• 更新日 : 2024年12月24日

中小企業のモデル退職金はどのくらい?中退共制度を利用する退職金規程の作成例も紹介

中小企業で退職金制度を新しく導入する場合、退職金規程を作成し、従業員に支払う退職金の金額を定める必要があるでしょう。

しかし、はじめから規程を作成するのではなく、すでに用意されたひな形を利用して自社に最適化した方が、効率よく作成できます。

当記事では、中小企業のモデル退職金について、業種別および勤続年数別に紹介します。また、中小企業退職金共済制度を利用する際の退職金規程のひな型も一部抜粋して掲載します。

これから退職金制度を導入する企業の代表者の方や実務担当の方は、ぜひ参考にしてください。

中小企業のモデル退職金(業種別)

中小企業のモデル退職金は、東京都 産業労働局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情」で確認できます。

大卒の従業員が定年退職時に支給される退職金の金額を業種別、および中小企業と大企業で比較すると、下記のようになります。

表1

業種名中手企業の退職金額

(万円)

大企業の退職金額

(万円)

調査産業計1091.82648.7
建設業1220.32564.8
製造業1068.52453.6
情報通信業1192.9
運輸業,郵便業1332.32440.4
卸売業,小売業1132.92852.2
金融業,保険業1442.24529.4
不動産業,物品賃貸業1012.8
学術研究,専門・技術サービス業964.8
生活関連サービス業,娯楽業846.9
教育,学習支援業(学校教育を除く)1244.9
医療,福祉342.4
サービス業904.4

引用:東京都 産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)総務省統計局 e-stat 政府統計の総合窓口 賃金事情等総合調査 退職金、年金及び定年制事情調査

中小企業の退職金モデルは、金融業,保険業が業種の中でもっとも多い金額で、医療,福祉がもっとも少ない結果となりました。

さらに、大企業の退職金モデルにおいては、公開されていない業種があるものの、全体的に大企業の方が退職金は多いといえます。

中小企業のモデル退職金(勤続年数別)

退職金は、従業員の勤続年数が多いほど支払う金額が多い傾向にあります。

中小企業と大企業のモデル退職金について、大卒の従業員における退職金を勤続年数別に比較すると、下記のようになります。

表2

勤続年数自己都合退職(万円)会社都合退職(万円)
中小企業大企業中小企業大企業
3年30.433.869
5年33.764.1118
15年32.9265.8577.9
25年32.2578.21393.8
30年32.4754.21915.4

引用:東京都 産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)厚生労働省 中央労働委員会 令和3年退職金、年金及び定年制事情調査

中小企業における退職金は、自己都合の場合、勤続年数にかかわらず全体的に少ないとわかります。勤続年数が15年から25年の期間で、金額の低下が見られました。

さらに、会社都合による退職のみのデータになりますが、大企業と中小企業と比較すると、大企業の方が2倍以上も多い金額であることがわかります。

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退職金の受給に必要な勤続年数は?

退職金を支給する勤続年数は、企業により自由に決められます。

中小企業において、自己都合退職と会社都合退職のうち、それぞれ勤続年数が最低何年で受け取れる設定になっているかは下記のとおりです。

表3

勤続年数会社都合(%)自己都合(%)
1年未満12.44.5
1年以上2年未満18.312.7
2年以上3年未満8.09.3
3年以上4年未満45.957.0
4年以上5年未満2.52.8
5年以上9.912.0

引用:厚生労働省 退職手当制度がある企業の場合

会社都合による退職も自己都合による退職も、最低勤続年数が約3年だとわかります。

会社都合による退職の割合は45.9%で、自己都合による退職の割合は57%と、半数近くの企業が最低ラインとして3年を定めています。

しかし、退職金が発生する勤続年数の最低ラインは企業ごとに決められるため、下記のポイントを考慮して決めるとよいでしょう。

  • 企業の業績
  • 企業への貢献度が高いといえる勤続年数
  • 従業員のモチベーション向上につながる年数

中小企業退職金共済制度とは

中小企業退職金共済制度とは、中退共制度ともよばれる制度で、自社のみで退職金の用意が難しい場合に検討したい退職金制度です。

複数の中小企業による相互共済と国からの援助で退職金が用意できる仕組みで、自社のみで積み立てるよりも負担の小さい掛金で退職金を用意できます。

加入するには、業種別に下記の条件を満たす必要があります。

表4

業種名加入条件
一般業種(製造等)300人以下 または 資本金・出資金が3億円以下
卸売業100人以下 または 資本金・出資金が1億円以下
サービス業100人以下 または 資本金・出資金が5000万円以下
小売業50人以下 または 資本金・出資金が5000万円以下

引用:厚生労働省 中小企業退職金共済制度(中退共制度)加入条件

原則、企業に在籍しているすべての従業員を加入させる必要があります。しかし、下記に当てはまる人は、加入させなくてもよい、または加入できないことになっています。

  • 役員
  • 一定の季節や期間のみ雇用する従業員
  • 試用期間中の従業員
  • 短時間労働者
  • 休職期間中の従業員
  • 定年などで雇用期間の終了がわかっている従業員

掛金は、必要経費として全額非課税にでき、退職金を自社で運用する手間がないなどのメリットがあるため、加入条件に当てはまっている場合は積極的に活用しましょう。

中小企業退職金共済制度を利用する場合の退職金規程の作成例

従業員を常時10名以上雇用する事業場がある企業は、退職金制度を新しく導入したり変更したりする場合、就業規則を変更、もしくは別に退職金規程を作成して管轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。

中小企業退職金共済制度を利用する場合は、企業のみで退職金を積み立てて用意するわけではないため、既存の就業規則または退職金規程に追加の記載または変更が必要です。

中小企業退職金共済制度のみを利用して退職金を用意する場合と、制度の利用と自社での積立てと併用する場合それぞれの、退職金規程の作成例を紹介します。

中退共からのみ退職金を支給する場合

中小企業退職金共済制度のみを利用して退職金を用意する場合の作成例として、「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」が公開しているひな型の一部抜粋を記載します。

利用の際は下記一部抜粋の内容を参考に、リンク先のひな形の内容も確認のうえ休職者の場合や退職金の支払期日など、自社での取り扱いを検討する必要があります。

※別表の掛金は、賃金の5%を設定した金額です。

  • 第1条:

従業員が退職したときは、この規程により退職金を支給する。

前項の退職金の支給は、会社が各従業員について独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(以下「機構・中退共」という。)との間に退職金共済契約を締結することによって行うものとする。

  • 第2条:

新たに雇い入れた従業員については、試用期間を経過し、本採用となった月に機構・中退共と退職金共済契約を締結する。

  • 第3条:

退職金共済契約の掛金月額は、別表のとおりとし、毎年○月に調整する。

【別表】

賃金掛金月額
16万円未満8,000円
16~20万円未満10,000円
20~24万円未満12,000円
24~28万円未満14,000円
28~32万円未満16,000円
32~36万円未満18,000円
36~40万円未満20,000円
40万円以上22,000円

引用:独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部

社内制度と併用する場合

中小企業退職金共済制度と社内の準備金で退職金を用意する場合の作成例として、厚生労働省が公開しているひな型の一部抜粋を記載します。

中小企業退職金共済制度のみを利用する場合同様に、ひな型を利用する際は下記一部抜粋を参考に、休職者の場合や退職金の支払期日など、自社に当てはめたうえで取り扱いを検討しましょう。

  • 第1条:

従業員が退職したときは、この規程により退職金を支給する。

前項の退職金の支給は、会社が各従業員について勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(以下「機構・中退共本部」という。)との間に退職金共済契約を締結することによって行うものとする。

  • 第2条:

新たに雇い入れた従業員については、試用期間を経過し、本採用となった月に機構・中退共本部と退職金共済契約を締結する。

  • 第3条:

退職金共済契約は、従業員ごとに、その基本給の額に応じ、別表に定める掛金月額によって締結し、毎年○月に掛金を調整する。

  • 第4条:

退職金の額は、掛金月額と掛金納付月数に応じ中小企業退職金共済法に定められた額とする。

  • 第5条:

従業員が懲戒解雇をされた場合には、機構・中退共本部に退職金の減額を申し出ることがある。

引用:厚生労働省 中小企業退職金共済制度(中退共制度) 掛金の決め方/規程の作り方

過去の統計データとひな形を利用して効率よく退職金制度を導入しましょう

中小企業における退職金は、業種別により金額差があり、大企業と比較した際は、さらに大きな金額差が見られました。

また、勤続年数によっても退職金の金額が異なります。自己都合による退社であれば大きな差は見られませんが、会社都合の場合は勤続年数が多いほど退職金の金額が多いことがわかりました。

退職金制度を導入する際、常時雇用する従業員が10名以上の事業場がある企業では、就業規則を変更、もしくは別に退職金規程を作成して管轄の労働基準監督署へ届ける必要があります。

退職金規程を作成する際にはひな形が用意されているため、自社に当てはめて効率よく作成しましょう。


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