• 更新日 : 2022年4月22日

源泉所得税とは?計算方法や納付の注意点も解説!

源泉所得税とは、源泉徴収によって納める所得税を指します。源泉徴収税と同じものであり、給与支払いをする事業主や法人にとっては、納付するべき重要な国税です。ここでは源泉所得税と申告所得税の違いといった基本知識から、源泉所得税の計算方法、納付方法といった一連の流れを解説します。

源泉所得税とは?

源泉所得税とは、源泉徴収によって納付する所得税のことをいいます。

もともと所得税とは、1月1日から12月31日までの間の、1年間の個人の所得に対してかかる税金です。しかし1年間の所得税を一括で納付するのは納税者にとって負担が大きくなります。そのため給与や報酬を支払う場合、支払元である企業・事業主が、所得税を給与から天引きし、納税者の代わりに国に納めます。これを、源泉徴収制度といいます。

つまり、源泉所得税とは、源泉徴収制度によって給与・報酬から天引きされ国に納付される所得税のことを指します。

源泉所得税と所得税の違い

このように、源泉所得税とは大枠では所得税と同じものを指しています。

所得税は、収入のある個人に課せられる税金です。1月1日から12月31日までの間に発生した収入に対して、所得控除を差し引いた金額に税率を適用して算出します。日本では超過累進税率を用いていますので、税率は所得金額が多くなるほど段階的に高くなる仕組みになっています。

所得税という、収入に対して課せられる税金の枠組みがあり、そのなかに企業が給与から天引きした税金を個人に代わり、国に前もって納税する源泉所得税があります。

源泉所得税と源泉徴収税の違い

源泉所得税に限りなく近い分類として、源泉徴収税という言葉があります。源泉徴収税は、その名の通り源泉徴収の際に納付する税金を指します。

2013年1月1日から2037年12月31日までに生じる所得については、通常の所得税に加えて、復興特別所得税を納付することとなっています。復興特別所得税は、基準所得税額に2.1%をかけて計算します。たとえば、通常の所得税率が10%の個人の場合、10.21%をかけたものが最終的に源泉徴収される税額となるのです。

このように、復興特別所得税がかかる期間には、源泉徴収税には源泉所得税と復興特別所得税の2つが計算されていると考えればよいでしょう。

なお、国税庁では所得税額に応じた源泉徴収額が簡単に計算できる「源泉徴収税額表」を公開しています。

参考:令和4年分 源泉徴収税額表|国税庁

源泉所得税と申告所得税の違い

所得税の分類としてもう1つあげられるのが、申告所得税です。これは、給与のように企業が源泉徴収する所得税とは異なり、個人事業主等が確定申告の際に個人で納付する所得税のことを指します。

申告所得税は原則として、源泉所得税のように「1年間の所得を想定して毎月支払う」という仕組みを取っていません。1月1日から12月31日までの所得を計算し、各種所得控除を差し引いたうえで納めるべき所得税・復興特別所得税を算出します。この申告所得税を確定させる手続きが、確定申告です。

【所得税の区分】

所得税
源泉徴収税
申告所得税
(所得税&復興特別所得税)

源泉所得税
復興特別所得税

源泉所得税の計算方法

源泉所得税は、会社が源泉徴収の対象となる一定の支払いに対して発生します。代表的なものに従業員の給与がありますが、ほかに業務委託等で報酬を支払う場合の「支払報酬」、弁護士や税理士などへの報酬も源泉徴収の対象となります。

以下に、源泉所得税の計算方法について説明します。

給与所得者の源泉所得税

給与所得者の源泉所得税額は、通常、国税庁の源泉徴収税額表をもとに計算します。源泉徴収税額表は「月額」「日額」「賞与」の3種類がありますので、支払う給与の種類に合わせて活用しましょう。

  • 月額表:月ごとに支払うもの、半月、10日ごと、月の整数倍の期間ごとに支払うもの
  • 日額表:日雇賃金、(日雇賃金を除く)毎日支払うもの、週ごとに支払うもの、日割で支払うもの

税額表では、支払った給与から健康保険料、雇用保険料、社会保険料、介護保険料の合計額を差し引いた金額の区分と扶養人数を表に当てはめれば源泉徴収税額が簡単に計算できるようになっています。給与支払いを2箇所から受けているなど「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出がない従業員については、乙欄を使用します。

参考:令和4年分 源泉徴収税額表|国税庁

報酬などにかかる源泉所得税

会社と雇用関係にない人に支払う報酬にも、源泉徴収しなければいけないものがあります。これを「支払報酬」といいます。支払報酬にあてはまるものは、以下の通りです。

イ 原稿料や講演料など
 ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

ロ 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金

ハ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

ニ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金

ホ 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金

ヘ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金

ト プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金

チ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

引用:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

100万円以下の報酬については、支払い金額の10.21%、100万円を超える部分の報酬には、20.42%をかけて算出します。

電子計算機の特例

通常は税額表をもとに源泉徴収税額を計算しますが、給与計算を電子計算機などを用いて処理している場合は、月額表甲欄(「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した従業員)に限っては以下の手順で計算できる特例があります。

1.非課税の手当や社会保険料を差し引き、その月の社会保険料等控除後の給与額を計算する

まずはじめに、その月の社会保険料等控除後の給与額を算出します。その月の社会保険料等控除後の給与額は、以下の形で計算します。

その月の社会保険料等控除後の給与額=総支給額(基本給+残業代+各種手当)ー非課税の手当ー各種社会保険料の金額の合計額

2.非課税の手当や給与所得控除を差し引き、給与所得を算出する

次に、1で計算した金額をもとに給与所得控除の金額を第1表から算出し、給与所得を算出します。給与所得は以下の形で算出します。

給与所得=総支給額(基本給+残業代+各種手当)ー非課税の手当ー給与所得控除

非課税の手当とは

給与所得といっても、会社が支給する基本給や手当がすべて対象になるわけではありません。会社が支給する手当のなかには、例外として非課税となり、所得税を計算する際の所得から差し引くことができる手当があります。

【非課税の手当の例】

  • 通勤手当のうち、一定金額以下のもの
  • 転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
  • 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの

引用:No.2508 給与所得となるもの|国税庁
通勤手当は電車やマイカーといった通勤方法によって非課税にできる限度額が定められていますので、国税庁のページで非課税となる条件を確認するといいでしょう。

給与所得控除とは

給与所得控除とは、会社勤めである人々の「経費」のようなものです。収入に合わせて控除できる金額が決められており、所得税を算出する前に収入から差し引くことが可能です。電子計算機の特例では、別表1に定める表を用いて給与所得控除を計算します。
給与等に対する源泉徴収税額の電算機計算の特例等
引用:P355 給与等に対する源泉徴収税額の電算機計算の特例等|国税庁

3.配偶者控除、扶養控除、基礎控除を計算する

給与所得控除と同様に、別表を用いて配偶者控除、扶養控除、基礎控除の額を算出し、各種社会保険料の金額の合計額とともに給与所得から差し引きます。それにより、その月の課税給与所得金額が求められます。

その月の課税給与所得金額=給与所得ー各種社会保険料の金額の合計額ー配偶者控除ー扶養控除ー基礎控除の額

給与等に対する源泉徴収税額の電算機計算の特例等・第2表/第3表
引用:P355 給与等に対する源泉徴収税額の電算機計算の特例等|国税庁

4.給与の源泉所得税額を計算する

算出した課税給与所得金額をもとに、表4を参照して所得税額を計算します。
給与等に対する源泉徴収税額の電算機計算の特例等・第4表
引用:P356 給与等に対する源泉徴収税額の電算機計算の特例等|国税庁

源泉所得税の納付方法

源泉所得税は、原則として給与を支払った月の、翌月の10日までに納付する必要があります。これは、給与支払いが月初か月末かに限らず、かならず納付期限は「給与を支払った翌月10日」となるので注意しましょう。

源泉所得税を納付する先は、事務所を管轄している税務署です。納付方法は、e-Taxによる電子納付か、最寄りの金融機関もしくは税務署窓口での納付が可能です。電子納付の場合は、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード、コンビニ払いの選択肢があります。納付の際には、所得税徴収高計算書の作成が必要です。

参考:所得税徴収高計算書(納付書)の記載のしかた|国税庁
参考:電子納税 | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム

なお、特例として常時雇用の従業員が10人未満の企業は、年2回、半年分をまとめて納付する特例が認められています。

参考:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁

源泉所得税について法人の立場として注意すること

源泉所得税の納付義務を負う法人・個人事業主は、納めるべき税額に間違いがないよう、注意して源泉所得税の計算・納付を行わなければいけません。以下に、源泉所得税で注意が必要なポイントを解説します。

非課税項目の限度額が適正かどうか

給与所得を計算する際、通勤手当や出張手当など一部の手当は「非課税」として収入から差し引いて計算します。ただし、非課税として認められている手当であってもその全てが給与所得から除外できるわけではありません。

たとえば、通勤手当では自家用車や電車など、通勤方法によって非課税となる限度額が定められています。

【マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額の表】

片道の通勤距離1か月当たりの限度額
2キロメートル未満(全額課税)
2キロメートル以上10キロメートル未満4,200円
10キロメートル以上15キロメートル未満7,100円
15キロメートル以上25キロメートル未満12,900円
25キロメートル以上35キロメートル未満18,700円
35キロメートル以上45キロメートル未満24,400円
45キロメートル以上55キロメートル未満28,000円
55キロメートル以上31,600円

引用:No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当|国税庁

こうした規定の範囲で正しく源泉所得税の計算がなされているか、自社での対応を確認しましょう。また、従業員が正しい通勤経路を申告しているかどうかも、適切な源泉所得税の計算には欠かせません。

支払報酬の抜け漏れはないか

先に説明したとおり、源泉徴収の対象となるのは給与支払いだけではありません。業務委託で支払いをしている個人事業主に対する報酬など、給与ではない支払いに対しても源泉徴収するべきものがあります。

非居住者への給与・支払報酬の源泉徴収と計算

非居住者であっても、国内で役務を提供すると考えられる場合は、給与や支払報酬に源泉徴収が発生するケースがあります。その際、税率は支払の区分によって異なりますが、通常であれば10.21%で計算される源泉所得税であっても、支払先が非居住者の場合は20.42%となる場合があるので注意が必要です。

近年では、リモートワークの推進により、国外に居住する人々と仕事をする企業も増えています。そのような場合、給与や報酬を支払う相手、業務内容、支払の区分によって源泉徴収をするべきかどうかを確認しましょう。

なお、日本と租税条約を締結している国で、当該非居住者が納税を行っている場合は、日本での源泉徴収が免除されるケースもあります。

参考:No.2884 源泉徴収義務者・源泉徴収の税率|国税庁

源泉所得税の計算・納付を正しく行おう

源泉所得税は、給与支払いやその他の報酬を支払っている事業主が、納税者に代わり国に納めなければいけないものです。源泉所得税の計算の際に、どのような収入が課税対象に含まれるのか正しく理解し計算しましょう。また、納付するべき期日に間に合うように、すみやかな業務フローを心がけましょう。

よくある質問

源泉徴収税とはなんですか?

給与を支払う際、企業が源泉所得税と復興特別所得税を天引きし、納税者に代わって国に納付するものをいいます。源泉徴収した税金は、給与支払の翌月10日までに最寄りの税務署に納付します。詳しくはこちらをご覧ください。

源泉所得税と申告所得税の違いについて教えてください

源泉所得税は、給与や報酬の支払いをした者が納税者に変わり納付する所得税を指します。一方申告所得税は、確定申告で所得税額を申告し、納税者自らが納付するものを指します。詳しくはこちらをご覧ください。


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