- 更新日 : 2025年1月28日
育休中の転職活動はアリ?デメリットや後悔しないための退職の流れ
育休中でも転職活動を行い、新しい職場へ移ることは法律的に問題ありません。また、育児休業給付金の返還義務もないため、金銭的なリスクを心配する必要もないです。
ただし、育休中の転職には独自の注意点や課題があるため、慎重な準備が求められます。
本記事では、育休中の転職活動に関する疑問や悩みにお答えします。育休中の転職活動に成功するコツも解説していくので、参考にしてみてください。
目次
育休中の転職はできる?
育休中の転職は法律違反ではありません。育児・介護休業法には、育休中の転職を禁止する規定はなく、労働者の権利として認められています。
また、すでに受給した育休給付金を返還する必要もありません。
育休(育児休業)は、子どもが1歳(条件によって最長2歳)になるまで取得可能な休業制度で、育児と仕事の両立をサポートするものです。育休は育児・介護休業法に基づく制度であり、対象者は男女を問いません。
保育園への入園が決まっていれば、転職活動も十分に可能です。ただし、以下の場合は注意が必要になります。
- 育休中に退職すると、保育園の入園条件が「求職中」に変更され、審査の優先度が下がることがある
- 会社によっては、育休中の転職活動について規定が設けられている場合がある
現職や新しい職場、家庭への影響を十分に考慮することが重要です。給付金や保育園の条件など、細かなポイントを確認したうえで、慎重に計画を進めましょう。
【アンケート】育休中に転職を考えた理由
XTalent株式会社の調査によると、育休中に転職を考えた女性が57.1%、リーダー職以上では56.6%に上ることが明らかになりました。
この調査は、2024年8月に育休取得経験のある女性304名を対象に行われ、復職後の職場環境やキャリアへの影響についての実態が浮き彫りになっています。
転職を考えた理由は、下記のとおりです。
- 働き方(リモート・時短勤務の可否など)に不満がある
- 昇進・キャリアアップが望めない
- 給与に不満がある
- 仕事内容に不満がある
- 組織にしばられず、もっと柔軟に働きたい
- 評価・人事制度に不満がある
- 残業・休日出勤などが多い
- 家事育児が思ったより大変だった
- 社内の雰囲気・人間関係が悪い
- パートナーの仕事との兼ね合い
- 子どもの特性(健康面など)
引用元:XTalent株式会社
復職後の待遇や働き方への不満が、転職の大きな要因となっています。育休中に転職を成功させるためには、育児と仕事の両立を支援する企業であるかが重要なポイントとなるでしょう。
育休で転職をするデメリット
育休中の転職活動にはいくつかのデメリットがあります。ここでは代表的なものを解説します。
育休中の退職はズルいと思われることも
育休中に転職活動をはじめると「職場復帰を前提とした育休なのにズルい」と批判的な意見を受けることがあります。このような意見を耳にすれば、罪悪感やストレスを感じるかもしれません。
しかし、法律上は労働者が自由に転職を選べる権利があります。ただし退職の際は、感謝の気持ちを丁寧に伝えて、職場との関係を良好に保つ工夫が必要です。
子どもの預け先がないと転職活動できない
転職活動には平日の面接や企業訪問が必須です。育休中の転職活動を円滑に進めるためには、子どもの預け先を確保する必要があります。
しかし、以下のような問題が発生することがあります。
- 一時保育の予約が取りづらい
- 親族や友人に頼りづらい
急な面接日程に対応できないこともあるでしょう。とくに、最終面接では対面での実施を求められるケースが大半です。
親族のサポートを得られる環境にない場合は、転職活動のスケジュール調整に苦労する可能性があります。事前に面接スケジュールを調整し、スムーズに預け先を手配できる環境を整えることが大切です。
育児給付金が打ち切られる
育休中に転職先が決まり、退職が確定したら、育児休業給付金が途中で打ち切られる可能性があります。これは育休給付金が「休業により減少した収入を補填する制度」であるためです。
そのため、育休給付金は退職日を含む月以降は支給されなくなります。一般的な給付金額の割合は、下記のとおりです。
- 最初の180日間:休業開始時賃金日額×支給日数×67%
- 181日以降:休業開始時賃金日額×支給日数×50%
退職によって給付金が途絶えることは、家計に大きな影響を与える可能性があるでしょう。ただし、4月の保育園入園に合わせて転職するケースでは、給付金への影響を最小限に抑えられます。
また、満額受給を目指すなら、育休満了後に転職を検討するとよいでしょう。
社会保険の変更など様々な手続きが発生する
転職に伴い、社会保険の切り替えや税金関連の手続きが発生します。
とくに、子どもの医療費助成制度は自治体によって制度が異なります。そのため、転職先の勤務地によっては新たな手続きが必要になるでしょう。
また、住所変更を伴う転職だと、保育園の転園手続きもあるため、手続きの負担が大きくなります。
育休中の手続きは複雑になりがちです。次の職場での保険適用までタイムラグが生じる可能性もあるため、余裕をもって準備を進めることが大切です。
時短勤務を利用できない場合も
企業によっては、入社後一定期間は時短勤務の利用が認められない場合があるので注意しましょう。
育児・介護休業法では、3歳未満の子をもつ労働者に対する短時間勤務制度の整備が義務付けられています。しかし、 労使協定によって、勤続1年未満の労働者を除外することが認められています。
もし、転職直後に通常の勤務時間での就業を求められると、保育園の送迎との両立が難しくなる可能性があるでしょう。子育てと両立するためにも、転職先を選ぶ際に就業規則を確認し、柔軟な働き方が可能か慎重に判断してください。
育休で転職をするメリット
育休中の転職活動には、デメリットだけでなく多くのメリットも存在します。ここでは、具体的なメリットを解説します。
子育てに理解のある会社で仕事ができる
育休中に転職活動を行う際は、面接時に自身の状況や育児のニーズを伝えられます。これにより、子育てに理解のある企業を選びやすくなるでしょう。
具体例は、下記のとおりです。
- 急な休暇に理解がある企業
- 子育て支援制度が充実している会社
子どもが体調を崩した際に、すぐに休暇を取得できる制度が整っていれば、親としての役割を全うしながら安心して働くことが可能です。また、企業独自の託児施設やベビーシッター利用補助を提供している企業は、育児と仕事を両立しやすくなります。
面接の際には、育児休暇の取得実績・時短勤務や在宅勤務制度の有無などを質問することで、企業の子育て支援への姿勢を把握できるでしょう。
子育てと仕事と両立しやすくなる
柔軟な働き方が可能な職場を選ぶことで、子育てと仕事と両立しやすくなります。たとえば、出勤時間を自由に調整できるフレックスタイム制を導入している企業では、保育園の送り迎えに合わせて働けます。
また、通勤が不要となるリモートワークを活用すれば、子どもとの時間を確保しながら効率的に仕事を進められるでしょう。
自分の生活に合った働き方を明確にし、転職活動をはじめることで後悔のない選択ができます。
焦らずに転職活動ができる
育休中は現職の業務から解放されているため、通常よりも焦らずに転職活動に取り組めます。
職場復帰後に転職活動をはじめると、仕事と育児の合間を縫って活動することになるでしょう。これによって、十分な準備時間を確保できない可能性があります。
育休中なら子どもの生活リズムに合わせて、履歴書の作成や面接対策などを行えるので、納得のいく転職活動が可能になります。気になる業界や企業について徹底的に調査することで、自分の価値観やキャリアプランに合った職場を見極められるでしょう。
具体的な計画を立てて行動すると、効率よく転職活動を進められます。
業務の引き継ぎが少ない
育休中の転職では、すでに産休・育休に入る際に業務の引き継ぎが完了しています。そのため、退職時の引き継ぎ作業が最小限で済み、職場への迷惑を最小限に抑えられます。
一度復職してから転職する場合は、担当業務の引き継ぎに多くの時間と労力が必要です。育休中の退職であれば、こうした負担を避けられます。
とくに重要なプロジェクトを担当している場合は、適切な引き継ぎ期間の確保が必要となり、転職のタイミングが制限される可能性もあります。職場への負担を減らすためにも、育休満了直前に退職を決断し、計画的に進めることが大切です。
育休の給付金ももらえる転職のタイミング
育休中に給付金を受け取りながら転職するには、タイミングが大切です。
育児休業給付金は、子どもが1歳になるまで(特別な事情がある場合は最大2歳まで)、以下の割合で支給されます。
- 最初の180日間:休業開始時賃金日額×支給日数×67%
- 181日以降:休業開始時賃金日額×支給日数×50%
給付金は月単位で計算されるため、月末に退職すると、その月の給付金が受け取れなくなる場合があります。そのため、転職のタイミングには注意しましょう。
おすすめのタイミングは、保育園の4月入園に合わせた転職です。この時期は保育園の受け入れ枠が多く、企業の採用活動も活発化するため、転職先を見つけやすい傾向があります。
具体例は、下記のとおりです。
- 1月~2月:保育園の入園準備と転職活動を開始
- 3月末:育休給付金を受け取りながら現職を退職
- 4月:保育園入園と同時に新しい職場でスタート
1月~2月に保育園の入園準備と転職活動を開始し、3月末に退職すれば、給付金を受給しながら4月に新しい職場でスタートできます。
なお、保育園の入園が確定していない際は転職活動を控え、入園後に具体的な行動を進めましょう。転職を成功させるには、給付金を最大限活用しつつ、次の職場へのスムーズな移行を計画的に行うことが大切です。
参考:参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
育休中の転職活動に成功するには?
転職活動をスムーズに進めるためには、子どもの預け先の確保や履歴書の準備だけでなく、面接でのアピール方法にも工夫が必要です。以下では、育休中の転職活動に成功するためのコツを解説します。
1.子どもの預け先を決める
育休中に転職活動を行うためには、まず子どもの預け先を確保しましょう。面接や情報収集に専念する時間を確保できるように、柔軟に対応可能な預け先を検討します。
一時保育は、自治体や民間のサービスを利用すれば比較的簡単に利用できます。しかし、人気の施設は予約が取りづらい場合もあるので、早めに登録しておくことが大切です。
また、親族や友人に協力を依頼し、特定の日程だけ預かってもらう方法もおすすめです。
預け先を確保する際には、急な予定変更や面接日程の調整に備え、複数の選択肢を用意しておくと安心できます。事前に利用可能な保育サービスをリストアップし、スムーズに預けられるように計画を立てましょう。
2.履歴書・職務経歴書の書き方
育休中の転職活動では、履歴書や職務経歴書の記載内容が重要です。育休期間がある場合、その期間をどう記載するかで印象が大きく変わるでしょう。
まず、育休期間は職務経歴の中で明確に記載し、空白期間としてみられないようにしましょう。「〇年〇月~〇年〇月:育児休業(子育て期間)」と記載すれば、誤解を防げます。
さらに、育休期間中に得たスキルや学びをポジティブに伝えることもポイントです。たとえば、育児を通じて得た時間管理能力やマルチタスクの経験を具体的に記載すれば、採用担当者に好印象を与えられます。
不安な方は、転職エージェントや専門家に書類の添削を依頼するのも効果的です。
3.面談・面接でどう伝えるか
面接では、育休中の転職理由や今後のキャリアについての質問が高確率で出されます。これに対して、ポジティブで具体的な回答を用意しておけば、転職活動の成功につながります。
たとえば「子育てを経て、これまでの経験を活かしつつ、家庭と仕事のバランスを大切にしたい」といったポジティブな理由を述べると、印象がよくなるでしょう。
さらに、育児と仕事の両立が可能なことを具体的に説明するのも大切です。「保育園の入園が決定しており、フルタイム勤務が可能です」といった状況を説明することで、採用担当者に安心感を与えられます。
想定される質問に対して、事前に答えを準備し、自信をもって回答できるように練習しておきましょう。
育休中の転職活動はバレる?
育休中の転職活動は、行動次第で会社にバレるリスクがあります。ここでは、転職活動がバレる可能性のある原因と対策を解説します。
SNSへの書き込み
転職活動が会社にバレる原因で多いのは、SNSへの不用意な書き込みです。たとえば、「転職活動頑張っています」という投稿が同僚の目に触れ、上司に伝わる可能性があります。
とくに実名登録が基本となっているFacebookでは、投稿内容が広がりやすく、意図せず情報が漏れることがあります。現在の同僚や上司とつながっている可能性もあるため、注意が必要です。
このリスクを避けるために、転職活動に関する投稿は一切控えましょう。また、SNSの公開範囲を「友人のみ」や「非公開」に設定すれば、情報が外部に漏れるリスクを軽減できます。
転職サイトのプロフィール
転職サイトに登録したプロフィール情報が原因で転職活動がバレることもあります。プロフィールを公開設定にしていると、同業界の知人や現職の上司がその情報を閲覧できてしまう可能性があります。
また、応募先企業が現職と取引関係にあれば、情報が間接的に伝わることも考えられるでしょう。
これを防ぐには、プロフィールの公開設定を「非公開」や「スカウト企業限定」に変更し、現職の会社名や特定しやすい情報を記載しないことが大切です。
同業他社への面接
同業界への転職活動は、応募先企業が現職と関係をもっていたり、面接先で偶然知り合いに遭遇したりなど、情報が漏れるリスクがあります。また、面接時にリファレンスチェック(推薦状確認)が行われる際は、現職の上司に連絡がいく可能性もあります。
リスクを回避するために、応募先企業が現職と取引関係にあるかを事前に確認し、応募を慎重に検討しましょう。面接時には守秘義務について確認し、可能であれば面接日程を分散させて、同じ時期に多くの同業他社を受けるのは控えてください。
知人に会いにくいタイミングや、場所を選ぶことも大切です。リファレンスチェックを求められた際には、現職を避けたい旨を明確に伝えましょう。
育休中の退職で後悔しないための流れ
育休中に退職を決意した場合、スムーズに手続きを進めるには計画的な準備が必要です。退職を伝えるタイミングや相談相手、伝え方を工夫することで、職場との関係を良好に保ちながら退職できます。
ここでは、育休中の退職で後悔しないための流れを解説します。
育休給付金や有給休暇の確認
退職前に、育児休業給付金と有給休暇の残日数を確認しましょう。育休給付金は退職が確定すると支給が停止されるため、タイミングを計画的に設定する必要があります。
たとえば、給付金を満額受給するためには、育休満了日まで在籍し、そのあとに退職する方法があります。有給休暇についても、退職前に消化できるよう調整を行いましょう。
具体的には、人事部や直属の上司に相談して、給付金の支給状況や有給休暇の残り日数を確認するのがおすすめです。これにより、計画的に休暇を取得し、経済的な損失を最小限に抑えられるでしょう。
確認が不十分だと給付金や休暇が無駄になることがあるため、早めに相談することが大切です。
育休中に退職を伝えるタイミング
退職の意思は、なるべく早めに直属の上司に伝えるのが基本です。しかし、具体的なタイミングは慎重に見極める必要があります。
転職先が決まった時点や、育休給付金の支給期間終了の目処が立った時点で伝えるのが適切です。
たとえば、保育園の入園が確定し、転職活動が順調に進んでいるなら、そのタイミングで上司に相談するとよいでしょう。反対に、状況が不透明なまま退職を伝えると、計画に支障をきたす可能性があります。
また、職場の年度末や繁忙期を避けるなど、職場の事情を考慮すると、スムーズに理解を得られやすくなります。
育休中の退職の伝え方
退職を伝える際には、丁寧で前向きな態度が大切です。退職理由は、家庭の事情やキャリアの方向性などを中心に説明し、これまでの感謝を伝えることで、職場との関係を良好に保てるでしょう。
対面での報告が望ましいですが、育休中の場合はメールや電話での連絡も許容されるでしょう。伝える際は、以下のポイントに注意してください。
- これまでの支援への感謝の意を示す
- 退職の理由を簡潔に説明する
- 今後のスケジュールについて明確に伝える
- 必要な引き継ぎ事項があれば確認する
直属の上司には早めに伝え、相談の形で話を進めるとスムーズです。職場や同僚を責めるニュアンスの理由は避け、前向きで感謝を込めた内容を心掛けましょう。
退職に伴う手続き・引き継ぎ
育休中の退職でも、いくつかの手続きが必要となります。おもな手続きは、下記のとおりです。
- 退職届の提出
- 社会保険の切り替え手続き
- 雇用保険の手続き
- 残存有給休暇の清算
- 会社貸与物の返却
また、業務の引き継ぎでは詳細なマニュアルを作成したり、後任者に具体的な指示を伝えたりすることで、スムーズに退職できます。
育休中の退職では、すでに業務から離れているため、最小限の引き継ぎで済む場合もあるでしょう。職場への影響を考慮し、誠実に対応することが大切です。
なお、自己都合退職の場合は、いくつかの注意点があります。雇用保険の失業手当は、会社都合退職と比べて受給開始までの待機期間が長く、約3ヶ月かかります。
また、退職により就労実績が途切れると、保育園の利用が継続できない場合もあるため、自治体の基準を事前に確認しておきましょう。退職後の生活費や、転職活動の準備も念入りに計画しておくと安心です。
後悔しないためには、慎重な判断と計画的な行動を心がけましょう。
転職しても育休は取れる?
転職後でも育休を取ることは可能です。ただし、取得には一定の条件があり、事前に確認が必要です。
育児休業給付金についても、支給対象となる条件を満たしていれば受け取れます。しかし、転職後の勤務期間や雇用形態によっては対象外となる場合があります。
育休の申請・手続き方法は、下記のとおりです。
- 入社1年未満で育休取得が可能か、申請期限などを事前に確認する
- 育休開始予定日の1ヶ月前を目安に、育休申請書を提出する
- 子どもの出生証明書や健康保険証の写しなどを準備して申請書と一緒に提出する
- 育児休業給付金の申請を、勤務先を通じてハローワークに行う
- 育休申請や給付金申請の期限を確認し、手続きを進める
- 申請が承認されたら、育休開始日や給付金の振込スケジュールを確認する
手続きは新しい勤務先で行う必要があるため、転職時に制度や条件を確認しましょう。
育休手当(育児休業給付金)は受け取れるか
転職後に育休手当(育児休業給付金)を受け取れるかは、雇用保険の加入状況や勤務期間が関係します。支給条件は、下記のとおりです。
- 1歳未満の子を養育するために育休を取得した被保険者であること
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上あり、完全月が12ヶ月以上であること
- 一支給単位期間の就業日数が10日以下、または就業した時間が80時間以下であること
- 養育する子どもが1歳6ヶ月に達するまでの間に、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと
育休手当を受給するためには、原則として雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あることが必要です。ただし、以前の会社での被保険者期間を通算できるので、転職後すぐでも受けられる可能性があります。
一方で、企業の労使協定によっては、入社後1年未満の従業員に育休取得を認めていない場合があります。この場合は、育休を取得できないため育休手当の申請もできません。
転職を検討しているなら、転職先の就業規則や育休制度を事前に確認することが大切です。
育休手当の受給は、転職のタイミングや新しい勤務先の制度に大きく左右されます。事前に雇用保険の加入期間や企業規則を確認し、計画的に転職を進めましょう。
法改正【2025年4月~】育休手当の給付額が実質10割に
2025年4月から、育児休業給付金の支給内容が大きく改正されます。この改正により、育休中の収入が「実質的に休業前の手取り賃金と同等」になる仕組みが導入され、家庭の経済的負担を大きく軽減します。
現在の育児休業給付金の支給額は、下記のとおりです。
- 最初の180日間:休業開始時賃金日額×支給日数×67%
- 181日以降:休業開始時賃金日額×支給日数×50%
この制度でも一定の補償はありますが、収入が大幅に減るため、経済面での不安を感じる人が多いのが現状です。しかし、改正後は、「出生後休業支援給付」という新制度が加わり、育休中の支給額が実質10割に近づきます。
育児休業給付金(67%)に加えて、13%相当が上乗せ支給される仕組みです。さらに、社会保険料の免除や、給付金が非課税扱いとなるため、実質的な手取り額は休業前の賃金と同程度になります。
出生後休業支援給付
出生後休業支援給付は、2025年4月からスタートする、育休取得者が安心して休業期間を過ごせるようにするための制度です。
夫婦それぞれが14日以上の育児休業を取得する場合に、支給対象となります。対象期間は下記のとおりです。
- 父親:「産後パパ育休(出生時育休)」の期間内(出産直後の8週間以内)
- 母親:産後休業後8週間以内
支給期間は、最長28日間です。これにより、夫婦が協力して育児に専念できる環境が整います。
また月収30万円のケースでみると、現行制度・新制度の支給額の違いは、下記のとおりです。
- 現行制度:育休28日間で約18.8万円を支給
- 新制度:育休28日間で約22.4万円を支給→約3.6万円増額
出生後休業支援給付の申請は、勤務先を通じて従来の育児休業給付金と同様に手続きします。具体的な申請書類や手順は、厚生労働省や労働局からのガイドラインを参照してください。
参考:
厚生労働省|育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます。
育休・育休に関わる申請書類のテンプレート
育休に関連する各種申請には、正確な書類の作成が必要です。ここでは、マネーフォワードによる申請書類のテンプレートをご案内します。
育休申請書テンプレート
「産休申請書」は、出産前後に休暇を取得するために提出する書類です。出産予定日や産休休暇期間など、必要事項を記載する欄が設けられています。
正確な情報を記入し、提出期限を守ることでスムーズな手続きが可能です。
以下のリンクからテンプレートをご利用ください。
育児休業申請書テンプレート
「育児休業申請書」は、育児休業を申請するための書類です。取得期間や育休理由、育児する子どもの情報などを記載する欄があります。
内容を正確に記載し、職場へ提出することで、適切な育休取得が可能になります。
以下のリンクからテンプレートをご利用ください。
育休期間を活かして未来のキャリアを築こう
この記事では、育休中に転職を検討する際のメリット・デメリットや、退職を後悔しないための流れを解説しました。育休中に転職を成功させるためには、育児と仕事の両立をサポートする企業を見極めることが大切です。
また、退職や転職時の手続き、育児休業給付金のタイミングを押さえ、育休制度を最大限に活用してください。正しい情報と計画的な行動が、育休中のキャリア選択を後悔のないものにするでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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