• 更新日 : 2024年3月8日

譴責(けん責)とは?懲戒処分の意味や流れ、通知書のテンプレートを紹介!

譴責(けん責)とは?懲戒処分の意味や流れ、通知書のテンプレートを紹介!

譴責(けん責)とは懲戒処分の一つで、比較的軽い処分にあたります。この記事では譴責の定義、譴責以外の懲戒処分の種類、譴責処分の流れや注意点等について解説します。比較的軽い譴責処分についても処分の無効を争う訴訟が提起されています。実際に処分を行うにあたってはこの記事で紹介した内容に留意し、適正に進めることが大変重要です。

譴責(けん責)とは

譴責(けん責)とは、懲戒処分の中でも比較的軽い処分に該当します。就業規則違反などの非違行為に対して、始末書の提出を求めて厳重注意を行う懲戒処分です。

譴責は処分を受けた従業員に対して経済的不利益を与える処分ではありませんが、昇格や昇給などの査定に影響を及ぼす場合があります。

譴責(けん責)以外の懲戒処分の種類

懲戒処分は法律で定められているわけではありません。就業規則により事業場ごとに個別に定めるものです。

労働基準法により、懲戒処分などの制裁の種類については、就業規則の相対的必要記載事項とされており、会社で規定する必要がある場合には記載しなければならない項目です。就業規則への記載がない場合、会社が従業員の問題行動への制裁を行えないことになるため、通常は記載しています。

懲戒処分の種類について、厚生労働省のモデル就業規則では4種類(譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇)が記載されていますが、必ずしもこの限りでなく事業場ごとに定めることが可能です。

一般的には、譴責以外の懲戒処分はモデル就業規則の3種類(減給、出勤停止、懲戒解雇)に戒告、降格、諭旨解雇を加えた6種類になります。以下でその概要を解説します。

参考:モデル就業規則|厚生労働省

戒告

懲戒処分の中では最も軽い処分です。一般的には始末書の提出を求めないとされており、譴責より軽い処分と位置付けられています。ただし譴責と戒告が法律上区分されているわけではないため、戒告処分にあたって就業規則で始末書の提出を定めている会社もあります。

訓戒、訓告と呼ばれる処分もありますが、これらは単に呼び方の違いだけで戒告と同じ処分を指します。

減給

始末書を提出させて減給を行う処分です。減給額については、労働基準法第91条により以下の通り制限されています。

1回あたりの減給額:平均賃金(1日分)の5割以下

減給額の総額:1賃金支払期の賃金総額の1割以下

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

なお、遅刻や早退の場合は欠勤控除となるため、減給にはあたらず労働基準法による制限は影響しません。ただし遅刻や早退の時間分を超えて賃金を控除する場合は、その超えた額については減給の制裁に該当し、労働基準法の規定に基づき制限されます。

出勤停止

始末書を提出させて一定期間の出勤を停止する処分で、出勤停止期間中の賃金は支払いません。なお、この場合に不支給となった賃金額については労働基準法の規定による減給の制裁には該当しません。

出勤停止期間の上限については就業規則により任意に定められますが、処分の対象となった行為と照らして適切な期間を定める必要があります。一般的には1~2週間程度と言われています。

降格

従業員の役職あるいは職務上の資格等級を降格とする処分で、基本給が減額される場合や役職手当が減額または不支給となる場合があります。この場合の手当の減額についても労働基準法の規定による減給の制裁には該当しません。

諭旨解雇

会社が従業員に対して退職することを勧告する処分です。情状酌量の余地がある場合に、懲戒解雇と比べて軽い処分としているものです。従業員が退職勧告を拒否した場合には、懲戒解雇処分に切り替えることになります。

退職願の提出があった場合には退職金を支払いますが、減額支給とする場合もあります。また、解雇にも該当するため、労働基準監督署長の除外認定を受けた場合を除き、解雇予告が必要と考えられています。

懲戒解雇

懲戒処分の中で最も重い処分で、重大な非違行為が処分の要件となります。従業員を一方的に解雇する処分で、退職金は不支給または減額になることが一般的です。解雇予告については労働基準法の規定が適用されますので、労働基準監督署長の除外認定を受けない限りは実施しなければなりません。

なお、厚生労働省モデル就業規則の例のように、解雇予告期間を設けずに即時解雇することを規定する場合もあります。

譴責(けん責)処分の対象行為

懲戒処分にあたっては、就業規則に懲戒事由を定める必要があります。以下の内容は、厚生労働省のモデル就業規則で例示されている懲戒事由です。

  • 正当な理由のない無断欠勤
  • 正当な理由のない欠勤・遅刻・早退が多い
  • 過失による会社への損害
  • 服務規定(業務命令、身だしなみ、職務専念義務、守秘義務など)違反
  • 各種ハラスメント行為
  • 社内秩序、風紀を乱す行為
  • その他、就業規則に違反する行為など

懲戒処分の中で比較的軽い譴責処分の対象行為は、上記の事由に該当した上で、程度の軽いものということになります。また、私生活において程度の軽い非違行為があった場合にも譴責処分の対象となる場合があります。

なお、モデル就業規則では、懲戒解雇事由としてこれらより程度の重い行為や犯罪行為などが規定されています。

譴責(けん責)処分の流れ

譴責処分を行う場合の流れは以下の通りです。

就業規則の懲戒事由に該当するかの確認

譴責処分の対象となる従業員の行為が、就業規則に定めている懲戒事由に該当するかを確認します。

事実確認

対象行為に関する事実確認を行います。事実を裏付ける客観的な証拠が必要なため、関係者への事実関係の聞き取りを行い、証言や記録などを収集します。

処分対象者への弁明の機会の付与

事実確認において懲戒事由に該当し、譴責処分を行う必要があると結論付けた場合でも直ちに処分を行わず、処分対象者が弁明する機会を与えます。

具体的には処分対象者本人と面談し、言い分を十分に聞くことになります。弁明書と呼ばれる書面を受領する形で実施する方法もあります。就業規則等に特に実施方法が規定されていない場合は、弁明書を受領した上で面談を行う形が望ましいでしょう。

誤った処分や処分の行き過ぎを防ぐ意味でも必要なプロセスであり、会社が懲戒処分の手続きを適正に行っていることの証明にもなります。弁明の機会を付与しなかったことで懲戒処分の手続の相当性が否定されて、無効となった判例があるので注意が必要です。

譴責処分通知書の交付

譴責処分が確定したら、処分対象者に譴責処分通知書を交付します。譴責処分通知書については次章で紹介します。

処分を確定した際は、対象者に改善を促す目的で行う処分であることを伝えるなど、フォローを行いましょう。

始末書の提出指示

就業規則で始末書の提出を定めている場合には、提出を指示します。始末書の提出方法については譴責処分通知書に記載しておきます。なお、始末書は本人の意思に基づき作成するものため、内容を会社側が指示してはなりません。

また、処分対象者が始末書の提出を拒否する場合、その事実自体を新たな処分のための証拠にしたり、人事評価において考慮したりするなどの対応を取ることになるでしょう。

譴責(けん責)処分通知のテンプレート

譴責処分通知書には以下の項目を記載します。

  • 処分対象の従業員氏名
  • 会社名および代表者名(一般的には人事部長名)
  • 処分日
  • 処分の種類(譴責処分であること)・内容とその理由
  • 就業規則上の根拠条文
  • 始末書提出方法とその期限

なお、以下のリンクより譴責処分通知書のテンプレートを無料でダウンロードできます。

譴責(けん責)処分における注意点

譴責処分は懲戒処分の中で軽い処分にあたるものの、処分の無効を争う判例があるため、処分を適正に決定し、正しい手続きを踏むことが非常に重要です。本章では譴責処分における注意点を解説します。

懲戒権の濫用に該当しないか

譴責処分も懲戒処分であり、処分を行うにあたって懲戒権の濫用に該当しないかの確認は重要です。労働契約法第15条では、懲戒処分の客観的合理性と社会通念上の相当性がない場合には、懲戒権の濫用にあたり無効になる旨が定められています。

参考:労働契約法 | e-Gov法令検索

懲戒処分の客観的合理性と社会通念上の相当性が認められるポイントは、概ね以下の3点です。

  • 就業規則に懲戒の規定がある

    就業規則に懲戒事由と懲戒処分の種類についての規定がなければ、懲戒処分を行えません。訴訟になった場合には懲戒処分は無効と判断されます。

    就業規則が作成されていない場合、就業規則を作成し懲戒の規定を定めていても従業員に対して周知されていない場合も同様です。

  • 懲戒事由に該当する事実が存在する

    懲戒処分の原因にあたる問題行動や就業規則違反等について、就業規則に定める懲戒事由に該当しなければなりません。またその行為に関する客観的証拠が揃っている必要があります。

  • 懲戒処分の原因の問題行動等と処分のバランスが適切

    懲戒処分の原因にあたる問題行動や就業規則違反等の内容と、懲戒処分のレベルのバランスを取る必要があります。つまり、重すぎない処分でなければなりません。正当な理由がなく無断欠勤するという行為に対して懲戒解雇処分は明らかに重すぎるため、そのような場合には社会通念上の相当性がないことになります。

法律上、基準にあたる規定はないため、処分対象者の行為の内容、動機、行為により与えた影響、反省の態度、処分歴などを総合的に考慮して判例なども参考にしながら決定することになります。

適正な手続きが取られているか

先述の「譴責処分の流れ」で説明した内容が適正な手続きです。就業規則等に定めた手続きが適正に行われないことを理由に、処分が無効とされている判例もあるため遺漏のないよう進める必要があります。

譴責処分の社内公表を行う場合は客観的事実のみ

譴責処分にあたる行為の再発防止を図るために社内公表を考える場合には、処分対象者のプライバシーへの配慮が必要です。公表する内容は処分内容やその理由といった客観的事実にとどめ、対象者の氏名は公表しないようにしましょう。また、社外への公表は行わないこととします。

譴責処分は処分内容と手続きの適正さに留意が必要

譴責処分は懲戒処分の中では比較的軽い処分にあたりますが、処分の無効を争う訴訟も提起されています。したがって、処分にあたっては他の懲戒処分同様に細心の注意を払う必要があります。

この記事で述べた譴責処分の流れや注意点に記載した内容、特に懲戒権の濫用にあたらないかという点に十分に注意し、適正に処分を行うように心がけてください。


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