• 作成日 : 2018年12月18日

在宅勤務等テレワーク導入にあたっての実務上の注意点とは?

在宅勤務等テレワークにおける労働時間管理・残業時間の把握

在宅勤務等テレワークの導入にあたり、労働時間の管理や業務の進捗管理、人事・労務管理など、実務上の注意点は多岐にわたります。
まず、労働時間の管理についてですが、これには、次の2つの視点が必要です。

1.始業・終業時刻の管理

始業・終業時刻の報告や記録の方法をあらかじめ定める必要があります。始業・終業時刻を通常と変更することもあり得るでしょう。

報告・記録方法の例

  • Eメール・チャット等での報告:担当部署が一括で記録共有できる、記録時間の証跡が残る等の特長があります。
  • 電話での報告:使い慣れている、時間がかからない、口頭コミュニケーションにも有効等の特長があります。
  • 勤怠管理ツール:管理が容易。労使双方にとって負荷が少ない等の特長があります。

注意点

通勤時間削減により、早めに業務を開始する等も考えられるでしょう。始業・終業時刻の変更を認めるのであれば、そのためのルールを定めておきます。また、テレワークの場合、自宅等で一人で仕事をすることになるため、休憩時間を取らなかったり、深夜や休日に労働するといったこともあります。労働者の健康管理のためにも、休憩や休日をきちんと取得するよう指導を徹底するようにしましょう。
フレックスタイム制や裁量労働制などを適用する場合には、導入にあたり必要な手続きを別途行う必要があります。

2.在席・離席確認

管理者・労働者とも相手の姿が見えないので、「勤怠管理が難しい」「さぼっていると思われるのではないか」「評価が下がらないか」といった心配も出てくるのではないでしょうか。Eメールやチャット、労務管理ツールでの管理を考えましょう。パソコンの稼働画面を常時確認するツールや定時連絡などの方法もあります。お子さんの送り迎えなどで業務中断を認める場合なども管理ツールでその旨を連絡するといったルールを定めておくなど、労働時間管理や情報共有のあり方もあらかじめ定めておく必要があります。

業務上の注意点

在宅勤務等テレワークの業務面の注意として、次のような点が挙げられます。

1.業務遂行状況等の管理

業務の遂行状況の的確な把握・可視化は、他の従業員との協働や上司の業務管理のために必須です。スケジュール管理ツールやワークフロー(業務手続きの図式化)などの活用を検討すべきです。このような管理手法は、在宅勤務等テレワークにとどまらず、通常のオフィス勤務にも役立つものです。もちろん、残業削減の効果も期待できるでしょう。

2.情報セキュリティー対策

厚生労働省や総務省によりセキュリティー対策のガイドラインが示されています。システム担当者が現場とが事前にすり合わせを行い、自社の実情を踏まえて対策を検討しましょう。

<参考>
厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革―テレワークの導入・運用ガイドブック」第5章、第6章
「テレワーク導入のための労務管理等Q&A 集」Q4以下

3.費用負担、安全衛生対策等の注意点等

業務に係る費用負担については、会社が機器を貸与、通信費を負担するのが通例かと思われます。もし従業員負担とする場合は、その旨や負担範囲などを就業規則で明記する必要があります。安全衛生対策として労働安全衛生法令に沿った環境を整えることも必要です。具体的には、サテライトオフィスの作業環境の確認、VDT 作業(パソコンなどディスプレイやキーボード等による機器操作)のガイドライン順守などです。

人事・労務管理上の注意点

人事管理面でも注意点が複数あります。

1.業績評価・人事管理

当然のことですが、会社に出社する従業員と公平な取り扱いをするのが原則です。諸般の事情から特別の対応をするのであれば、労働組合等労働者の代表やテレワーク希望者の意見も十分に聞いた上で、ルールを確立すべきです。また、その上で管理者教育などで周知徹底が必要です。

2.コミュニケーション上の問題への対応

最近のICT 技術で様々なツールが活用できます。自分と上司の端末に同時に進捗状況が表示される仕組みや、オンライン会議チャットなどの仕組みです。物理的距離が離れていることで、コミュニケーションに注意を払うので、かえって良好な関係が築ける、という声も多いようです。

3.過重労働対策、逆にルーズな働き方対策など

これも前述の2と同様の問題です。ICT ツールの活用により業務遂行状況を「見える化」することで、生産性の向上、離れた場所の勤務者同士のチームワークを保っている事例は多数あります。

在宅勤務等テレワークの導入事例から

厚生労働省では、在宅勤務等テレワークの好事例集を毎年刊行し、テレワーク大賞などの表彰も行っています。
ここでは、平成29年度厚生労働省特別奨励賞受賞の事例を2件ご紹介します。

1.従業員44人のクオールアシスト社:会社設立時から、通勤が困難な重度障がい者を在宅雇用という形で継続雇用。テレワークは大企業だけが活用できる制度ではないことを証明しています。
2.日本航空:テレワーク利用者にすべてフレックスタイム制も適用。残業削減効果が顕著。移動時間などの削減で、空いた時間をジム、医療診察、セミナー等自己啓発等に有効利用されているそうです。

まずはスモールスタートから

在宅勤務等テレワークについて様々な注意点をご紹介しましたが、いきなり会社全体で一斉スタートとなると、ハードルが高いかもしれません。まず少数の希望者を対象に、月数回程度の試行から始めて、問題点を潰しながら適用範囲を拡大していくなどが現実的でしょう。
東京近辺の方であれば飯田橋に「東京テレワーク推進センター」があります。テレワークがどんなものか、デモンストレーションなどで体験することができます。一度、体感してみてはいかがでしょうか。

<参考>
厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A 集」
「テレワークではじめる働き方改革」( 平成28年12月発行)
「テレワークモデル就業規則」
「平成29年度輝くテレワーク賞事例集」
「テレワーク活用の好事例集(平成28年度)」
厚生労働省委託事業テレワーク相談センター「テレワークの効果に関する資料」ダウンロードページより
一般社団法人日本テレワーク協会ホームページ

<関連記事>
給料格差を聞かれたらどうする?「働き方改革法」で労務が押さえるべき4つのポイント
スタートアップこそ取り入れるべき!テレワークを導入したい5つの理由


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事