• 更新日 : 2024年4月5日

MBBとは?MBOとの違いやメリット・デメリットを解説!

従業員の参画意識やパフォーマンスを高めながら企業が成長していくためには、従業員の自主性を促すマネジメントを機能させる必要があります。自主的に行動することで、従業員がモチベーションを持ち続けながら企業にとって必要な成果を創造するからです。そのことを実現するための方法の一つとして、近年、MBBが注目を浴びています。

MBBとは?

MBBとは目標管理制度の一つであり、上司と部下が仕事に関する思いや価値観をぶつけ合い、共有することで、組織や個人の成長を促します。Management By Beliefの略であり、「思いのマネジメント」とも呼ばれています。

MBOとの違い

MBOは、業務に関する目標を上司と部下が話しあった上で設定し、設定した目標の達成度を評価する形の目標管理制度です。対して、MBBは、「自分は、この仕事を通じてどうなりたいのか」などの部下の思いを目標に反映する形の目標管理制度です。両者の違いは、個人の思いが色濃く反映されているかいないかにあります。

MBBの意味と目的

MBBは、従業員の自発性を高めることを目的としています。従来型の目標管理制度(MBO)では、部下の思いよりも組織として必要なことが優先されてしまう運用が少なくありませんでした。そのため、部下が目標を押し付けられたと感じてしまい、行動に結びつかないこともありました。
MBBには、部下の思いを反映させた目標を設定することで自主的な取り組みを促し、部下の成長と組織に必要な成果の実現につなげていくという意味があります。

MBBが注目される背景

MBBが注目される背景には、個を尊重することでイノベーションを生み出す経営が重要であるという考え方が広まったことがあります。

終身雇用制度や年功序列制度の衰退

時代の移り変わりとともに、日本の伝統的な雇用慣習であった終身雇用制度や年功序列制度が衰退していきました。それに伴い、「従業員の忠誠心を高めながら協調性を強化する」ことを目的としたマネジメントも機能しなくなってきています。

成果主義が主要になってきた

インターネットが普及し経済のグローバル化が進展したことで、企業を取り巻く経営環境が変化するスピードが速まっています。それに伴い、企業間での競争も激化しています。
そのような中で、企業が生き残り成長していくためには、個人が経営の方針に沿った成果を生み出さなければならなくなりました。

目的管理制度が注目されるのに伴い

成果主義を補完する仕組みとして、目標管理制度が注目されるようになりました。しかし、従来型の目標管理制度には「組織に必要な成果の実現を重んじる」「上から押し付ける」といったような運用も多く見られました。そのため、従業員のモチベーションを低下させてしまうことがありました。

人材のグローバル化

経済のグローバル化の進展に伴い、国内で働く外国人労働者の数が増え続けています。そのような中、外国人労働者を活用していくために価値観の多様性を尊重するマネジメントの導入を考える企業の数が増えてきました。それに関する手法の一つがMBBです。
参考:「外国人雇用状況」の届け出状況まとめ(図1-1)|厚生労働省

MBBを導入するメリット

MBBには、MBOの弱点を補完しつつ個人や組織の成長を促すことができるメリットが存在します。

MBOと相乗効果が狙える・MBOの弱い部分の補填

MBOは「組織に必要な成果の実現を重んじる」ことが前提とされていたため、部下が押し付けられていると感じてしまう弱点が存在しました。
一方、MBBは個人の思いを目標に反映させるため、押し付けられたと感じさせるような課題は払しょくされます。さらに、個人の思いを反映させた目標の達成が組織に必要な成果の実現につながるようにすることで、MBOとの相乗効果を得ることができます。

リーダーシップの養成

組織のリーダーには、部下に対して行動することを働きかけ、組織に必要な成果の実現と部下の成長を促す役割があります。

MBBを運用することで、リーダーと部下が思いを共有し、部下の自主性を引き出すことが容易になります。そうなることで、前述した組織のリーダーとしての役割を果たしやすくなります。

組織の強化につながる

組織のリーダーと部下が思いを共有し合うことで、組織と部下が共通の目的を持って行動することができるようになります。そうなることで、組織の風通しが良くなります。
さらに、自己の思いを実現させることが組織に必要な成果の実現につながることを認識した部下のモチベーションが高まります。それらのことが、組織の強化へとつながっていきます。

イノベーションが促進される

個人が自主的に考えて行動することで、組織にイノベーションが生まれやすくなります。従来にはなかったビジネスモデルや業務プロセス、技術などが創造されることが、経営力の強化につながっていきます。そのことが、企業の存続と成長を促します。

MBBのデメリット

MBBは、個人の思いを尊重した上で組織と個人が思い(価値観)を共有することを前提としたマネジメント手法です。その前提が確立されない場合、機能させることが難しくなります。

ビジョンが明確でない場合は効果が発揮されない

組織としてのビジョンが明確になっていないと、組織として進むべき方向性を組織の構成員である個人に示すことができなくなります。そうなった場合、個人の思いと組織の思いを合わせることができなくなり、MBBを機能させることが難しくなります。

チームメンバーの意見がバラバラだと機能しない

チームメンバーの意見が統一されていないと、組織としての考え方や方針を組織内に浸透させることができなくなります。そうなった場合、組織として足並みをそろえた活動を行うことができなくなり、MBBを機能させることが難しくなります。

MBBを実施する際のポイント

MBBを機能させるためには、従業員が積極的に目標に取り組むことのできる環境を築くことがポイントになります。

目的意識を明確に持つ

従業員が目的意識を持つことで、積極的に目標に取り組むようになります。そのために、設定した目標や自己の業務に取り組むことがどのように自己の追い求めることにつながっていくのかを理解させることが効果的です。

シャドーワークと上手く組み合わせる

積極的な取り組みを促すために、就業時間内に自主的に生み出した業務に取り組むことを容認することが効果的です。自己の思いが反映された目標を実現させるために必要な「報酬にはつながらない影の業務(シャドーワーク)」を尊重する姿勢を示すということです。

ワークライフインテグレーションを重要視する

私生活で自己の価値観に基づいて行動することとMBBによる目標への取り組みを同じ次元のもとで行うことが効果的です。仕事と私生活を統合すること(ワーク・ライフ・インテグレーション)を重要視します。

MBBを導入する際の手続き・流れ

MBBは、以下の手順で導入するとスムーズに運用できます。

① 導入のための環境を整備する

従業員が自主的にチャレンジして結果が評価されることでモチベーションを高めることのできる環境を整備します。結果を出した従業員を表彰し、あるいは結果を出した従業員にインセンティブを支給するなどの制度を導入することが効果的です。

➁ 目標設定を行う

MBBの導入に効果的な環境が整備された後に、個人の目標を設定します。目標は、個人としての目標や価値観と仕事として目指すこととが融合した内容にします。そうすることで、従業員のモチベーションが向上します。

③ 既存のフレームワークを使用する

目標を達成するために必要な要素や手順、対応などを明らかにした上で上司と部下が共有する目的で、既存のフレームワークを活用します。思考や情報などの流れを可視化するための「マインドマップ」、思考を整理するための「マンダラチャート」などがあります。

④ PDCAサイクルを確立する

目標を設定した後は、PDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実行)、Check(検証)、Action(改善))による進捗管理を行います。定期的に結果を検証し、必要に応じて計画を修正することを繰り返すことで、目標達成の精度が向上します。

MBBによる目標の立て方

MBBは新しい概念であるため、現段階では公表されている取り組み事例は見当たりません。しかし、目標の立て方に関して次のような対応が考えられます。

社会貢献をしたいという個人の思いを目標に反映させる

そのことが会社自体の社会貢献に通じる製品やサービスを生み出すことにつながり、企業イメージ向上という成果を実現させることが考えられます。

特定のモノを作る経験を積みたいという個人の思いを目標に反映させる

そのことが会社自体の新技術獲得やノウハウ蓄積につながり、市場での競争に打ち勝つ製品の開発という成果を実現させることが考えられます。

組織としての成長の鍵を握るのが個人の自主性

組織としての成長を果たすためには、組織が求める成果を明らかにした上で実現し続ける必要があります。そして、組織の成果は、個人の成果の蓄積の上に成り立っています。
そのため、個人の成果の実現を促すためのマネジメントが必要になるのですが、自主性を確立することでマネジメントが機能しやすくなるのです。


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