• 更新日 : 2024年3月8日

アルムナイとは?採用で注目される背景やメリット・デメリット、事例を解説!

アルムナイとは退職した人材の集まりのことで、外資系企業では以前から導入されていました。最近では、労働市場の流動化や少子高齢化に伴う人材確保の難しさなどから注目されています。

この記事ではアルムナイ導入のメリット、デメリットや、アルムナイ採用導入の手順、注意点、事例等を紹介します。自社での検討の一助として頂ければ幸いです。

アルムナイとは?

アルムナイとは、退職した人材の集まりのことです。もともとアルムナイ(alumni)という言葉は、卒業生、同窓生の意味です。これが転じて人事労務分野では、企業が退職者と継続してコンタクトを取るための集まりのことを意味します。

アルムナイと企業がコミュニケーションを取りながら、必要な人材の再雇用を行うことをアルムナイ採用と呼びます。アルムナイ採用は欧米の企業で制度化されており、日本でも外資系企業が以前から導入していました。

外資系企業以外でも、以前より結婚、育児、介護や配偶者の転職等による退職者の出戻り採用制度や、定年退職者の再雇用制度を導入している企業はありました。アルムナイ採用の場合は、これらの退職理由だけでなく、転職を理由に退職して他社でキャリアを積んだ人材の再雇用が含まれます。カムバック採用という名称で実施している企業もあります。

アルムナイが注目される背景は?

昨今、日本でも労働市場の流動化が進み、成長のフィールドを求める転職が一般的になっています。自社で育て上げた人材が流出する一方、少子高齢化の影響で優秀な労働力の確保が難しくなっている状況です。

このような中、転職のために退職した人材の集まりであるアルムナイが注目されるようになりました。自社での在籍経験があるため社内事情に通じており、会社が能力を把握している人材で構成されるアルムナイからの再雇用は、一般的な中途採用と比較して効率的と言えるためです。

また、転職した労働者が退職した会社の魅力などを再認識し、復帰したいと考えることが増えていることも、アルムナイが注目される背景と言えるでしょう。

アルムナイを導入するメリット

アルムナイを導入するメリットを6点、以下に紹介します。

採用ミスマッチ防止と即戦力採用が両立できる

アルムナイのメンバーは過去に自社で働いていたため、自社の経営理念や企業風土などを熟知しています。したがってアルムナイ採用では、一般的な中途採用で起こりうる採用ミスマッチの発生を防ぐことが可能です。さらに、自社の仕事の進め方を知り、業務知識も十分に持っているため、即戦力としての活躍が期待できることもメリットと言えます。

社内に新しい知識、価値観、経験を吹き込む

アルムナイのメンバーには、他社で得た知識や経験などをもとにした新たな視点、客観的な視点に基づく業務遂行が期待できます。また、他社で得た知識や経験などは、自社のイノベーションの源泉にもなり、更なる成長につながると言えるでしょう。

既存の従業員のエンゲージメントを高める

アルムナイのメンバーが、他社の業務で自社の業務経験を活かせたことがエピソードとして共有されると、自社の業務経験が他社でも評価されることが既存の従業員にも認識されます。

また、他社で活躍してもなお自社に魅力を感じて戻ってくることは、本人のエンゲージメントが高いことを意味します。さらに、そのことが既存の従業員の自社への好感度アップにもつながります。

このようにアルムナイ採用が従業員のエンゲージメントを高めることもメリットと言えるでしょう。

採用、教育コストを削減できる

アルムナイ採用では、一般的な中途採用のように求人広告や人材紹介を利用したり、企業セミナー等を開催したりすることはないため、低コストで進められます。企業が人物やスキル等をすでに把握しているため、選考プロセスも簡略化できます。

また、自社の経営理念などを熟知し、業務経験も豊富なため、新入社員の場合に必要な教育も基本的には不要です。OJTが不要な場合も多いため、教育コスト削減につながるだけでなく、他の従業員を本業に集中させられることもメリットと言えます。

企業が必要なタイミングで即戦力を採用できる

アルムナイにより退職者が組織化されています。新たな事業展開を行う場合など自社が必要なタイミングでアルムナイのメンバーに声をかけ、採用できることはメリットと言えるでしょう。

ブランディングに良い影響を与える

アルムナイ採用を行っている企業は、退職した従業員が復帰したいと考える魅力的な企業とのイメージにつながり、自社のブランディングに良い影響を及ぼします。

また、アルムナイを通じて退職した従業員と良好なコネクションを維持することで、自社の魅力を社会に発信する存在になることも期待できます。これも自社のブランディングの助けになると言えるでしょう。

アルムナイを導入するデメリット

アルムナイを導入するデメリットを4点、以下に紹介します。

モチベーションが低下し、退職のハードルが下がる

アルムナイが存在することで退職後の再雇用の道があると考え、働き続けることへのモチベーションが低下する可能性があります。退職へのハードルが下がり、離職率が高まることにつながりかねないことはデメリットと言えるでしょう。

また、アルムナイ採用の従業員が好待遇であった場合、自社に勤務し続けている既存の従業員のモチベーションを下げる可能性もあります。

退職者へのネガティブイメージによる不満をもたらす

日本の企業には退職者へのネガティブなイメージを持つ従業員がいるため、アルムナイ採用に対して不満が出る可能性があります。場合によってはアルムナイから採用された従業員が職場に定着できずに、再離職してしまうこともあるため注意が必要です。

アルムナイにおける情報漏洩リスクがある

アルムナイのメンバーは元社員とは言え外部の人間であるため、会社情報漏洩のリスクが否めないこともデメリットと言えます。

特にアルムナイのメンバーと親しい従業員が、アルムナイのメンバーが元従業員である安心感から社外秘の情報を漏らしてしまう可能性があることへの対策が必要です。

アルムナイにもコストが発生する

アルムナイとの関係を維持するため、専用サイト構築や交流イベント開催等のコストが発生します。アルムナイ採用により自社が得られるメリットを考慮し、コストをどうとらえるかの検討が必要です。

アルムナイ採用を導入する手順

アルムナイ採用を導入する場合には、採用ルールや人事制度などの準備と、アルムナイのメンバーとの継続的なコミュニケーションの場の準備が必要になります。以下ではその手順を解説します。

アルムナイ採用のルールを整備

事前にアルムナイ採用のルールを整備する必要があります。応募資格の設定にあたっては、募集職種によって自社の在籍年数や、退職後の経過年数などをあらかじめ絞っておくのも効率的でしょう。

また選考方法については、応募者の人物やスキル等を会社がある程度把握しているため、一般的な中途採用と比べて簡素化することが多いと言われています。

人事制度の見直し

入社後の待遇などの人事制度についても、アルムナイ採用を踏まえたものに見直すことが重要です。アルムナイ採用の応募者のキャリアやスキルを評価した上での待遇、多様な働き方へのニーズを踏まえた短時間勤務や在宅勤務などの制度の整備が求められます。

アルムナイネットワークの構築

アルムナイネットワークとは、アルムナイのコミュニティで社内の情報を伝えるなど、アルムナイを人脈として機能させるための場を指します。アルムナイネットワークの担当者を配置してポータルサイトを構築したり、SNSなどを通じてメンバーとの交流を図ったりします。アルムナイネットワークの構築に特化したサービスを利用することも可能です。

アルムナイとのコミュニケーションの場の設定

アルムナイネットワークを作ったら、メンバーとのコミュニケーションの場を設定します。

SNSやメルマガなどによる継続的な情報発信やメンバーとの情報交換、退職者が参加可能なイベントの開催などの形があるでしょう。

アルムナイ採用の募集

アルムナイネットワークの人数が十分に増えてきたところで、募集を行います。

アルムナイ採用を導入するときの注意点

以下ではアルムナイ採用導入時の注意点を4点紹介します。

イグジットマネジメントを行う

イグジットマネジメントとは、人事労務分野において「出口(exit)」にあたる退職などの雇用契約の解除についての、経営戦略に基づく計画や管理を意味します。

これまでの日本企業では、終身雇用に基づき「入口」にあたる採用に関する戦略や計画は練られることが多いものの、イグジットマネジメントは重視されていませんでした。ところが昨今では転職が一般的になる中、定年まで勤めずに退職する従業員が増えており、イグジットマネジメントが重要になっています。

アルムナイ採用の導入にあたっても、イグジットマネジメントを行うことが重要です。定年を待たずに退職することを後ろ向きに捉えずに、キャリア形成における一つの選択肢として会社と従業員が十分な話し合いの場を持ちます。その結果退職を選択するのであれば快く送り出して新たな活躍の場を求めてもらうのです。

イグジットマネジメントにより、会社に対してポジティブなイメージを持って退職してもらうことが、アルムナイ採用の成功につながります。

アルムナイ採用への理解を促す

アルムナイ導入のデメリットとして、中途退職者へのネガティブなイメージを挙げました。アルムナイ採用に対して既存の従業員がネガティブなイメージを持ち、アルムナイ採用で入社した従業員が再離職につながらないように、アルムナイ採用の周知による理解促進が必要です。

また、アルムナイ採用のルートとして、自社の従業員の紹介によるものが多いため、社内での制度の周知がアルムナイ採用に良い影響を与えると言えるでしょう。

選考基準や処遇を明確化する

アルムナイ採用における選考基準や処遇を明確にしておくことも重要です。人物像、自社での過去のキャリア、退職後のキャリア、スキルなどの選考基準を明確にしておくことが、制度への信頼度を高めます。

また、アルムナイ採用という理由だけで既存の従業員より好待遇になると、不満のもとになります。アルムナイ採用の従業員の評価基準を明確にし、公平なものにする必要があるでしょう。

中途退職につながる要因を解消する

アルムナイメンバーが中途退職した理由として、待遇や処遇面、会社の制度面、長時間労働等、様々な問題があった可能性があります。これらの問題を解消できないままアルムナイ採用を進めても、再離職してしまうかもしれません。

これらの問題はアルムナイ採用の従業員に限らず、全ての従業員に共通する問題でもあるため、アルムナイ採用の従業員を特別視せずに解消すべき問題と言えます。

アルムナイ採用を導入している企業事例

以下ではアルムナイ採用を導入している企業とその概要を計3社紹介します。

みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループでは、グループ会社のみずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほリサーチ&テクノロジーの各社を含めてアルムナイネットワークを作り、専用のコミュニケーションサイトを運営しています。サイト上ではアルムナイ同士が交流できるほか、みずほフィナンシャルグループの各種情報が発信されています。

また、カムバックアルムナイ採用を行っており、転職や学業、育児介護等の家庭の事情などによる退職者の採用活動を行っています。

参考:カムバックアルムナイ採用|キャリア採用情報|みずほFG:採用情報サイト

アクセンチュア

外資系コンサルティング企業であるアクセンチュアのアルムナイのポータルサイト「アクセンチュア・アルムナイネットワーク」には、世界78か国の約30万人の退職者が在籍しています。退職者を「卒業生」と呼び、卒業生の強固なつながりを大切にしているのが特徴です。

このサイトでは一般的なアルムナイネットワークのように情報提供やメンバー間のコミュニケーションが行えるほか、募集職種・業務内容と募集要項を確認して実際に応募することも可能です。まさにアルムナイ採用を目的としたページ構成になっています。

参考:アクセンチュアの卒業生(アルムナイ)|アクセンチュア

日本ビジネスシステムズ(JBS)

日本ビジネスシステムズは、システムインテグレーターとして企業のDX支援を行う企業です。日本ビジネスシステムズでは、「JBSアルムナイネットワーク」によりグループの最新情報の提供やアルムナイ同士の交流を行っています。アルムナイ採用の募集要項も掲載され、勤続3年以上の転職や家庭事情などによる自己都合退職者を対象に全職種への応募が可能になっています。

同社のアルムナイネットワークのトークルームではリレー形式で自己紹介を行い、他のアルムナイへの関心を高める取り組みを行っているのも特徴です。

参考:アルムナイ・ネットワーク | 採用サイト| JBS 日本ビジネスシステムズ株式会社

アルムナイを活用して人材確保を進めよう

少子高齢化や転職の増加により人材確保が難しい状況の中で、アルムナイの人材の採用は、一般的な中途採用に比べてメリットがあるため最近注目されています。アルムナイのデメリットやアルムナイ採用の手順、注意事項などにも留意しながら、アルムナイを活用した人材確保を進めてみてはいかがでしょうか。


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