員でないこと
- 入社1年未満の従業員
- 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
また、フレックスタイム制は、一定期間における事前に定めた総労働時間の範囲内で労働者が日々の始業・就業時間、労働時間を自分で決める制度です。事前に働く時間を定めて働くことにより、働く長さや出退勤の時間を自由に設定できます。
フレックスタイム制を導入する際は、就業規則に始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることと、労使協定で制度の枠組みを定めることが重要です。
上記のように、企業が柔軟に対応することで、育休を延長しなくても労働者が働きやすい環境を整えられます。
在宅勤務(テレワーク)の活用
必要に応じて在宅勤務を活用するのも効果的です。在宅勤務は通勤時間がなくなり、時間に余裕ができた分で育児に充てられます。また、自宅での勤務により、子どもの世話や家事と仕事の時間を柔軟に調節できる点でもメリットです。
政府は、子どもが3歳になるまでのテレワーク勤務を可能にする職場環境の整備を推奨しており、近年では在宅勤務でも働きやすい傾向にあります。ただし、在宅勤務制度の有無や適用条件は会社により異なるため、事前に就業規則を確認し、担当者に相談することが重要です。
法改正【2025年4月~】育休手当の給付額が実質10割に
2025年4月から改正雇用保険法が施行されることにより「出生後休業給付金」が新たに創設されます。以下では、出生後休業支援給付について紹介するため、参考にしてみてください。
出生後休業支援給付
出生後休業支援給付は、子どもの出生直後に夫婦ともに育児休業した場合、休業開始前賃金の13%相当額が給付されます。既存の育児休業給付金と合わせると、最大28日間、賃金額面の80%、育休中の手取り額が実質的に100%となり、収入面での不安を軽減可能です。
夫婦で育児参加を促進する制度のため、育休中の負担を軽減するためにも利用してみるといいでしょう。
産休・育休に関わる申請書類のテンプレート
従業員が適切に育休を申請できるようにするためには、適切な書面に必要な情報を記載して提出する必要があります。書類に不備があれば、育休をスムーズに取得できない可能性が高まるため、必要事項を記入するだけで簡単に作成できるテンプレートを利用してみましょう。以下では、各種申請書類のテンプレートを紹介します。
産休申請書テンプレート
産休申請書は、妊娠・出産に伴う休業を会社に申請する際に必要な書類です。一般的に、申請者の氏名、出産予定日、産休開始日・終了日、復職予定日などを記入します。テンプレートを活用すれば、記入漏れなく適切に書類の作成が可能です。
産休申請書は、以下から無料でダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
育児休業申請書テンプレート
育児休業申請書は、育休取得のために必要な書類で、会社に提出することで手続きが開始されます。一般的には、申請書の氏名、休業開始日、終了予定日、育休中の連絡先などを記入します。そこで、テンプレートを活用すれば、不備なくスムーズに手続きを進められるためおすすめです。
育児休業申請書は、以下から無料でダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
1年未満の育休が不安な場合は延長も検討してみよう
1年未満の育休は、条件を満たせば延長できます。育休を延長すると、育児に専念しやすくなり、安心して子育てできます。ただし、申請期限や手続きのポイントをしっかり確認し、必要書類を準備することが重要です。
延長できない場合でも企業や自治体の制度を活用し、家族と協力しながら育児を進めることにより、負担を軽減して子育てできます。まずは、本記事を参考に、自身が育休を延長できる対象者か確認してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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