- 更新日 : 2023年8月25日
リフレーミングとは?意味や効果、メリットを具体例を用いて解説
リフレーミングとは、物事や状況の見方を別の視点から捉え直すという心理学の用語です。ネガティブな事象も視点を変えることで、前向きな気持ちになったり、コミュニケーションを円滑にしたりするメリットがあります。
ビジネスでもリフレーミングは活用できます。ここでは、リフレーミングの意味や具体的な活用方法について解説します。
目次
リフレーミングとは
リフレーミングとは、物事や出来事、状況などの枠組み(フレーム)を変えることで、別の視点を持てるという心理学の用語です。有名な例え話に、「コップに入った半分の水」があります。「まだ半分ある」「もう半分しかない」という2つの視点で表現すると、同じコップの水の量でも感じ方が異なります。
理論的背景としての心理学
リフレーミングは、コミュニケーション心理学の用語です。思い込みや固定観念を別の視点から捉え直すことで、新しい見方を得る思考法を指します。リフレーミングにより物事を柔軟に捉えることで、行き詰まりを打開したり、問題を健康的なメカニズムに変えたりすることが期待できます。
コップの例は一例ですが、枠組みを変えるという思考は、さまざまなシーンで応用できます。例えば、「相手の視点に立ってみる」というのもリフレーミングの一例です。視点を変えることで、別の問題に気づく可能性があります。リフレーミングという、枠組みを変えて見直すことが、問題解決のきっかけになるかもしれません。
ポジティブシンキングとどう違う?
物事の見方を変え、ネガティブをポジティブに捉えるリフレーミングと似た言葉に、ポジティブシンキングがあります。ポジティブシンキングは、常に前向きな気持ちを保つ取組みです。
両者の大きな違いは、心の持ち様です。ポジティブシンキングでは、前向きな心は人生をより良くしていくという発想からくるため、何事も前向きに捉えることに重点が置かれます。
一方、リフレーミングは同じ物事でも見方を変えることに重きを置いており、視点をどこに置くか、枠組みをどう見直すかということがポイントとなります。リフレーミングを活用すれば、一見ポジティブな良いことに思える出来事も、何かしらの問題があることに気づくことがあります。発想の転換と考えるとわかりやすいでしょう。
リフレーミングの種類
リフレーミングは、何を見直すかによっていくつかの種類に分けられます。ここでは、リフレーミングの種類を紹介します。
出来事や状況のリフレーミング
出来事や状況のリフレーミングとは、起こった状況への解釈を見直すものです。何かしらの嫌なことやネガティブなことに遭遇したとき、リフレーミングによってポジティブな思考に転換できれば、次の行動を起こしやすくなります。
例えば、仕事で新しい企画を提案して却下され、やり直しを命じられた場合、「この仕事に向いていない」と落ち込んでしまうことがあるかもしれません。その際、リフレーミングによって視点を変えれば、「難易度の高い仕事にチャレンジするチャンスをもらえた」と良い面に気づき、前向きな気持ちになることができます。
パーソナリティのリフレーミング
性格や気質は、生まれつきのものとして、変わらないと考えてしまうことが多いものです。しかし、これらのパーソナリティーもリフレーミングの対象となります。見方を変えることで、他人の良い面に気づくことができます。
例えば、「〇〇さんは大人しくて主張が少ない」という見方を、リフレーミングすると「〇〇さんは周囲の状況をよく見て判断している」となるかもしれません。パーソナリティーのリフレーミングは、人間関係の問題の打開や、適材適所の人員配置など、ビジネスにも活用できます。
行動のリフレーミング
自分の行動もリフレーミングで捉え直すことができます。リフレーミングは、「やってしまいがちな行動」「クセ」を直す際に活用できます。
例えば、仕事で何か失敗したとき、「またやってしまった」「どうせ自分はだめだ」と落ち込んでしまうことがあるかもしれません。リフレーミングを活用すると「どうしたら失敗しなかったのだろう」「何をすれば成功していただろう」と、別の視点から行動を捉え直すことができ、問題行動の改善につながります。
リフレーミングのメリット・効果
リフレーミングは、自分の気持ちの切り替えや人間関係の円滑なコミュニケーションに役立ちます。また、ビジネスシーンでは、リフレーミングをテクニックとして身につけることで、チームビルディングや課題解決能力の向上に役立てることができます。
モチベーションがアップする
仕事で起こった出来事や事象に対して、別の見方をすることで、モチベーションアップにつながります。大変な出来事や難しい仕事も、リフレーミングすることで新しいチャレンジや成長の機会と捉えることができます。
人間関係が円滑になる
他者の短所ばかりが目についていても、リフレーミングを用いることで長所に気づくことができます。チーム内の人間関係の円滑化だけではなく、マネジメントにも必要となる重要なテクニックです。
課題解決能力が向上する
職場のメンバーがリフレーミングを活用することで、課題解決能力が向上します。なぜなら、失敗して落ち込んだ際にも、視点を切り替えることで、「成功するにはどうすれば良かったのか」「この問題点を解決できれば成功できる」と、物事を打開する改善ポイントに気づけるからです。
仕事においてリフレーミングはどう活用できる?
ビジネスの場面でも、以下のような状況でリフレーミングが活用できます。
同僚に対する印象
「同僚のAさんは仕事に対して熱意がない」
Bさんは、チームメイトのAさんに対して、仕事に熱心ではない人という印象を持っています。なぜなら、定時になるとすぐに退社してしまうからです。会社の飲み会に誘っても3回に1回しか参加しません。ときには有給休暇を使って休んでしまうこともあります。
以上の状況をリフレーミングし、AさんはBさんに対して別の印象を持つようになりました。
「同僚のAさんは仕事のマネジメントが上手にできている」
Aさんは、実は家庭の都合で早く帰る必要がありました。有給を使うのも家族のケアをするためです。決められた就業時間のなかでAさんは役割を十分にこなし、目標も達成しています。Aさんの優れたタイムマネジメント能力について、Bさんは自分も見習おうと思いました。
このように、同僚への見方が変わることでチーム内の人間関係も円滑になります。また、BさんがAさんの上司のケースでは、Aさんの評価そのものに影響します。リフレーミングを身につけることは、物事や人間関係を円滑にする重要なスキルだといえます。
仕事がうまくいかなかったとき
「自分はこの仕事に向いていないし、会社もいい環境じゃない」
Cさんは、新しいプロジェクトに対して、上司のDさんからフィードバックを受けました。そのなかには、「〇〇ができていない」というネガティブなものも多く、Cさんのプロジェクトへのモチベーションがすっかり低下してしまいました。
Cさんは、自分の能力や会社の状況についてネガティブな印象を抱いています。リフレーミングをすることで、ものの見方を変えてみます。
「成長のチャンスをもらえたんだ。Dさんにもっと指導してもらおう」
Dさんからのフィードバックのなかには、「〇〇してみたら?」「〇〇についてもっと考えてみよう」と、プロジェクトをより良いものにするためのアドバイスが含まれていました。また、Cさん自身、はじめて取り組む大きなプロジェクトです。やる気はあっても、いろいろと能力的に足りない部分を改善する必要があると気づきました。
このように、リフレーミングを用いることで、自分に足りない部分があったとしても、それを克服するための前向きな行動につなげることができます。
リフレーミングの使い方・方法
リフレーミングは、日々のちょっとしたことから実践することができます。例えば、日頃よく使う表現を言い換えてみることは、さまざまなシーンで活用できるでしょう。
- 「大人しい」→「真面目、努力家」
- 「ふざけている」→「陽気、ムードメーカー」
- 「負けず嫌い」→「粘り強い、一生懸命」
このように、ネガティブなワードをポジティブなワードにリフレーミングする訓練をすることで、物事の視点を切り替える能力を養うことができます。また、自分が他者に対して、日頃からかけている言葉も、もしかしたらリフレーミングすることで、違った印象になるかもしれません。
リフレーミングを活用し組織作りに役立てよう
リフレーミングを活用することで、コミュニケーションの方法を改善することや、自分の欠点やクセに気づくことができます。また、物事の視点を切り替える訓練は、客観的に状況を捉える力や柔軟な思考を養い、課題解決能力を向上させます。
リフレーミングは、研修のほか、日頃からいつもと違う言葉を用いたり、想像力を働かせたりすることで実践することができます。リフレーミングについて学び、職場で活用することで、人材育成や組織作りにつなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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