• 更新日 : 2024年12月19日

育休中も住民税は支払う?納付や節税の方法をわかりやすく解説

育児休業中で給料の支払いがなくても、住民税の納付は必要です。しかし、給料天引きできない住民税はどうやって支払えばいいのでしょうか。

本記事では、育児休業中の住民税について解説します。育児休業中の住民税の納付方法や

育休終了後の手続き、住民税の支払いが難しい場合の対応なども紹介しますので、本記事を参考にして手続き漏れがないように対応しましょう。

育休とは

育児休業(以下、育休)とは、会社員などが原則1歳未満の子どもを養育するために取得できる育児・介護休業法で定める休業制度です。要件を満たした従業員から取得の申し出があった場合、企業は拒否できません。

育休期間は原則子どもが1歳になるまでですが、1歳のとき保育所が見つからない場合などは「1歳6ヶ月になる日」まで、子どもが1歳6ヶ月のとき同様の場合は「2歳になる日」まで期間延長できます。

日雇い労働者は対象になりませんが、無期雇用のパートタイム社員(短時間労働者)や所定の要件を満たす契約社員(有期雇用労働者)も対象です。

育休の期間中、給料は支払われないことが多い

育休中の給料の有無は企業によって異なりますが、給料は支払われないことが一般的です。仕事をしていない期間については給料の支払い義務はないという「ノーワーク・ノーペイ」の原則があるためです。

休業中の従業員の生活を支えるために、一定要件を満たせば雇用保険から育児休業給付金が支給されます。休業中に給料が支払われると、育児休業給付金は出ません。ただし、企業が任意に育休中の給与を支払っても問題はありません。

ボーナスについては、育休中でも支払われる可能性があります。企業の定めたボーナス支給要件が「査定期間の勤務」と「支給月の在籍」ならば、査定期間は勤務し支給月に在籍中の人は要件を満たすことになるからです。

育休中でも住民税の納税は必要

育休中で給与収入がなくなっても、前年度の収入があれば住民税の納税は必要です。会社員の住民税は、前年度の所得に対して今年度の給与から源泉徴収されるためです。

一方、所得税や次の社会保険料などは育休中に支払う必要はありません。

所得税や雇用保険料については、給与所得がないため支払いは発生しません。育休中の健康保険料や厚生年金保険料については、免除制度が設けられています。勤務先が日本年金機構に免除申請すれば、社会保険料の支払いは必要ありません。

厚生年金保険料を支払わないと将来の年金額が減るのではないかと不安に感じる人もいるかもしれませんが、育休前と同額の保険料を支払ったものとして年金額を計算するため安心です。

育休中の住民税の納付方法

会社員の住民税は毎月の給料から源泉徴収されますが、育休中の住民税はどうやって納付するのでしょうか。納付方法は、育休の開始時期によって異なります。開始時期ごとに納付方法を解説します。

なお、前年の1月から12月までの所得に対する会社員の住民税が給与から源泉徴収されるのは、当年6月から翌年5月の給与です。会社員の給与から源泉徴収する方法を「特別徴収」、納付書などを使用して直接住民税を徴収する方法を「普通徴収」と呼びます。

1月~5月に取得した場合

1月から5月の間に育休を開始した場合、育休前に支給される最後の給料から5月分までの住民税が一括して特別徴収されます。たとえば、2月から育休を開始する場合(育休前の最後の給料が2月に支給される場合)、2月から5月分の住民税が給料から一括控除されます。

6月以降の住民税は、給与控除できないため普通徴収です。6月に居住地の自治体から「住民税決定通知書」と「納付書」が送付されるので、次の方法で納付します。

  • 金融機関やコンビニエンスストア、市区町村の窓口で現金納付
  • ペイジー(スマートフォンやパソコンで支払いする決済サービス)による納付
  • 口座振替による納付(事前に口座登録が必要)
  • クレジットカードやスマートフォン決済、地方税ポータルシステム(eLTAX)による納付 など

6~12月に取得した場合

6月から12月の間に育休を開始した場合、給与からの特別徴収ができないため普通徴収となります。前述の納付方法で住民税を支払います。

なお、特別徴収と異なり普通徴収の支払い回数は年4回です。6月と8月、10月、翌年1月の4回分の納付書が居住地の自治体から送付されます。

育児休業給付金に住民税はかかる?

育児休業給付金には、住民税や所得税はかかりません。育児休業給付金は所得とみなされないため、非課税です。中学生以下の子どもを養育する人に支給される「児童手当」についても同様です。育休中だけでなく、復職後も児童手当には住民税や所得税はかかりません。

なお、育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額(原則ボーナスを除いた直近6ヶ月間の賃金総額を180日で割った金額)」を使用して次の通り計算します。

  • 支給開始後180日目まで:支給額=休業開始時賃金日額×休業日数×67%
  • 支給開始後181日目以降:支給額=休業開始時賃金日額×休業日数×50%

当初6ヶ月の給付額は育休前の2/3、後半の半年は半分です。育休前の給料より少ない金額ですが、所得税や社会保険料が控除されないため手取り金額の差は縮まります。なお、休業開始時賃金日額には、上限額(1万5,690円)と下限額(2,869円)が設けられているので注意しましょう。

育休中の住民税の支払いが難しい場合

育休中は無給になるため、育児休業給付金を受け取っても手取り収入は減少するでしょう。住民税の支払いが困難になった場合の対応について解説します。

市区町村に相談すると支払いを猶予してもらえる場合がある

育休中に住民税の支払いが困難になった場合、居住地の市区町村役場に相談してみましょう。市区町村長などが「納税困難」と認めれば、育休中の1年以内の期間に限り住民税の支払いが猶予されます。

ただし、猶予された住民税は、職場復帰後に支払いが必要です。納付が猶予されるだけであって免除されるわけではありません。猶予期間に対する延滞金の加算もありますが、市区町村長などの判断によって免除されることもあります。

住民税の支払い猶予は本人の申し出が前提となるため、納付の見通しが立たないときは早めに相談しましょう。

育休中に効果的な節税方法

一般的に育休中は無給のため税金はかかりませんが、以下の方法で節税もできます。

それぞれの節税方法について解説します。

生命保険料控除などを活用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)や生命保険に加入すると、掛け金の全部または一部が所得控除されます。育休の取得によって年間所得は減少しますが、所得控除を活用すれば育休前または復職後の所得をさらに減らして節税できます。

iDeCoでは掛け金の全額(小規模企業等掛金控除)、生命保険では掛け金のうち最大12万円(生命保険料控除)を所得から控除できます。

配偶者控除を申告する

育休によって、配偶者の所得税や住民税が安くなることもあります。収入が減少して年間所得が次の金額になると、所得1,000万円以下の配偶者が配偶者控除または配偶者特別控除を受けられるためです。

  • 配偶者控除:育休取得者の所得が48万円以下
  • 配偶者特別控除:育休取得者の所得が48万円超133万円以下

配偶者控除や配偶者特別控除は申告しないと適用されないため、年末調整などで忘れずに申告しましょう。

育休終了後の住民税の納付手続き

育休中の特別徴収(給料からの天引き)で住民税を支払っていた場合、育休終了後も納付方法は変わらないため特段の対応は不要です。育休中に普通徴収していた場合の対応について解説します。

育休中に普通徴収だった場合は特別徴収に切り替える

育休中の普通徴収で住民税を支払っていた場合、育休終了後に特別徴収への変更手続きが必要です。勤務先が納付先の自治体に「特別徴収切替届出」を提出して変更します。

育休中の住民税の取扱い育休取得者に正しく伝えましょう

住民税は前年の所得に対して課税されるため、育休中の従業員にも住民税がかかります。納付方法は、育休の開始時期によって特別徴収または普通徴収です。育休中の住民税支払い方法が普通徴収だった場合、育休終了後に特別徴収への切り替え手続きが必要です。

育休中に給与収入がなくなることに不安を感じる従業員もいます。育児休業給付金の支給や社会保険料の免除、住民税の納付方法などを正しく伝え、従業員が安心して育休取得できるように配慮しましょう。


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