- 更新日 : 2024年12月24日
労務管理とは?仕事内容や必要なスキルは?
「労務管理」とは、従業員の働き方を管理する業務のことです。入社・退職時の手続き全般、勤怠管理、社会保険関連、福利厚生、健康管理が主な業務内容です。労務管理は一般的に人事部が行いますが、総務部を担当部署としている会社もあります。労務管理の従事者にあるとよい資格には「社会保険労務士」がありますが、必須ではありません。
目次
労務管理とは?
「労務管理」と類似した用語に「人事管理」や「人事労務管理」などがあります。それぞれ明確な違いはあるのでしょうか。
労務管理・人事管理・人事労務管理の違いはあるのか?
学術上、経営資源の「ヒト・モノ・カネ・情報」のうち、ヒトに関する管理分野は、「労務管理」「人事管理」「人事労務管理」のほか、「人的資源管理」という名称が使用されています。
かつてはブルーカラーは「労務管理」、ホワイトカラーは「人事管理」といった区別もありましたが、現在は特に明確な用語の区別はなされていません。ただし、学術的には、90年代以降は「人的資源管理」が使われることが増えてきました。
実務においても明確に区別されているわけではありません。ただし、企業の人事権に関わる採用、配置転換、評価など、いわゆる人事制度については「人事管理」、社会保険や勤怠管理などの諸手続については「労務管理」といった使い方がされる傾向はあるでしょう。
ここでは、それを踏まえて実務における「労務管理」について解説していきます。
労務管理はなぜ必要?
従業員は会社で働いて、その対価の支払いを受けます。労働力を提供して報酬を得るわけですが、どう働いても構わないわけではありません。ルールに従って労働する必要があり、そのルールは労働基準法などの法律を遵守したものでなければなりません。法律違反などがない、適切な働き方であるようにすることが労務管理です。労働者の権利・健康を守るため、会社の法令遵守のため、労務管理はしっかりと行われる必要があります。
労務管理を行う部署
労務管理は一般的に人事と合わせて人事部で行われています。しかし、人事制度関係と切り分けて総務部で行う会社もあります。また勤怠管理については、各部署によって行われる場合もあります。
労務管理の業務内容
労務管理は、労働者が会社で働くことに付随して必要になる仕事で、業務の種類・内容は多岐にわたっています。会社の規模や業種によって手法などの細かな点は異なりますが、内容的に大きな差異はありません。基本となる業務内容は以下の通りです。
就業規則の作成・提出
常時10名以上の労働者を雇用している会社には、就業規則の作成及び労働基準監督署への届出が義務付けられています。労働基準法で規定されていて、違反すると罰則があります。労働基準法は就業規則に記載する内容についても定めていて、絶対的記載内容とされているものは必ず定めておく必要があります。
また就業規則は作成・届出だけでなく、従業員に対して周知する義務があります。本社だけでなく、10人以上の労働者がいるすべての事業所に備えつけるなどの方法で知らせなければなりません。怠った場合、その事業場の就業規則は有効とならないため、十分な注意が必要です。
入退社管理・雇用契約
労働者を雇い入れた際に行う入社処理、退職時の退社処理もしっかりと行い、また管理も徹底することが求められます。会社には「法定三帳票」と呼ばれる3つの帳票の備え付けが求められています。労働者名簿・賃金台帳・出勤簿がこれに当たり、労働者名簿には従業員の氏名・生年月日・入社日などを記入し、事業所に備え付けなければなりません。
雇用契約の締結・管理も、労務管理の仕事です。正社員をはじめとしてアルバイト、パート、嘱託社員など雇用形態にはさまざまなものがあります。一人ひとりについて契約期間、給料、その他の条件を管理し、契約の通りに就業させることは、労務管理のなかでも非常に重要な業務だといえます。
給与計算・各種保険の管理
給与計算は労務管理のなかでも、もっとも重要度の高い仕事です。給与計算は正確に行われなければならず、また支払日を守ることも求められます。全ての従業員に対して支払日に正確に給料を支払うことができなければ、社内外からの信用が失われて大きなダメージとなる恐れがあります。給与計算は小さなミスも会社にとって大打撃となりかねない、非常に重大な仕事です。
各種保険の管理も重要です。雇用保険・健康保険・厚生年金保険の被保険者要件は、法律で定められています。要件を満たしているのに被保険者として取り扱わなかったり、手続きにミスがあったりすると、法律違反となります。コンプライアンスの問題になるため、しっかりとした管理が求められます。
勤怠管理・安全衛生や健康の管理・福利厚生の検討
勤怠管理は給与計算に直接に影響する仕事です。しっかりと行い、また健康を損なう長時間労働などがないようにする必要があります。有給休暇の取得促進にも、会社としての前向きな取り組みが求められています。
安全衛生や健康の管理も不適切だと労災につながります。職場の安全を維持するよう、労務管理の徹底が求められます。
従業員がやりがいを感じて働けるようにすることも、労務管理業務の一環です。これには福利厚生の充実があたり、より自社に合う福利厚生サービスを導入することが大切な業務とされます。
年末調整に関する業務
その年に支払う最後の給与で行う年末調整に関する業務も、労務管理の一つです。年末調整では、従業員から扶養控除申告者などの提出を受け、記載内容に基づく控除を適用して所得税計算を行っていきます。正確な所得税納付のためには正しく申告しているかどうかをチェックしなければならず、労務管理として重要な業務の一つだということができます。
労務管理で必要なスキル・学べるスキル
経理を担当する場合には、簿記のスキル、事務の仕事をする際にはパソコンのスキルがあったほうがよいとされます。労務管理に従事するならば、どのようなスキルが求められるのでしょうか?学べるスキルと合わせてご紹介します。
労務に関連する業務知識・法律など
労務管理には、多くの法律が関連しています。法律違反を犯さないようにするためには、これらの関連法律について十分な知識が求められます。労務管理に関係する法律は、労働基準法をはじめとして労働安全衛生法や労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法などです。
これらの知識は業務を担当していくうちに経験として身につくほか、担当する役所とのやり取りから学ぶことができます。
HR関連のサービスに関する知識
HRは「Human Resource」の略で、人的資源という意味で使われます。HRは主に人事が担当する業務ですが、サービスの一部については労務管理の業務となります。このため労務管理の従事者には、HR関連のサービスに関しての知識が必要になったり身についたりします。
労務管理に資格は必要?
労務管理は、とくに何かしらの資格持っていなければできない・行ってはいけないという業務ではありません。前述したような知識やスキルは必要とされるものの、必要不可欠なものは業務をこなしながら身につけることができます。しかし以下のような資格もあり、取得すると深い知識が得られ、自信を持って円滑に業務が遂行できるでしょう。
- 社会保険労務士
労働・社会保険の問題の専門家として、労働保険・社会保険諸法令に基づいて、労務管理や行政機関に提出する提出書類や申請書等を依頼者に代わって作成すること、個別労働関係紛争の解決手続(調停、あっせん等)の代理を行うことなどを業とする国家資格です。企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなど、業務の内容は広範囲にわたります。
会社の責務として労務管理をしっかりと行おう
労務管理はここ数年、重要性が注目されている業務です。働き過ぎによる心身の健康への悪影響は社会的な大問題であり、会社には労働時間の法令遵守などに対して厳しい目が向けられています。また働き方改革によって多様な労働のあり方が認められる社会になりつつあり、そういった職場づくりも企業の責務とされています。従業員それぞれの事情に合わせた働き方ができるよう工夫や配慮をすることが会社には求められ、適切な労務管理がされていなければ、このような求めに応じることはできません。
このような社会的な面以上に、労務管理は会社にとって非常に重要な業務です。労務管理が適切に行われていないと、労働法違反や労災発生などが引き起こされます。従業員のモチベーション低下にもつながり、経営にも悪影響が及びます。しっかりとした労務管理を行うようにしましょう。
よくある質問
労務管理とはなんですか?
従業員の働き方を管理する業務のことです。 詳しくはこちらをご覧ください。
労務管理に資格は必要ですか?
資格は必ずしも必要ではありませんが、あると好ましい資格には社会保険労務士があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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