• 更新日 : 2024年3月19日

セルフハンディキャッピングとは?陥る原因や克服方法を具体例と共に解説

セルフハンディキャッピングとは、故意にハンディキャップを設ける行為を指します。わざと不利益を背負うことで、失敗した際に責任転嫁をして自分を守ることができます。自己防衛ができ傷つかなくて済むというメリットがある一方、自分の能力を発揮できなくなる、他人からは好まれない行為であるというデメリットがあります。

セルフハンディキャッピングとは?

セルフハンディキャッピングとは、アメリカの心理学者スティーブン・ベルグラス氏とエドワード・ジョーンズ氏によって提唱された、自分を不利な状況に追い込む行為を指す言葉です。自分自身にわざわざハンディキャップを付けて、本当の実力を発揮できない状況を作り出すことをいいます。失敗しても全力で取り組めなかったからだと、自分の能力が低く評価されるのを防ぐことを期待して行う言動です。

セルフハンディキャッピングの具体例

以下がセルフハンディキャッピングの具体例です。

  • 準備中や本番直前に部屋の掃除など、今しなくてもいいことを行う
  • わざと体調を崩す
  • 遊んでしまうなど、時間があるのに準備をしない
  • 調子が出なかったと、実力が発揮できなかった旨の言い訳をする

セルフハンディキャッピングの種類

セルフハンディキャッピングには遂行的セルフハンディキャッピングと主張的セルフハンディキャッピングの2種類があります。それぞれの特徴や違いを把握しましょう。

遂行的セルフハンディキャッピング

遂行的セルフハンディキャッピングとは、本番前の準備を怠るような、自分の行動によって不利益を課すことを指します。掃除を始めてしまって準備をしなかったり、体調をわざと崩すような行動を取ってしまったりすることが、遂行的セルフハンディキャッピングに該当します。

主張的セルフハンディキャッピング

結果が出る前にあらかじめ失敗を想定した発言をする行為を、主張的セルフハンディキャッピングといいます。失敗しても仕方がないと周囲に思わせ、評価を下げないようにするために行われます。他人を巻き込み、不快にさせることも多いため注意が必要です。ネガティブな発言ばかりする、態度が後ろ向きであるなどと捉えられ、人間関係構築の障害にもなり得ます。

セルフハンディキャッピングの原因

セルフハンディキャッピングは失敗しても傷つかず、自尊心を守る働きをします。しかし他人に悪影響を与えるなど、デメリットも少なくありません。であるにも関わらず、どうして人はセルフハンディキャッピングをしてしまうのでしょうか?セルフハンディキャッピングを行ってしまう原因を説明します。

自己防衛のため

セルフハンディキャッピングをしてしまう原因の1つめには、自己防衛のためが挙げられます。全力で取り組んで失敗すると、能力不足だったと結論づけられ、つらい現実と対峙しなければならなくなります。しかし体調やスケジュールなどの問題で不成功ということになれば、能力不足は露呈しません。自分を守る自己防衛のため、セルフハンディキャッピングは起こります。

自尊心が低い

自信が持てずに、自尊心が低いことを原因としてもセルフハンディキャッピングは起こります。自尊心が低い人は自分の能力を信じられず、挑戦ができません。新しいことを始める、一段上のステージに行く、試験・査定を受けるといった場合でも成功するイメージがなかなか持てず、あらかじめ失敗に対する言い訳を準備するようになります。

過去の失敗経験

過去の失敗経験もセルフハンディキャッピングを行う原因です。失敗時に味わった敗北感や情けなさ、他人から受けた評価が恐怖となり、あのときのようなつらい思いはしたくないとして自分に失敗を正当化するためのハンディキャップを与えてしまいます。

セルフハンディキャッピングのデメリット

セルフハンディキャッピングは自分を守ろうとして本能的に行われるものであり、すべてが否定されるべきものでもありませんが、デメリットが多い点に気をつける必要があります。

言い訳が増す

セルフハンディキャッピング、特に主張的セルフハンディキャッピングは言い訳が増します。言い訳はクセになりやすく、どんどん増えてしまいます。言い訳ばかりするようになり、何に対しても前向きになれないようになります。向上心やチャレンジ精神が損なわれ、後ろ向きの態度ばかり取るようになり、人間的成長ができなくなります。

成功率を下げる

セルフハンディキャッピングには、成功率を下げるデメリットもあります。セルフハンディキャッピングをしている場合としていない場合とは、当然、取り組む姿勢が違います。失敗を前提にあらかじめ自分が傷つかないように保険をかける行為がセルフハンディキャッピングであり、していないときと比べると本気度・真剣度が大きく違っています。失敗を考えずに全力でぶつかった場合に比べて、失敗したときのことをあらかじめ考えながら取り組んだ場合では成功率が低下します。

周囲からの印象が悪くなる

セルフハンディキャッピングは周囲からの印象も悪くなります。言い訳でネガティブな発言を繰り返して周囲の雰囲気を悪くしたり士気を下げたりし、また不利な状況をわざと作り出すなど全力で物事に対峙しないため不誠実な人間だと思われてしまうからです。

セルフハンディキャッピングのメリット

悪い印象ばかりが目立つセルフハンディキャッピングにも、よいところはあります。セルフハンディキャッピングのメリットを説明します。

失敗した際のダメージをおさえられる

失敗にはダメージがつきものですが、セルフハンディキャッピングにはショックを少なくする効果があります。精神的につらい状況に追い込まれてもおかしくないような重大な失敗であっても、セルフハンディキャッピングによってダメージの軽減を図ることが可能です。

心の安定を保てる

セルフハンディキャッピングには心の安定を保てるメリットもあります。大失敗をすると自分を責めてしまって精神的に参ってしまい、心が不安定になる場合があります。そんなシーンでもセルフハンディキャッピングは気持ちが過度につらくなるのを防ぎ、心の平安を保つのに役立ちます。

セルフハンディキャッピングを克服するには?

メリットもデメリットもあるセルフハンディキャッピングですが、多くの場合ではやはり好ましくない影響が出ると考えられます。セルフハンディキャッピングを行わないようにするには、どうしたらよいのでしょう?克服方法を考えてみましょう。

自分の言動を振り返る

セルフハンディキャッピングを克服するには、まず自分の言動を振り返る必要があります。自分がどんな状況で、どのような言葉を使ってセルフハンディキャッピングを行っていたかを理解していないと、克服しようがありません。過去の言動を振り返って、確認しましょう。

成功体験を増やす

セルフハンディキャッピングは失敗に対する恐怖心から引き起こされるため、成功体験を増やすことは効果的な対策になります。うまくいったという手応えを確かに感じられるようなことに積極的に取り組みましょう。

失敗を恐れない

失敗を恐れないマインドづくりもセルフハンディキャッピング克服に役立ちます。成功に失敗はつきものであることと、1つの成功の影にはいくつもの失敗があることを理解し、失敗に恐怖を感じない強い心が保てるように努めましょう。

周囲に「やる」宣言をする

周囲を巻き込んだセルフハンディキャッピングの克服方法も効果的です。言い訳ではなく、やる気を発信しましょう。ポジティブな発言は周りの人に好印象を与えるため、協力も得られやすくなります。

セルフハンディキャッピングに陥る人へのチームの対応

セルフハンディキャッピングに陥る人に対して、チームは本人が抱いてしまっている負の感情を認めてあげつつも、その気持ちを克服してやるべきことに前向きに取り組めるようサポートしましょう。セルフハンディキャッピングをする人からは悪影響を受けるため否定してしまいがちですが、一方的な批判はかえってセルフハンディキャッピング行為を助長してしまう恐れがあります。本人の不安な気持ちに寄り添い、認めてあげたうえで、セルフハンディキャッピングを止められるように導くことが大切です。

セルフハンディキャッピングによる悪影響を防いで職場環境を良好に保とう

セルフハンディキャッピングは失敗しても自分が傷つかないようにするために行ってしまう言動です。あらかじめ自分に不利な状況を意図的に作り出したり、本気で取り組めない状態であったことを周囲にアピールしたりすることを指します。

失敗しても仕方がないとして自分の能力不足を認めずに済んだり、周りの人に言い訳できたりし、体裁が保てます。しかしセルフハンディキャッピングをする態度が不誠実だと捉えられたり、全力で取り組まないため成功率低下を招いたりする点をきちんと理解しなければなりません。

セルフハンディキャッピングをする人が1人でもいると、全体の業務遂行にも悪影響が出たり、士気が大きく下がったりします。こうした悪影響を防ぐためにも、セルフハンディキャッピングをしてしまう人には適切に対応し、職場環境を良好に保つようにしましょう。


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