- 更新日 : 2024年6月21日
シックスシグマとは?図解や事例、導入の流れ、活用のコツを解説
シックスシグマ(6σ)とはモトローラの技術者によって開発された品質管理におけるフレームワークです。業務品質の改善や顧客満足度向上に役立ちます。
今回は、シックスシグマの概要や目的、ビジネスにおける活用例などを解説します。活用する際のポイントもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
シックスシグマ(6σ)とは?
シックスシグマ(6σ)とは、品質管理におけるフレームワークです。業務プロセスを改善することで、製品・サービスの品質のばらつきを小さくするために、統計学を用いて行われる改善手法の1つでもあります。
シックスシグマは、1980年代にモトローラの技術者だったビル・スミス氏によって開発された手法です。その後、GEのCEO(当時)だったジャック・ウェルチ氏の推進によって大成功を収め、有効性が世界に知れ渡りました。
シックスシグマは統計学をもとに命名
ちらばり度合い | 100万回あたりの不具合の回数 |
---|---|
1σ | 690,000 |
2σ | 308,537 |
3σ | 66,807 |
4σ | 6,210 |
5σ | 233 |
6σ | 3.4 |
シックスシグマは統計学をもとに命名されています。シックスシグマの語源はシグマ(σ)で、データのちらばり度合いのことです。統計学的にいうと標準偏差を指す単位を指し、平均値に対して製品の完成度がどのくらいばらついているかを表しています。
また、シックスシグマとは「6σ」のことです。100万回のうち不具合が3~4回を超えないことを目標としています。6σ以外にも1σ~5σまで存在し、100万回あたりの不具合の回数が異なるのが特徴です
さらに、シックスシグマにもいろいろな種類があります。代表的なものは次の3つです。
- シックスシグマ
- リーンシックスシグマ
- デザインフォーシックスシグマ
これらは、取り組むプロジェクトやプロセスなどによって使い分けます。
シックスシグマの目的
シックスシグマの目的としては、次の2つが挙げられます。
- 業務品質を安定させること
- 顧客満足度の向上
各ポイントを解説します。
業務品質を安定させること
シックスシグマの目的として、業務品質の安定があります。シックスシグマでは業務プロセスを改善することで、製品やサービスの品質のばらつきを抑えられるため、業務品質の安定につなげられるのが特徴です。
大量に製品やサービスを生産・販売している企業では、機械や人の精度によって品質にばらつきが生まれてしまいます。そこで、シックスシグマを導入してミスやエラーによるミスを減らせれば、さらなる品質向上に取り組むことが可能です。また、業務の品質は企業の評価にもつながるため、シックスシグマによって企業価値を高めることにもつながるでしょう。
品質の向上: シックスシグマは、組織の製品やサービスの品質を向上させることを目指します。これにより、顧客満足度が高まり、リピートビジネスや口コミによる新規顧客の獲得が期待できます。
顧客満足度の向上
シックスシグマの目的として、顧客満足度向上も挙げられます。前述したように業務品質が向上すると、顧客満足度も必然的に高まるものです。それにより、顧客ロイヤルティが向上するほか、口コミによる新規顧客の獲得やリピートビジネスなどが期待できます。
ビジネスでのシックスシグマの活用例
シックスシグマを導入することで、業務品質を安定させることや顧客満足度の向上に効果があることがわかりました。次は、実際にビジネスでの活用例を紹介します。顧客対応、ECサイト、マーケティングと3つのシーン別に紹介するので、自社の担当業務にも適用できそうか検討してみてください。
顧客対応
顧客対応においては、顧客からの問い合わせ対応での例が挙げられます。
問い合わせに対して返信のルールを設定(2営業日以内に返信)していたものの、実際には返信に5日以上かかっているケースが1%の割合で起きていた事例です。分析の結果、問い合わせ対応をしているメンバーが他の業務も兼任していてリソースが不足していることが原因であることがわかりました。そこで、チーム編成を変更したところ、顧客対応のスピードが改善されたという事例があります。
シックスシグマの目的は顧客満足度の向上であるため、人事や総務などバックオフィスでも活用できるのが特徴です。
ECサイト
ECサイトにおける事例としては、製品発送のプロセス改善が挙げられます。
あるECサイトでは、注文の入った製品を手作業で梱包、発送していましたが、色・サイズ違いによるクレームが発生する問題を抱えていました。業務プロセスを見直したところ、業務手順が整えられていないことや作業の属人化が発生していたことが原因だと判明します。そこで、マニュアルを作成したところ、作業手順やチェック観点が整理され、ミスの削減につながったそうです。
マーケティング
マーケティングでは、納期短縮のケースが事例として挙げられるでしょう。シックスシグマは品質管理に有効なため、顧客から納期短縮を要望された場合などでも効果を発揮してくれます。
たとえば、最初に目標として定めた納品可能な日に対して、現状の納期や過去のデータをチェックし、なぜ時間がかかるのか検討する際にシックスシグマは有効です。
結果的に、人手不足であれば人員増加、事務処理の複雑さが問題だとわかれば手続きの簡略化などの対策を打ちだせるようになります。
シックスシグマの導入の流れ
シックスシグマを活用して課題を解決するには、正しいステップを踏むことが必要です。ここでは、シックスシグマ導入の流れについて解説します。
シックスシグマを導入する際は、DMAIC(ディーマイク)の5ステップを経るのが流れです。DMAICでは、Define(定義)、Measure(測定)、Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)の各ステップの頭文字をとったもので、これらのステップを踏むことで改善を行います。
各ステップの詳細は以下のとおりです。
課題を定義(定義・Define)
最初のステップが、課題の定義です。改善するプロセスの課題をここで抽出します。
課題を見つけるときには、顧客の声を手掛かりにすることがおすすめです。顧客の声を軸として、不具合であったり顧客のニーズに合っていないサービス・製品の不満などを課題と定義しましょう。
また、シックスシグマは定量的な課題解決手法のため、課題に対して具体的な数値を目標とすることが重要です。たとえば、製造業であれば「良品率99%以上を目指す」といった、現実的な数値目標を掲げましょう。
課題のデータ収集(測定・Measure)
次に測定(Measure)では、データ収集・測定して現状把握を行います。その際、偏った見方をしてしまうと正しく問題を見つけられません。中立なデータを一定量用意するようにしましょう。
また、現状を正しく理解するうえでは、配達時間や生産量などを具体的に数値で把握することが欠かせません。改善するプロセスに対しては、表やグラフで見える化するとわかりやすくなります。
課題の原因を分析(分析・Analyze)
分析(Analyze)では、測定で判明した課題の原因を分析していきます。重要なのは、プロセスに関する問題を見つけることです。個人のスキルや性格に差があることが問題というだけでは、組織的な課題解決にはつながりません。
また、測定データを深堀りしていく際は、ロジックツリーや特性要因図などを活用するとよいでしょう。シックスシグマでは客観的データに重きを置くため、測定から分析までに時間がかかる傾向にあることはあらかじめ理解しておく必要があります。
課題解決の施策(改善・Improve)
課題に対する問題点が明確になったら、改善案を検討し実行していきます。複数の改善案を試す場合は、コストパフォーマンスなどを考慮して効果的だと思われるものを選ぶのがポイントです。
効果測定(管理・Control)
最後に、プロセスが継続されるように管理します。テストではうまくいったとしても、現場では正しく機能しないことがあるかもしれません。導入して一度成功したからと安心せず、定期的な改善を行いましょう。
また、管理とは対象社員へ教育を実施することや、誰もが実行できるように標準化することも意味します。管理者は、改善が継続できているか定期的に確認するようにしましょう。
シックスシグマに向いている業務
シックスシグマは製造業はもちろん、ソフトウェア開発、サービス業など、さまざまな分野で応用できます。シックスシグマの原則が組織内のプロセスに適用できるためです。
たとえば、前述したようなカスタマーサポートセンターでの電話対応の効率化のほか、新商品の開発プロセスの最適化、納期時期の対応、ウェブサイトの改善など、多くのシーンで活用可能です。
シックスシグマを活用する際のポイント
続いて、シックスシグマを活用する際のポイントを3つ紹介します。以下のポイントをしっかり把握して、適切な方法でシックスシグマを活用できるようになりましょう。
顧客の観点から見る
シックスシグマでは、顧客に可能な限りの価値を提供し顧客満足度を向上することを目的としています。そのため、顧客は誰なのか、どういったニーズがあるのか、など顧客の視点から物事を考えることが重要です。
顧客の希望やニーズを特定し理解することで、顧客に継続的に製品を購入してもらえるようになります。
データで品質の不安定性を見つける
顧客の観点から物事を見て満足してもらうには、品質レベルの維持も欠かせません。顧客の要望に耳を傾けて、期待される品質を維持するためにもシックスシグマの活用が有効です。
シックスシグマでは現行プロセスにおけるデータの分析や収集などができます。分析をもとに最適化できる領域やボトルネックを引き起こしている領域といった品質の不安定さがないかを確認すれば、適切な対策を立てられるようになるでしょう。
継続的にプロセスを改善する
データで品質の不安定性を見つけて改善策を講じたら、継続的にプロセスを改善していくようにしましょう。継続的改善の理念として、長期にわたって少しずつ変更を加えていくことで、ポジティブで大きな変化が生まれるという考え方があるためです。
一時的な改善で満足することなく、あくまで顧客の視点になって継続して改善を繰り返していきましょう。
シックスシグマとリーンシックスシグマの違い
リーンシックスシグマの「リーン」とは、ムダを改善することを意味します。つまり、リーンシックスシグマでは、ムダやムラをシックスシグマからさらに除去する手法のことで、ミスや欠陥の発生を避けること自体を重視するのが特徴です。
両者の違いは、主に目標にあります。シックスシグマがミスやムダを省いて品質のばらつきを小さくするものであるのに対し、リーンシックスシグマはミスやムダ、欠陥自体を発生させないようにすることが目的です。
シックスシグマについて理解して業務に活かそう
シックスシグマ(6σ)とは品質管理におけるフレームワークです。活用することで、業務品質の改善や顧客満足度向上に役立ちます。ビジネスにおいては、顧客対応やマーケティングなどさまざまなシーンで活用可能です。
ただし、シックスシグマは適切なステップを経て導入しないと効果を発揮しません。ここで紹介した導入の流れを理解して、適切にシックスシグマの効果を発揮できるようになりましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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