- 更新日 : 2025年1月17日
特別手当とは?税金はかかる?種類や金額の相場、企業事例を解説
特別手当とは、基本給や賞与とは別に、特定の条件や目的で企業が従業員に支給する手当です。
業績達成時の一時金や役職手当、住宅手当などが代表例で、従業員のモチベーション向上や福利厚生の充実、人材確保などに活用されています。
しかし、支給要件や税金・社会保険料の扱いは手当の種類によって異なり、運用には注意が必要です。
そこで本記事では、特別手当の種類や相場、支給ルール、税務上の注意点、導入事例などをわかりやすく解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
特別手当とは?
特別手当とは、企業が従業員に対して、通常の給与とは別に支給する手当のことです。
特別手当の基準は法律で定められていないため、企業によって特別手当の種類や支給条件は異なります。
一般的には、従業員のモチベーション向上や特定の業務への貢献を奨励する目的で支給する場合が多いです。
具体的には、業績が良かった場合や、特定の目標を達成した場合などに支給します。
次項で、特別手当と他の手当や報酬との違いについて解説します。
特別手当と賞与との違い
特別手当と賞与は、どちらも通常の給与とは別に支給されるという点で共通していますが、支給の目的や性質に違いがあります。
具体的には、賞与は一般的に企業の業績に応じて年数回支給されるもので、従業員の貢献に対する報酬としての意味合いが強いです。
一方、特別手当は、特定の条件や成果に応じて臨時的に支給する場合が多いです。
たとえば、特定のプロジェクトが成功した場合や、家族の人数などによって支給します。
特別手当と大入袋との違い
大入袋は、特別手当の一種と言えますが、一般的には給与の一部として扱われ、「給料手当」などの勘定科目で処理されます。
したがって、原則として所得税の課税対象となり、社会保険料の算定基礎にも含まれます。
ただし、大入袋が「恩恵的な性質が強く、労働の対価とはみなされない」と判断される場合、社会保険料の対象にはなりません。
たとえば、大入袋が目標達成や業績の大幅な向上、特別なイベントなどに基づいて、臨時的に支給されるものであって、支給事由の発生、支給条件、 支給額等が不確定で、経常的に受けるものではないものは、被保険者の通常 の生計に充てられるものとは言えないため、社会保険料の対象外となる可能性があります。
しかし、所得税については、原則として課税対象となります。
一方、通常の特別手当は、支給目的や金額によっては給与の一部として扱われるケースが多く、所得税および社会保険料の対象となる場合がほとんどです。
休日手当や残業手当などとの違い
休日手当や残業手当は、法定労働時間を超えて労働した場合や、法定休日に労働した場合に、企業が法律に基づいて支払う義務のある手当です。
具体的には、休日手当は、法定休日に労働させた場合、通常の賃金に35%以上の割増率を乗じた金額を支払う必要があります。
残業手当は、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合、通常の賃金に25%以上の割増率を乗じた金額を支払う必要があります。
つまり、休日手当や残業手当などは、支給のルールが法律で定められているが、特別手当は特に定められたルールがないというのが違いです。
ただし、就業規則や労使協定によってあらかじめルールが定められている場合は、その内容に従う必要があります。
特別手当の主な種類と金額の相場
特別手当は、企業が従業員に対してさまざまな目的で支給するものであり、その種類は多岐に渡ります。
ここでは、代表的な特別手当の種類と、おおよその金額相場について解説します。
役職手当(管理職手当)
役職手当(管理職手当)は、管理職などの役職に就いている従業員に対して支給する手当です。
役職手当の相場は、下記の通りです。
- 主任クラス:月額5,000円〜1万円程度
- 係長クラス:月額1万5,000円〜3万円程度
- 課長クラス:月額4万5,000円〜8万円程度
- 部長クラス:月額7万円〜13万円程度
上記の金額はあくまで一例ですが、一般的には役職が上がるほど手当の金額も高くなります。
大企業や業績の良い企業では、より高額な役職手当が支給される場合もあるでしょう。
役職手当は、管理職の責任と貢献に見合った報酬としての役割を担っています。
住宅手当
住宅手当は、従業員の住宅費用の一部を補助する目的で支給する手当です。
具体的には、賃貸住宅の家賃や住宅ローンの返済の一部を補助する形で支給します。
手当の金額は、企業の規模や地域、住宅形態によって異なりますが、一般的には月額数千円から数万円程度が相場です。
住宅手当は、従業員の経済的な負担を軽減し、安定した生活を支える役割を果たしています。
家族手当
家族手当は、扶養家族がいる従業員に対して支給する手当で、配偶者や子どもなどの扶養家族の人数に応じて、支給額が増えるのが一般的です。
家族手当の相場は、下記の通りです。
- 配偶者:月額1万円〜1万5,000円程度
- 子ども1人あたり:月額3,000円〜5,000円程度
近年では、家族手当を廃止し、その分を基本給に組み込むことで、配偶者の有無に関わらず公平な給与体系とする企業が増えています。
また、子どもがいる従業員への手当を手厚くする傾向も強まっており、次世代育成支援の観点から、子育て世代への経済的支援を重視する企業が増加しています。
家族手当は、従業員の生活を支援し、安心して業務に取り組むための環境作りに貢献していると言えるでしょう。
繁忙手当
繁忙手当は、特定の時期や業務が集中する期間に、従業員の負担を考慮して支給する手当です。
具体的には、年末年始や決算期、新商品の発売時期などに支給する場合が多いです。
手当の金額は、繁忙の程度や期間によって異なりますが、時給者であれば時給にプラス数十円~数百円、月給者であれば日額数千円〜数万円が相場です。
繁忙手当は、従業員の労をねぎらい、モチベーションを維持するために支給する企業が多いでしょう。
資格取得手当
資格取得手当は、業務に必要な資格を取得した従業員に対して支給する手当です。
従業員のスキルアップを支援し、業務の質を高めることを目的としています。
具体的には、資格取得時に一時金を支給したり、資格手当として毎月一定額を支給したりする場合があります。
手当の金額は、資格の種類や難易度によって異なり、数千円〜数万円と幅が広いです。
たとえば、業務に直結する国家資格などであれば、数十万円ほどの手当を支給する場合もあります。
資格取得手当は、従業員のスキルアップを促進し、企業の競争力強化にもつながる役割を果たしています。
特定技能に対する手当
特定技能に対する手当は、特定の高度な技能や専門知識を持つ従業員に対して支給する手当です。
具体的には、特定のプログラミング言語の専門知識や、高度な技術資格を持つ従業員などに支給する場合が多いです。
手当の金額は、技能のレベルや市場価値によって異なります。
たとえば、ITエンジニアや医療職など、高度な専門知識や技術が求められる場合は、数十万円程度の手当が支給されるケースもあるでしょう。
危険手当
危険手当は、危険な作業環境で業務を行う従業員に対して支給する手当です。
具体的には、高所作業や有害物質を取り扱う作業、災害現場での作業などに従事する従業員に支給します。
手当の金額は、作業の危険度によって異なりますが、国家公務員の場合、1日あたり200円程度が相場です。
たとえば、高所作業の場合、日額220円(地上または水上20メートル以上の高所作業の場合は320円)とされています。
危険手当は、負担が大きい業務を行う従業員の待遇を少しでも良くし、モチベーションを維持するための役割があります。
特別手当のメリット、デメリット
特別手当は、従業員のモチベーション向上や生活支援を目的として導入する場合が多いですが、運用にあたっての課題も存在します。
次項で、特別手当を支給するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
特別手当のメリット
企業が特別手当を支給するメリットは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、従業員のモチベーション向上です。
たとえば、業績や目標達成に応じて手当を支給すれば、従業員の仕事への意欲を高め、生産性の向上が期待できます。
また、特定のスキルや資格取得に対する手当は、従業員のスキルアップを促進し、企業全体の能力底上げにも繋がります。
2つ目は、優秀な人材の確保と離職率の低下です。
魅力的な手当制度は、求職者にとって企業を選ぶ際の重要な要素の1つとなります。
特に、競合他社よりも充実した手当制度を設ければ、優秀な人材を獲得しやすくなります。
さらに、各種手当によって従業員の満足度が高まり、離職率の低下にもつながるでしょう。
特別手当のデメリット
企業が特別手当を支給するデメリットも2つあります。
1つ目は、人件費の増加です。
特別手当は、通常の給与に加えて支給するため、企業の人件費負担が増加します。
特に、多くの従業員に支給する場合や、高額の手当を支給する場合は、その影響は大きくなります。
そのため、特別手当を導入する際には、費用対効果を十分に検討する必要があるでしょう。
2つ目は、管理が煩雑になることです。
特別手当の種類や支給条件が多岐に渡る場合、給与計算や支給手続きが複雑になります。
また、手当の支給基準を明確にしておかないと、従業員間の不公平感を生む可能性もあります。
そのため、特別制度を導入する際には、費用対効果を検討するだけでなく、明確なルールを設け、管理体制も整える必要があるでしょう。
特別手当に税金・社会保険料はかかる?
特別手当は、給与や賞与と同じく従業員に対する報酬として支給されるため、基本的には税金および社会保険料の対象です。
ただし、支給方法や頻度によって扱いが異なる場合があります。
たとえば、毎月の給与に組み込まれる形で支給する特別手当は、給与としての計算に含まれ、税金や保険料が課される仕組みです。
一方で、特別手当が年に3回以下の頻度で支給される場合、それは賞与とみなされます。
この場合、賞与支払届の提出が必要となり、賞与としての社会保険料が発生します。
賞与にかかる所得税、社会保険料の計算方法は給与とは異なるので注意が必要です。
判断に迷う場合は、税務署や社会保険労務士と相談しながら、特別手当の支給基準や頻度を明確にしてから運用を進めましょう。
特別手当の支給ルール
特別手当の支給ルールは、法律で明確に定められているわけではありません。
そのため、各企業がそれぞれの状況に合わせて独自にルールを定める必要があります。
次項で、特別手当を運用するために重要なポイントについて詳しく解説します。
特別手当は企業の任意
特別手当の支給は、法律で義務付けられているものではなく、企業の任意です。
つまり、企業は必ずしも特別手当を支給する必要はありません。
特別手当を支給するかどうか、どのような種類の手当を支給するか、金額や支給条件などをどのように設定するかは、各企業の判断に委ねられています。
就業規則や賃金規程に記載し明確にする
特別手当を支給する場合、その内容を就業規則などに明確に定めておきましょう。
たとえば、どのような場合に、誰に、いくら支給するのかといった支給要件や、支給時期、支給方法などを具体的に記載します。
特別手当の内容を明確にすることで、従業員間での理解を深め、不透明な運用によるトラブルを防げます。
なお、就業規則の届出が義務付けられている事業場で特別手当を導入する場合は、就業規則を改定し、労働基準監督署への届出を行いましょう。
不公平が無いよう基準を明確にする
特別手当を支給する際には、従業員間で不公平感が生じないように、支給基準を明確にしましょう。
たとえば、役職手当であれば役職ごとの金額を明確にし、業績手当であれば業績評価の基準を明確にする必要があります。
基準が曖昧だと、一部の従業員だけが有利になったり、不満を持つ従業員が出たりする可能性があります。
そのため、支給基準は業績や役職、スキルに基づいて客観的で分かりやすい基準を設定しましょう。
従業員が納得する基準を設ければ、不公平感を回避し、特別手当の効果を最大限に引き出すことが期待できます。
特別手当を支給する際の注意点
特別手当を支給する際の注意点は、下記の通りです。
- 福利厚生か報酬か考慮する
- 給与明細に記載する
これらを考慮せずに支給してしまうと、税務調査での指摘や従業員との間の不信感につながる可能性があります。
次項で、それぞれの注意点について詳しく解説するので、特別手当の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
福利厚生か報酬か考慮する
特別手当を支給する際には、それが福利厚生の一環なのか、報酬(給与)としての位置付けなのかを明確にしましょう。
原則として、従業員に支給される手当は、労働の対価として支給されるものであれば、給与所得の課税対象です。
これは、手当の名称(たとえば、住宅手当、家族手当、役職手当など)に関わらず、その性質によって判断されます。
福利厚生費として扱われるためには、下記の要件をすべて満たす必要があります。
- 役員や一部の従業員だけを対象としていない
- 社会通念上相当の金額である
- 現金支給ではなく、現物支給またはサービス提供である
上記要件を満たす場合、福利厚生費として処理され、従業員に支給した手当は非課税となります。
しかし、上記の要件を満たさない場合、たとえ福利厚生の名目で支給したとしても、給与として課税対象となるため注意しましょう。
どのような目的で支給する手当なのか、支給対象者、支給方法、金額などを明確にすれば、税務上のトラブルを未然に防げます。
給与明細に記載する
特別手当を支給する場合、給与明細にその内容を明確に記載しましょう。
給与明細に記載すれば、従業員はどのような名目で、いくら支給されたのかを正確に把握できます。
また、支給額の誤りや支給漏れといったトラブルを防げます。
特別手当を給与明細に記載する際は、手当の種類ごとに項目を分けると、より分かりやすい給与明細になるでしょう。
具体的には、「役職手当」「住宅手当」など、手当の種類ごとに明記すれば、従業員の理解を深めやすくなります。
さらに、企業にとっては、税務調査の際に明確な記録として活用できます。
特別手当の会社事例
実際に特別手当を導入している企業は数多く存在します。
各企業は、それぞれの目的や従業員の状況に合わせて、さまざまな種類の特別手当を設けており、具体的な事例を知ることで、自社で特別手当を導入する際のヒントになるでしょう。
次項で、特徴的な特別手当制度を導入している企業の事例を紹介します。
健康診断の結果に手当金
株式会社サニーサイドアップでは、「目指せ!A身体」というユニークな特別手当制度を導入しています。
制度の内容は、健康診断の結果に応じて特別手当を支給するというものです。
具体的には、健康診断で総合評価「A」を獲得した従業員に対して、32,000円の手当を支給します。
もし肥満気味と判定された場合でも、翌年の健康診断で基準値をクリアすれば10,000円を支給しているようです。
この制度は、従業員の健康増進を目的としており、健康維持へのモチベーションを高める効果が期待できます。
健康診断結果という客観的な指標に基づいているため、公平性が担保されているのもポイントです。
花粉症手当
株式会社バンク・オブ・イノベーションでは、現代社会の課題に着目した「花粉症手当」というユニークな特別手当を導入しています。
この手当は、花粉症に悩む従業員をサポートすることを目的としており、診察代だけでなく、高級ティッシュやマスク、目薬などの購入費用も支給対象となっています。
さらに、通院費用についても年1回分は会社が負担しているようです。
花粉症の時期に業務効率が低下してしまう従業員にとって、心強い制度と言えるでしょう。
独自の特別手当によって、従業員の健康管理と業務効率の維持を両立しています。
次世代育成手当
さくらインターネット株式会社では、従業員の次世代育成を支援する「次世代育成手当」を導入しています。
この手当は、子ども1人につき月額13,000円が、子どもが20歳になるまで支給されるというものです。
長期にわたる経済的な支援は、子育て世代の従業員にとって大きな助けとなります。
さらに、子どもが小学校4年生に上がるまでは時短勤務が可能となる制度も併せて実施しており、仕事と育児の両立を支援する体制が整っています。
特別手当を活用して従業員満足度と企業価値を向上させよう!
特別手当は、基本給とは別に企業が従業員に支給する手当であり、その目的や種類は多岐に渡ります。
特別手当を上手に活用すれば、従業員満足度と企業の魅力の両方を向上させられます。
また、従業員のニーズや業務内容に応じた柔軟な特別手当の導入は、採用力の強化や離職率の低下にもつながるでしょう。
一方で、特別手当の導入には、支給基準の明確化が必要です。
本記事で紹介した具体的な導入事例や特別手当を支給する際の注意点を参考に、自社に最適な制度設計を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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