• 更新日 : 2025年1月17日

有給休暇の基準日を統一することはできる?方法や注意点を解説

有給休暇の基準日を、全社で統一することは可能です。ただし、運用の仕方を間違えると、従業員に不利益が生じたり、法律違反に該当したりする可能性があります。

2019年4月1日に労働基準法が改正されて以降、有給休暇の管理方法についてお困りの人事労務担当者もいるでしょう。

本記事では、基準日の設定方法や注意点、法令を遵守しながら効率的な労務管理を実現するポイントを解説します。

有給休暇の基準日とは?

従業員が有給休暇を取得する権利が発生する日のことを基準日といいます。

労働基準法では、入社から6ヶ月が経過し、全労働日の8割以上を勤務した従業員に対して、10日間の有給休暇を付与することを義務付けています。また、その後一年毎に付与される日数が増えていき、勤続6年6ヶ月以降の有給休暇日数は20日です。

勤続勤務年数(年)0.51.52.53.54.55.56.5以上
付与日数(日)10111214161820

たとえば、5月1日に入社した従業員は、6ヶ月後の11月1日に10日間の有給休暇が付与されます。さらに、翌年の11月1日に11日間の有給休暇が付与される形です。

この考え方でいくと、中途入社の従業員などは、個別に有給休暇の基準日が設けられることになります。その場合、社員数が多いと有給休暇の管理が難しくなるため、基準日を統一する企業も多いです。

有給休暇の基準日は統一できる?

有給休暇の基準日を、全社で統一することは可能です。基準日を統一するメリットとして、管理を効率化できることや、社員間の公平感の向上が挙げられます。

ただし、労働基準法の要件を満たすことは絶対条件のため、統一後も個別に調整が必要な場合があるので注意してください。

基準日として設定される日付は企業によってさまざまですが、4月1日や10月1日など区切りのよい日を選定するのが一般的です。また、年に1回の基準日を設ける企業が多いですが、業務の繁忙期を避けるために年2回の基準日を設けるケースもあります。

基準日を統一する際は、既存の基準日との重複や有給休暇が消化されるタイミングも考慮し、適切に運用していくことが大切です。

有給休暇の基準日を統一する際の注意点

有給休暇の基準日を統一する際の注意点を3点解説します。法に反したり、従業員の不満を生むことになったりしないよう、必ず把握しておいてください。

有給付与日が前倒しの場合はすべて出勤扱い

労働基準法では、有給休暇の付与要件を「6ヶ月間の継続勤務」と「全労働日の8割以上を勤務」と定めているため、前倒し分をすべて出勤扱いにする必要があります。

たとえば、基準日を4月1日に統一する場合、4月1日時点で条件を満たしていない従業員に対しても、特例として付与日までの勤務状況を出勤扱いにします。

ただし、この方法では付与する有給休暇の日数や計算方法が複雑になるため、適切な労務管理システムの導入や、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

2年目以降も同じ期間を前倒して付与する

有給休暇の基準日を統一する際、2年目以降も同じ期間を前倒して管理する必要があります。

具体的な付与イメージは以下のとおりです。

  • 入社日:2月1日
  • 初回付与日:7月1日
  • 統一した基準日:4月1日(前倒し)
  • 次回付与日:毎年4月1日

このように、統一した基準日での有給付与は管理効率が高まる一方、社員ごとの法定有給休暇の消化状況や繰り越し分の扱いが複雑になる場合があります。

不公平感が生じることがある

有給休暇の基準日を統一すると、従業員間で不公平感が生じる場合があります。

たとえば、基準日を前倒しに設定した場合、ある従業員は入社してからすぐに有給休暇を付与される一方で、別の従業員は本来より遅れて付与される可能性があります。この場合、本来より遅れて付与された従業員は、自身より社歴が浅い従業員に対しての不満を感じることになるでしょう。

また、統一基準日に合わせた付与日変更により、法定の有給休暇日数以上の日数を早期に取得できる社員と、そうでない社員が出てくるケースもあります。

ルールの透明性を保つために、統一基準日を設定する理由やメリットを従業員に説明し、全体の納得感を高める工夫が大切です。

有給休暇の基準日を年に1回とする場合

有給休暇の基準日を年に1回に統一する際は、法的に認められる場合・認められない場合があります。

認められる例として、全従業員が有給休暇の付与条件(6ヶ月間の継続勤務と出勤率80%以上)を既に満たしている場合が挙げられます。

認められない例として、条件を満たしていない従業員の有給付与を遅らせるケースがあります。たとえば、本来は1月1日に付与されるべき従業員が、統一基準日の都合で4月1日まで付与が遅れる場合、労働基準法に違反します。

労働基準法違反を避けるためには、下記のいずれかの方法をとる必要があります。

  • 後ろ倒しではなく、前倒しで基準日を統一する
  • 入社初年度は基準日を個別に管理し、二年目以降から統一する

従業員数が多い企業の場合は、後者の方を選択するのが一般的です。もしくは、次に解説するように年2回の基準日を設けることを推奨します。

有給休暇の基準日を年に2回とする場合

有給休暇の基準日を年に2回設ける方法は、従業員の入社日が分散している場合に効果的です。たとえば、4月1日と10月1日の年2回を基準日とすることで、付与条件を満たすタイミングに応じて、スムーズに有給休暇を付与できます。

4月に入社した従業員は6ヶ月後の10月1日を基準日とし、10月に入社した従業員は翌年の4月1日を基準日とする形です。付与タイミングが年間を通じて分散されるため、企業側の管理が効率化されるほか、繁忙期を避けた付与が可能になります。

ただし、2回の基準日を設けても、労働基準法で定められた「6ヶ月の継続勤務」と「全労働日の8割以上を勤務」の条件を満たしていなければ有給休暇の付与はできません。適切な基準日の設定と、法令に基づく運用が求められます。

有給休暇の管理が難しい場合は基準日を統一しよう

有給休暇の管理が難しい場合、基準日を統一することが可能です。基準日を明確に設定することで、従業員の有給休暇管理が効率化でき、計算ミスや混乱を防げます。

ただし、労働基準法に反したり、従業員間の不公平感に繋がったりしないよう、基準日を統一する際は細部まで気を配らなくてはなりません。適切な労務管理システムを導入したり、専門家のアドバイスを受けたりなど、対策をとったうえで運用しましょう。


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