• 更新日 : 2024年10月30日

同調圧力とは?日本の傾向?種類やかける人の特徴を解説

同調圧力とは、意見・行動の正否にかかわらず、意見や行動を少数派が多数派に合わせるよう強制する無言の圧力のことです。同調圧力は世界中に存在し、日本特有のものではありません。この記事では、同調圧力の概要や存在する理由、コロナによる影響、メリット・デメリット、職場における同調圧力の具体例についてわかりやすく解説します。

同調圧力とは?

そもそも同調とは「自分の意見や行動を他者の行動や考え方に合わせて変える」ことを意味します。同調圧力とは、集団における意見や行動において、少数派が多数派に合わせるよう暗黙のうちに強制する無言の圧力のことです。意見・行動の正否にかかわらず多数派が場をコントロールする環境が形成されている点が問題視されています。自分は正しいと思っていて実際に正しい意見や行動であっても、無言の圧力によってそれを抑え込んででも同調せざるを得ないためです。

同調行動との違い

同調行動(ハーディング現象)とは、集団において意識的、または無意識に周囲の意見や行動を取り入れて同じようにふるまうことです。同調行動は同調圧力を受けた結果の行動となります。すなわち、同調行動は結果であるのに対し、同調圧力は原因という点が違いと言えるでしょう。

同調行動の具体例は以下のとおりです。

  • 「みんな着ているから」という理由で流行の洋服を購入する
  • 人気ランキングの上位にあるお店を選ぶ
  • 友達と同じメニューを注文する
  • SNSの投稿で「いいね!」が1つもついていないと押しづらさを感じ、たくさんの「いいね!」がついていると押しやすさを感じる
  • 周りの人たちが信号無視をしているのを見て、「みんながやっているから」と自分も信号無視をしてしまう

同調効果との違い

同調効果(同調現象、同調心理)とは、社会心理学の用語で、無意識に自分の考えや行動を周囲に合わせてしまう心理効果のことです。同調効果も同調圧力と同様に、同調圧力を受けた結果による心の動きと言えます。

同調圧力があるのは日本だけ?

同調圧力があるのは日本だけではありません。ここでは、世界における同調圧力について見ていきましょう。

アジア圏における同調圧力

中国や韓国などの東アジア地域は、ひとつの民族という濃い人間関係の中から生まれるため、集団意識が強くコミュニティの調和を重視する文化が根付いています。家族や親の意向、伝統や慣習の尊重を求められ、個人主義や調和を乱すような人は変わり者として扱われる傾向があるのです。

北アメリカにおける同調圧力

アメリカでは、個人の自由や権利、自己表現が尊重される文化が定着していることから、個人主義が重視されています。しかし、ビジネスシーンにおいては、チームでの協力や組織文化に従うことが求められるため、同調圧力が全く存在しないわけではありません。また、流行に敏感な若年層では、ファッションやトレンドにおける同調圧力が見られます。

ヨーロッパにおける同調圧力

ヨーロッパにおける同調圧力の例として、第2次大戦下にナチス・ドイツに併合されたオーストリアで強制されていたヒトラーへの忠誠の誓いが挙げられます。国民全体が国家や社会が共有する価値観への同調を政府によって強要されていたのです。ヨーロッパの史実からも、同調圧力は日本特有のものではなく、世界中に存在することがうかがえます。

同調圧力が存在する理由

日本だけでなく、世界中に同調圧力が存在する理由は以下が挙げられます。

  • 社会的動物の本能によるもの
    人間は基本的に社会の中で生まれ育ち、社会を維持しながら生きていく社会的な生き物です。コミュニティの中で安全を確保したり、社会的な地位を築いたりするためには、周囲との調和が不可欠です。周囲と調和を図るために、多数派の行動や意見に合わせることが求められる場面も少なくありません。
  • 報酬と罰の心理によるもの
    同調することで、コミュニティから承認されたり、評価が向上したりするなど社会的報酬を得られます。一方、同調しないことで、批判や排除などの罰が与えられるリスクが考えられるでしょう。社会的報酬を得たい場合や罰を恐れる場合、意見や行動を多数派に合わせることを選択します。
  • 情報不足によるもの
    人は情報や知識が不足している場合、周囲の意見や行動を基準に物事を考え、行動する傾向があります。このように、情報的影響によって同調圧力が発生するケースも多々見られます。

同調圧力が強まった?コロナの影響

コロナの影響によって、日本の同調圧力がさらに強まったと考えられます。欧米ではマスクの未着用や不要な外出を禁じ、違反者に罰金を科しました。一方、日本では、政府から要請されただけで、強制されていないにもかかわらずほとんどの国民が従ったのです。コロナ対策だけでなく、周囲の目が気になるからマスクをつけ、自粛している人も数多くいました。これこそ同調圧力の代表例とも言えるでしょう。

しかし、休業しないお店に抗議する人や、マスク未着用の人を過度に注意する「マスク警察」と呼ばれる人や、本人の自由意志でワクチンを接種しない人に接種を強要する人などさまざまな人が現れました。暗黙のルールに従わない人には冷たく当たるという集団の原理が、コロナ禍で一層露呈したのです。

同調圧力をかける人の特徴

ここでは、同調圧力をかける人の特徴を6点紹介します。

責任の所在を曖昧にしたい

自分で責任を負いたくない人が、責任の所在を曖昧にするために同調圧力を用いる場合があります。自分の意見や発言の主語を世間や会社など大きな存在に置き換えることで責任を回避する手法です。特に、中間管理職や現場責任者など、部下と上司の間の役職の人に多いと言われています。

仲間外れが怖い

「黒い羊効果」に対する恐怖心から、仲間外れが怖くて同調圧力をかける人もいます。黒い羊効果とは、同じグループの好ましい人は他のグループの好ましくない人より高く評価し、同じグループの好ましくない人は好ましくない他のグループの人より低く評価することを示す心理学用語です。この効果では、好ましくないと判断されれば、他のグループの人よりも低い評価を下されてしまいます。黒い羊、すなわち異質な存在とならないために、味方を多くするために同調圧力をかけることで自分自身を守っているのです。

自分の正しさを認められたい

同調圧力には、正否にかかわらず意見や行動を変えさせてしまう力があります。その性質から、自分の正しさを認められたいがために同調圧力をかける人も少なくありません。意見の食い違いがあった場合、自分の正しさを認められたいという思考が強い人は、相手に無理にでも同意させようと同調圧力をかける傾向にあります。

抜け駆けを嫌う

「抜け駆けされたくない」という心理は集団内で発生しやすく、特に将来的に自分も成果を得られる可能性がある場合において強まるようです。たとえば、コロナ禍でワクチンを一部の要人に優先投与することになった際に、世界各国の国民が非難の声を上げました。このように、多数派が我慢しているなかで少数の人が優遇されることに対して、抜け駆けされたくないという心理による同調圧力が生じるのです。

固定観念が強い・ステレオタイプ

「〜であるべき」「〜しなければならない」など固定観念が強い人やステレオタイプの人は同調圧力をかけやすい傾向にあります。自分が持つ固定観念と違う言動をとる人が現れると、その事実を認められず自分の固定観念に同調させるために圧力をかけるのです。

正義感が強い

前述した、コロナ禍における「マスク警察」と呼ばれる人も正義感の強さから攻撃的な行動をとり、結果として周囲に同調圧力をかけていました。正義感の強い人には、責任感が強いタイプと自分自身の意思を貫こうとするタイプがあり、後者のタイプは同調圧力をかける傾向にあるようです。

同調圧力があることのメリット

同調圧力はマイナスのイメージが強いものの、ポジティブなものであればメリットもあります。

チーム内での手助けがスムーズ

チーム内で協力的な雰囲気が生まれている場合、チーム内での手助けがスムーズになり業務が効率良く進みやすくなります。自分の意思に反する同調圧力ではなく、無意識に合わせたくなるようなポジティブの同調圧力であることがポイントです。

人に合わせた目標設定・行動に満足できる

チーム内の同調圧力と自分の考えや行動が一致している場合、チームの一員であるという実感が湧いて自己肯定感を得られます。自分がチームに馴染めている実感や帰属意識を持つと、心理的安全性が構築されることから、適切な同調圧力はポジティブな作用をもたらすと言えるでしょう。

不正を事前に防げる

組織内で適度な同調圧力があることで、不正ができない雰囲気が生まれます。不正をすれば、メンバーに迷惑をかけることになるでしょう。その結果、個人で不正を起こしづらくなり、コンプライアンスが保たれた環境を維持しやすくなるのです。

同調圧力があることのデメリット

暗黙の強制力が働く同調圧力には、環境や人によってはデメリットとなり得る場合もあります。

残業が多くなる

同調圧力が強い職場の場合、自分は仕事が終わっていても周囲が残業をしていて帰れないということになりかねません。仕事が終わっているのに不要な残業をする人が増えれば、さらに同調圧力が強まるという悪循環を引き起こします。

人によってはストレス増加

同調圧力が強い職場は秩序がある反面、人によっては強いストレスを感じるでしょう。間違っていると思っても意見できないことが続くとストレスによって体調不良を崩したり、離職のきっかけにつながったりするリスクがあります。

足の引っ張り合いになる可能性も

営業成績がずば抜けて良い人など目立った存在を認めないような同調圧力が働いている職場の場合、足の引っ張り合いになる可能性もあります。そのような職場環境では優秀な社員が本来のパフォーマンスを発揮できないどころか離職してしまう可能性もあるため、早急な改善が必要です。

職場における同調圧力の具体例

職場における同調圧力の具体例は以下のとおりです。

  • 自分の仕事は終わっているけれど、周囲の人が残業しているから帰れない
  • 有給を取得したいけれど、ほかの人が取得していないから申請できない
  • 会議で独自性のある意見を言いづらい

適度な同調圧力でポジティブな作用をもたらそう!

同調圧力は、マイナスな作用もありますが、適度なものであればポジティブな作用をもたらします。具体的には、チームワーク力の強化や心理的安全性の構築、コンプライアンスの保持です。適度な同調圧力で職場環境をより良いものにしましょう。この機会に、現在の職場でどのような同調圧力が働いているか確認してみてはいかがでしょうか。


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