- 更新日 : 2023年10月12日
圧迫面接とは?目的はなに?応募者と企業としての対処法
圧迫面接とは企業が応募者に対して高圧的、強迫的な態度を取りながら面接する手法です。企業側としては応募者の能力を確認する目的で実施することが一般的ですが、応募者目線で見ると「面接官が突然キレた」「険悪な雰囲気だったのになぜか受かった」など相手の意図を図りかねるものとして受け取られることが考えられます。この記事では圧迫面接の概要、対処法について解説します。
目次
面接の手法としての「圧迫面接」とは?
圧迫面接とは、面接官が応募者に対して威圧的な態度を取ったり、回答しづらい質問をしたりする面接手法です。例えば応募者の発言を批判し続ける、選考と関係ない質問を行うなど、応募者へ圧力をかける言動を行うことを圧迫面接と言います。
近年ではパワハラ防止法の施行に伴ってコンプライアンス意識の向上が推進されており、圧迫面接を実施する企業は減少しているという見方が一般的です。
圧迫面接を企業が行う理由・目的
圧迫面接を実施する企業は応募者の人柄や対応能力などを確認する目的で威圧的な対応を取っている場合があります。圧迫面接に直面した際に慌てず対応するには、企業や面接官の意図を推測した言動を心がけることが大切です。
コミュニケーション力があるかどうかを判断する
応募者に対して無愛想、怒っているような対応を取る面接官は、就職後に上司や取引先から厳しい対応を取られても問題なくコミュニケーションを図れる能力があるか確認している場合があります。例えば営業職やサービス業などでは高圧的なクライアントを相手にすることがあり得るので、厳しい状況で適切に対応できるか見ていると考えられます。
その他業種でも、ストレスがかかる状況下で話す機会がある企業では圧迫面接を通してコミュニケーション力を見ていることが考えられます。
ストレス耐性をチェックする
従業員に体力的、精神的なストレスがかかることが多い企業では、入社後にすぐ離職してしまわないかを確認する目的で圧迫面接を行う場合があります。応募者の発言を無視又は否定したり、威圧的な態度を取ったりするなどの対応は応募者のストレス耐性を確認する目的で実施されることが一般的です。企業によっては入社後の業務に対応できそうな応募者を選別するために面接で圧力をかける場合もあります。
応募者の本音や素の姿を確かめる
応募者が準備してきた面接対策ではなく、本音を引き出したいという目的で圧迫面接を実施することがあります。面接対策の本やウェブサイトに無いような質問を行う面接官は、応募者に揺さぶりをかけて素の考えを引き出そうと考えていることが一般的です。
危機・難しい場面での対応能力を見る
面接時に選考と関係ない質問をする、応募者の発言を無視するなどの対応を取る面接官は厳しい状況下における対応能力を見ていることが一般的です。業務内容が不定期に変化する、業務領域が広い仕事などでは、自主的に考えて仕事を進められる能力があるかを見る目的で圧迫面接が行われることがあります。
圧迫面接の具体例 – どういった対応が圧迫になる?
圧迫面接を実施する企業では、応募者に対して否定的又は無関心な反応を返し続けることがあります。企業によって圧力のかけ方や意図は異なりますが、一般的には以下のような対応を取る場合に圧迫面接だと判断されやすいです。
選考とは関係のない質問を行う
採用選考に関係ない質問を行う場合、応募者の本籍や家庭環境など特定の内容について聞くことは就職差別につながるおそれがあります。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では応募者の適性、能力に基づいた基準で採用選考を行うように通達されており、公正な採用選考を行うことが必要とされています。
応募者の発言をすべて否定・批判する
応募者の発言を否定、批判することは圧迫面接に該当し得る対応です。例えば志望動機が応募業種と合っていない、自己PRの内容に具体性がないなど応募者の発言をすべて否定し、ストレス耐性や対応能力を見ることは圧迫面接に該当します。
また、返答内容が曖昧である、面接官の価値観と合わないといった理由で批判的な発言をした場合も圧迫面接と解釈されることが考えられます。
応募者の人格や能力を否定する
応募者に対して「その考え方はうちでは通用しない」「あなたが学校で学んだことは当社では役に立たない」など人格、能力を否定する発言は圧迫面接になります。応募者の思想信条、学歴や資産状況などに関する発言は就職差別につながる恐れがあるので避けるべきです。なお、人格の否定が原因でうつ病等になった場合、民法に定める不法行為として慰謝料や損害賠償が発生する場合もあるため念頭に入れておきましょう。
応募者の発言を無視もしくは沈黙する
応募者の発言に対して言葉や相槌を返さない、応募者の方を見ないなど無関心な対応を取ることは圧迫面接で用いられる手法のひとつです。意図的に行う場合はストレス耐性や対応能力を見ることが主な目的になりますが、面接官の人柄や能力などが理由で意図せず威圧的な印象を与えてしまう場合もあります。
威圧的な態度やイライラした態度を取る
面接官が怒った印象を与える口調で話している、肘をついて会話しているなど威圧的な態度を取ることは圧迫面接に該当する行為です。応募者の対応能力やコミュニケーション力を見る目的で行うことが一般的ですが、面接官の表情や声量などによっては意図せず威圧的な態度に見えてしまうことも考えられます。
大きな声で怒鳴る
応募者に対して大声で怒鳴る行為は圧迫感を与える要因になります。応募者が余程挑発的、又はそう捉えられる発言をしていない限り、面接中に怒鳴ることは一般的に非常識な行為です。仮に応募者として面接で怒鳴られた場合、自身の発言内容や振舞いをよく考えてみましょう。
圧迫面接はそもそもやってよい?違法ではない?
意図的かどうかにかかわらず、圧迫面接を行うこと自体は法律上問題ありません。ただし、面接内容に就職差別につながる言動が含まれていた場合は不法行為(民法709条)に該当します。圧迫面接によって応募者に損害が生じた際には慰謝料、損害賠償を請求されることが考えられます。
また、面接時にセクハラに該当する言動を取った、性別によって異なる採用選考を実施した場合等には男女雇用機会均等法違反を問われることがあります。
なお、圧迫面接そのものがパワハラであるという言説もありますが、パワハラ(パワーハラスメント)が成立する定義として以下の要素が挙げられます。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
これら3つの要素を全て満たすものがパワハラに該当するため、必ずしも圧迫面接=パワハラになるとは言い切れません。
参考:均等法Q&A|厚生労働省
面接官は意図せず圧迫面接になっていないか注意
企業側に圧迫面接の意図がない場合でも、面接官の言動や表情などから、応募者には圧迫面接であるように解釈されるケースがあるようです。例えば発言内容を受け止めて次の質問を考えている所を無視されていると誤解され、圧迫面接だと思われることがあります。面接官の性格による問題としてリアクションが薄い、早口で話す等の対応が威圧的に見えてしまうことも考えられる点には注意が必要です。
圧迫面接への対処法
圧迫面接を受けることになった場合、落ち着いて対応できるように回答を準備しておくことが重要になります。意図的に圧迫面接を実施している企業は応募者の反応や回答内容を見ているので、質問に応じて回答を考えられるように準備することも対策として有効です。
企業によっては面接官が独断で圧迫面接を実施しており、採用担当者が実態を把握できていないケースもあります。ここでは、圧迫面接が明らかになった場合に取るべき対応を紹介します。
応募者側の対応
応募先の企業で圧迫面接を受けた際には、まず明るい表情を作って回答することでコミュニケーション力や対応力をアピールできるよう心がけましょう。回答内容に対する指摘や否定を繰り返された場合は応募者の考え方や対応能力などを確認していると考えられるので、冷静に対応できるように回答を準備しておくことが大切です。回答が困難である場合は面接官が述べた内容から質問の意図を推測、回答することで対応能力をアピールできる場合があります。
なお、圧迫面接を受けて今後の選考が不安になった、精神的な負担が大きいと思った場合などには選考を辞退しても一般的に問題はないです。ただし、辞退を申し出る際には基本的に面接が終了してから伝えることがマナーとされています。
圧迫面接が行われていることを企業が把握した場合の対応
面接官の独断による圧迫面接を止めたい場合、圧迫面接の問題点を採用担当者から面接官に伝えて取りやめるよう促すことが一般的です。しかし、面接官を務めている人物が採用担当者より高い役職であるケースでは採用担当者が行える対応は相当限られてきます。
できる場合は採用担当者が面接に同席し、内容を録音、録画しておくことをおすすめします。面接の様子を自社内で共有することで面接内容の問題点を客観的に把握できる場合があります。
しかし、経営者の方針で圧迫面接を実施していたり、経営者より発言力を持っている役員が採用担当者を務めていたりするケースでは対策が困難です。早期解決が困難である場合、圧迫面接になり得ることを応募者へ事前に伝えておくようにすると企業イメージの維持が見込めます。
圧迫面接のメリット・デメリットを適切に理解する
圧迫面接は応募者のコミュニケーション能力やストレス耐性などを確認する意図で行われるものです。圧迫面接を行う目的は企業によって異なっており、入社後に早期退職するような事態を防ぐ目的で圧迫面接が実施されるケースも考えられます。しかし、応募者にプレッシャーをかけたことで内定後に辞退を申し出られるリスクもある点には注意が必要です。また、圧迫面接は企業イメージの低下はもちろん、法的リスクに発展する可能性もあります。圧迫面接にならないよう言葉を選び、丁寧に面接を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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