• 更新日 : 2024年11月22日

所得税のかからない手当とは?給与以外で非課税となる手当の項目一覧

会社が支給する給与に含まれる特別手当には、所得税が非課税となる手当があります。また、子育てにまつわる社会的な支援の項目も、所得税がかからない手当です。

本記事では、所得税のかからない手当を、非課税項目の手当を一覧としてご紹介します。給与の税金計算を担当する人事労務担当者は、課税対象と非課税対象の理解に役立ててください。

所得税のかからない手当とは?

給与に含まれる所得税のかからない手当とは、国税庁が定める手当のうち特定の条件を満たす場合に非課税とされる手当のことです。国税庁では、手当の一部を非課税として認めています。

  • 通勤手当のうち、非課税限度額内のもの
  • 転勤や出張などのための旅費に含まれる通常必要と認められるもの
  • 宿直や日直手当に含まれる一定金額以下のもの

通勤手当の場合は、1カ月の通勤定期代に「最も経済的かつ合理的な経路および方法」という条件で判断します。

社会支援への手当と給与計算で必要な非課税手当の違い

所得税のかからない手当は、社会的な支援にあたる手当と給与計算で必要な非課税手当があります。社会支援への手当は、社会保障制度として子ども・子育て支援法の制定に伴う資産調査や保険料の拠出(負担)のない国税や地方税を財源にした手当です。

一方の給与計算で必要な非課税手当は、前項で紹介した通勤手当や転勤や出張などの旅費、宿直や日直手当の条件で定められる部分に該当します。給与計算で必要な非課税手当は、条件と照らし合わせて非課税となる範囲が決められている点が特徴です。

社会的な支援による所得税のかからない手当

社会的な支援による所得税のかからない手当には、以下のものがあります。

社会的な支援による所得税のかからない手当概要
児童手当児童の養育者に支給される手当
児童扶養手当児童を育成するひとり親家庭などの生活安定や自立促進を目的に支給される手当
遺児手当都道府県や市区町村が実施する遺児となった義務教育課程の児童を養育している人に支給される手当
遺族手当遺族年金制度(厚生年金保険加入者)

  • 現役世代の被保険者が死亡した場合に生計を維持されていた配偶者や子に対する給付金
  • 高齢の遺族配偶者が調整のうえで受け取れる給付金
失業手当失業した際に加入していた雇用保険から受け取れる手当(失業保険)

出典元:こども家庭庁「児童手当制度の概要」

こども家庭庁「児童扶養手当の概要」

厚生労働省「遺族年金制度」

公益財団法人生命保険文化センター「失業したら雇用保険はどのようにして受け取る?」

をもとに作成

児童手当

児童手当は、子ども・子育て支援を目的として給付される手当です。支給対象となる児童は、0歳〜18歳に達する日以降の最初の3月31日までの期間の子どもが該当します。児童手当の主な目的は、児童を養育する家庭の生活安定や成長支援であり、子どもが出生して15日以内に居住市区町村への申請が必要です。

児童扶養手当

児童扶養手当は、父または母のどちらかと生計をともにしている児童を養育するひとり親家庭の生活安定と自立促進のために支給される手当です。18歳に達する日以降の最初の3月31日までの期間の子どもを監督・保護するひとり親が支給対象となります。

遺児手当

遺児手当とは、都道府県や市区町村がそれぞれに定めた内容で遺児の養育者に支給される手当です。例えば、愛知県による遺児手当では父または母の死亡だけではなく、婚姻を解消した際の児童を養育する人も支給対象となっています。ただし、児童入所施設入所の児童や里親に委託された児童などは、給付対象外です。

遺族年金

遺族年金とは、国民年金や厚生年金保険加入者が一定の条件を満たすことで、遺族が受給できる公的年金制度です。遺族が受給できる年金は、国民年金保険から給付される遺族基礎年金や厚生年金保険から給付される遺族厚生年金などがあります。遺族年金は、事業所が支給する給与ではなく、公的年金制度に基づく給付であり、非課税の対象です。

失業給付

雇用保険加入者は、失業した際に雇用保険の失業給付が受けられます。失業給付にあたる基本手当は、被保険者が一定の要件を満たすことで受給可能な給付金です。基本手当の受給要件は、通常の離職であれば離職前2年間で被保険者期間が12カ月以上となっています。ただし、失業給付は非課税となるため、確定申告は不要です。

給与以外の所得税のかからない手当の種類一覧

給与以外の非課税となる手当には、以下の種類があります。

給与以外の非課税となる手当非課税となる部分
交通費・通勤手当事業所の給与以外で通勤や移動にかかる費用として支給する手当(交通機関、有料道路の利用、自動車・自転車の利用、交通機関の通勤用定期乗車券など)の一定金額以下の部分
出張手当・転勤手当事業所の役員や従業員が出張や転勤などの目的で利用した旅費、宿泊費、日当などに対して支給する手当(通常必要であると認められる部分)
宿直手当・日直手当事業所から支給される給与のうち、宿直や日直に該当する料金の一定金額以下の部分
在宅勤務にかかった費用事業所の従業員が在宅勤務に要した費用(事務用品や環境整備、通信費など)は非課税対象
研修費(知識・技術の取得)事業所の役員や従業員が職務に必要な知識・技術の向上のための研修や資格取得などにかかった費用
食事手当事業所の役員や従業員に支給している食事に対しての非課税となる部分(一定の条件を満たしている部分)
結婚・出産などの祝金事業所の役員や従業員の祝い事(結婚・出産など)に対して支給する祝金(一般社会の常識として相応と認められれば非課税)
葬祭料や見舞金葬祭費用や香典、災害時のお見舞金などは一般社会の常識として相応と認められれば非課税
社員寮や社宅事業所の従業員に社員寮や社宅を貸した場合は、一定の賃料を受け取っていれば非課税
海外渡航費会社の役員や従業員が海外渡航にかかる費用(事業運営上必要であると認められる部分は経費とみなされる)
死亡退職者の給与事業所の役員や従業員が死亡した場合、死亡後の支給期に該当する給与は給与所得ではなく相続税の課税対象となる

交通費・通勤手当

交通費・通勤手当は、事業所への通勤や営業活動に必要な移動などに発生する費用に対して支給される手当です。通勤や移動は、事業所の所在地によりさまざまな交通手段や通勤用の交通用具などの利用に対して手当が支給されます。それぞれの交通費・通勤手当には、次の限度額までが非課税の範囲です。

交通費・通勤手当の種類非課税範囲
交通機関や有料道路利用者に支給する手当1カ月あたりの合理的な運賃の限度額15万円まで
自動車や自転車などのマイカー通勤に対して支給する手当片道55km以上の通勤距離31,600円まで
片道45km以上55km未満の通勤距離28,000円まで
片道35km以上45km未満の通勤距離24,400円まで
片道25km以上35km未満の通勤距離18,700円まで
片道15km以上25km未満の通勤距離12,900円まで
片道10km以上15km未満の通勤距離7,100円まで
片道2km以上10km未満の通勤距離4,200円まで
片道2km未満の通勤距離0円

交通機関利用者に支給する通勤用定期乗車券

1カ月あたりの合理的な運賃の限度額15万円まで

マイカー通勤だけではなく交通機関も利用する人に支給する通勤手当と通勤用定期乗車券

1カ月あたりの合理的な合計額が15万円まで

出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」 をもとに作成

出張手当・転勤手当

出張や転勤などの目的で利用した旅費、宿泊費、日当などの手当は、通常必要であると認められる部分が非課税となります。出張手当・転勤手当は、限度額が定められていません。支給した手当が必要と認められる範囲が非課税の対象です。

宿直手当・日直手当

宿直手当・日直手当は、料金の一定金額以下の部分が非課税となります。一定金額とは、宿直や日直1回の勤務で支給される給与4,000円までの部分(勤務時の食事代を控除した額)です。ただし、次の条件の宿直や日直の場合は、非課税には該当しません。

  • 休日や夜間の留守番を業務として雇用された人による留守番勤務
  • 通常の勤務時間に宿直や日直を行った場合
  • 宿直や日直の給与が通常の給与額に比例した金額の場合

在宅勤務にかかった費用

在宅勤務に要した費用は、事務用品や環境整備、通信費など実費相当の金額を清算する形式であれば、非課税対象です。ただし、企業が在宅勤務をする従業員に対して支給する在宅勤務手当(毎月6,000円など)の場合は、費用ではなく給与とみなされるため、課税対象です。

非課税となる在宅勤務にかかった費用は、従業員宅で活用するインターネット回線やパソコン、プリンターなど貸与や合理的な計算による現金支給などで対応します。

研修費(知識・技術の取得)

研修費は、職務に必要な知識・技術の向上を目的にかかった費用が非課税となります。課税か非課税かを判断する要素は、研修費が知識や技術の取得として適正であるか否かです。ただし、研修内容が企業の業務や将来的に必要でないものとみなされる場合、非課税と認められない場合があります。

食事手当

事業所の役員や従業員に食事を支給している場合は、一定の条件を満たしている部分が非課税となります。食事手当が非課税となる条件は、次の2点です。

  • 食事手当を支給する役員や従業員が食事にかかる費用を半分以上負担している場合
  • 「食事の価額から役員や従業員が負担している食事価額を差し引いた金額」が1ヵ月あたり3,500円(消費税などを除く)以下の場合

結婚・出産などの祝金

結婚・出産などに対して支給する祝金は、一般社会の常識として相応と認められれば非課税となります。結婚や出産などの祝金は、一般社会の常識だけではなく、支給を受ける役員や従業員の地位も照らし合わせる必要があります。

参考:国税庁「法第28条《給与所得》関係」

葬祭料や見舞金

葬祭費用や香典、災害時のお見舞金などは一般社会の常識として相応と認められれば非課税となります。葬祭料は、労働基準法第8章および第79条、第80条、令第30条で規定する非課税所得とみなされます。

社員寮や社宅

従業員に社員寮や社宅を貸した場合、賃貸料相当の50%にあたる一定の賃料を受け取っていれば非課税です。ただし、従業員が直接契約している賃貸住宅に対して、住宅手当が現金で支給されている場合は課税対象となります。

海外渡航費

海外渡航費は、法人の役員や従業員が海外に渡航した際の旅費などが会社の経費としてみなされます。ただし、観光渡航や団体旅行のツアーを利用した渡航などは海外渡航費に該当しません。また、業務遂行上必要と認められた海外渡航費の航空券代金の消費税は、免税対象となります。

死亡退職者の給与

死亡退職者の給与は、死亡後の支給期に該当する給与が相続税の課税対象となります。そのため、給与計算の際は、死亡後の支給期に支払った給与を源泉徴収票の支払い金額に含めません。課税区分が死亡退職した人の相続人になるため、給与を支払う事業所にとって所得税のかからない給与とみなされます。

各種手当に関する注意点

所得税のかからない各種手当は、給与計算の際にいくつか注意すべき点があります。各種手当は、非課税になる条件や限度額が設定されているため、正しく理解することが重要です。

手当の計算において課税と非課税の取り扱いが必要な場合は、各種手当の正確な非課税となる条件や限度額を理解しなければなりません。また、条件や限度額は改正されることもあるため、定期的な確認が必要です。

所得税のかからない手当の非課税となる範囲を理解しよう

従業員の給与計算では、給与に含まれる所得税のかからない手当の非課税となる条件や限度額などの理解が求められます。

所得税のかからない手当には、事業所が支給する手当以外にも社会的な支援目的で給付される手当もあります。社会的な支援目的の手当は、国税や地方税などから給付されるため、給与計算上で非課税対象となる手当ではありません。

給与計算上で課税や非課税を判断する手当は、各種手当の要件を確認する必要があります。今回紹介した各種手当の非課税限度額などを給与計算時の参考にしてください。


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