• 更新日 : 2026年9月14日

累計課税支給額とは?103万の意味や含まれない金額、年収との違いを解説

Point累計課税支給額とは何か?

累計課税支給額とは、その年の1月を起点として、現在(最大12月)までの課税対象となる給与支給額を累計した金額です。年末調整などで年間の給与収入を確認する際の基礎となる金額の一つです。

  • 通勤手当・出張手当などは含まれない
  • 年収(総支給額合計)とは異なる金額
  • 所得税非課税ラインは103万→178万円へ改正

Q. 累計課税支給額と年収の違いは?

A. 年収は総支給額の年間合計、累計課税支給額は非課税手当を除いた課税分の累計で、金額が異なります。

従業員が給与を受け取る際には、給与明細が発行されます。給与明細には、勤務日数や控除された保険料などをはじめ、様々な情報が記載されていますが、その中に「累計課税支給額」という項目が存在します。当記事では、累計課税支給額の意味や計算方法、年収との違いなどについて解説します。

累計課税支給額とは?

「累計課税支給額」とは、その年の1月を起点として、給与明細が発行された時点までの「課税支給額」の累計となる額です。一方、課税支給額は、従業員に支給された給与のうち、所得税等の課税対象となる金額を指しています。

累計課税支給額に誤りがあれば、正しく所得税等を計算できません。過誤納の問題が生じる恐れもあり、年末調整にも大きな影響を及ぼします。

なお、累計課税支給額は、「課税支給額累計」や「課税支給累計」、「課税累計額」などと表記される場合もあります。意味合いは異ならないため、累計課税支給額と同様の意味を持つ金額が表示されていると判断してください。

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累計課税支給額はどこで確認できる?

累計課税支給額は、給与明細の該当項目で確認することが可能です。給与明細に設けられた累計課税支給額の項目に記載されている金額が、その年の1月から発行時点までの課税支給額の累計です。

なお、累計課税支給額を独立した項目として給与明細に設けていない企業もあります。その場合には、通常欄外に累計課税支給額の印字とともに、金額が記載されているため、そちらで確認が可能です。

累計課税支給額に含まれる、含まれない金額とは?

課税支給額の累計額である累計課税支給額には、従業員に支給された金銭の全てが含まれているわけではありません。たとえば、所得税等の課税対象とならない手当は、課税支給額には含まれないため、累計課税支給額にも含まれないことになります。累計課税支給額に含まれる金額と含まれない金額について、項目を分けて解説します。

累計課税支給額に含まれる金額

累計課税支給額に含まれる金額には、基本給をはじめとして残業手当や休日出勤手当など、様々な種類が存在します。一般的には、所得税の課税対象となる基本給や残業手当、各種手当、賞与などが課税支給額に含まれ、これらを累計したものが累計課税支給額として表示されます。

ただし、給与計算システムによって項目名や集計方法が異なる場合があるため、給与明細の定義を確認する必要があります。 また、賞与も所得として課税対象となるため、支給された場合には累計課税支給額に含まれる金額です。

累計課税支給額に含まれる金額のうち、主なものは以下の通りです。

  • 基本給
  • 残業手当
  • 休日出勤手当
  • 職務手当
  • 役職手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 賞与

従業員に支給される手当等のほとんどが該当することになりますが、一定の手当等は課税対象から外れるため注意が必要です。

累計課税支給額に含まれない金額

一定金額までの通勤手当などは、課税の対象から外されるため、累計課税支給額に含まれません。累計課税支給額に含まれない主な手当を、以下の表にまとめます。

  • 通勤手当
  • 出張手当
  • 宿日直手当
  • 在宅勤務手当
  • 資格取得手当
  • 食事手当

通勤手当

通勤手当は、電車・バスなどの公共交通機関を利用する場合、1か月当たり15万円を限度として非課税となります。そのため、限度内の支給であれば、累計課税支給額に含まれません。

なお、自転車や自動車(マイカー)で通勤する場合には、片道の通勤距離に応じて非課税となる額が変動する仕組みです。マイカー・自転車通勤者の距離区分別の非課税限度額は、令和7年11月および令和8年4月の税制改正で段階的に引き上げられているため、給与計算時には最新の限度額を確認する必要があります。

参考:通勤手当の非課税限度額の改正について|国税庁

出張手当

出張手当は、業務に本来必要な範囲内の支給であれば、原則として所得税は課税されず、非課税です。そのため、累計課税支給額にも含まれないことになります。ただし、通常必要と認められる範囲を超えて支給された部分などは、給与として課税される場合があります。 宿日直手当

宿日直手当は、1回当たり4,000円までが非課税です。範囲内であれば累計課税支給額に含まれませんが、超えた部分は課税対象となります。

在宅勤務手当

在宅勤務手当は、実費相当額が非課税となります。そのため、立て替え払いを行った従業員に実費精算したような場合、その支給額は累計課税支給額に含まれません。

資格取得手当

使用者が、従業員の職務に直接必要な技術や知識の習得、免許・資格の取得のために、研修会や講習会等の費用として適正な金額を負担する場合は非課税となり、累計課税支給額に含まれません。ただし、システムエンジニアが簿記の資格を取得するなど、業務に関連しない場合には、課税対象となります。

食事手当

食事手当は、以下の条件を満たせば、非課税となるため、累計課税支給額に含まれません。

  • 食事代の半分以上を従業員自身が負担
  • 食事代から従業員負担分を差し引いた金額が月額7,500円以内

累計課税支給額「103万の壁」の意味とは?現在の基準額は?

かつて所得税が非課税となる年収の上限は「103万円の壁」と呼ばれていましたが、2025年度・2026年度の税制改正により、この基準額は段階的に引き上げられています。2026年(令和8年)分の所得税では、課税最低限は178万円です。

103万円という数字は、所得税の基礎控除額48万円と給与所得控除額55万円の合計に由来していました。しかし令和7年度税制改正で基礎控除が58万円、給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられ、基準額はまず123万円に拡大しました。

さらに合計所得金額が一定以下(年収200万円以下が目安)の層には基礎控除の上乗せが行われ、2025年・2026年分の2年間限定で最大160万円まで非課税範囲が広がっています。

加えて令和8年度税制改正では、基礎控除(本則62万円+特例42万円=104万円)と給与所得控除の最低保障額(74万円)の合計として、2026年・2027年分の所得税の課税最低限が178万円まで引き上げられました。

累計課税支給額から所得税の非課税ラインを判断する際の基準額の推移は、以下の通りです。

対象年分 基礎控除 給与所得控除の最低保障額 所得税の課税最低限
〜2024年分 48万円 55万円 103万円
2025年分(本則) 58万円 65万円 123万円
2025年分(年収200万円以下等、上乗せ適用時) 最大95万円 65万円 最大160万円
2026・2027年分 104万円(本則62万円+特例42万円) 74万円 178万円

なお、178万円という基準は2026年・2027年分に限った特別措置であり、2028年(令和10年)分以降は物価上昇率を踏まえて基礎控除・給与所得控除の金額が改めて見直される予定です。

2026年分の所得税については、2026年11月までの毎月の源泉徴収事務に変更はありません。2026年12月に行う年末調整で改正後の基礎控除等が適用され、2027年1月以後は改正後の源泉徴収税額表が使用されます。 178万円ベースの精算は年末調整で行われる点に注意が必要です。

累計課税支給額の推移を月次で見ていても、2026年中は「今月から非課税ラインを超えた」と単純に判断できない点は、給与計算担当者として押さえておきたいポイントです。

給与収入が178万円を超えると、一定の給与所得者では給与所得控除と基礎控除だけでは所得税の課税所得をゼロにできなくなります。(ただし、実際の所得税額は、社会保険料控除扶養控除などの各種控除によって異なります。)

配偶者や親などに扶養されている従業員については、課税最低限の引き上げに伴い、配偶者控除・扶養控除が受けられる年収基準も従来の103万円から見直されています。

社会保険の「130万円の壁」「106万円の壁」も見直しが進んでいる

社会保険への加入義務が生じる基準である「106万円の壁」は、2026年10月に賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃される予定です。また「130万円の壁」についても、2026年4月から収入の判定方法が労働契約書ベースに変更されます。

2025年6月に成立した年金制度改正法により、従業員数・週の労働時間・月額賃金などの要件を満たした場合に社会保険加入義務が生じていた「106万円の壁」のうち、月額賃金要件が撤廃されることが決定しました。一方、130万円を超えると扶養から外れ、自分で社会保険に加入する義務が生じる「130万円の壁」自体は残り、2026年4月以降は見込み年収の判定方法が変更されます。

いずれも累計課税支給額ではなく、通勤手当等を含めた総支給額や見込み収入をもとに判定される点は従来と同様です。給与明細の累計課税支給額が130万円以内と表示されていても、扶養から外れ、自分で社会保険に加入しなければならない場合があることに変わりはないため、注意しましょう。

なお、19歳以上23歳未満の方(被保険者の配偶者を除く)については、学生か否かを問わず、2025年10月以降、社会保険の扶養認定基準が130万円から150万円に引き上げられています。

累計課税支給額の計算方法は?

累計課税支給額を計算するためには、まず課税支給額を計算しなければなりません。課税支給額の計算は、以下のように行います。

支給された給与の総額-非課税となる支給額

たとえば、支給総額が30万円、通勤手当等の非課税となる支給額が5万円の場合には、以下のように計算できます。

30万円(総支給額)-5万円(非課税支給額)=25万円(課税支給額)

25万円が1か月当たりの課税支給額となるため、毎月の支給額に変動がないと仮定すれば、25万円に1月から給与明細発行月までの月数を乗じることで、累計課税支給額を算出できます。1月発行であれば25万円、6月発行であれば150万円、12月発行であれば300万円が累計課税支給額です。

より具体的なケースを挙げて、再度計算してみましょう。下記のような給与が支払われた場合の3月間における累計課税支給額を計算します。

項目 1月 2月 3月
基本給 20万円 20万円 20万円
通勤手当 3万円 3万円 3万円
残業手当 2万円 3万円
休日出勤手当 1万円
出張手当 2万円(通常必要と認められる範囲内 )
総支給額 25万円 25万円 27万円
課税支給額 22万円 20万円 24万円

1月は、総支給額25万円のうち、非課税となる通勤手当3万円を控除して課税支給額を計算します。2月は1月と総支給額自体は同様ですが、内訳が異なります。残業手当が支給されない代わりに、非課税である出張手当が支給されているため、通勤手当同様に控除が必要です。その結果、1月よりも低い20万円が課税支給額として計算されました。

3月は残業手当も休日出勤手当も課税の対象であるため、累計課税支給額に含まれ、非課税である通勤手当を控除した24万円が課税支給額となります。

今回のケースにおける3月間の累計課税支給額は、以下のとおりです。

22万円(1月)+20万円(2月)+24万円(3月)=66万円(1月から3月までの累計課税支給額)

累計課税支給額と年収の違いは?

年収をどのように定義するかは、自由です。しかし、健康保険料といった社会保険料や、源泉所得税などが引かれる前の総支給額の年間における合計額を表すのが一般的です。累計課税支給額は、課税の対象となる課税支給額の合計であるため、両者は異なった金額であるといえるでしょう。

たとえば、1か月における支給額が以下のようになるケースで、両者の違いを見てみましょう。

  • 基本給:30万円
  • 通勤手当:2万円
  • 役職手当:3万円
  • 総支給額:35万円

総支給額35万円には、非課税となる通勤手当が含まれているため、これを控除した33万円が課税支給額となります。総支給額と課税支給額のふたつを用いると、年収と1月から12月までの累計課税支給額を計算可能です。

年収:35万円(総支給額)×12月=420万円

年間における累計課税支給額:33万円(課税支給額)×12月=396万円

誤った理解はトラブルのもと

正確な税額を計算するためには、前提となる正しい累計課税支給額の計算が必要です。累計課税支給額の計算が誤っていれば、過納や未納の問題が生じてしまいます。

また、年収との混同も避けなければなりません。所得税が非課税となる基準額は103万円から123万円、さらに178万円へと制度改正が続いているため、累計課税支給額の計算においては、最新の課税最低限や課税の対象となる手当等の理解も欠かせません。

当記事を参考に、累計課税支給額に対する理解を深め、過納や未納を未然に防いでください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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