- 更新日 : 2024年12月2日
定額減税の二重取りとは?生じうるケースを解説
定額減税は、従業員の税負担を軽減するための重要な制度ですが、適切に管理しないと「二重取り」という問題が発生することがあります。二重取りとは、同一の減税対象者が複数の所得源から同じ減税を受けることを指し、税務上の不正確な処理となります。
本記事では、定額減税における二重取りの意味や、年末調整で二重取りが起こる具体的なケース、そして二重取りを防ぐための方法について詳しく解説します。
目次
定額減税の二重取りとは?
定額減税における二重取りとは、同一の減税対象者が複数の所得源から同じ減税を受けることを指します。所得税の計算上不正確な結果をもたらし、本来納めるべき税額が適切に計算されないことになります。
例えば、後述するように給与所得と年金所得の両方から同じ減税が適用される場合や、夫婦間で同じ扶養親族に対して二重に減税が適用される場合などが該当します。
二重取りにより、納税者は過剰な控除を受けることになり、最終的には税務上の不正確な処理となり、後に修正が必要となる可能性があります。
年末調整の二重取りが起こるケース
定額減税の二重取りは、申告内容の確認不足や情報の誤入力、複数の所得源がある場合など、さまざまな原因で発生します。
ここでは、4つのケースを挙げてみます。
年金と給与の二重取り
年金と給与の二重取りは、年金受給者が給与所得も得ている場合に発生します。例えば、年金から所得税が源泉徴収され、同時に給与からも所得税が源泉徴収される場合、両方の所得に対して定額減税が適用されることがあります。
この場合、年金と給与の両方で同じ減税が適用されるため、二重取りが発生します。
配偶者の二重取り
配偶者控除に関して、夫婦の両方がそれぞれの職場で同じ控除を申告した場合、家庭全体での控除額が二重に計上されることになり、二重取りが発生します。
扶養親族の二重取り
扶養親族に対する控除でも同様の問題が発生します。
例えば、同一の扶養親族について複数の納税者が控除を申請する場合です。祖父母や兄弟姉妹などが扶養親族となる場合、家族内での情報共有が不十分だと、二重に控除が適用されることがあります。
98万~103万円の二重取り
配偶者年収103万円以下で働いている場合や子どもなどの扶養親族の年収が103万円以下でアルバイトをしている場合、所得税は発生せず、定額減税は生じません。
しかし、98万円超であれば住民税は発生し、住民税の減税分1万円が二重になる可能性があります。
定額減税の二重取りを防ぐ方法
定額減税における二重取りを防ぎ、適正な税額計算を行うためには、以下のような方法が考えられます。
申告内容の確認
年末調整時には、各種控除申告書を厳密に確認し、同一の控除が複数回適用されていないかチェックします。
特に、複数の所得源がある場合には、各所得に対する控除の適用状況を詳細に確認することが必要です。
情報共有の強化
家族内での情報共有を徹底し、配偶者控除や扶養控除などが重複して申告されないようにします。
また、年金支給機関と給与支払者の間で適切な情報共有を行うことも重要です。
専門家への相談
複雑なケースや不明な点がある場合は、税理士などの専門家に相談して適切な助言を受けることが推奨されます。
専門家の助言を受けることで、二重取りのリスクを減らすことができます。
ソフトウェアの活用
年末調整用のソフトウェアやシステムを活用することで、手作業によるミスを減らし、二重取りの発生を防ぐことができます。
最新のシステムは、控除の適用状況を自動的にチェックする機能を備えているものもあります。
定額減税の二重取りを防ぎ、適切な税務手続きを行おう!
定額減税における二重取りは、適切な管理と確認を行うことで防ぐことができます。年金と給与、配偶者、扶養親族、そして98万~103万円の所得範囲における二重取りのケースを理解し、従業員の所得状況を正確に把握することが重要です。
企業内での情報共有や従業員への周知徹底を行い、二重取りを未然に防ぐための手続きを整備しましょう。これにより、法令に基づいた適切な対応が可能となります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
給与計算は初心者でも簡単にできる?基礎知識や重要な3つのポイント!
一見難しそうに思える給与計算ですが、初心者でもポイントを押さえ、全体の流れを把握することで比較的簡単に行うことができるでしょう。今回は、初心者が給与計算をするために必要な基礎知識や押さえておきたいポイントを解説します。ミスなく給与計算業務を…
詳しくみる役員退職慰労金とは?計算方法と功労加算・税金面の注意点や支給手続きを解説
取締役や監査役などの役員が退職した場合に、会社は役員退職慰労金を対価として支給することができます。 この役員退職慰労金については、支給する側にもされる側にも様々なメリット・デメリットがあります。また、役員退職慰労金を損金算入することで、節税…
詳しくみる給与所得と給与収入の違いとは?年末調整に関わる知識も解説!
所得税法の用語に「収入」と「所得」がありますが、この違いは何でしょうか。毎月給料を受け取る会社員の場合、年収総額が税法上での収入にあたります。所得は、収入金額から会社員の必要経費とみなされる「給与所得控除額」を差し引いた金額で給与所得とよば…
詳しくみる事前確定届出給与とは?役員賞与を損金算入して節税できる?期限や記載方法は?
経営者など役員に対する報酬や賞与は、一般社員の給与とは異なり、税務上の規定に従って支給されなければ損金算入できません。役員報酬は金額が大きくなりがちなため、損金算入として扱わなかった場合、納税負担額や資金繰りにも悪影響を及ぼします。 このよ…
詳しくみる最低賃金を下回ってない?確認するための計算方法を紹介
最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額です。最低賃金以上であることを確認する計算方法は、時給制、日給制、月給制など、給与形態によって異なります。また、夜勤手当やみなし残業による固定残業代は、最低賃金に算入されない点…
詳しくみる賞与明細とは?無料テンプレート・作成方法|決算賞与明細とは?
一般的に賞与(ボーナス)は、年2回、夏と冬に支給され、毎月の給与明細とは別に賞与明細が発行されます。なかには普段から「給与明細はほとんど見ない。振込額を確認するだけ」という人も少なくないようですが、源泉控除されている所得税、社会保険料などは…
詳しくみる