• 作成日 : 2023年1月13日

社会保険において扶養が外れる条件とは?外れるタイミングや手続きも解説!

社会保険において扶養が外れる条件とは?外れるタイミングや手続きも解説!

会社員の配偶者がパートタイマーで働いている場合、収入によって扶養から外れて所得税の控除を受けられなくなったり、社会保険の加入義務が生じて新たに保険料負担をしなければならなくなったりすることがあります。

いわゆる「〇〇円の壁」です。

本稿では、扶養から外れる条件やその際に必要となる手続きの他、外れた場合のデメリット・メリットについてわかりやすく解説します。

社会保険において扶養が外れる条件とは?

内閣府が2022年6月14日に公表した「男女共同参画白書 令和4年版」によると、妻がパートタイム労働(週35時間未満就業)をしている世帯数は昭和60年(1985年)以降、約200万世帯から約700万世帯へ増加しており、令和3年(2021年)には691万世帯になっています。

収入を一定金額以下に抑えるために、就業時間や日数を調整する「就業調整」をしている妻の割合についても調査しており、所得が50万~99万円の人の57.5%、所得が100万~149万円の人の54.4%が意図的に就業調整していることがわかりました。

「就業調整」をしている妻の割合

引用:男女共同参画白書 令和4年版~特集編 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~|内閣府

白書では、共働き世帯の妻が就業調整を行う背景として、税制上の配偶者控除、社会保険における適用から外れるための「年収の壁」があると述べています。

実際に共働き世帯でパートをしている女性の多くが、「年収の壁」に強い関心を持っています。

「年収の壁」の種類は税制や社会保険制度の改正によって増え、共働き世帯の妻が対象となるもの以外も含めると、現在は以下のようなものがあります。

  • 本人の所得に対して住民税が課税される「100万円の壁」
  • 本人の所得に対して所得税が課税される「103万円の壁」
  • 月額賃金や事業所の規模等によって社会保険の加入義務が生じる「106万円の壁」
  • 配偶者の扶養から外れて社会保険の加入義務が生じる「130万円の壁」
  • 配偶者特別控除の額が段階的に縮小開始となる「150万円の壁」
  • 配偶者特別控除がなくなる「201万円の壁」
  • ここでは「103万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」を取り上げます。

103万円の扶養条件

「103万円の壁」は、かつては税制上で配偶者控除がなくなり、配偶者特別控除が段階的に縮小されるボーダーラインとなっていました。

しかし、2018年以降は税制改正によって年収103万円を超えても150万円以下であれば、配偶者特別控除が受けられるようなっています。

このことから、現在「103万円の壁」は所得税が課税されるかどうかのボーダーラインを意味します。

ちなみに103万円は、基礎控除48万円と給与所得控除の最低額55万円を合算した金額です。年間収入が103万円以下の場合、2つの控除を差し引くとゼロになることから、所得税は生じないという理屈です。

130万円の扶養条件

「130万円の壁」は、配偶者の扶養から外れて社会保険の加入義務が生じるボーダーラインです。

これについての詳細は後述します。

150万円の扶養条件

「150万円の壁」は、配偶者特別控除の額が段階的に縮小されるボーダーラインです。

配偶者特別控除は、配偶者に48万円(2019年分以前は38万円)を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられない場合でも、配偶者の所得金額に応じて一定の金額の所得控除を受けられる制度です。

年収150万円までは、配偶者特別控除を満額の38万円まで受けられますが、納税者本人の合計所得額が900万円以下で配偶者の年収が150万円を超えると、36万円から3万円の範囲で控除額が段階的に減ります。

控除額は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は消失します。

150万円は、配偶者特別控除の満額38万円で控除できる配偶者の所得上限額95万円と給与所得控除55万円を合算した金額です。

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社会保険の扶養から外れるタイミング

「103万円の壁」と「150万円の壁」は税制上のものですが、「130万円の壁」は社会保険制度上のものです。

本来、社会保険である健康保険などの医療保険と厚生年金などの公的年金は国民皆保険であり、すべての国民が被保険者として加入する義務があります。しかし、養育の対象となる子どもや、夫の所得の稼得に貢献する妻については加入義務を免除しています。これが社会保険での被扶養者の仕組みです。

しかし、妻のパートの年収が130万円以上になると扶養から外れ、原則に従って妻自身が社会保険に加入する必要が生じます。加入すれば、当然ながら健康保険料と厚生年金保険料の納付義務が発生します。

また、年収130万円以下であっても「106万円の壁」によって社会保険の加入義務が生じることもあります。

具体的には、以下の要件すべてに該当する短時間労働者が対象となります。

  1. 所定労働時間20時間以上
  2. 月額賃金8.8万円以上(年額約106万円)
  3. 雇用期間が2ヵ月を超えて見込まれること(通常の被保険者と同じ)
  4. 被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所で雇用されていること

なお、4については2024年10月から事業所の規模が「50人超」に改正される予定です。扶養から外れるパートなどの短時間労働者は、今後さらに増えるでしょう。

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社会保険の扶養から外れた場合の手続き

「130万円の壁」や「106万円の壁」を超えて夫の扶養から外れると、社会保険に加入する義務が生じますが、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

雇用主側における手続き

雇用主側については、夫の勤務先とパートで働く妻の勤務先の双方で手続きが発生します。

夫の勤務先では、妻を扶養から抜く手続きを行います。「健康保険被扶養者(異動)届」に所定の事項を記入し、妻の健康保険証(被保険者証)とともに管轄の年金事務所(または健康保険組合)に提出します。

妻の勤務先では、健康保険と厚生年金保険の加入手続きを行います。「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を管轄の年金事務所(または健康保険組合)に提出します。

いずれも、提出期限は事由発生日から5日以内です。

従業員側の手続き

上記のようにパートで働く妻の勤務先だけでなく、夫の勤務先でも手続きが生じます。

妻の勤務先のほうは、社会保険の加入要件に該当したことを把握できますが、夫の勤務先ではわかりません。

したがって妻が扶養から外れる要件に該当した場合、夫は勤務先に被扶養者削除を申し出る必要があります。

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社会保険の扶養から外れた場合のメリット・デメリット

前述の内閣府「男女共同参画白書」では、共働き世帯の妻が就業調整をしている現状を問題視し、さらなる取り組みが必要であると述べています。

当事者としては税金や社会保険料の負担を回避したいわけですが、扶養から外れることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

健康保険には、扶養されている立場では支給されない保険給付があります。特に注目すべきものとして、傷病手当金が挙げられます。

業務外の病気やケガの療養中で働くことができず給与の支払いがない場合に、その間の生活保障として支給されるものです。

1日当たりの金額は、支給開始日以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額を30で除した金額、つまり概ね月給の3分の2であり、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月まで受給することができます。

乳ガンや子宮ガンの発生率は、30代以降に増加する傾向があるとされています。長期療養するリスクを考えると、パートでの給与の3分の2が支給されるのは大きなメリットといえるでしょう。

デメリットは税金や社会保険料の負担が生じ、給与の手取り額が減ることでしょう。

しかしながら、これらは国の税や社会保障制度の仕組みであり、特に社会保険料については勤務先が半分負担してくれていることも考慮すべきでしょう。

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社会保険で扶養を外れる条件を知っておこう!

共働きの配偶者が扶養から外れて所得税の控除を受けられなくなったり、社会保険の加入義務が生じたりする「〇〇円の壁」について解説しました。

就業調整を希望する人は少なくありませんが、制度の仕組みとメリット・デメリットをよく理解した上で判断することが大切です。

よくある質問

社会保険において扶養が外れる条件には、どういったものがありますか?

年収106万円の壁や、130万円の壁などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険の扶養はどういったタイミングで外れますか?

妻のパートの年収が130万円以上になると扶養から外れます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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