• 更新日 : 2024年7月19日

インテグリティとは?意味や理論をわかりやすく解説!

インテグリティとは、誠実さや高潔さを持ち、自分の信念に忠実に行動することを意味します。近年、ビジネスにおいても注目されている状況です。

本記事では、インテグリティの語源、ドラッカーの定義、データインテグリティとの違い、インテグリティがない人の特徴、インテグリティが注目されている背景、インテグリティを得るための6つの資質、インテグリティに関連する「インテグリティマネジメント」、インテグリティを体現している企業例についてわかりやすく解説します。

インテグリティとは?

インテグリティとは、誠実さや高潔さ、正直さなどの倫理的価値を持ち、自分の信念や原則に忠実に行動することを意味します。ビジネスや人間関係において信頼を築くために不可欠な要素であり、特に管理職や経営者に求められる資質として注目されています。インテグリティのある人は、言葉と行動が一致し、自らの言動に責任を持つことが特徴です。

以下で、インテグリティの語源やドラッカーの定義、その他のインテグリティとの違いなどを解説します。

インテグリティの語源

インテグリティ(Integrity)の語源は、ラテン語の「Integer」だといわれています。「全体的」「完全な」「健全」といった意味を持ちます。日本語では、高潔、誠実、清廉、完全な状態、無傷といった意味です。

インテグリティに関するドラッカーの定義

ピーター・ドラッカーは、インテグリティが組織の成功に不可欠であり、その欠如は組織の腐敗を招くと警告しています。また「インテグリティが組織のリーダーやマネジメントにとって決定的に重要な資質である」と述べていますが、その定義は難しいと認めているのも特徴です。

また著書においては、インテグリティの欠如した人の特徴を例示し、逆説的にインテグリティの重要性を浮き彫りにしました。ドラッカーの理想とする上司像は、陰日向のない一貫した信念を持ち、誠実で言動が一致し、向上心のある人です。

データインテグリティとの違い

データインテグリティとは、データが完全かつ一貫性があり、正確であることを意味し、データ完全性とも呼ばれます。情報処理の分野で使われる用語で、すべてのデータが揃っており、欠損や不整合がないことを保証します。

製薬業界におけるデータインテグリティとの違い

製薬業界におけるデータインテグリティとは、製薬業界におけるデータ管理の厳格化を指す概念です。米国FDAや欧州EMAなどの規制当局が提示するALCOA原則、およびCCEAに従ったデータが求められます。データインテグリティは、データの生成から廃棄まで、すべてのライフサイクルで確保されるべきものです。

スポーツインテグリティとの違い

スポーツインテグリティとは、スポーツがさまざまな脅威により欠けるところなく、価値ある高潔な状態を指します。スポーツの価値を脅かすドーピングや違法賭博、八百長、暴力、スポーツ団体のガバナンス欠如といった問題から、スポーツの価値を守るという意味でヨーロッパを中心に用いられるようになり、その言葉と概念、その名の下で国内外における活動が展開されるようになっています。

インテグリティがない人の特徴

インテグリティがない人の特徴を、ドラッカーは以下のように挙げています。

  • 人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者:インテグリティがない人は、他人の弱点や欠点に目を向けることが多く、ポジティブな側面を見逃しがち
  • 何が正しいかよりも誰が正しいかに関心を持つ者:インテグリティがない人は自分や他人の立場を優先することが多い
  • 人格よりも頭脳を重視する者:インテグリティがない人は、知識やスキルを重視し、人間性や道徳的な側面を軽視する特徴がある
  • 有能な部下を恐れる者:インテグリティがない人は、有能な部下を脅威と感じ、自分の地位や権限を守ろうとする
  • 自らの仕事に高い基準を求めない者:インテグリティがない人は、適当に仕事をこなす傾向がみられる

これらの特徴を鑑みると、インテグリティを持つ人は誠実さを大切にし、模範を示す存在といえるでしょう。インテグリティはビジネスパーソンにとって不可欠な資質であり、信頼関係の構築や公正な経営にも影響を与えます。

インテグリティが注目されている背景

近年、なぜインテグリティがビジネスで注目されるようになったのでしょうか。ここでは、5つの背景をご紹介します。

情報拡散によるリスク回避のため

近年インターネットやSNSの急速な発展により、情報の拡散速度と範囲は劇的に向上しました。企業に倫理的な問題が少しでも発生すれば、即座に拡散され、イメージの低下や顧客の信頼喪失につながる可能性が高いです。そのため、現代の企業にとって、インテグリティを意識した経営は必須といえます。

コンプライアンス経営の実践のため

1990年代から、年功序列から成果主義へとシフトする動きが始まりました。しかしながら、業績によって評価される成果主義が過度に進んだ結果、不正や不祥事が露呈したり、一時しのぎの対応で信頼を失ったりするなど、悪影響が生じることも事実です。

こうした状況の反省もあり、企業経営やマネジメントにおいて、インテグリティが注目されるようになりました。

働き方改革によって顕在化した問題を解決するため

インテグリティの重要性が増した背景には、働き方改革の影響もあります。働き方改革とは、労働環境を変革し、誰もが働きやすい社会を目指す試みです。しかし、過渡期に多くの問題が浮き彫りになりました。例えば、正規雇用と非正規雇用の待遇格差、長時間労働と賃金のギャップ、ハラスメント体質の職場環境など、これまで表に出なかった問題が明るみに出ています。

信頼関係を構築するため

ビジネスにおいてもっとも重要なのは信頼関係です。顧客や取引先との接し方にインテグリティを持てば、相手からの信頼も得られます。また、信頼関係は取引成功だけでなく、長期的なパートナーシップの基盤にもなるでしょう。さらに信頼関係は、組織内でのモチベーション向上やチームワーク強化にも寄与します。

社会的信用が得られるため

高いインテグリティを持って経営をしている企業は、すべての行動において誠実さと真摯さを持ち、高い倫理観で物事に取り組むことが可能です。法令順守はもちろん、企業倫理と社会規範に則った経営を実践することで、顧客や取引先からの信頼を得られます。

インテグリティを得るための6つの資質

インテグリティを持つ人になるためには、6つの資質が必要だといわれています。ここでは、6つの資質を提唱したヘンリー・クラウドの定義と、それぞれの資質について解説します。

ヘンリー・クラウドの定義

ヘンリー・クラウドは、その著書「リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質」において、組織のリーダーにとってインテグリティは大切な資質であると定義し、インテグリティを持つ人を目指すための資質について解説しています。

本書では、インテグリティを培うための資質を6つに分類し、著者の実際の経験を基に詳述しています。段階ごとに理解を深められるため、インテグリティを実践的に学ぶワークブックとしての役割も期待できます。

信頼を確立する

インテグリティを持つ人は、信頼を築くことが得意です。他人に対して誠実であり、言葉通りに行動することで信頼を得ます。信頼は人間関係やビジネスにおいて不可欠であり、信頼を築くことにより、協力や共感も生まれるでしょう。

現実と向き合う

インテグリティを持つ人は、現実を直視し、問題を避けずに取り組みます。隠蔽やごまかしをせず、真実を受け入れる姿勢であることが特徴です。そのため、問題解決や成長の機会を逃さずに捉えられます。

成果を上げる

インテグリティを持つ人は、誠実であるだけでなく、成果を出すことに注力することも特徴です。約束を守り、目標を達成するために努力します。自己管理や責任感が高く、結果を出すことで信頼をさらに高めます。

逆境を受容し問題を解決する

困難な状況や逆境に直面しても、インテグリティを持つ人は冷静に対処することが可能です。問題解決能力が高く、誠実さを保ちながら困難を乗り越えます。逆境こそが成長のチャンスであると捉え、前向きに行動するのが特徴です。

成長・発展する

インテグリティを持つ人は、自己啓発を重視することも特徴の1つです。学び続け、自分を向上させることで、組織や社会に貢献します。また、自己成長を促進するために、フィードバックを受け入れ、自己評価も行います。

人生の意味を見つける

インテグリティを持つ人は、自己探求をし、人生の目的や意味を追求します。自己超越を目指し、他人の幸福や社会の発展に貢献します。人生の意味を見つけることで、モチベーションや喜びを感じ、より充実した人生を送ることが可能です。

インテグリティがあることのメリット

インテグリティがある人材や組織は、さまざまなメリットが得られます。以下で、2つのメリットをご紹介します。

コンプライアンス経営の実践に役立つ

インテグリティがある人材は、コンプライアンスを尊守できる点が特徴です。具体的には、以下のような点が挙げられます。

  • 正義感があり、不正行為に対して厳しい態度を取れる
  • 利己的な態度ではなく、組織の利益を優先できる
  • 他社の人格を尊重できる

これらの特性は、組織内でコンプライアンスを強化し、法令順守を促進する上で重要です。インテグリティを持つ人材が率先して遵守することで、他のメンバーにも良い影響を与えます。

健全な組織運営に貢献する

インテグリティがある人材は、以下のような能力を持つため、組織全体を健全にする効果も期待できます。

  • 他のメンバーや組織全体について、俯瞰的かつフラットに見ることができる
  • 組織の秩序を守る行動を示すことで、他の従業員に手本を示す

組織の先頭に立つ人々がインテグリティを尊重した態度を取ることにより、組織全体の人間関係が改善され、信頼性が高まります。また、顧客との信頼関係構築にも寄与するでしょう。

インテグリティに関連する「インテグリティマネジメント」とは?

インテグリティマネジメントは、企業や組織が誠実さや信頼性、公正性を保ち、これらを促進する経営活動です。具体的には、法的規制の順守、社会的配慮、従業員の福祉などが含まれます。企業はコンプライアンスの遵守に加え、広い意味で社会に対して責任を果たす姿勢を示さなくてはなりません。

インテグリティを重視した経営は、企業の持続可能性や成長、そして社会への貢献にとって極めて重要です。インテグリティを実践することで企業は社会から信頼され、ビジネスの成長も期待できます。また、個々の従業員がインテグリティを持つことで、組織全体としての誠実さや公正性が高まり、より良い職場環境が実現されるでしょう。これがインテグリティマネジメントを実施する目的です。

インテグリティを体現している企業例

花王株式会社

花王は「正道を歩む」を企業活動の基盤とし、この理念に基づいたビジネスを展開しています。特に、インテグリティの強化に注力し、専門委員会を設置しているのが特徴です。委員会は、関連規定の定期的な見直しや、企業倫理の普及促進のための教育啓発活動、そしてコンプライアンス通報・相談窓口の運営と対応状況の管理などを担当しています。

第一三共株式会社

製薬会社として知られる第一三共も、コア・バリューの1つに「Integrity」を掲げています。具体的な取り組み内容については公表されていませんが、企業の価値観としてインテグリティを掲げていることがわかります。

メルセデス・ベンツ

メルセデス・ベンツは、インテグリティの向上を目指し、企業理念を掲げています。具体的には「私たちは利益を追求し、人々と環境に貢献します。」「私たちは責任ある行動をし、規則を遵守します。」「私たちはオープンにコミュニケーションし、透明性を保ちます。」「公正さと敬意が協働の基盤です。」「私たちは多様性を推進します。」の5つです。これらの行動指針は、法令遵守から多様性の尊重まで幅広い分野において具体的なガイドラインが設けられており、全社員に浸透させる取り組みが行われています。

インテグリティ経営を実践し業績向上につなげよう

インテグリティ経営は、企業が誠実さや信頼性を重んじ、法令遵守から社会貢献までを具体的に実践する経営手法です。花王やメルセデス・ベンツなどの企業が、透明性や多様性推進などの具体的な行動指針を策定し、全社員に浸透させる取り組みを行っています。

インテグリティを尊重することで、社会からの信頼を得て業績向上につなげる効果が期待できるでしょう。ぜひ、インテグリティ経営を実践し、業績向上を実現してください。


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