- 更新日 : 2024年6月7日
育児休業の対象は?男性も取れる育児休業を解説!育児・介護休業法の改正ポイントも
目次
そもそも育児休業ってなに?
育児休業とは「労働者が原則としてその1歳に満たない子を養育するためにする休業」を指します。関連する法律は「育児・介護休業法」です。育児や家族の介護をしながら働き続けることができるように育児・介護休業法は随時見直しが行われ、令和3年1月の改正に続き、令和4年4月、令和4年10月、令和5年4月と3段階に分けて改正されます。
持続可能な社会をつくるためにも、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現に向けて育児休業の取得促進に取り組むことが大切です。
一昔前までは、「女性は出産を機に退職をする」ことが当たり前の風潮があり、企業側もそれを見込んだ採用活動・人材育成をしている時代がありました。ところが現在は、女性の社会進出により、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法を守ることが当たり前の時代になっています。一昔前の「女性の妊娠=退職」という考え方は、もはや時代遅れといっていいでしょう。
実際に女性の育児休業取得率は年々増えてきており、平成8年度では49.1%だったものが、令和2年度には81.62%にまで上昇しています。直近10年の推移を見ても、女性の育児休業取得率は80%を超えて高止まりしている状況であり、出産後の女性の社会復帰は当たり前になりつつあることが分かります。
参考:
育児・介護休業法のあらまし(令和3年1月1日施行対応版)|厚生労働省
Press Release「令和2年度雇用均等基本調査」結果を公表します ~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~||厚生労働省
育児休業を取得できる期間は最大でどのくらい?
育児休業の取得期間は原則「子が1歳に達する日までの期間」とされています。つまり、子どもの1歳の誕生日が職場復帰日となります。
メディアでもよく耳にしますが、都心部に限らず保育所や保育園などに子どもを入所させるのは容易ではありません。育児休業の終了とともに仕事に復帰したくとも、子どもの預け先が見つからずに退職を余儀なくされるというケースも発生しています。このような状況に対して、育児休業が取得しやすい就業環境の整備等を進めていくため、平成29年10月1日に育児・介護休業法が改正されました。
この改正により、子が保育所などに入れない場合、最長2歳まで育児休業を再延長できるようになり、法律で定める制度はさらに充実しました。
また、一定の条件の下、両親共に育児休業を取得する場合を対象に、「パパ・ママ育休プラス」制度が設けられています。こちらを利用することで、原則として子が1歳まで可能であった休業期間が、1歳2カ月に達するまでの期間に延長されます。
「パパ・ママ育休プラス」を利用して育児休業が取得できる期間は、両親のそれぞれを個々で見ると、これまでどおり原則1年です。しかし、うまく活用することで、両親が同時期に育休を取得することも、交代で取得することもできるようになります。
取得するケースとしては、父親の育休を母親の育休より遅らせて取得する方法により最長1歳2カ月まで取得するのが一般的でしょう。
育児休業はどんな人でも取得できる?
育児休業を取得できる対象については、育児・介護休業法にて「1歳に満たない子を養育する労働者」と定義されており、ここには当然ながら男性も含まれます。
ただし、以下に該当する方については、注意が必要です。
有期雇用契約を締結している労働者
有期雇用契約を締結している労働者であっても、以下の2つの要件に該当する場合には、育児休業を取得することが可能です。ただし、日々雇用される労働者は対象外となります。
- 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
- 子が1歳6か月(2歳までの休業の場合は2歳) を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
引用:育児・介護休業法のあらまし(令和3年1月1日施行対応版)|厚生労働省
令和4年4月1日からは法改正により取得要件が緩和され、引き続き雇用された期間が1年未満でも育児休業が取得できるようになります。
今後は、入社してから間もない有期雇用の従業員であっても、入社してから1年未満を対象外とする労使協定がなければ、育児休業の取得が可能です。子が1歳6カ月(2歳までの休業の場合は2歳)になるまでに退職することや契約更新をしないことが決まっていない限り、会社は育児休業の取得を拒否することはできません。
労使協定締結による適用除外者
その他、事業主と労働者代表との間で締結している労使協定によって、育児休業の対象とならない労働者もいます。
- 入社してから1年未満
- 申出の日から1年(1歳以降の休業を申し出る場合は、6カ月)以内に退職や契約更新をしないことが決まっている
- 週の所定労働日数が2日以下
引用:育児・介護休業法のあらまし(令和3年1月1日施行対応版)
男性の育児休業って?
令和3年7月30日に公表された厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は、令和2年度が12.65%という結果となりました。平成19年度は1.56%でしたが、平成28年度は3.16%、令和元年度は7.48%と取得率は急激に伸びています。ただし、女性に比べるとまだまだ低いのが現実であり、育児休業を利用する男性は少ない状況です。
また、同年度の男性の有期契約労働者の育児休業取得率は11.81%であり、令和元年の 3.07%に比べて大きく上昇したものの、まだまだ低水準にあります。
参考:Press Release「令和2年度雇用均等基本調査」結果を公表します ~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~|厚生労働省
令和3年3月に発表された「厚生労働省委託事業 令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業(株式会社日本能率協会総合研究所 )」から、 男性正社員等(無期契約労働者)の仕事と育児の両立について課題としてあげられる理由を見てみましょう。
その中で最も多い回答が、「人手不足で休業・休暇の取得が難しい、代替要員の確保が難しい」の39.9%です。次が「職種・仕事内容・部署によって、仕事と育児との両立のしやすさが異なる」の34.7%、「男性の仕事と育児の両立について、職場の理解・賛同・協力を得ることが難しい」の23.5%の順となっています。
育児休業取得率について、「設定している」と回答した企業はわずか7.2%となっており、企業の対応がまだまだ進んでいないことがうかがえます。
参考:厚生労働省委託事業 令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業|株式会社 日本能率協会総合研究所
共働き世帯が多い現在では男性の子育て参加の必要性が増しており、男性も子育てに参加できる環境づくりが求められています。政府は令和7年年には男性の育児休業取得率30%の達成を目指して男性の育児休業取得促進に取り組む企業に対しては助成金(両立支援等助成金)を整備するなどの対策を講じ、現在も男性の育児休業取得率向上に向けた取り組みを継続しています。
男性が育児休業を取得しない理由として、「業務の都合」や「職場の雰囲気」をよく耳にします。業務との調整がしやすく柔軟で利用しやすい制度づくりと、男性でも育児休業の利用の申し出がしやすい職場環境を整備することが大切です。
また、男性の育児休業取得には、上司の理解や会社としての公平な人事評価等、それぞれ水面下での課題があるようです。
このような状況を踏まえ、育児・介護休業法は、令和4年4月1日から3段階に分けて改正・施行されます。改正のポイントを整理して見てみましょう。
【法改正のポイント】
令和4年年4月1日施行
- 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
「育児休業を取得しやすい雇用環境整備」と「妊娠・出産の申出をした労働者 に対する個別の周知・意向確認の措置」の義務化 - 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
令和4年年10月1日施行
- 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
出生後8週間以内に4週間まで取得可能(新制度) - 育児休業の分割取得
2回まで分割して取得することが可能
令和5年4月1日施行
- 育児休業の取得の状況の公表の義務化
従業員数が1,000人を超える企業に育児休業等の取得状況の公表を義務化(年1回)
今回の法改正により、本人や配偶者が妊娠・出産することを申し出た従業員とその配偶者に対して、育児休業制度に関する周知をし、休業取得の意向を確認することが企業の義務となります。加えて、男性従業員の育児休業の取得促進のための新制度への対応も必要です。今からでも法改正に向けてしっかりと準備しましょう。
男性も女性も安心して育児休業を取得できるように、まずは社内の雰囲気作りが大事
政府は育児休業の期間を最大2年に延長し、保育所の設置拡大など、育児休業の取得と安心して育児休業から復帰できる環境づくりを促進してきました。そして、今回、男性の育児休業の取得推進に向けた法改正が行われます。
女性の育児休業の取得率は80%超と安定していますが、今後は男性の育児休業の取得率の向上が求められます。会社としては、従業員が安心して育児休業を取得できるように、社内の意識改革、管理職への研修、復職後の体制作りなど、育児休業が取りやすい職場環境を整えることが必要です。
法改正によって、育児休業取得促進のためのさらに一歩踏み込んだ対応が必要となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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