• 作成日 : 2022年4月22日

給与計算の業務内容は?労務を新しく担当する方向け

給与計算の業務内容は?労務を新しく担当する方向け

給与計算の担当者は、従業員に毎月賃金を支払う役割を果たすほか、国に税金を正しく納める業務を担います。責任が大きい分、やりがいも感じられる仕事といえるでしょう。

初心者が給与計算の業務に携わる場合には、関連する知識や法律、システムの扱い方などの知識が求められます。今回は、給与計算業務の流れややりがいについて解説します。

給与計算にはどういった業務がある?

計算には、労働関係の諸法令、就業規則や雇用契約書にしたがって従業員に賃金を支払う目的と、所得税や社会保険料等の税金を正しく国に納付する目的の2つがあります。

そもそも給与計算とは、「毎月支給する給与を正確に計算して支払う業務」をいいます。具体的には、基本給や手当を合算した「総支給額」から税金など「控除額」を計算し、算出した「手取り」を期日までに支払う業務です。

給与計算の基本式

総支給額(基本給+手当)ー控除額(税金や社会保険料)=手取り(支給額)

この支給額を正しく計算するため、給与計算には以下の業務が含まれます。

  • 勤怠項目の集計・計算
  • 支給項目の計算(基本給や各種手当の計算)
  • 控除項目の計算(税金や社会保険料などの計算)
  • 総支給額の計算
  • 振込の処理
  • 税金や社会保険料の納付

給与計算では、従業員によって異なる雇用条件・労働契約に合わせ、間違いのないように処理をすることが重要です。それに加えて、月給や時給といった基本給の取り扱いだけでなく、パート・アルバイトなど雇用形態によって異なる年次有給休暇の管理や雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入手続きなど、労働関係の諸法令を遵守した給与以外の部分での知識も求められます。

こうした従業員ごとに異なる条件を確認し、ミスなく給与計算システムに反映させる正確さと知識が必要になります。

初心者や無資格者でも給与計算業務はできる?

労働基準法や税金に関する法律などの専門的な知識が求められますが、給与計算の業務を行うにあたって決められた専門資格があるわけではありません。社労士のように、労務・人事に精通したプロにアウトソーシングを依頼する例もありますが、自社の人事部や経理部で給与計算を行う会社も少なくありません。そのため、人事異動などでまったくの初心者や無資格者が突然給与計算業務に従事することになるケースも多くあります。

初心者に任せる場合は育成が必要

ただ、今までまったく給与計算業務に触れたことがない初心者が、すぐに取り組める業務かというと、そこまで簡単ではないでしょう。初心者に給与計算業務を任せる際には、「育てる」という観点が欠かせません。

はじめて給与計算の業務に従事する場合には、前任者や先輩から給与計算システムなど自社で扱う給与計算ツールの使い方を教えてもらう必要があります。また、労働時間や割増賃金の計算、年次有給休暇や産前産後休業など労働基準法を中心とした労働関係諸法令に関する知識のほか、自社の賃金体系や就業規則にある賃金規程について学ぶ機会も必要です。

給与計算業務は、労働保険や社会保険の手続き、勤怠管理などの労務管理と密接な関わりがある業務です。そのため、人事部で人事労務業務を担当した経験がある人なら、給与計算業務に馴染みやすいと考えられます。

給与計算実務能力検定とは

給与計算業務を行う上で決まった資格はありませんが、担当者を採用するにあたって、参考となる民間資格は存在します。

給与計算実務能力検定」とは、一般社団法人実務能力開発支援協会が定める民間資格です。毎月の給与計算のほか、年末調整といった幅広い業務をカバーしており、人事・経理・総務等の管理部門に関連する知識を学ぶことができます。

給与計算業務に携わったことがない人でも、この資格を取得できるレベルになれば、基本的な知識は身についていると考えてもよいでしょう。ただし、給与計算業務は、どのようなシステムを扱うかによって会社ごとに実務フローが異なります。そのため、自社が扱う給与計算システムの使用経験がある人を歓迎するケースも少なくありません。

給与計算業務のやりがい

給与計算は、会社の経営活動の根幹に関わる業務です。専門性を磨き、責任ある仕事をまっとうできる「やりがい」のある業務です。

専門スキルを身に着けられる

給与計算の業務には、正しい給与計算に求められるさまざまな知識が必要です。社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税に関する法律に加え、育児休業、介護休業、年次有給休暇、休職中の傷病手当金など、関係する制度・法律も多岐に渡ります。

会社の規模に合った給与計算業務の経験を積めるだけではなく、管理部門で欠かせない専門性を磨けるのは、この仕事に従事する魅力の一つといえるでしょう。

責任ある仕事を行う達成感が得られる

給与計算は毎月発生する業務です。「正しく処理される」ことが当たり前であり、ミスが許されない重要な業務といえます。

労働基準法第24条では、賃金支払いの5原則として以下を定めています。

  • 通貨で支払う
  • 直接労働者に支払う(親や親戚への支払いは不可)
  • 全額を支払う
  • 毎月1回以上支払う
  • 一定の期日を決めて支払う

参考:Q.賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。|厚生労働省

計算にミスがあり、過不足を給与支給日後に精算するようなことはあってはならないという心構えで仕組みを構築し、業務に取り組むべき業務です。責任が大きい分、毎月滞りなく終了したあとの達成感はかけがえのないものとなるでしょう。

会社の基盤に関われる

給与計算は事務的な仕事ではありますが、人件費や収益などの会社の基盤に関わる重要な業務です。しかも、個々の人々の働き方を支える側面もあり、残業時間や休日出勤など、法律を遵守した処理を正確に行うことは、働く人々のワーク・ライフ・バランスにもつながります。

昨今では、正社員としての働き方だけでなく、副業やフリーランスといった多様な働き方をする人が増えています。給与計算の仕事に関わる知識・実務経験を磨くことは、多様な働き方に対応することにもつながります。

給与計算業務の仕事の流れ

では、給与計算業務の実際の仕事の流れを詳しくみていきましょう。

勤怠締め

毎月の賃金締切日に合わせて、従業員の勤怠情報が正しいかどうかを確認します。欠勤や早退の抜け漏れ、残業時間が正しいかなどをチェックし、必要に応じて本人または上長に確認を取りましょう。

労働時間の集計

「勤怠締め」のあとは、給与計算に必要な労働時間を項目別に集計します。総労働時間のほか、手当がつく時間外労働、休日出勤、深夜労働の取り扱いは間違えのないよう慎重に行わなければなりません。労働時間の集計を間違えると、次に説明する給与支給額が正しく反映されないことになります。

給与支給額を計算

基本給や役職手当、通勤手当といった各種手当に、集計した労働時間をもとに計算した残業代を加えて、給与の総支給額を計算します。引っ越しによる通勤手当の変更、扶養家族構成の変化による家族手当の変更など、従業員によって変更がある項目は漏らさずにチェックしましょう。

欠勤や早退などで支給額から差し引く欠勤控除があれば、このタイミングで控除します。

保険料および税金を計算

総支給額から控除するものに保険料と税金があります。

保険料には、「健康保険」「雇用保険」「厚生年金保険」「介護保険」があります。それぞれの加入している保険ごとに保険料の計算方法や加入条件が異なるため、条件に変更がないか、保険料率に変更がないか、標準報酬月額の変更に必要な手続きに漏れがないかも合わせて確認しましょう。

給与から差し引く税金は「住民税」と「所得税」の2種類です。住民税には都道府県税と市区町村民税が含まれ、前年の所得に応じて課税されます。所得税は個人の1年間の所得に応じて課税されるものです。毎月の給与計算では「源泉徴収」という形で概算額を天引きし、年末調整で最終的な所得税額を確定させます。

振込処理

総支給額から控除額を差し引き、支給額(手取り)を計算します。賃金台帳、源泉徴収簿など必要な書類に必要事項を記載することが必要です。また、給与明細の作成と併せて従業員への振込手続きも行います。

税金の納付

従業員の給与から控除した各種保険料と税金を納付します。税金の納付期限は翌10日まで、社会保険料の納付期限は翌月末までとなっています。

給与計算業務に関わる基礎知識

給与計算業務で関連のある基礎知識について解説します。

総支給額に含まれる固定給と手当

総支給額には、基本給のように毎月の支給額が変わらない性質のものと、時間外手当のように毎月変動する性質のものがあります。これを「所定内給与」と「所定外給与」と呼びます。

  • 所定内給与:毎月決まって支給される給与のなかで、所定外給与を除いた給与を指します。基本給、役職手当のほか、家族手当や住宅手当などが含まれます。
  • 所定外給与:所定労働時間を超えて働いた給与を指し、時間外手当や深夜残業手当、休日手当などが含まれます。毎月金額が変動するため、給与計算業務ではミスのないように処理することが求められます

社会保険の算定基礎届

健康保険、介護保険、厚生年金の社会保険料は、4月から6月の賃金の平均をもとにした「標準報酬月額」によって決まります。

この標準報酬月額を見直す手続きが、社会保険料の算定基礎届です。毎年7月1日~7月10日までの間に給与計算業務担当者が、社会保険の各健保組合、年金事務所等に算定基礎届を提出します。更新された社会保険料は、9月から適用されます。

労働保険の年度更新

労働保険の年度更新とは、前年度に概算保険料として納めた「雇用保険」「労災保険」の保険料を確定した賃金をもとに計算した確定保険料と精算し、新年度の概算保険料の申告・納付を行うものです。毎年6月から手続きを開始し、7月10日までに完了させます。

労働保険料は、4月から翌3月の賃金の見込額に定められた保険料をかけて算出し、概算で前払いしています。年度更新では、この前年度の概算分を精算するとともに、新年度の概算保険料を計算して申告。納付する手続きを行います。

住民税の年度更新

住民税は、毎年1月1日に住所がある所在地で、前年の所得額をもとに金額が決定します。決定した住民税はその年の6月から翌年5月にかけて、月々の給与から天引きされます。

この住民税の金額を更新する手続きが、住民税の年度更新です。企業が毎年1月末に提出する給与支払報告書にもとづき、各市区町村より住民税課税通知書が送られてきます。その通知をもとに、年度更新を行います。

所得税と年末調整

住民税と同様、所得税も月々の給与から天引きされています。これを源泉徴収といいます。源泉徴収で控除される所得税の金額は正確なものではありません。あくまで概算のため、この差額を精算する作業として、毎年12月に年末調整を行います。

年末調整で1年間の所得額を確定させたのち、過不足の精算を行います。

参考:年末調整に関連した記事はこちらから

給与計算業務でよくあるミス

アナログな処理や、変更の反映漏れは、給与計算のミスにつながります。

扶養変更などの処理のミス

扶養家族の変更や役職手当の変動など、給与計算では従業員ごとになにかしらの変更が発生する可能性があります。こうした変更が適切なタイミングで給与計算システムに反映されていないと、ミスを招きます。

制度や法律の変更が反映されていない

社会保険料率など、給与計算に関連する法律変更がきちんと反映されていない場合も、給与計算のミスにつながります。人事関連の法令の変更を随時チェックするアンテナの高さが給与計算担当者には求められます。

保険料や日割り計算など処理のミス

介護保険料の適用タイミングや、月途中の入社による日割り計算など、通常の給与計算と異なるケースの場合、ミスが発生する可能性が高まります。対象者をきちんと確認するだけでなく、処理方法について正しい知識を身に着けることも必要です。

勤怠集計のアナログミス

給与計算のもととなる勤怠集計にも、ミスの可能性が潜んでいます。そもそもの計算方法が間違っていたり、集計時間が違っていたりすると、給与の過払い・不足の原因となります。

エクセルで計算したとしても、手書きの勤怠シートをもとに給与計算担当者がエクセルに入力するなど、アナログの業務がある場合はミスの可能性も高くなるため注意が必要です。

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適切な企業活動に、正しい給与計算業務は欠かせません。ミスのない給与計算には、知識と経験が求められます。期日までに処理を行うスピード感と正確さや、間違いを予防するための仕組みづくりなども欠かせません。

マネーフォワードクラウド給与は、毎月の給与計算を自動化するクラウド型のソフトウェアです。法令改正や増税、社会保険料の料率変更などがあった際には自動でアップデート。従業員はパソコンやスマホで給与明細を確認できるため、アナログ処理をなくし、計算ミスを防ぎます。また、ペーパレス化や業務の省力化など、給与計算業務の効率化も期待できます。

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よくある質問

給与計算にはどういった業務がありますか?

勤怠締め、勤務時間集計、総支給額の計算、控除額の計算、振込処理、税金の納付が一連の流れです。従業員に賃金を正しく支払うだけではなく、国に税金を適切に納める役割も担っています。詳しくはこちらをご覧ください。

初心者や無資格者でも給与計算の業務はできますか?

給与計算業務に、特別な資格は必要ありません。しかし、税金や社会保険といった知識や、時間外労働の割り増し賃金の計算や、年次有給休暇の取り扱い、休業・休職のケースなど幅広い知識が求められます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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