• 更新日 : 2023年9月29日

サーバントリーダーシップとは?10の特性と企業例、実践方法を解説

サーバントリーダーシップとは?10の特性と企業例、実践方法を解説

サーバントリーダーシップでは、リーダーがメンバーに対して支援・奉仕します。支配型リーダーシップはリーダーが前に立ってチームを牽引するのに対し、サーバントリーダーシップではリーダーは後ろから支え、後押しします。メンバーの自主性が尊重され、社員のモチベーションや生産性、顧客満足度が向上するというメリットがあります。

サーバントリーダーシップとは?

サーバントリーダーシップは、「支援型リーダーシップ」や「奉仕型リーダーシップ」と訳されます。サーバントの語源は使用人や召し使い、奉仕する者と訳される英単語「servant」で、サーバントリーダーシップではリーダーがメンバーに対して支援・奉仕する形でリーダーシップを発揮します。これに対して、一般的なリーダーシップである「支配型リーダーシップ」では、リーダーがメンバーを指揮・統制することでチームをまとめ上げ、進むべき方向へと導きます。

サーバントリーダーシップは、教育について数々の研究を重ねたロバート・グリーンリーフによって提唱され、ビジネスをはじめ医療や行政、教育などに活用されています。

サーバントリーダーシップの特徴

一般的なリーダーシップである支配型リーダーシップでは、リーダーはメンバーの上に立ってチームをまとめ上げ、目標達成を目指します。これに対して、サーバントリーダーシップでは、リーダーがメンバーを下から押し上げる形でチームを動かします。サーバントリーダーシップの特徴として、リーダーがメンバーそれぞれの能力を信じていること、リーダーとメンバーとの間で意思が共有されていること、メンバーがリーダーを信頼して自主的に行動することといった点が挙げられます。

企業におけるサーバントリーダーの役割

企業においてサーバントリーダーは、メンバーの成長や能力開発を促す役割を果たします。チームとしての目標達成を実現しつつ、メンバーの自主性を尊重したサポートを行うことが求められます。具体的には、指示や命令に頼らないで行動できる環境の整備や、必要なリソース・ツールの提供がサーバントリーダーに期待されています。また、メンバーの声に耳を傾けてニーズや問題を理解し、それらに応じた施策を実行することもサーバントリーダーの重要な役割の一つです。こういった役割を果たすことで、サーバントリーダーは企業全体のモチベーションや生産性を向上させ、組織全体の成功に貢献することが期待されます。

マネジメントとの違い

マネジメントとは、業務について指示や命令を与えて相手を管理することです。これに対してサーバントリーダーシップはメンバーの自主性を尊重し、自由に行動できる環境を整えたり、必要な支援を行ったりすることを指します。サーバントリーダーシップのもとでは、従業員は自らの成長や発展に向けて自らの意思で動くことで大きな成果を得て、企業全体の成長や発展につなげることが期待されます。

サーバントリーダーシップに重要な10の特性

サーバントリーダーシップには、10の特性があります。サーバントリーダーシップを理解するためには、これらの内容を知っておく必要があります。どのような性質・特徴なのか、知識を身につけましょう。

1.傾聴(Listening)

傾聴とは、相手が言いたいことをきちんと聞き取れる能力・スキルのことです。サーバントリーダーシップはメンバーを支援・奉仕する形のリーダーシップ制であるため、どのような支援・奉仕を求めているかを聞き取れなくてはなりません。メンバーに寄り添い、考えや意見、悩みなどを聞き取る力が求められます。

2.共感(Empathy)

共感とは、相手の気持ち・心情を自分のものとして受け取れる力のことです。サーバントリーダーシップではリーダーがメンバーに共感し、ともに悩んだり考えたりすることが求められます。

3.癒やし(Healing)

メンバーが抱えている心身のダメージの回復を助ける力が、癒やしです。業務によるもの・業務以外によるものを問わず、メンバーが受けた精神的負担の軽減を図ることがサーバントリーダーシップには求められます。癒やしによってモチベーションがアップし、業務効率の向上も期待できます。

4.気づき(Awareness)

メンバーをよく観察し、些細な変化に気づくこともサーバントリーダーシップでは大切です。気づきには本質を見抜いたり、チームをまとめたりする働きがあります。また、リーダーが自分自身の行動を振り返って、リーダーとしてのあり方や姿勢、何をすべきかといったことを考えることも必要です。

5.説得(Persuasion)

サーバントリーダーシップでは、チームの意志はトップが決めるのではなく、メンバーの同意を得て決まります。上に立つ者・権力を持つ者が服従させるのではなく、説得が行われます。表面的に説き伏せるのではなく、目的なども説明してきちんと納得させることが求められます。

6.概念化(Conceptualization)

チームが一丸となるためには、同じ意識を持つ必要があります。目指す目標や組織における役割、業務遂行の目的などについてメンバーの認識を統一する必要があり、概念化が行われます。

7.先見力、予見力(Foresight)

サーバントリーダーシップには、過去の経験や現在の状況から将来を予測し、必要な準備ができるという特徴もあります。特に現代のような変化が激しい時代においては、このサーバントリーダーシップの特徴が注目されています。

8.執事役(Stewardship)

サーバントリーダーシップでは、リーダーがメンバーに対して献身的に支援・奉仕を行うことで、チームとして優れた結果を出すことにつながります。執事が主人に対して行うような、きめ細かい対応がチームの成果に大きく影響します。

9.人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of People)

業務を遂行する過程において、リーダー・メンバーの成長に各々が深く関わることもサーバントリーダーシップの特徴です。成果だけを評価するのではなく、プロセスも重視することが求められます。

10.コミュニティづくり(Building Community)

チームとして期待されている成果を上げるため、サーバントリーダーシップではメンバー同士が支配型リーダーシップよりも協力し合うことが多くなります。コミュニケーションを多く取り、良好な人間関係を築くことで、コミュニティづくりが図られます。

サーバントリーダーシップのメリット

サーバントリーダーシップは、リーダーのメンバーへの接し方やチームの動かし方など、さまざま点で一般的なリーダーシップである支配型リーダーシップと大きく異なります。企業が支配型リーダーシップをやめてサーバントリーダーシップを取り入れると、どのような利点があるのでしょうか?サーバントリーダーシップのメリットを説明します。

社員のモチベーションが上がる

サーバントリーダーシップの導入は、社員のモチベーションアップに寄与します。サーバントリーダーシップでは、チームとしての目標を達成するために、リーダーはメンバーに対して必要な支援・奉仕を行って自主的な行動を促します。社員は自己実現ができ、また組織の目標に対する意識や責任感も高められます。社員が企業の一員として自分の役割に責任を持ったり、自己肯定感を高めたりすることにつながり、モチベーションアップを図れます。

生産性が向上する

サーバントリーダーシップには、生産性向上をもたらすというメリットもあります。サーバントリーダーシップでは、リーダーがメンバーの自主性を尊重した支援・奉仕を行うことで、リーダー・メンバーの双方が自らの力で成長できます。また、企業の一員としての責任感や愛社精神から、会社の業績向上に貢献したいという思いも育まれます。社員が成長して能力・スキルの向上を実現したり、責任感や会社に貢献したいという意志によってモチベーションを上げたりすることから、企業の生産性向上につながります。

顧客満足度が上がる

サーバントリーダーシップの導入には、企業の顧客満足度が上がるというメリットもあります。サーバントリーダーシップでは、メンバーの自主性を尊重した支援・奉仕によって、リーダーは目標達成に向けてチームを動かします。メンバーは自主性が尊重されることで、意志ややる気が育まれます。顧客の利益を最大化するためにはどうすべきか、自ら考えて行動できるようになるため、顧客満足度の向上が期待できます。

サーバントリーダーシップのデメリット

サーバントリーダーシップには社員のモチベーションが上がる、企業の生産性が向上する、顧客満足度が上がるというメリットがある一方で、デメリットもあります。メリットだけでなくデメリットも理解しなければ、サーバントリーダーシップを正しく理解することはできません。サーバントリーダーシップの2つのデメリットを説明します。

指示待ちの人には向かない

サーバントリーダーシップのデメリットの1つ目は、指示待ちの人には向かないことです。サーバントリーダーシップでは、メンバーの自主性が何より重視されます。リーダーはメンバーの自主性を尊重した支援・奉仕を行い、メンバーはチームが目標を達成するために、それぞれが自主的に行動しなければなりません。自主的に行動できない人、つまり指示待ちの人にはサーバントリーダーシップは向きません。指示がないと動けないような人には、サーバントリーダーシップよりも支援型リーダーシップの方が適しています。

意思決定が遅れる場合がある

サーバントリーダーシップのデメリットの2つ目は、意思決定が遅れる場合があることです。メンバーを支援・奉仕する形でチームを動かすサーバントリーダーシップでは、リーダーの意思だけで方向性を決めることができません。メンバー全員が同じ方向を向くように調整しなければならないため、時間がかかります。そのため意思決定が遅れる傾向があり、ビジネスチャンスを逃すおそれがあることに注意が必要です。

サーバントリーダーシップを採用している企業例

サーバントリーダーシップへの理解を深めるためには、実例を見ることも大切です。サーバントリーダーシップを採用している企業を紹介します。

スターバックスコーヒー

スターバックスコーヒーは、経営危機に陥った際に従業員に対しても会社の状況を説明して意識の共有を図ったことをきっかけに、サーバントリーダーシップを導入しました。当時の社長が掲げた「経営陣よりも現場で働く社員の方が大切である」という考え方に基づき、さまざまな施策を行っています。

株式会社資生堂

資生堂は顧客と接客する店頭スタッフを上位層に位置付け、社長をはじめとする経営陣が下位層として奉仕・支援する形でサーバントリーダーシップを導入しています。商品を販売する店頭こそが企業の主役だと考える現場第一主義を採用し、全社的に店頭販売員を支える体制を整えています。

株式会社サイバーエージェント

サイバーエージェントもサーバントリーダーシップを採用しています。社員一人ひとりにセルフリーダーシップを求めて、自分自身で決断するという経験を重ねて、自ら能力を引き出せるようにしています。

日本に支配型リーダーシップが多い理由

日本人の特性から、日本では支配型リーダーシップを採用している企業が多いです。日本人は自主性よりも協調性を重視する傾向があり、自己の利益よりも組織の利益を優先します。そのため、自分の考えや意志で動くよりも他人の指示で行動する方が得意です。

また、自主性よりも協調性を重んじる日本人の特性から醸成された、共同作業を得意とするような文化的背景も、日本に支配型リーダーシップが多い理由の一つといえます。

サーバントリーダーシップの実践方法

サーバントリーダーシップは、メリットやデメリットを十分に理解した上で導入すべきです。理解し、検討を重ねた末に導入を決定した場合、どのようにすればよいのでしょうか?サーバントリーダーシップの実践方法を紹介します。

部下の意見を否定せず聞く

サーバントリーダーシップでは、リーダーはメンバーの意見をしっかり聞く必要があります。たとえ、自分の意見と違っても、否定せずに耳を傾けなければなりません。サーバントリーダーシップでは、リーダーが自分の意見をメンバーに押しつけるのではなく、全員の意見を聞くことが求められます。リーダーはどのような意見でも言える環境を構築しなければならず、自分のものとは異なる意見や間違っている意見でも否定しないで聞く姿勢が必要です。

部下をほめる習慣をつくる

部下をほめる習慣を持つことも、サーバントリーダーシップでは大切です。ほめられると人は自己肯定感が上がって自信が持てるようになり、サーバントリーダーシップで重視される自主性が育まれます。ほめられることで、さらに能力が引き出されるという効果も期待できます。

部下が自分自身で仕事の目標を考える

サーバントリーダーシップの実践においては、部下が自分自身で仕事の目標を考えるように促すことも大切です。リーダーによる指示・命令・押しつけではメンバーの自主性が無視されるため、意欲を持って業務に取り組むことができません。自分自身で目標を設定することで自主性が尊重され、意欲だけでなく責任も持って取り組めるでしょう。

2つのリーダーシップのうち自社にはどちらが向いているか、よく検討しよう

サーバントリーダーシップでは、リーダーがメンバーに対して支援・奉仕し、チームとして目標達成を目指します。支配型リーダーシップではリーダーが前に立ってチームを牽引するのに対し、サーバントリーダーシップではメンバーの自主性が尊重され、リーダーがメンバーを後ろから支え、後押ししてチームを動かします。サーバントリーダーシップには、社員のモチベーションや生産性、顧客満足度が向上するというメリットがあります。

一方、サーバントリーダーシップには指示待ちの社員には向かない、意志決定が遅れる場合があるというデメリットがあります。また、導入にあたっては準備が欠かせません。日本では、まだ多くの企業が支配型リーダーシップを採用しています。サーバントリーダーシップを導入する際は慎重に判断し、入念に準備してください。


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