- 作成日 : 2022年11月30日
テンプレート付き – 出張旅費規程とは?作成目的や記載項目を解説!

出張旅費規定とは、出張に関わる経費を精算する際に基準となる規定です。出張には宿泊費や交通費などの経費がかかります。加えて、出張中の食費や通信費を補助するための日当も支給しなければなりません。出張旅費規程内であれば日当を損金算入して法人税を節税可能です。この記事では出張旅費規程の作り方やサンプル・ひな形などを紹介します。
目次
2024年~2025年にかけて、人事労務領域において新たに法改正が行われます。
法改正に合わせて、企業の労務担当者は各種業務の整備・対応が必要になるでしょう。
以下の資料では、2024年~2025年にかけての人事労務領域における法改正の概要をまとめています。
対応するためのチェックリストも付いており、実際の業務にも活用いただけます。

出張旅費規程とは?
出張旅費規定とは、出張旅費精算を行う際に基準となる規定です。出張には宿泊費や交通費などがかかるため、これら出張経費を実費精算する必要があります。さらに、出張中にかかった食費や通信費等を一定額補助するための日当、いわゆる出張手当も支給しなければなりません。出張経費や出張手当を清算する手続きが出張旅費精算です。出張旅費精算は出張旅費規定に従い実施されます。ここでは、出張旅費規程を作成する目的や出張旅費規定にまつわる法律などを紹介しましょう。
出張旅費規程を作る目的
出張旅費規程を作成する目的は、大きく分けて2つあります。
1つ目の目的は、出張旅費清算における基準額の規定です。出張には宿泊費や交通費などの出張経費がかかります。出張旅費規程には、必ず出張経費の基準額を規定してください。規定がないと、高級ホテルの宿泊費や優等列車の交通費などを請求される恐れがあります。出張旅費規定で上限額を定めておくことで、こういった事態を未然に防ぐことができるでしょう。
なお、出張経費は実費精算が基本ですが、事前に定額支給とする旨を規定しておくことで、領収書を確認する事務手続きを省略することも可能です。さらに出張手当についても同様に、1日当たりの支給額を規定しておきましょう。支給される日当が事前にわかっていれば、従業員もその範囲内で食費や通信費をやり繰りすることができるでしょう。出張経費と出張手当の基準額を規定することが出張旅費規程の1つ目の目的です。
2つ目の目的としては、所得税ならびに法人税の節税対策が挙げられます。まず、交通費や宿泊費などの出張経費は、実費精算なので非課税です。一定金額が支給される出張手当は、実費以上の金額が支給される可能性もあるため、原則給与所得として課税対象となります。
しかし、出張旅費規定に金額が規定されており、相場の範囲内であれば非課税所得として扱うことが可能です。さらに、出張手当は経費精算時に損金算入できるため、従業員の所得税だけでなく法人税を節税することもできます。ただし、相場を逸脱した不当に高額な出張手当は課税対象となるため気を付けましょう。出張旅費規程を作成する際は相場を把握し、税務署から指摘を受けないよう妥当な金額に設定することが重要です。
出張旅費規程に関わる法律
出張旅費規程の作成は会社の一存に委ねられていますが、原則全従業員に適用される出張旅費規程は就業規則の一部として扱われるため、労働基準法の定めに従わなければなりません。
就業規則とは、賃金や労働時間・休憩時間・休日・休暇などの労働条件に関する規定です。就業規則は労働基準法に則り作成され、従業員は労使合意のもと就労規則に従い労働に従事します。作成および変更には労働組合または従業員の過半数の合意は原則必要なく、作成・変更した際は所管の労働基準監督署に届け出なければなりません。労働基準法第89条には就業規則について下記の通り定められており、出張旅費規程もこれに該当します。
労働基準法
第九章 就業規則(作成及び届出の義務)第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(中略)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(中略)
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
就業規則とは違う?
前章で紹介した通り、法律上出張旅費規定は就業規則の一部として扱われます。常時10名以上の従業員を使用する事業所は、労働基準法に基づき就業規則を作成し労働基準監督署に届け出なければなりません。労働基準法には就業規則に記載すべき内容についても規定されており、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項に分けることができます。
絶対的必要記載事項は、就業規則に必ず記載しなければならない項目です。主な記載事項は下記の通りで、記載がない場合は労働基準法第120条に基づき30万円以下の罰金が科されます。
- 始業終業時間、休憩時間、休日休暇、交代制の場合は就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算、支払方法、締め日、支払い時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
一方、相対的必要記載事項は、会社に関する何らかの規定を設けた場合に就業規則に記載しなければならない項目です。具体的には、下記の8項目についての記載が求められます。
- 退職手当に関する事項
- 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
- 食費、作業用品などの負担に関する事項
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰、制裁に関する事項
- その他全労働者に適用される事項
出張旅費規程は相対的必要記載事項の8に該当するため、作成する場合は就業規則に明記し周知徹底しなければなりません。通常、就業規則には適用範囲などを規定し、具体的な内容については出張旅費規程に定められます。
なお、就業規則については厚生労働省が提示している「モデル就業規則」に則り策定している企業が大半のようです。モデル就業規則は関連法の改正に従い随時更新されるので、これから就業規則ならびに出張旅費規程を作成する場合は必ず確認しましょう。
参考:就業規則を作成しましょう|厚生労働省
参考:モデル就業規則について|厚生労働省
出張旅費規程の相場はいくら?
出張旅費規定に出張経費・出張手当の上限金額を規定し、非課税扱いとするには金額が相場の範囲内でなければなりません。税務署から指摘を受けない出張経費・出張手当の相場はいくらなのでしょうか。ここでは、人事労務分野における調査・研究・提言を行う民間シンクタンクである産労総合研究所の調べによる、2019年度の出張旅費に関する調査結果を紹介します。
出張経費
まず、宿泊費や交通費などの出張経費について見ていきましょう。宿泊費に関して、全地域一律の場合の平均支給額は部長クラスで9,835円、一般社員で8,605円となっています。北米地域への海外出張では、部長クラスで16,385円、一般社員で14,621円です。中国地域だと部長クラスで13,570円、一般社員で12,085円となります。
交通費は原則実費精算ですが、18.1%の企業が部長クラスに新幹線グリーン車の利用を許可しているようです。航空機の場合は部長クラスの65.5%がエコノミークラスとなります。
出張手当(日当)
出張手当の平均支給額は、国内の日帰り出張で部長クラスが2,666円、一般社員が2,094円です。国内の宿泊を伴う出張の場合は、部長クラスが2,900円、一般社員が2,355円となります。海外出張では、北米地域で部長クラスが5,593円、一般社員が4,913円です。中国地域の場合は部長クラスで5,185円、一般社員で4,514円となっています。
参考:2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査|国内・海外出張旅費に関する調査|社内制度・福利厚生等|産労総合研究所
出張旅費規程の作り方
出張旅費規程には、特定の様式やフォーマットはありません。ここでは、出張旅費規程の一般的な作成方法や記載項目を紹介します。これから出張旅費規程を作成する場合は是非参考にしてください。
出張旅費規程の作成方法
出張旅費規程は紙媒体やWordなどで作成されるのが一般的です。出張経費や出張手当等を随時変更しやすいよう、電子媒体で作成した方が効率的でしょう。なお、作成した出張旅費規程は就業規則と併せて所管の労働基準監督署に提出しなければなりませんが、電子政府の総合窓口である「e-Gov」を利用し電子申請することも可能です。e-Gov電子申請であれば窓口に来庁する手間がかからず、新型コロナウイルス感染症拡大防止にも役立つため積極的に利用しましょう。
参考:労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について|厚生労働省
出張旅費規程の記載項目
それでは実際に、出張旅費規程に記載すべき項目について紹介します。下記項目はあくまで一般的な内容なので、業務形態に合わせて適宜追加・削除しましょう。
出張の定義
どのような場合に出張旅費の支給対象となるのかを明記しましょう。例えば「片道100kmを上回る場合を出張と定義し、これを下回る場合は外出として出張手当を支給しない」などの規定が考えられます。
出張中の勤務時間の扱い
出張中は通常の勤怠管理が困難となるため「出張中は所定労働時間分勤務したこととみなす」などの規定が必要です。
出張旅費の内訳
どのような費用が出張旅費として扱われるのかを定義しましょう。宿泊費や交通費はもちろん、出張中の食費や通信費なども含まれる場合があります。日当についても明記が必要です。
出張旅費の金額
相場に基づき、出張旅費の基準額を規定しましょう。役職に応じて基準額に変化を設けることも一般的です。基準額以外では、新幹線グリーン車やビジネスクラスなどの利用規定も定めておくと良いでしょう。なお、相場を著しく逸脱した日当などは非課税扱いできないため注意が必要です。
出張旅費の清算方法
出張旅費精算は、出張後に旅費精算書を提出することで実施されます。旅費精算書の提出期限と、領収書の添付が必要である旨を規定しておきましょう。
緊急時の対応
急な予定変更や自然災害、交通事故など有事の際の対応規定も設けておかなければなりません。特に海外出張の際は、適切な保険に加入するなどの対策が必要です。
出張旅費規程のテンプレート – 無料でダウンロード
前章では、出張旅費規程の作成方法と記載項目について紹介しました。基準額など定期的な見直しが必要な出張旅費規定は、電子媒体で作成するのが効率的です。出張旅費規程のテンプレートは以下からダウンロード可能です。このテンプレートを活用し、効率的に出張旅費規程を作成しましょう。
▼ 出張旅費規程のテンプレートはこちらから無料でダウンロードできます
出張旅費規程を作成し出張旅費の基準額を規定しよう
出張旅費規程について紹介しました。出張旅費規定とは、出張に関わる出張経費と出張手当に関する規定です。出張旅費の基準額を規定することで、高額な出張旅費の請求を防ぐとともに、非課税所得として所得税の節税や、損金算入で法人税の節税が可能です。ただし、非課税扱いするには出張旅費規程に金額を明記し、相場の範囲内でなければなりません。相場を逸脱した出張旅費は、税務署の判断によっては法人税や所得税を課税されるため気を付けましょう。
出張旅費規程は紙媒体やWordで作成し、出張の目的や出張旅費の内訳・金額などを規定するのが一般的です。インターネットにはマネーフォワードを始めとした様々なテンプレートが公開されているため、これらを活用し効率良く出張旅費規程を作成しましょう。
よくある質問
出張旅費規程とは何ですか?
宿泊費や交通費などの出張経費、食費や通信費を補助するための出張手当に関する規定です。就業規則の一部として扱われるため、作成した場合は労働基準監督署に届け出なければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
出張旅費規程に記載する項目について教えてください。
出張の定義、出張中の勤務時間の扱い、出張旅費の内訳と金額、精算方法などを記載しましょう。加えて、出張中の怪我や病気、自然災害、交通事故など緊急時の対応についても規定しておかなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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