- 更新日 : 2021年11月29日
厚生年金基金の保険料

厚生年金保険に加入しているけれども厚生年金基金には加入していない場合と、厚生年金基金にも加入している場合とで、加入者の保険料に違いはありません。今回は、厚生年金保険と厚生年金基金との関係と保険料の負担について解説していきます。
厚生年金基金の保険料・掛金
厚生年金基金は、厚生年金保険の一部を企業が運用するというものです。したがって、厚生年金基金に加入していても、給与やボーナスから天引きされる金額は、厚生年金保険の被保険者と同じです。
実際には、国に支払う保険料の部分と基金へ支払う掛金の部分があるので、厳密には保険料の支払先が違うのですが、トータルでの金額は同じになります。
保険料の算出方法(加入員の負担)
厚生年金基金の保険料は、厚生年金保険の保険料と同じということですが、改めてどのように算出するかを説明しておきます。
保険料と掛金は、4月、5月、6月の平均給与の額をもとにした標準報酬月額(1等級の98,000円から30等級の62万円までの30等級)に保険料率や掛金率を掛けて算出します。ここでの平均給与は、残業手当や通勤手当を含めた税引前の額になります。
なお、給与は変動するので標準報酬月額は毎年9月に改定されます。また、標準報酬月額の2等級以上変動した場合には、例外的に標準報酬月額の改定が行われます。ボーナスについても標準賞与額に保険料率や掛金率を掛けて算出します。
厚生年金保険の保険料率は、8.737%
厚生年金基金の厚生年金保険料率は、基金により異なります。厚生年金保険料率は、6.837%から6.237%、基金掛金率は1.9%から2.5%です。6.837%と1.9%を足すと8.737%になり、6.237%と2.5%を足しても8.737%になります。
これで、厚生年金保険の保険料率と同じことがわかると思います。賞与にかかる厚生年金の保険料については、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額に保険料率を掛けた額になります。
保険料の算出方法(事業主の負担)
厚生年金保険の場合、保険料は労使折半で同額となるのですが、厚生年金基金は、企業年金の性質を有しているので、事業主の負担が厚生年金保険より多くなります。どれくらい多くなるかは基金により異なります。0.5%のところもあれば、1.5%のところもあります。
具体的計算例(加入員)
抽象的な話だけではイメージがもてないと思うので、具体例で見てみましょう。
4月、5月、6月の平均給与額:28万5,000円、ボーナス:63万5,300円の社員の場合
厚生年金基金の免除率:5.0%
計算方法
【給与分】
標準報酬月額表によると、28万5,000円は、17等級(28万円)となります。
標準報酬月額 × 保険料率 = 厚生年金保険料
28万円 × 6.237% = 17,464円
標準報酬月額 × 基金掛金率 = 厚生年金基金掛金
28万円 × 2.5% = 7,000円
厚生年金保険料 + 厚生年金基金掛金 = 合計保険料
17,464円 + 7,000円 = 24,464円
【ボーナス分】
ボーナスの標準賞与は、1,000円未満の端数を切り捨てるので、63万5,000円となります。
標準賞与 × 保険料率 = 厚生年金保険料
63万5,000円 × 6.237% = 39,605円
標準賞与 × 基金掛金率 = 厚生年金基金掛金
63万5,000円 × 2.5% = 15,875円
厚生年金保険料 + 厚生年金基金掛金 = 合計保険料
39,605円 + 15,875円 = 55,480円
つまり、給与が28万5,000円の社員の場合、厚生年金保険と厚生年金基金の毎月の支払額は24,464円となります。ボーナスについては、別途ボーナス支給月に55,480円が天引きされることになります。
以上、厚生年金保険および厚生年金基金の保険料・掛金の計算のしかたについて解説してきました。厚生年金基金に加入すると、厚生年金保険の保険料の計算と厚生年金基金の掛金の計算をしなければならないので複雑になりますが、加入員の負担額は厚生年金基金に加入した場合でもなんら変わることがありません。
厚生年金基金は基金により料率が異なるので、自分が加入する基金の料率がどのようなものか確認することが重要です。
まとめ
厚生年金基金は企業が運用を任されている企業年金として設けられるものです。被保険者の負担は、厚生年金保険料では労使の折半ですが、厚生年金基金については企業負担が大きくなります。
混同されやすい厚生年金と厚生年金基金について基本的な違いを理解し、自分の負担がどの程度なのかを確認するとともに、老後に受け取れる保険金がどれくらいになるのかを把握しておきましょう。
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