• 更新日 : 2026年7月3日

健康経営とは何か?企業が取り組むメリット・デメリットや実践手順を解説

Point健康経営とは何を目的とした経営手法なのか?

従業員の健康管理を経営戦略として捉え、生産性や企業価値の向上を図る取り組みです。

  • 心身の健康を「人材への投資」と位置づけ経営課題として推進する
  • 経済産業省と日本健康会議による健康経営優良法人認定制度を活用できる
  • 健康宣言から現状把握、施策実行、検証まで4ステップで導入を進める

補助金の加点や低金利融資など、認定取得によるインセンティブも期待できます。

企業の持続的な成長を目指すうえで、従業員の健康を「経営資源」として捉える視点が広がっています。

健康経営とは、従業員の健康管理を戦略的に推進し、生産性や企業価値の向上を図る経営手法です。

本記事では、健康経営の基本的な意味や導入のメリット、活用できる支援制度、実施の手順や施策例などを解説します。

健康経営とは?

健康経営は、企業が従業員の健康管理を経営戦略の一環として捉える考え方です。従業員の健康増進を通じて、生産性や企業価値の向上を図る取り組みとして注目されています。

まずは、健康経営にまつわる社会的な課題や働き方の変化について解説します。

健康経営とは経営的視点での健康管理

健康経営とは、企業が従業員の健康づくりに積極的に投資し、それを経営上の戦略として位置づける考え方です。

従来、従業員の健康は個人の責任とされる傾向がありましたが、近年では心身の健康が業務パフォーマンスや組織全体の活力に直接影響すると考えられるようになりました。

こうした認識の変化により、健康施策はもはや任意の福利厚生ではなく、「人材への投資」として位置づけられるようになっています。

経済産業省も、健康経営を戦略的に従業員の健康保持・増進に取り組む考え方として位置づけています。

参考:健康経営|経済産業省

健康経営が注目される社会的背景

健康経営が広がる背景には少子高齢化による人材不足があり、企業では限られた人材のパフォーマンスを最大限に引き出す重要性が高まっています。

また、従業員の病気や離職が企業にもたらす損失は大きく、医療費や社会保険料の増加、優れた従業員の休業・離職に伴う生産性の低下が経営を圧迫する要因にもなり得ます。

さらに、社会保障負担の増加や働き方改革の推進により、従業員の心身の健全性やワークライフバランスに配慮する企業が、社会的にも高く評価されるようになりました。

これらの潮流が、健康経営への関心を一層高めています。

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企業が健康経営に取り組むメリットは?

健康経営の導入は、従業員の健康保持・増進だけでなく、企業の経営基盤そのものにも良い影響をもたらします。

以下に、健康経営によるメリットを解説します。

従業員の活力・生産性の向上

健康経営に取り組むと、従業員の健康状態が改善され、業務への集中力や意欲の向上が期待できます。

運動促進や食生活の改善支援、メンタルヘルス対策などを通じて心身の健康が維持されると、業務効率や生産性の向上につながります。

さらに、職場環境の改善や従業員エンゲージメントの向上、チームワークの強化にも効果的です。

医療費負担や欠勤率の削減

健康経営によって、企業が負担する医療費や従業員の欠勤・休職による損失を抑えられます。

また、生活習慣病の予防や重症化防止に取り組むと、医療費の増加の抑制につながります。

さらに、健康診断の受診促進やストレスチェックの実施は、病気の早期発見・早期治療につながり、長期休職や離職のリスク軽減にも有効です。

結果として出勤率が向上し、業務の安定化や生産ロスの抑制にもつながるため、経営リスクの低減という面でもメリットがあります。

採用力・企業イメージの向上

健康経営によって従業員の健康を大切にする姿勢は、就職活動中の学生や転職希望者にとって大きな魅力です。

「健康経営優良法人」として認定を受けた企業は、「働きやすい職場」「従業員を大切にする企業」として社会的信用を得やすくなります。

このような認定は、採用活動において大きな強みとなるだけでなく、既存の従業員のモチベーション向上にもつながります。

さらに、健康経営の実績は、取引先や金融機関、投資家からの評価にも影響し、経営の健全性や将来性が高く評価される要素です。

補助金や融資などインセンティブの獲得

健康経営を進めて「健康経営優良法人」の認定を取得すると、自治体の補助金制度で加点対象となるなど、各種インセンティブを受けられる場合があります。

また、一部の地域では、認定企業に対して低金利での融資を提供する金融機関も存在します。

さらに、協会けんぽでは加入者や事業主の健康づくりへの取り組みを健康保険料率に反映する制度を導入しており、健康経営を後押しする仕組みのひとつとして有効です。

参考:保険料率|協会けんぽの事業 – インセンティブ制度

企業が健康経営に取り組むデメリットは?

健康経営は従業員の健康維持や生産性向上、企業イメージの向上など多くのメリットが期待できる取り組みです。

一方で、導入・運用にあたっては事前に把握しておきたい課題もあります。

ここでは、健康経営を推進する際に注意したい3つのデメリットを解説します。

効果が見えにくく測定が難しい

健康経営は、生産性向上や離職率低下などの効果が期待できる一方で、成果を短期間で数値化しにくいという課題があります。

健康経営施策の効果が見えにくいと、経営層への説明や継続的な予算確保に苦労するケースも少なくありません。

そこで、欠勤率や有給休暇取得率、ストレスチェックの結果など、測定可能な指標を事前に設定し、施策実施前後で比較すると、効果を可視化しやすくなります。

健康経営の取り組みは成果が現れるまでに一定の時間を要するため、短期的な数値だけで判断せず、中長期的な視点で継続する姿勢が重要です。

評価指標の設計に迷う場合は、経済産業省が公表している健康経営度調査の評価項目を参考にするとよいでしょう。

参考:健康経営度調査について|経済産業省

担当者の負担が増加する

健康経営の推進には、健康診断結果の管理やストレスチェックの実施、施策の企画・運営、効果測定など幅広い業務が発生します。

特に人事担当者が少ない中小企業では、担当者へ負担が集中しやすい点に注意が必要です。

そこで、担当者一人に任せるのではなく、人事・総務・産業医・経営層が連携する体制を構築すると、業務負担を分散しやすくなります。

また、健康管理サービスなどの外部サービスを活用する方法も有効です。

まずは従業員満足度調査やストレスチェックなど比較的取り組みやすい施策から始め、段階的に施策を拡大して無理なく運用しましょう。

さらに、施策の目的や運用手順、評価方法を文書化しておくと、担当者の異動や退職による属人化も防ぎやすくなります。

従業員の意識・参加率が上がりにくい

健康経営の制度や施策を整備しても、従業員が「自分には関係ない」「参加する時間がない」と感じてしまうと、参加率が伸びず取り組みが形骸化するおそれがあります。

従業員の意識を高めるためには、経営トップ自らが健康経営へ積極的に関わり、企業として本気で推進している姿勢を示しましょう。

また、ウォーキングイベントや健康診断結果のフィードバックなど、従業員が参加しやすい施策を取り入れると、健康を身近なテーマとして捉えやすくなります。

さらに、健康経営の目的や施策内容、参加によるメリットを社内報やミーティングなどで継続的に発信し、制度への理解を深める取り組みも欠かせません。

参加率の低い施策については内容や周知方法を見直し、従業員のニーズに合わせて改善を重ね、取り組みの定着につなげましょう。

健康経営を推進するための認定制度は?

健康経営を実施・推進する際には、公的な認定制度や表彰制度を活用すると、企業の取り組みを「見える化」し、対外的な信頼性を高められます。

ここでは代表的な制度と、その他関連する支援施策について紹介します。

健康経営優良法人認定制度

健康経営優良法人認定制度は、経済産業省と日本健康会議が2017年に開始した制度で、戦略的な健康経営を実践する企業の認定や可視化などを目的としています。

認定は「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に分かれており、企業の規模に応じた基準で審査が行われます。

審査対象は定期健康診断の受診率、メンタルヘルス対策、職場環境整備などです。

認定を受けた企業は「健康経営優良法人」のロゴマークを採用活動や広報資料などで活用でき、従業員や求職者、取引先、地域社会からの信頼向上につなげられます。

実際に健康経営優良法人認定制度の申請企業数は年々増加しており、制度の浸透が進んでいます。

参考:健康経営優良法人認定制度|経済産業省

健康経営銘柄

健康経営銘柄は、上場企業の中から特に優れた健康経営を実践している企業を表彰する制度です。

この制度は経済産業省と東京証券取引所が2014年に共同で創設しました。

健康経営に注力する企業は「人的資本への投資」を重視しているとみなされ、投資家にとっても魅力的な企業と位置づけられます。

健康経営銘柄への選定は、企業の「健康経営度調査」の結果をもとにおこなわれ、株主や市場からの評価向上につながる可能性が高まります。

この調査では、トップの関与度、従業員の健康データの活用、制度の継続性などが問われ、単なる形式的な取り組みでは選ばれません。

選定された企業はメディアなどでの紹介も多く、ブランド価値向上や社内モチベーションの醸成にもつながります。

参考:健康経営銘柄|経済産業省

その他の関連制度や取り組み

中小企業向けには、健康経営への初期ステップを支援する「健康宣言事業」があります。

健康宣言事業の取り組みは全国健康保険協会(協会けんぽ)などが主導し、企業が健康経営に取り組む意思を明文化して宣言すると、各種支援を受けられます。

宣言した企業には、専門家によるアドバイスや、健康づくりに役立つ資料・ツールなどが提供されるため、導入時の負担を軽減できる点が特徴です。

これを足掛かりに、健康経営優良法人の認定申請に進む企業も多く、導入段階での負担軽減に役立つ制度です。

また、一部の自治体や商工会議所、業界団体などでも独自に「健康企業認定」や「健康企業賞」を設けており、地域や業界内での健康経営推進を後押ししています。

これらの制度は規模や業種に応じて設計されているため、自社に合った取り組みを選びやすい点も利点です。

健康経営の始め方は?

健康経営を始めるには、企業規模や業種に関わらず、段階的なアプローチが効果的です。

次の4ステップに沿って、導入の流れを整理しましょう。

【ステップ1】経営トップによる「健康宣言」

最初に、経営トップが「健康を経営課題と捉える」という明確な方針を社内外に示しましょう。

この宣言は、従業員の意識変化や社内の体制整備に影響します。

中小企業であれば、「健康企業宣言事業」(協会けんぽ)を活用し、必要書類を提出するだけで専門的な支援を受けられるため、第一歩として有効です。

【ステップ2】現状の把握と目標設定

次に、自社の健康課題を可視化し、改善の方向性を定めます。

健康診断の受診状況、長時間労働の実態、メンタルヘルス不調の傾向などを分析したうえで、「受診率100%」や「禁煙率の改善」といった具体的な目標を設定しましょう。

取得したデータはKPIとして数値化し、経営計画に組み込むと、進捗管理が容易になります。

【ステップ3】施策の実行と定着

さらに、設定した目標に基づき、職場環境の改善や運動促進プログラム、メンタルヘルス支援、栄養指導などの健康施策を具体的に実行します。

実施にあたっては、安全衛生委員会や人事部門が中心となり、従業員の声を反映しながら進める意識がポイントです。

施策を社内報や説明会で継続的に周知し、社内文化として根付かせる工夫が求められます。

【ステップ4】検証と改善のサイクルを回す

施策を継続するには、定期的な評価と改善が不可欠です。

KPIの達成度やアンケート結果、欠勤率の変化などをもとに効果を検証し、その結果を踏まえて施策を見直しながら、より現場に適した内容へ改善していきます。

PDCAサイクルを継続的に運用し、健康経営の質を高め、継続可能な施策を実現しましょう。

健康経営の具体例は?

健康経営を実践する際には、従業員の健康維持・増進を目的とした計画的な施策の推進が求められます。

ここでは多くの企業で活用されている代表的な施策例を紹介します。

身体的健康を支える施策

基本となるのが、従業員の身体的な健康をサポートする取り組みです。

定期健康診断の受診率向上や再検査のフォロー体制の構築、社内でのウォーキングキャンペーンやラジオ体操の導入、フィットネスジムとの法人契約などが代表的です。

また、社員食堂のメニュー改善や栄養指導の提供も、生活習慣病の予防に効果があります。

喫煙対策として禁煙外来の費用補助や分煙環境の整備も取り入れられています。

メンタルヘルス対策の推進

心の健康を守る取り組みも、現代の職場では重要性が増しています。

ストレスチェックの定期実施や、社外カウンセラーと連携した相談体制の構築、管理職向けのラインケア研修などが効果的です。

職場内での心理的安全性を高めるために、ハラスメント防止教育や定期的な1on1面談を実施する企業も増えています。

働きやすい環境づくり

長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入も、健康経営の重要な柱です。

フレックスタイム制、テレワークの活用、有給休暇取得の推進、休養制度の整備などにより、従業員のワークライフバランスを支援できます。

結果的に、過労やモチベーション低下の防止にもつながり、働きやすい職場環境の実現に寄与します。

健康経営で企業と従業員の未来を健やかに

健康経営とは、従業員の健康増進を経営戦略として捉え、企業の成長につなげる考え方です。

社員の活力が高まると、生産性向上や人材定着といったメリットが得られ、結果的に企業全体の持続的発展に寄与します。

公的な認定制度の活用や段階的な取り組みにより、どんな企業でも健康経営を実践できるため、長期的な視野で取り組みを進めましょう。


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