• 更新日 : 2024年3月27日

復職とは?休職から復職の流れや復職支援の取り組み、対応について解説

復職とは?休職から復職の流れや復職支援の取り組み、対応について解説

会社員生活をしていると、不慮の事故で大怪我をしたり、精神的な不調で仕事を続けたりすることが困難になるケースもあります。こうした場合、比較的長い期間の休職を余儀なくされることになります。休職していた労働者がもとの職場に戻る仕組み、それが復職です。

この記事では、復職の意味や流れ、休職から復職までの支援方法、そして復職後のフォローについて詳しく解説します。

復職とは?

まず、復職制度の意味と概要について確認していきましょう。その上で、労働者が休職する理由、復職支援の重要性について考えていきます。

復職制度とは?

企業の復職制度は、労働者が相当期間、仕事を離れた後、再び職場に復帰する制度です。復職について明確な定義があるわけではなく、「職場復帰」という言葉が使われることもあります。いずれにしても、休職中は労働契約による労務の提供義務は免除または禁止されます。労働契約自体は継続し、従業員としての籍も存続しますが、企業は給与の支払義務はありません。

育児や産前産後など、一定期間休職(休業)させ、その後復帰させることが育児介護休業法や労働基準法で義務づけられているものもあります。業務上の傷病についても労働基準法で休業中(およびその後30日間)は解雇することはできません。

法定されていない事由による休職については、企業側の任意であり、通常、就業規則で休職および復職に関する定めを行います。

労働者が休む理由

労働者が長期間休職する理由は多岐にわたります。けがによる場合は、私生活での事故や業務上および通勤途上の事故で入院するケースが典型的です。病気についても同様であり、家庭の事情でメンタルヘルス不調になることもあれば、上長のパワハラによる場合もあり、うつ病になれば長い期間の休業も考えられます。

育児休業については、育児介護休業法上、原則として1歳未満の子の育児を目的とした取得が権利として認められているため、1年程度の長期間の休職ということになります。

また、女性労働者の産休は妊娠と出産による母体保護を目的とし、労働基準法により、企業側には産前6週間(多胎妊娠は産前14週間)、産前8週間の休業付与が義務づけられています。

復職支援の重要性

私傷病であれ、業務上や通勤途上の傷病であれ、休職中の給与については企業側に支払義務はありません。育児休業中も同様です。その間の生活保障は、健康保険、労災保険、雇用保険などから所定の給付が支給されることになります。

しかし、こうしたことよりも、労働者にとっては治癒後に復職し、引き続きキャリアを築いていくことが何よりも大切になります。また、有能な労働者が再び事業に貢献している姿は他の労働者のモチベーションアップにもつながり、職場の活力維持にも効果があります。

そのためには、休職制度も設けておきましょう。労働者に一時的な労務提供の猶予を与えて療養に専念させるとともに、休職事由がなくなれば、労働者が職場に適応し、仕事を再開するのをサポートすることが重要になります。

産休・育休からの復職状況

長期間の休職のうち、産休・育休からの実際の復職状況はどのようになっているのでしょうか。

政府の調査によると、第1子出産前後の女性の継続就業率について、次のようなデータがあります。

出産前有職者に係る第1子出産前後での就業状況

引用:平成30年11月内閣府男女共同参画局|「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び出産・育児と女性の就業状況について

  1. 第1子出産前後に女性が就業を継続する割合は4割前後で推移してきたが、53.1%に上昇した
  2. 育児休業制度を利用して就業を継続した割合も2010年以前と比較すると約10%上昇
  3. 第1子出産を機に離職する女性の割合は依然として高い状況にあり、46.9%

特に正社員の女性の就業継続率は約7割まで上昇しています。その一方、パートなど非正規雇用の女性の就業継続率は25%程度と低く、出産により退職するケースが多いとしています。

復職支援の具体的な取り組み方は?

復職には、長期間の休職という大きなブランクがあります。傷病が原因の場合は、大前提として健康維持をできていることが重要ですが、労働者本人は、一刻も早く業務のレベルを企業が求める従来の期待値に上げたい、と考えるのが一般的です。

現実には、休職期間中、労働者のスキルや知識が陳腐化していることが少なくないため、気持ちとのギャップが原因で体調が悪化するということもあります。

企業側としては、中長期的な視点に立ってまずは労働者が職場に適応し、安定して働くことができるようにすることが大切です。ここでは、3つの復職支援の取り組みについて紹介します。

適切な情報提供を行う

復職支援の第一歩は、労働者に対して適切な情報提供を行うことです。休職期間中に何が変わったのか、新しい業務やプロセス、ポリシーに関する情報を共有しましょう。特に、業界や組織の変化があった場合には、これらの変更点を明確に説明し、労働者が最新の情報にアップデートできるようにしましょう。

職場復帰支援プランを作成する

復職支援プランの作成は、復職の成功に向けて重要なステップです。このプランには、労働者の復帰スケジュール、トレーニングや研修の計画、柔軟な勤務条件、精神的なサポート、必要な資源の提供などが含まれます。作成に際しては労働者に十分に説明し、そのニーズと能力に合わせることが重要です。

復職面談を行う

復職面談は、労働者と直接対話する機会を提供します。この面談で、復職計画の詳細を確認し、労働者の感情や不安を聞き出すことができます。面談は双方向のコミュニケーションを促進し、適切な調整やサポートを提供するために重要です。また、復職後の業務に関する質問や不明点に答え、労働者が安心感を持つのに役立ちます。

休職から復職までの流れ

復職支援では、最初に本人、上長、人事担当者が復職後の健康面や業務面などの事項について、許容レベルを合意していることが大切です。健康面においては日常生活レベルの安定状態にあり、業務面では従来の期待値の6割程度とすることなど、共通認識を持っておきましょう。

休職から復職まで社内ルールに従った復職支援のステップを踏むことによって、労働者の復職をスムーズに進めることができます。ポイントとなる休職から復職までの支援の流れは次のようになります。

主治医の診断書を基に職場復帰の可否を判断する

休職から復職への流れは、まず主治医の診断書を基に職場復帰の可否を判断することから始まります。労働者が休職する際、病気やけがの状態に関する主治医の診断書が提出されます。この診断書は、労働者の健康状態や復職の可能性について詳細な情報を提供します。企業はこの情報を基に、復職が安全かつ適切かどうかを判断します。復職が可能な場合、次のステップに進みます。

職場復帰支援プランを作成する

診断書に基づき、前述の復職をサポートするための具体的な行動計画を含む職場復帰支援プランを作成します。

職場復帰の決定を休職者に通知する

最後に、休職者に対して職場復帰の決定が通知されます。この通知は、休職者と企業との間で復職の条件とスケジュールが合意されたことを確認するものです。復職の日程、業務内容、勤務時間、特別なサポート、必要なトレーニングなどが休職者に伝えられます。また、労働者が不安を持たないようにコミュニケーションを重視し、復職者の意見や希望にも耳を傾けることが重要です。

うつ病などの休職者を復職させる際の注意点

近年、メンタルヘルス不調によって休職する労働者が増加傾向にあります。メンタルヘルス不調とは、厚生労働省が掲げた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の定義によると「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」とされています。

メンタルヘルス不調で休職していた労働者が復職した場合、直後は症状が再燃・再発するリスクが高い傾向があると言われています。特に知っておきたい3つのポイントを紹介します。

産業医の意見や診断も参考にする

復職に際し、主治医の診断書を基に職場復帰の可否を判断しますが、メンタルヘルス不調が原因の休職の場合、産業医の意見や診断を積極的に参考にしましょう。産業医は労働者の健康状態について専門的な知識を持ち、復職の適切なタイミングや条件を提案できます。職場復帰支援プランを策定する際にも、産業医と緊密に連携し、医学的な知見に基づいた決定を行いましょう。

配置転換ではなく元の職務に就いてもらう

復職支援を考える際、休職者を別の部署や職種に配置転換することは検討の余地がありますが、できる限り元の職場での復帰を目指しましょう。休職者が元の職場に戻ることで、職場復帰の自信や安心感が高まり、社会的なつながりや仕事への復帰がスムーズに進むことがあります。ただし、元の職場での復帰が難しい場合には、適切な配置転換を検討することも重要です。

自然な態度で迎えるよう周囲に理解を求める

休職からの復帰は、周囲の理解と協力が不可欠です。休職者を自然な態度で迎え、彼らがストレスやプレッシャーを感じることなく職場に復帰できる環境を整えましょう。同僚や上司にも休職者の状況や感情に対する理解を求め、サポートを依頼しましょう。オープンでコミュニケーションが取れる環境を提供することで、休職者は安心感を持ち、復職に向けて前向きなステップを踏むことができます。

復職願・復職申請書の無料テンプレート・ひな形

復職願・復職申請書とは、休職後に復職を希望する社員が提出する社内文書のことを指します。必要に応じて医師からの復職を可能とする旨の診断書を添付して提出します。
マネーフォワードクラウドでは、実務で使用できる、復職願・復職申請書のテンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。
ベースを保ちつつ、自社の様式に応じてカスタマイズすれば使い勝手の良い書類を作成できるでしょう。この機会にぜひご活用ください。

復職後のフォロー方法

復帰後の適切な支援は、復職者が安心して職場に戻り、持続的な成功を収めるために不可欠です。適切なサポートとコミュニケーションが提供されることで、労働者は復職後も安定した精神的な健康を維持し、生産的に職務を遂行できます。ここでは復職後のフォロー方法における3つのポイントを挙げておきましょう。

症状が悪化していないか確認する

復職後も定期的に休職前の主治医やカウンセラーと連絡を取り、休職前の症状が再発していないか確認しましょう。労働者の精神的な健康が安定していることが持続的な職場復帰の鍵です。復職後に症状が再び悪化してしまった場合、早めに対策を講じることが重要です。

職場復帰の様子を客観的に評価する

労働者が職場に戻ったら、その様子を客観的に評価しましょう。職場復帰後の業務パフォーマンスやコミュニケーション能力、ストレスへの対処などを観察し、復職が順調に進んでいるかどうかを判断します。必要に応じてフィードバックやアドバイスを提供し、適切なサポートを提供します。

治療の状況を確認する

休職者が治療を続けている場合、その治療の進捗状況を確認しましょう。治療が継続され、症状が改善しているかどうかを把握することは、労働者の長期的な健康維持と復職の成功に左右します。治療計画や薬物療法が効果的であるかどうかを主治医やカウンセラーと協力して確認し、必要な調整を行います。

従業員の復職支援を強化し、職場の活力を維持しよう!

復職支援は、労働者の健康と企業の持続的な発展を支える重要な仕組みです。休職者が復職できるようにするためには、企業側の適切な支援とフォローアップが欠かせません。

労働者と企業の双方が連携し、協力して復職プロセスをスムーズに進めることが不可欠です。復職支援に積極的に取り組み、職場の活力を維持しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事