• 更新日 : 2023年9月26日

有給休暇の付与日数・タイミングは?法律上の定義を解説!

有給休暇の付与日数・タイミングは?法律上の定義を解説!

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に付与される「有給」で休むことができる(所得しても賃金が減額されない)休暇のことで、労働基準法において定められています。

年次有給休暇の付与日数は、勤続期間や所定労働日数によっても異なりますが、雇い入れの日から6か月が経過し、その期間における全労働日の8割以上出勤していれば、 10労働日の年次有給休暇が付与されます。

この記事では、年次有給休暇の付与日、付与条件、付与日数、注意点について分かりやすく紹介します。

そもそも有給休暇とはどんな制度?

年次有給休暇は、労働基準法で定めた要件を満たした場合、所定の日数の付与を義務付けている有給の休暇です。

年次有給休暇は、「年休」「有休」「有給」「有給休暇」とも呼ばれますが、どれも「年次有給休暇」を省略した言葉で、意味に違いはありません。

なお、「有休」「有給」については、「有休」は有給休暇の略で、「有給」は有給休暇の略と合わせ”給料があること”といった意味もあります。

有給休暇の付与日数は法律で定められている

有給休暇の付与日数(通常の労働者)

労働基準法 第三十九条
② 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。
引用:労働基準法|e-Gov法令検索

上記の労働基準法39条をわかりやすくまとめると、年次有給休暇の付与日数は勤続年数によって、以下のように定められています。

有給休暇の付与日数は法律で決まっている

画像:年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省

雇入れの日から勤続年数6ヵ月が経過した権利発生日(基準日)に10日、その後、勤続年数が継続していくにつれて、法律で定められた日数が付与される仕組みです。

有給休暇がもらえる条件

同じく労働基準法第39条では、次の2点を年次有給休暇の付与要件としています。

有給休暇がもらえる条件
  • 雇入れの日から6か月継続勤務
  • 全労働日の8割以上出勤

つまり、労働者がこれらの要件を満たしている場合、前述のように1年間に10日の年次有給休暇を与える必要があります。

継続勤務とは、労働者の入社日から起算した在籍期間を意味します。また、全労働日は、算定期間の総暦日数から就業規則その他により定めた所定休日を除いた日数のことです。

また、以下表の「全労働日から除く日」と「出勤日として取り扱われる日」も押さえておきましょう。

全労働日から除く日
  1. 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
  2. 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務の提供がまったくなされなかった日
  3. 休日労働させた日
  4. 法定外の休日等で就業規則で休日とされている日等であって労働させた日
出勤日として取扱われる日
  1. 業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日
  2. 産前産後の女性が法第65条の規定により休業した日
  3. 法に基づき育児休業または介護休業した日
  4. 年次有給休暇を取得した日

引用:年次有給休暇(第39条)|愛媛労働局

特に最後の「年次有給休暇を取得した日」も、欠勤ではなく出勤扱いになることは、しっかり覚えておきましょう。

有給休暇は時間単位でももらえる

労働基準法 第三十九条
④ 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
引用:労働基準法|e-Gov法令検索

近年のワーク・ライフ・バランスや働き方改革の動向を背景に2010年4月に労働基準法が改正されて、一定の要件を満たした場合に時間単位での取得ができるようになりました(法39条4項)。

(年次有給休暇は、本来、「労働者の心や体の疲労を回復し、労働力の維持培養を図るとともに、 ゆとりのある生活を実現する」という趣旨から一定日数の取得が原則となっています。よって、時間単位で付与することは想定されていませんでした。)

時間単位で付与できる要件を分かりやすくまとめると、下記のとおりです。

時間単位で付与できる要件
  1. 就業規則で時間単位での付与について定めること
  2. 労使協定を締結すること

労使協定とは、特定の労働条件などを使用者と労働者の間で締結する協定です。この労使協定は所轄の労働基準監督署への届け出は必要ありません。

これらの要件を満たすことで、年5日の範囲内で時間単位での取得が可能です。通院、子どもの学校行事への参加、家族の介護など、労働者の都合により年次有給休暇を柔軟に取得することができるようになります。

有給休暇が付与されるタイミングは入社日から半年後

労働基準法 第三十九条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用:労働基準法|e-Gov法令検索

年次有給休暇は、原則として①雇入れの日から6ヵ月経過し、②全労働日の8割以上の出勤を満たした労働者に付与され、その後は1年ごとに勤続年数に応じた日数が付与されます。

したがって、通常勤務をしていれば法律上は半年後に初回の年次有給休暇が付与されます。

有給休暇は前倒しでの付与も可能

手続きが煩雑になるのを防ぐため、労働者が不利益にならないのであれば、時期を決めて一斉に付与することも可能です。

労働基準法で定められた年次有給休暇の初回付与日は入社日から半年後ですが、それより早い時期に有給休暇を付与することは労働者にとっては不利益にはなりません。

よって、入社日に初回の年次有給休暇を付与する会社もあります。また、それ以外の条件を定めて年次有給休暇を前倒しで付与することも可能です。

有給休暇の基準日を揃えたい場合

人によって入社日は異なるため、当然付与日(基準日)は異なります。

付与日を揃えたい場合は、初回は入社日に付与し、2回目以降は例えば基準日を4月1日に統一して、全員4月1日に付与するということは従業員の不利益にならないという条件の下で可能です。

ただし、就業規則などでルールを取り決めておく必要があり、また労働者に不利益にならないように注意する必要があります。

パート・アルバイトの有給休暇の付与日数・付与タイミング

有給休暇の付与日数(パート・アルバイト*)

年次有給休暇は、フルタイムの正社員だけでなく、短時間労働者であるパート・アルバイトも対象になります。

6ヵ月間継続勤務し、8割以上の出勤率という2つの要件を満たせば、使用者は労働時間に応じて年次有給休暇を比例付与する義務があります。

比例付与の対象となる人は、1週間の所定労働時間が30時間未満で、かつ、週の所定労働日数が4日以下あるいは年間所定労働日数が216日以下の労働者です。
1週間の所定労働時間が30時間未満で、かつ、週の所定労働日数が4日以下あるいは年間所定労働日数が216日以下の労働者
画像:年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省を加工して作成

なお、図表中の太枠部分は付与日数が10日以上のため、時季を指定して取得させることが必要です。

労働時間が週20時間未満のパートは有給休暇を取得できる?

労働時間が週20時間未満でも、上記の条件を満たせば年次有給休暇を取得できます。

たとえば、週所定労働日数が2日で、6ヵ月間継続勤務し、8割以上の出勤率であれば、働き始めてから半年で3日間の年次有給休暇が付与されます。

有給休暇の時季指定義務とは

労働者には年次有給休暇をいつ取得するかを自身で決める「時季指定権」と呼ばれる権利があります。

使用者には、事業の正常な運営の妨げになるなどの場合には、「時季変更権」が認められていますが、その人しかできる人がおらず代替要員を確保できない場合や、同じ時期に有給休暇の請求が集中したような場合などに限られています。

労働基準法 第三十九条
⑤ 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
引用:労働基準法|e-Gov法令検索

年5日の有給休暇取得義務とは

2019年4月の改正によって、年次有給休暇の消化率を向上させるために使用者が時季を指定して計画的に年次有給休暇を取得させることになりました。

具体的には、すでに触れているように10日以上の年次有給休暇を付与される労働者については、そのうち年5日は、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得時季を指定する必要があります(法39条7項、8項)。

参考:年次有給休暇の時季指定義務|厚生労働省

使用者側から年次有給休暇を取得する時季を指定するというかなり思い切った法改正だといえるでしょう。少しでも確実に消化率を向上させようという政府の働き方改革の想いが反映されています。

ただし、時季指定に当たっては、労働者の意見を聞かなければなりません。さらに、できる限り労働者の希望に沿った時季に年次有給休暇が取得できるように本人の意見を尊重するように努めなければならないとしています。

有給休暇の繰越や期限

年次有給休暇の消滅時効は2年です(法115条)。有給休暇を消化しない場合、基準日から2年で権利は消滅します。

時効は、年次有給休暇が付与された日から起算しますので、前年度に付与された年次有給休暇を消化しきれなかった場合には、もう1年に限り繰り越されることになります。

例えば、新入社員であれば、入社して6ヵ月経過すれば10日間の年次有給休暇が付与されますが、例えば10日のうち6日しか消化しなかった場合には、使用者は残り4日を翌年度に繰り越す義務があります。この4日間の有給休暇は、基準日から2年後に時効消滅します。

また、年次有給休暇の消化率が低いということは、労働者は新規に付与された分と繰り越し分の両方を有していることになります。どちらを優先させるべきかが問題となります。

これについては、特に労働基準法には定めはありませんが、取得期限が先に到来する繰り越し分から取得させるのが一般的です。ただし、就業規則に別の定めがあればその規定に従うことになります。

有給休暇の上限・最大保有日数

年次有給休暇の付与日数の上限は6年6ヵ月以降、継続勤務した場合に最大20日間です。単純に考えると、繰り越せる日数の上限も20日間ということになります。

しかし、使用者はこのうち5日間は労働者に取得させる義務があるため、翌年に繰り越すことができるのは15日です。年次有給休暇の消滅時効は2年ですので、新たに発生する20日と合算して最大保有日数は35日になります。

有給休暇の給与金額の計算方法

有給休暇を取得した日の賃金の計算方法は、主に以下の3つに分かれます。

①平均賃金をもとに計算
平均賃金とは、直近3ヶ月間に支払った総賃金を総日数(休日含む)で割った額のことです。
②通常賃金をもとに計算
通常賃金とは、通常通り働いた場合の賃金で計算する方法です。

月給制ならば「月給÷その月の所定労働日数」週給制ならば「週給÷その週の所定労働日数」日給制ならば、所定の出勤日数分をそのまま適用します。

標準報酬月額をもとに計算
従業員は健康保険や厚生年金の保険料を企業と折半して納めていますが、その金額は、毎年4~6月の報酬をもとに決められています。具体的には、報酬額を32の等級(年金の場合。健康保険は50等級)に区分し、保険料を決めているのです。ここで決められる報酬額を「標準報酬月額」といいます。この標準報酬月額を日割り計算する方法です。

どの方法で計算をするかは、あらかじめ就業規則などに定めておかなければなりません。

年次有給休暇の買い上げは可能?

年次有給休暇が有給の休暇であるため、消化しない場合には会社がその分の給与を支払って買い上げる(買い取る)ことができないか、という考え方があります。

しかし年次有給休暇の趣旨は「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資する」ということですから、金銭で買い上げることは原則として認められていません。(一部例外を除き違法)
引用:年次有給休暇制度について|厚生労働省

ただし、下記のような場合には買い上げが認められる場合があります。

買い上げが認められる例外ケース
  • 法定を上回る日数が付与されていて退職時に使い切れない年次有給休暇
  • 退職時に残っている年次有給休暇
  • 消滅時効になった年次有給休暇

詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

有給休暇を取得できなかった場合の罰則

使用者(企業)は、対象となる従業員に対して、「基準日」と呼ばれる年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日間の有給休暇を取得させなければなりません。

取得義務に違反した場合、以下の3つのケースで罰則が適用される可能性があります。

罰則が適用される可能性のあるケース
  • 従業員に年5日の年次有給休暇を取得させることができなかった場合
  • 使用者による時季指定を行う場合で、就業規則に規定がない場合
  • 労働者の請求する時季に有給休暇を与えなかった場合

たとえば、従業員に年5日の年次有給休暇を取得させることができなかった場合、労働基準法第39条7項に反したとして、罰則として30万円以下の罰金が適用される可能性があります。

詳しくは下記の記事もご参考ください。

年次有給休暇管理簿とは

年次有給休暇管理簿は、労働者の年次有給休暇の取得状況を把握するための帳簿です。

年次有給休暇を10日以上付与される労働者を対象に、年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。

作成方法は自由ですが、付与日・日数・取得時期の3項目は必ず記入する必要があります。

有給休暇の取得率は?

有給休暇の取得率は、【1年間で全従業員が取得した有給休暇の日数÷企業が1年間に全従業員に付与した有給休暇の日数】で求めます。

令和4年就労条件総合調査の概況によれば、令和3年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く)において、た年次有給休暇の取得率は58.3%と、昭和 59 年以降で過去最高となっています。

その一方で、年次有給休暇の取得率がいまだ低い理由の一つとして「周囲に迷惑がかかると感じるから」が6割近いという調査結果もあります。

参考:厚生労働省「仕事と生活の調和の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書(令和3年)

有給休暇の取得率を向上させるメリット

企業が有給休暇の取得率を向上させるメリットとして、以下の項目が挙げられます。

有給休暇の取得率を向上させるメリット
  • 従業員の仕事の質や生産性、モチベーション向上につながる
  • 離職率低下や人材採用にもつながる
  • 企業としてのイメージアップにつながる

有給休暇は計画的に利用させましょう

年次有給休暇は、仕事で疲れた労働者が心身の疲れを回復するためや用事を済ませるために取得して、ゆとりを持って生活し、日常の仕事に励むことができるために必要な制度です。

会社は労働者に年次有給休暇の制度について説明し、心身のリフレッシュをしてもらえるように取得を推進していきましょう。

また、年5日取得義務に違反しないように確認しながら有給消化してもらうようにしてください。

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よくある質問

年次有給休暇が付与されるタイミングはいつですか?

年次有給休暇は、原則として雇入れの日から6ヵ月経過し、出勤率が8割以上である労働者に付与されます。その後は付与日から1年経過するごとに出勤率8割以上を満たせば決められた日数が付与されます。詳しくはこちらをご覧ください。

年次有給休暇に関する注意点はありますか?

年次有給休暇には消滅時効があります。付与日から2年経過すると消滅してしまいます。また、1年で年次有給休暇を10日以上付与された労働者は、1年のうちに5日間は年次有給休暇を取得する義務があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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