- 作成日 : 2022年10月28日
社会保険資格取得届とは?必要な添付書類や提出先を解説!
社会保険資格取得届は、社会保険被保険者となる従業員を雇用した場合に必要な届出です。提出先は、持参する場合は所轄の年金事務所、郵送する場合は事務センターで、資格取得日から5日以内に添付書類と一緒に書類を提出して手続きする必要があります。
目次
社会保険資格取得届とは?
社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険を総称する用語です。狭義では健康保険と厚生年金保険を指し、被保険者資格のための届出を社会保険資格取得届ということもあります。健康保険・厚生年金の適用事業所において、一定以上働く従業員が雇用された場合に必要となる届出です。
この届出を行うことで健康保険・厚生年金の被保険者となることができ、健康保険が使えるようになったり、厚生年金の給付対象となった場合には受給できたりするようになります。医療機関で受診する際に必要な健康保険被保険者証(健康保険証)の交付も、社会保険被保険者届を提出することで受けられます。
被保険者資格取得届との違い
社会保険資格取得届と被保険者資格取得届は、一般的に同じ届出を指して用いられます。社会保険資格取得届の正式名称は「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」です。略して社会保険資格取得届や被保険者資格取得届と呼ばれるため、どちらも同じということになります。
前述のように広義では、雇用保険も社会保険であるため、被保険者資格取得届は「雇用保険被保険者資格届」を指して用いられる場合もあるため、混同しないよう注意が必要です。
資格取得届に関係する事業所の区分
社会保険は事業所単位で適用され、適用事業所において一定以上働く従業員は基本的に全員が健康保険被保険者となります。適用事業所には、強制適用事業所・任意適用事業所の2つがあります。
強制適用事業所について
社会保険が強制的に適用される事業所を強制適用事業所といい、次の事業所が該当します。
- 法人
- 従業員が常時5人以上いる個人事業者による法定16業種に該当する事業所
法人の場合は、従業員が1人でもいれば強制適用事業所として社会保険が適用されます。法定16業種とは、①製造業、②土木建築業、③鉱業、④電気ガス業、⑤運送業、⑥貨物荷役業、⑦焼却,清掃・とさつ業、⑧物品販売業、⑨金融保険業 ⑩保管賃貸業、⑪媒介周旋業、⑫集金・案内・広告業、⑬ 教育・研究・調査業、 ⑭医療保険事業、⑮通信報道事業、⑯社会福祉事業・更生保護事業が該当します。
任意適用事業所について
個人事業の場合、法定16業種で常時5人未満の事業所は、任意適用事業所となります。
また、法定16業種以外の業種も任意適用事業所です。具体的には、①農林・水産・畜産業などの第一次産業、②旅館・飲食店、映画館・理美容業などの接客娯楽業、③神社・寺院・教会などの宗務業が該当します。ただし、任意適用事業所は、従業員の半数以上が社会保険の適用事業所となることを希望した場合は、事業者は任意適用の申請を行わなければなりません。厚生労働大臣に対して申請し、認可を受けると任意適用事業所となることができます。
適用外
個人事業で法定16業種で常時5人未満の事業所および法定16業種以外で任意適用の手続きをしない場合は、適用対象とならないことになります。
社会保険資格取得届の提出対象となる従業員
以下の従業員は社会保険の被保険者とされません。
- 日々雇い入れられる従業員
- 2ヵ月以内の期間を定めて使用される従業員
- 所在地が一定しない事業所に使用される従業員
- 4ヵ月以内の季節的業務に使用される従業員
- 6ヵ月以内の臨時的事業の事業所に使用される従業員
上記以外の従業員は社会保険資格取得届の提出対象となります。
社会保険資格取得届の提出手続き
社会保険資格取得届は以下の流れで提出手続きを行います。
- 社会保険資格取得届を入手する
- 従業員・会社がそれぞれ必要事項を記入する
- 提出する
社会保険資格取得届の入手
社会保険資格取得届の用紙は日本年金機構HPからダウンロードできます。
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 / 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届|日本年金機構
上記はPDF版です。ダウンロードし、印刷して記入します。印刷前にパソコンで入力できるエクセル版もあります。
従業員・会社による必要事項の記入
入手した届出用紙に記入します。
提出
社会保険資格取得届は、持参・郵送・電子申請のいずれかの方法で提出します。提出期限は5日以内、提出先は以下の通りです。
- 持参する場合:会社を管轄する年金事務所
- 郵送する場合:年金事務センター
社会保険資格取得届の記入例
社会保険資格取得届は、以下のように記入します。
参考:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 / 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届|日本年金機構
特に①~⑧は下記の点に注意して記入する必要があります。
① 事業所整理番号と事業所番号は必ず記入します。
② 事業所所在地、事業主などを正確に記入します。
③ 次の番号に○をつけます。
- 男子の場合は「1」
- 女子の場合は「2」
- 男子が厚生年金基金に加入する場合は「5」
- 女子が厚生年金基金に加入する場合は「6」
④ 健康保険・厚生年金保険に加入するとき、「1」に○をつけます。
⑤ 個人番号か基礎年金番号を記入します。個人番号を記入する際は、必ず本人の確認が必要です。基礎年金番号を記入する際は左詰で記入します。
⑥ 被保険者資格取得届年月日を記入します。
⑦ 被扶養者がいない場合は「0」に、被扶養者がいる場合は「1」に○をつけます。
⑧ 標準報酬月額を算定して、記入します。
⑨ 個人番号を記入した場合は、住所の記入は不要です。住所を記入する際はマンション名などまで記入し、ふりがなをカタカナでふります。
社会保険資格取得届の注意点
社会保険資格取得届は、従業員が健康保険・厚生年金保険の被保険者として給付を受けるためには不可欠な、重要な届出です。会社は不備がないよう注意して、提出する必要があります。
従業員が基礎年金番号の確認書類を無くしていた場合
なりすましによる健康保険被保険者証(健康保険証)の不正取得を防止するため、資格取得時の本人確認が厳格になっています。被保険者資格取得届には、基礎年金番号または個人番号(マイナンバー)の記載が必要です。基礎年金番号がない20歳未満の従業員の場合、マイナンバーの記載になります。いずれの場合も事業主が対面で本人確認(番号確認+身元確認)しなければなりません。
なお、年金手帳を紛失して基礎年金番号が分からない場合、年金手帳は令和4年3月31日をもって廃止されているため、年金事務所(郵送の場合は事務センター)で基礎年金番号通知書を発行してもらいます。また、マイナンバーカードを作っておらず、通知カードも紛失している場合は、マイナンバーが記載された住民票の写しを取得するか、住民票記載事項証明書を取得することになります。
社会保険資格取得届の提出を忘れていた場合
社会保険資格取得届の提出を忘れていたことが発覚した場合には、速やかに届出を行わなければなりません。届出の提出忘れに気づいたにもかかわらず適切な処理を行わない場合は、年金事務所による総合調査で発覚すると、最大、過去2年間に遡って社会保険料の納付義務が生じます。一度に支払う保険料は、高額になることを覚悟しなければなりません。できるだけ早く対応しましょう。
パート・アルバイトの雇用
短時間で働くパート・アルバイトでも、所定労働時間が正社員の3/4以上である場合は、社会保険被保険者となります。また、2022年10月からは社会保険の適用拡大により、以下の要件をすべて満たす場合は所定労働時間が正社員の3/4未満でも社会保険加入が必要になります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 雇用期間が1年以上であること(見込みを含む)
- 報酬が88,000円以上であること
- 学生でないこと
- 適用事業所か任意適用事業所で働いていること
60歳以上の方の再雇用
60歳の定年を迎えた従業員を再雇用する場合は、社会保険資格取得届と社会保険資格喪失届を同時に提出する必要があります。この手続きは「同日得喪」と呼ばれます。再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に決定するために行います。社会保険資格取得届と社会保険資格取得届に以下のような添付書類を添えて提出し、手続きします。
- 就業規則や退職辞令の写しなど退職したことが分かる書類
- 継続して再雇用されたことが客観的に判断できる書類(雇用契約書、労働条件通知書など)
- 事業主の証明(退職日と再雇用日が記載されている書類)
社会保険・被保険者資格取得届の手続きはしっかりと行おう
社会保険適用事業所・社会保険任意適用事業所が、社会保険被保険者となる従業員を雇用した際には、社会保険・被保険者資格取得届を提出する必要があります。社会保険・被保険者資格取得届を提出することで健康保険被保険者証(健康保険証)の交付を受けて医療機関で受診できるようになるほか、厚生年金保険の被保険者となります。
社会保険・被保険者資格取得届は、持参・郵送・電子申請のいずれかの方法で、5日以内に提出しなければなりません。遅れたり忘れたりしないよう、また記入が正確であるよう、注意を払って処理しましょう。
よくある質問
社会保険資格取得届とは何ですか?
健康保険や厚生年金保険の被保険者となったことを届け出るために欠かせない届出です。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険資格取得届の提出対象となる従業員の条件について教えてください。
適用事業所に常時使用される従業員は、社会保険被保険者届を提出する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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