• 更新日 : 2025年1月20日

怒鳴るのはパワハラ?適切な指導との違いや対処方法を解説

仕事で指導をしたものの、何らかの理由で怒りの感情をコントロールできなくなり、結果的にパワハラに該当してしまったケースもあるようです。

本記事では、職場で怒鳴ったことでパワハラとなる事例を交えながら、適切な対処法について解説します。

怒鳴るのはパワハラ?

パワハラとは、次の3つの要素を全て満たす言動を指します。

  • 優越的な関係を背景としている
    ⇒ 行為者に対して抵抗したり拒絶したりすることができない場合
    職位の上下だけに限りません。職位の上下だけでなく、専門スキルの高さなども該当する場合がある
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
    ⇒ 業務上の必要性がなく、かつ、仕事の上のものとしては度を越した状態
    同じことをしつこく繰り返すなどの場合も行き過ぎた行為とみなされる
  • 就業環境が害されている
    ⇒ 言動によって身体的・精神的苦痛を受け、就業に支障がきたす状態

怒鳴るという行為は、一般的に業務上の必要性がなく、業務にふさわしい行動でもありません。多くの場合、相手を威嚇する目的となっているため、相手への精神的な攻撃となり、就業環境が害される可能性が生じます。このような観点から考えてみると、パワハラに該当する可能性が高いと言えるでしょう。

怒鳴るのがパワハラと認定された事例

ここでは、部下を怒鳴る行為がパワハラに該当すると認定された事例を紹介します。

【名古屋地判(2014(平成26)年1月15日)】

設備や機械を損傷するミスが重なった従業員に対し、上司が「ばかやろう」「どうしてくれるんだ」などと怒鳴ったうえ、損害を家族で弁償する旨を記載した退職願を強制的に書かせたケース。

⇒判決では、怒鳴る行為は、仕事上のミスに対する叱責の範囲を超えており、パワハラに該当すると認定。退職願についても不法行為であると認定した。

仮に従業員に問題があった場合でも、人格を否定するような言動はパワハラです。

怒鳴るパワハラと業務上の適切な指導の違い

指導のつもりで怒鳴っても、それが少しも指導にならないのは、指導の目的を見失い、自分の感情を制御できていないことの表れです。ここでは、怒鳴るという行為と、適切な指導の違いについて解説します。

「怒鳴るパワハラ」は業務上の必要性や相当性の範囲を超えている

怒鳴るパワハラとは、職場での優越的な立場を利用して、業務上の必要性や相当性を超えて大声で相手を圧迫し、精神的、身体的な苦痛を与えるなど仕事に支障をきたすといった行為です。5分、10分という長時間にわたって怒鳴り続ける、同じことを繰り返し大声で張り上げる行為は、パワハラと認定される可能性が高いと考えられます。

「指導」は客観的な事実を指摘し、具体的な改善方法を伝える

「指導」とは、相手の成長を支援するためのものです。どこでミスをしたのか、なぜそれが誤りなのかといった事実を確認し、その改善策を的確に伝えるからこそ、指導の効果が見られるのです。

医療現場や工事現場など小さなミスが命取りになるところでは、時には厳しい指摘・指導や物言いがあってもやむを得ないとの判例もあります。

怒鳴られた場合の対処法

被害者の業務や人間性に問題がある場合でも、人格を否定するような言動はパワハラに該当します。ここでは怒鳴られた場合にしておきたい対処法を解説します。

原因を確認して自分の態度を振り返る

怒鳴られることには何かしらの理由があると考えられます。例えば、あってはならないような重大なミスを犯したとか、同じようなミスを繰り返していながら少しも改善を図る努力をしていない、または自分自身に課題がある場合などです。まずは、仕事の進め方や仕事に対する姿勢を反省してみることも不可欠です。

証拠を記録しておく

怒鳴られる理由に心当たりがない場合、犯したミスに対し過剰な怒鳴り方の場合、何かにつけて頻繁に怒鳴られる場合などは、パワハラの兆候かもしれません。どのような理由でどんなことを言われたのかを、できるだけ詳しく記載し、日付、時刻、場所、その時に人物について記録しておきましょう。可能であればスマートフォンを使って音声なども記録しておくと効果的です。

人事や各窓口に相談する

怒鳴られることが繰り返されるようであれば、証拠になるものをそろえたうえで、パワハラ相談窓口または人事セクションに相談しましょう。相談を先送りしてしまうと、相手の行動がエスカレートするリスクが高くなります。なお、強い苦痛を与えるような怒鳴り方であれば、1回だけであっても就業環境を害する行為と判断されるでしょう。

落ち着いた言葉遣いは説得力を持つ!

人材育成に適切な指導が不可欠です。しかし、その指導が行き過ぎて怒鳴ってしまい、パワハラと認定されるようでは本末転倒です。自身の安全確保のために大声を出す場合や、事の重大さを理解させるために口調を強めるといった場合を除き、指導の際には怒鳴らないよう相手が納得できる話し方を心がけることが重要です。パワハラに関する3要素や6類型について十分理解することが求められます。パワハラと誤解されることがないよう、冷静かつ落ち着いた言葉遣いを意識し、相手をどう支援していくか考えてみてはいかがでしょうか。


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