- 更新日 : 2023年8月29日
雇用保険被保険者証とは?再発行の方法や離職票との違い
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを示す書類で、事業主を通じてハローワークから交付されるのが一般的です。
原則は雇入れ時に渡されることとなっていますが、重要書類であることから会社が保管し、退職時に雇用保険被保険者証を渡すケースも多く見られます。
また、雇用保険被保険者番号は退職後も引き継がれるので、転職先に提出が必要な書類の1つです。
この記事では、雇用保険被保険者証の概要、交付時期のほか、発行手続などについて解説していきます。
目次
雇用保険被保険者証とは?
雇用保険被保険者証とは、労働者が雇用保険の適用事業所に就職し、雇用保険の被保険者資格を取得したことを証明する書類のことです。横105mm、縦77mmのOCR用の白い用紙に黒字で印刷されています。
雇用保険被保険者証に記載されている内容
主な記載内容 |
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※発行場所により記載内容に差異がある場合があります。 |
被保険者番号とは雇用保険の被保険者に割り当てられる固有の番号です。
被保険者期間を算定するための番号で、転職や氏名が変わった場合でも被保険者番号は変わりません。
なお、雇用保険被保険者証の左側にはミシン目で区分された「雇用保険被保険者資格等確認通知書」がつながっています。
雇用保険被保険者証と離職票の違い
雇用保険被保険者証は雇用保険に加入していることを証明する書類です。
一方で、離職票は退職したことを証明する書類です。(正式名称は「雇用保険被保険者離職票」)
引用:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険の具体的な手続き
雇用保険の被保険者が離職した場合、被保険者期間など所定の要件を満たしていれば、再就職までの生活保障として基本手当(いわゆる失業手当)を受給することができます。
基本手当を受給するには、2つの離職票(離職票-1、離職票-2)が必要になります。いずれも離職後、事業所が所轄のハローワークで雇用保険の被保険者資格喪失手続をした際に交付されるものです。
本人は、離職後、事業所から2つの離職票を受け取り、住所地の所轄ハローワークで求職の申し込みを行い、2つの離職票(離職票-1には基本手当の振込先金融機関を記入)を提出し、基本手当の受給資格の決定を受けます。その後、受給者説明会を経て失業の認定がなされ、基本手当の受給という流れになります。
雇用保険被保険者証と離職証明書の違い
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。
離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)は、基本手当の支給要件や支給額及び支給期間などの決定のために必要な事項を記載した書類です。事業所が資格喪失届とともにハローワークに提出するものです。
カーボン用紙で次のような3枚綴り(A3サイズ)になっています。
①事業所控(1枚目)
②安定所控(2枚目)
③本人用(「離職票-2」3枚目)
事業所が3枚綴りの離職証明書を提出すると、ハローワークでは賃金台帳、出勤簿、退職届などと突き合せて確認のうえ、受理印を押印した①事業所控(1枚目)と③本人用(「離職票-2」3枚目)とともに「資格喪失確認通知書(離職票-1)」を交付します。
前述のように本人は事業所は、2つの離職票を受け取り、基本手当の受給手続を行います。
雇用保険被保険者証と健康保険証は同じ?
引用:雇用保険のしおり|厚生労働省、健康保険証(被保険者証)の交付 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
雇用保険と健康保険はいずれも国の社会保険制度ですが、目的と内容は異なります。
雇用保険は失業、自主的な教育訓練、雇用の継続、育児休業などに対して支援する公的保険です。一方、健康保険は業務外・通勤外の負傷・疾病、出産などに対して支援するものです。
ともに就職した事業所が、雇用保険や健康保険の適用事業所であって本人が一定の要件を満たした場合に被保険者となり、被保険者であることを証する書面として被保険者証が交付されます。
雇用保険では雇用保険被保険者証、健康保険では健康保険被保険者証(いわゆる健康保険証)が該当します。
雇用保険被保険者証はいつ・どこでもらえる?
雇用保険被保険者証は、新たに雇用されたときに勤務先から交付されます。
勤務先は、後述のように雇用保険の被保険者資格取得手続をし、ハローワークから交付された雇用保険被保険者証を本人に渡すという流れになります。
ただし、重要な書類のため会社で預かっている場合も多く、その際は退職時に渡されます。
雇用保険被保険者証の再発行手続き
雇用保険被保険者証を紛失、あるいは損傷した場合は、ハローワークに「雇用保険被保険者証再交付申請書」を提出すれば、再発行してもらえます。
ハローワークで再発行の手続きをする方法
申請書には被保険者番号の記載が必要になりますが、ハローワークはデータベースで確認することができるため、窓口で相談してください。
なお、本人確認書類として、マイナンバーカード、運転免許証、官公庁が発行した身分証明書(写真付き)のいずれか1種類が必要です。
また、郵送で申請することも可能です。ただし、郵送での申請の場合、交付までに2週間程度かかるため注意しましょう。
雇用保険被保険者証の有効期限
被保険者でなくなった最後の日から7年以上経過している場合、雇用保険被保険者番号がハローワークのデータから抹消されます。
たとえば、妊娠・出産を機に仕事を辞めた際や、前職を辞めた後個人事業主として働いていた場合などのケースが考えられるでしょう。
その場合は、新たな番号で雇用保険被保険者証を取得することになります。
雇用保険被保険者証を退職時にもらっていない場合は?
雇用されたときに被保険者の要件を満たしていれば、被保険者資格取得の手続がなされているはずであり、その際、本人に手渡されているはずです。
入社後及び退職時にも渡されていないとすれば、考えられるのは、次のようなケースでしょう。
- 雇用保険の被保険者の要件を満たしていなかった
- 事業主が雇用保険の被保険者資格取得の手続を怠っていた
- 雇用保険の被保険者資格取得の手続をしたものの、被保険者証を事業主が保管していた(あるいは紛失した)
1・2については、給与明細で雇用保険料が源泉徴収されているか否かでおおよその確認できます。源泉徴収されていなければ、雇用保険の被保険者となっていなかった可能性があります。
2の場合、加入漏れであり、本来、事業主が遡及して加入手続をしなければなりません。雇用保険料の修正申告が必要となる可能性もあります。
確実に加入の有無を確認したい場合、ハローワークでは、労働者が自らの雇用保険加入手続がなされているか否かの書面による確認照会に対応しています。照会結果は、「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会回答書」によって通知されます。
この回答結果を踏まえて、ハローワークに相談するという方法もあります。
3については、事業所に問い合わせた結果、単に渡し忘れであれば、郵送してくれるように依頼すればよいでしょう。紛失してしまったという場合は、後述の再発行手続で対応できます。
雇用保険被保険者証のコピーしかもってない場合
転職で雇用保険被保険者証が必要となる場合は、被保険者番号が確認できればよいため、コピーでも何ら問題はありません。教育訓練給付で必要となる場合、再発行手続を行えばよいでしょう。
雇用保険被保険者証が届かない場合
厚生労働省・ハローワークでは、事業主が雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)と雇用保険被保険者証を確実に本人に渡すように指導しており、事業主が保管するものではありません。
本人の手元に届かないのであれば、事業主に確認し、自分で保管するようにしましょう。
雇用保険被保険者証はどんな場合に必要?
雇用保険被保険者証は、どのような場合に必要となるのか、労働者側・雇用者側に分けてご紹介します。
労働者側が必要なシーン
まず、転職する場合、勤務先に提出する必要があります。新たに雇用保険の被保険者となるため、事業所では雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出することになります。
その際、資格取得届には被保険者番号を記載しなければなりません。以前の勤務先で資格取得したときに振り出された被保険者番号は、変わらず使用されるため、事業所ではその番号を確認するため、本人に提出を求めるわけです。
次に比較的よくあるのは、雇用保険の教育訓練給付の支給申請を行う場合が考えられます。
教育訓練給付とは、雇用の安定と就職の促進を図るため、労働者の主体的な能力開発やキャリア形成を支援するものです。厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合に受講費用の一部が支給されます。
申請は被保険者本人が行い、その際、受給資格確認のために雇用保険被保険者証の提出が求められます。
事業者側が必要なシーン
事業者側が、雇用保険被保険者証が必要になるのは、従業員の入退社時が基本です。
そのほかにも、従業員が雇用保険の給付制度を利用して教育訓練を受ける際にも必要となります。
雇用保険被保険者証の発行条件
雇用保険被保険者証は雇用保険の被保険者であることの証明書ですから、発行してもらうためには雇用保険の被保険者でなければなりません。
雇用保険の被保険者となるには、雇用保険の適用事業所で雇用され、原則として次の2つの要件を満たしていることが必要です。常用・パート・アルバイト・派遣など、名称や雇用形態は問われません。
- 31日以上の雇用見込みがあること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
また、次に挙げる人は、原則として被保険者とはなりません。
①法人の取締役など |
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代表取締役、業務執行権を有する取締役だけでなく、その他の取締役などの役員も会社と委任関係にあるため、原則として被保険者となりません。 ただし、部長、支店長、工場長などで実態として労働者的性格が強く、雇用関係があると認められる場合は被保険者となります。 |
②同居の親族 |
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個人事業の事業主及び、法人であっても実質的に代表者の個人事業と認められる事業の代表者と同居している親族は、原則として被保険者となりません。 ただし、親族以外の労働者がいる場合、同居の親族であっても、他の労働者と同様に雇用関係があると認められる者に限って被保険者となります。 |
③家事使用人 |
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家政婦などの家事使用人は、原則として被保険者になりません。 ただし、事業主に雇用され、主として家事以外の労働に従事することを本務とする場合は、指揮命令を受けて家事をすることがあっても被保険者となります。 |
④昼間学生 |
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昼間学生は被保険者となりませんが、休学中または学校が一定の出席日数を課程修了の要件としないことが明らかな場合や、卒業見込証明書を有する者で卒業前に就職し、卒業後も引き続き勤務を予定する者は被保険者となります。 |
なお、以下に該当する場合は、雇用保険法の適用除外とされています。
- 季節的に雇用されて同一事業所に雇用される通常の労働者に比べて、1週間の所定労働時間が短く、かつ30時間未満の者
- 日雇労働被保険者の要件に該当しない日雇労働者
- 4カ月以内の雇用契約を締結している季節労働者
- 官公庁に雇用される方の一部(離職した場合に他の法令、条例に基づき支給を受けるべき諸給与の内容が、雇用保険に規定する失業給付の内容を越えると認められ、厚生労働省令に定める者)
雇用保険被保険者証の発行手続方法
前述の通り、事業所が人を雇った場合、たとえ従業員が1人であっても、以下の条件に両方とも該当する場合は雇用保険の被保険者として手続きを行う必要があります。
- 31日以上の雇用見込みがあること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
この2つの条件に該当する場合は、事業主は管轄のハローワークに、雇用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。
従業員を初めて雇用する場合
雇用保険の適用対象となる労働者を初めて雇い入れることとなった場合は、まず労働保険の成立手続を済ませます。
その後、事業所を管轄するハローワークに「事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
従業員を新たに雇用する場合
その都度、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
労働者が被保険者になったことが確認されると、事業主にはハローワークから雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用・事業主通知用)と雇用保険被保険者証が交付されるので、労働者本人に渡します。
被保険者通知用の雇用保険被保険者資格取得等確認通知書と雇用保険被保険者証がミシン目でつながっていることは前述した通りです。
従業員が離職する場合
従業員(雇用保険被保険者)が離職する場合は、「雇用保険被保険者資格喪失届」と、給付額等の決定に必要な「離職証明書」を提出する必要があります。
もし「離職証明書」の離職理由が、事業主と離職者で主張が異なる場合は、ハローワークで事実関係の調査が入り、離職理由が判定されます。
雇用保険被保険者証について知っておこう!
雇用保険被保険者証の概要、交付時期のほか、発行手続などについて解説してきました。
一般的に雇用保険被保険者証の存在は、あまり認知されていないようです。とは言え、転職時には提出を求められます。
原則、本人が保管すべきものであり、手元にない場合、あらためて会社に確認することも検討しましょう。
よくある質問
雇用保険被保険者証とは何ですか?
雇用保険の被保険者であることを証する書面です。詳しくはこちらをご覧ください。
雇用保険被保険者証はどういったタイミングで必要ですか?
通常、転職した際、勤務先への提出書類の一つとして求められます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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