- 更新日 : 2025年1月20日
パワハラとモラハラの違いは?具体例やチェックリストでわかりやすく解説
パワハラとモラハラは、いずれも職場で発生し得るハラスメントです。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事ではパワハラとモラハラの違いや、それぞれの具体例を紹介します。ハラスメントにあたる言葉チェックリストも用意しているので、ぜひ日頃の言動を見直してみましょう。
目次
パワハラとモラハラの違い
パワハラ(パワーハラスメント)もモラハラ(モラルハラスメント)も、相手が嫌がる言動をするハラスメントの一種です。パワハラは優越的な立場を利用してハラスメントを行うこと、モラハラはモラル(道徳)に反したハラスメントを指します。
両者には「起こりやすい場面」「優位な立場の有無」「身体的暴力行為の有無」という3点で違いがあります。
起こりやすい場面
パワハラは会社や学校、団体などといった上下関係が存在する組織内で発生することが多いと言われています。一方、モラハラは組織ではもちろん、家庭内や恋人間、友人間、あるいは趣味の集まりなど、フラットな間柄でも発生する可能性があります。
優位な立場の有無
パワハラとモラハラの大きな違いは優位関係があるかどうかです。パワハラは上司から部下、先生から生徒、先輩から後輩、リーダーからメンバー、元請けから下請けなど、優位な立場にある者が下の立場の者に対して行われるハラスメントを指します。
一方、モラハラは対等な立場の者、あるいは自分より優位な立場にある者に対しても行われ得るハラスメントです。職場であれば同僚に対して行われることもあれば、部下や後輩から上司や先輩に対して行われることもあります。
身体的暴力行為の有無
パワハラは暴言を吐く、嫌味を言う、プライベートに介入する、無視をする、孤立させる、過大・過小な要求をするといった精神的な攻撃のほか、たたく、殴る、蹴る、胸ぐらをつかむなどの身体的な攻撃も含まれます。
一方、モラハラは身体的な攻撃は含まれないとされています。家庭内や恋人間での身体的暴力はDVと呼ばれます。
職場で行われるパワハラ・モラハラの具体例
パワハラとモラハラの違いについてご説明しました。ここからはパワハラ・モラハラの具体例について見ていきましょう。
パワハラの事例
例えば、上司が部下に対して、あるいは先輩が後輩に対して必要以上に叱責する、暴言を吐く、人格を否定する、暴力を振るうなどの行為は典型的なパワハラです。
他にも職場で無視をする、一人で仕事をさせて職場の人間関係から孤立させる、プライベートにまで過度に踏み込む、完遂困難な仕事を与える、長時間労働や休日出勤を強要する、仕事を全く与えない、雑用ばかりを押しつける、有給休暇や希望休を取得させないといった行為もパワハラに該当する恐れがあります。
なお、一般的にパワハラは上司から部下、先輩から後輩に対して行われるケースが主流ですが、その逆もあり得ます。例えば、上司よりも部下のほうが実務に関する経験や知識が豊富な場合、部下が主導権を握ることもあるでしょう。後輩が結託した場合、いくら先輩といえども抵抗がしづらくなります。こうした状況で部下が上司に、後輩が先輩にパワハラを行うこともあり得ます。
モラハラの事例
モラハラは前述の通り対等な関係あるいは自分よりも立場が上の人に対して行われるハラスメントです。学校で同級生に対して行われる「いじめ」に近いイメージです。
個人あるいは集団が同僚に対して暴言を吐く、人格を否定する、必要以上に叱責をする、無視をする、プライベートにまで過度に踏み込むといった行為が挙げられます。また、上司や先輩といった優越的な立場の人にこうした行為をするのもモラハラに該当します。
パワハラ・モラハラが発生しやすい職場の特徴
パワハラ・モラハラの発生には職場環境が起因しているケースが一般的です。ここからはハラスメントが発生しやすい職場環境について考えてみましょう。
従業員が高ストレス下で働いている
従業員が業務に忙殺されている、長時間労働や休日出勤などが常態化しているような、ストレスが多い職場ではパワハラやモラハラが発生しやすい傾向があります。忙しいあまり部下や後輩への配慮ができなくなる、八つ当たりをしてしまう、あるいはコミュニケーションが不足して誤解が生じることで、パワハラやモラハラにつながってしまいがちです。
また、上司からパワハラやモラハラを受けた人が、その部下や後輩をストレスのはけ口にしてしまう、あるいは自分が引き受けている仕事を部下や後輩に振った結果職場全体が過酷な労働環境になってしまうといった負の連鎖が発生することもあります。
パワハラやモラハラに関するルールが明確化されていない
ハラスメントをすることが悪いのは当たり前ですが、就業規則やルールで定めておかないと従業員の意識が低下してパワハラやモラハラが起こりやすくなります。また、行為を受けている側にとっても、どのように対処していいのかわからないため、泣き寝入りになってしまって余計にハラスメントがエスカレートするといった事態も考えられます。
パワハラやモラハラの定義や相談窓口、対応の流れ、行為者の処分など、明確なルールを定めて、体制を整えておくことが大切です。
パワハラ・モラハラへの理解度や意識が低い
「どういった行為がパワハラやモラハラに該当するのか」という理解不足や「パワハラやモラハラと捉えられる言動をしないようにしよう」といった意識不足もパワハラやモラハラの発生につながります。
「昔はこれくらい怒られるのは当たり前だった」「本人のためだから」といって部下や後輩を過度に厳しく叱責する、悪意がなく冗談やいわゆる「いじり」のつもりで暴言を吐いたり侮辱をしたり、世間話のつもりでプライベートなことを詮索してパワハラやモラハラにつながってしまうケースも少なくありません。
パワハラ・モラハラにあたる言葉
特にパワハラやモラハラで注意したいのは言葉です。何気なく発した言葉、悪意のない言葉でも、言われたほうにとっては不快に感じ、ハラスメントと捉えられる恐れがあります。以下ではパワハラ・モラハラとみなされる危険がある言葉や発言の例をリスト形式でまとめました。日頃から発言をする際には十分注意しましょう。
【相手やその家族の身の危険を感じさせる言葉】
- 殺す
- 殴るぞ
- しばくぞ
- 死ね
- 消えろ
- 首をくくれ
- どうなるかわかってるんだろうな
- 家族がどうなってもいいのか
- 家まで行くぞ
- こっちにはヤクザがバックについているんだからな
【財産の侵害をほのめかす発言】
- できなかったら●●円払え
- 罰金払え
- 慰謝料払え
- 自腹で補填しろ
- 契約が取れなかったらおまえが買い取れ
- 来月は給料を払わないからな
- 給料から天引きしておくから
- 給料返せ
【人格を否定する言葉】
- おまえ
- 貴様
- てめえ
- クソ野郎
- きもい
- バカ
- アホ
- ダメ人間
- 社会不適合者
- 無能
- 給料泥棒
- 役立たず
- おまえの代わりはいくらでもいる
- おまえは新人以下だ
- よく会社に来られるな
- おまえのせいでみんなが迷惑している
【差別的な発言】
- 田舎者
- 貧乏人
- 片親
- 前科者
- おじさん
- おばさん
- ジジイ
- ババア
- ガキ
- これだから●(性別)は
- これだから●●(国や地方)人は
- これだから●●(学歴)卒は
- これだから●●世代は
- ●●(病気や障がい)があるから無理だよね
【キャリアを否定する発言】
- コネ入社
- ボンボン
- ゴマスリ野郎
- 腰巾着
- ●●(経営者や上司)の愛人
- 元●●(その人の経歴など)
- これだから派遣社員は使えない
- バイトの分際で
- そんなんだからおまえはその歳で●●(役職・ポスト名)止まりなんだよ
- ろくな成果も出していないのに●●(役職・ポスト名)になれたなんて運がいいな
- ●●(経営者や上司)に身体でも売ったのか?
【大勢の前で吊し上げる発言】
- なんでおまえだけできていないんだよ
- こいつ●●だからさ
- 恥ずかしくないのか?
- みんなおまえのことをバカにしてるよ
- みんなに謝れ
- おまえはみんなよりできないんだから人一倍努力しろよ
- おまえらはこいつみたいにはなるなよ
- 職場で浮いてるのがわからないのか?
- ここはおまえのいる場所ではない
- こんな奴を相手にするなよ
【労働者の権利を侵害する発言】
- はぁ?有給を取るの?
- ●●の分際で有給を取るな
- この忙しいときに休むなよ
- もう帰るの?
- みんな残業してるんだぞ?
- 仕事を覚えるまで残業代は出ないから
- タイムカードを切ってから残業しろ
- 今度休日出勤できるよな?
- 休みなんてないから
- 飯食う暇があるなら働け
- 契約を取れるまで帰ってくるな
【過度な叱責・指導】
- いつになったらできるんだ?
- 何度言ったらわかるんだ
- そんなんだから上達しないんだよ
- 親の顔が見てみたい
- こんなこと●●でもわかるぞ
- おまえは●●以下だ
- やる気がないなら帰れ
- ちゃんとやってるのか?
- 教えるだけ時間の無駄だよ
- 次はないからな
【身体的な特徴を揶揄した発言】
- チビ
- デブ
- ガリ
- ハゲ
- デカい
- ブス
- ブサイク
- メガネ
- パーマ
- 出っ歯
- 色黒
- 色白
- 汚い
- 臭い
- おまえ●●みたいな顔してるな
- 頭悪そうな顔しやがって
- こんなもん着けてるんじゃねえよ
- その服似合わないな
- 最近●●(外見や容姿の変化)になってきたんじゃないか?
【性格や価値観を揶揄する】
- 根暗
- オタク
- 軽い
- チャラい
- 頭がおかしい
- 変態
- クズ
- その考え方は間違っている
- 根性が曲がってるんじゃないか
- どんな教育を受けたらおまえみたいになるの?
- 親のしつけがなっていないからそうなるんだよ
- 危険な思想だ
- どの宗教を信仰してる?
- どの政党を支持してる?
- これだから●●(芸能人やスポーツチーム、趣味など)ファンは
- これだから●●(宗教)信者は
- これだから●●(思想)主義者は
- これだから●●(政党)支持者は
- ●●(趣味やプライベートな活動、ライフスタイルなど)をしてる奴はろくな奴がいない
【プライベートに立ち入る発言】
- 趣味は?
- 彼氏・彼女はいるの?
- 結婚してるの?
- 早く結婚しろ
- 子どもはいるの?
- 子どもは作らないの?
- あんな奴と早く離婚したほうがいいよ
- 君、片親なんだ?
- お父さん・お母さんは健在?
- 病気はもう治ったのか?
- おまえ●●と付き合ってるだろ?
- 休日何やってるの?
- そんなくだらない趣味はやめちまえ
- おまえ友達がいないだろう?
- 君は独身だから休日出勤できるよね?
- そんなんだから結婚できないんだよ
- 離婚されて当たり前だよ
- もう●●への借金は返したのか?
- おまえ●●(犯罪)で捕まったことがあるらしいな
- 健康診断に引っかかったんだって?病名は?
以上で一例ですがパワハラやモラハラに該当する恐れがある言葉や発言を紹介しました。明らかに暴言や侮辱とわかるような言葉もあれば、「これも該当するの?」と意外に思われたものもあるかもしれません。
悪意がない発言、世間話のつもりで質問したことでも、相手の捉え方や状況(執拗に質問したり回答を強要したりするなど)によってはパワハラやモラハラと捉えられかねません。
上記で紹介した以外にもさまざまな言葉や発言がパワハラ・モラハラに該当する恐れがあります。相手の立場になって「どう捉えるか」「不快感を与えないか」を考えて発言するよう心がけましょう。
パワハラ・モラハラの防止策
最後に、職場でのパワハラやモラハラを未然に防ぐために、そして万が一発生してしまった場合に、迅速に対応できるよう、以下の防止策を検討しましょう。
管理職・一般社員への研修の実施
パワハラやモラハラを防止するためには、まず従業員の意識を変える必要があります。「ハラスメントは良くない」とわかっていても、「どのような言動が該当するのか」「そもそもパワハラやモラハラとはどのようなものなのか」を全員が完全に理解しているわけではありません。前述の通り、本人には悪意のない言動がパワハラと捉えられてしまうケースもあります。
可能な限り全従業員に対して研修を行い、パワハラ・モラハラに対する理解度を高め意識づけをしましょう。一人ひとりが言動に気をつけることで、ハラスメントが起こるリスクが軽減し、良好な職場環境が醸成されてパフォーマンスアップにもつながるでしょう。
就業規則への規定と周知
就業規則にパワハラ・モラハラに関する取り決めを規定し周知することでも職場の意識を変えることができます。ハラスメントを禁止することを就業規則に盛り込むことで、会社の方針や姿勢をしっかりと示すことができます。
また、就業規則にパワハラ・モラハラに遭った際の相談先や対応方法を明確にしておくことで、万が一ハラスメントが発生した際に的確な対処が可能となります。
アンケート実施による実態把握
パワハラやモラハラの予防で重要なのは実態を把握することです。従業員がハラスメントに遭っている、あるいはその予兆があるといった状況がわかれば、迅速に対応できて事態の深刻化を防げます。ただし、相談窓口を開設したとしても、パワハラ・モラハラの被害者や目撃者にとってはなかなか相談がしづらいです。
数カ月に1回など定期的に匿名でアンケート調査を行って実態を把握しましょう。
思わぬ言動がパワハラ・モラハラになることも。意識を改革しよう
本人には悪気がなかったとしても、思わぬ言動がパワハラやモラハラに該当する恐れがあります。ハラスメントをなくすためには従業員一人ひとりの意識を変えることが重要です。
今回、ご紹介したパワハラ・モラハラにあたる言葉や具体例を把握し、日頃の言動には十分気をつけてください。また、管理者の方、人事・総務担当の方は、従業員の意識や理解を高め、ハラスメントが発生しにくい職場環境づくりを推進しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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