- 作成日 : 2023年2月28日
国民年金第3号被保険者関係届とは?提出が必要な場合について解説
国民年金第3号被保険者関係届とは、会社員や公務員など会社や組織に所属し厚生年金保険に加入している第2号被保険者が配偶者を扶養に入れる際に提出しなければならない書類です。配偶者の収入増加や離婚などで扶養から外れる際も提出が必要で、提出先は日本年金機構となります。この記事では国民年金第3号被保険者関係届について紹介します。
目次
国民年金第3号被保険者関係届とは
国民年金第3号被保険者関係届とは、会社員や公務員など被用者用の年金である厚生年金保険に加入している第2号被保険者が、扶養配偶者を年金制度に扶養加入させる際に事業所を通して日本年金機構に提出しなければならない書類です。配偶者の収入増加や離婚などの理由で扶養から外れる際にも、同様の書類を提出しなければなりません。ここでは、厚生年金加入者である第2号被保険者と、扶養配偶者との関係について紹介します。
第3号被保険者とは
厚生年金加入者である第2号被保険者に生計を維持されている被扶養配偶者は、年金制度に扶養加入することが可能です。第2号被保険者の扶養配偶者で年金制度に扶養加入している方を「第3号被保険者」といいます。ここでいう配偶者には事実上の婚姻関係にある、いわゆる内縁関係者も含まれます。一方、第3号被保険者になれるのは配偶者に限られ、健康保険と異なり扶養親族は加入できないため気をつけましょう。
日本は国民皆年金制度を敷いているため、20歳以上60歳未満の全国民は国民年金に加入しなければなりません。そのため、厚生年金加入者は、同時に国民年金の「第2号被保険者」でもあります。
なお、厚生年金保険には加入年齢などは定められておらず、厚生年金適用事業所に入社した時点で加入となります。資格喪失は、退職時もしくは70歳到達時です。20歳未満で就職した場合は、20歳までは厚生年金には加入、国民年金には未加入という状態になるため気をつけましょう。
一方、個人事業主や自営業者、学生や無職の方とその配偶者は、「第1号被保険者」として国民年金に加入するのが一般的です。
保険料負担については、第1号被保険者は全額被保険者負担、第2号被保険者は事業主と被保険者が半分ずつ負担する労使折半となります。第3号被保険者の保険料は第2号被保険者が加入する厚生年金が一括して負担するため、被保険者負担はありません。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 | |
主な職業 |
とその配偶者 |
などの被用者 |
など第2号被保険者の扶養配偶者 |
加入する年金制度 | 国民年金 | 国民年金と厚生年金 | 国民年金 |
加入年齢(原則) | 20歳以上60歳未満 | 厚生年金適用事業所に就職してから退職もしくは70歳に到達するまで | 20歳以上60歳未満 |
保険料負担 | 全額被保険者負担 | 労使折半 | 被保険者負担なし |
厚生年金の第3号被保険者について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
国民年金第3号被保険者関係届を提出しなければいけない場合
前述のとおり、日本は全国民が何らかの年金制度へ加入しなければならない国民皆年金制度を敷いているため、年金資格の取得もしくは喪失の事実が生じた日から14日以内に届け出なければなりません。期限に遅れても直ちに罰則が科されるわけではありませんが、未納期間が生じて将来の年金受給額が減ってしまう恐れがあるため気をつけましょう。なお、2年以内であれば追納することも可能ですが、2年を過ぎてしまうと時効となり追納することもできなくなるため注意が必要です。それでは実際に、国民年金第3号被保険者関係届を提出しなければならないケースを紹介します。
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構
被扶養者が第3号被保険者になったとき
まず、結婚により扶養配偶者が増えた場合や、配偶者が出産等に伴い退職、もしくは収入が減少し、扶養要件を満たした場合などに国民年金第3号被保険者関係届を提出しなければなりません。提出先は、第2号被保険者の勤務先を経由し日本年金機構となります。国民年金第3号被保険者関係届を提出することで、被扶養配偶者は年金制度に扶養加入することが可能です。なお、扶養関係が認められるには下記の収入要件を満たす必要があります。
年間収入が130万円未満もしくは障害者の場合は年間収入180万円未満かつ
- 同居の場合 収入が扶養者の収入の半分未満
- 別居の場合 収入が扶養者からの仕送り額未満
同居要件については規定されていないため、別居している配偶者でも扶養関係にあれば第3被保険者として年金制度に扶養加入することができます。
被扶養者が第3号被保険者ではなくなったとき
年金資格を取得した場合と同様に、第3号被保険者の資格を喪失した際にも国民年金第3号被保険者関係届を提出しなければなりません。提出先は扶養者の勤務先を経由し、日本年金機構で、提出期限は喪失した日から14日以内です。第3号被保険者の資格を喪失する要因としては、下記が挙げられます。
- 被扶養配偶者の収入が増加し収入要件を満たさなくなった
- 被扶養配偶者が厚生年金適用事業所に就職した
- 被扶養配偶者が60歳に到達した
- 扶養者と離婚した
- 扶養者が退職、独立、死亡などで第2号被保険者の資格を喪失した
- 扶養者が65歳に到達し老齢基礎年金の受給資格を満たした
- 海外転出し海外特例に該当しない
など
なかでも、扶養者である第2号被保険者が65歳に到達し老齢基礎年金の受給資格を満たした場合、被扶養配偶者は第3号被保険者の資格を喪失することに注意しましょう。例えば、7歳差の夫婦で、扶養者が65歳になり老齢基礎年金の受給資格を満たした場合、配偶者は58歳でも第3号被保険者の資格を喪失してしまいます。喪失後は国民皆年金制度に則り、何らかの年金制度に加入しなければなりません。
第1号被保険者として国民年金に加入する場合は、扶養者の勤務先に国民年金第3号被保険者関係届を提出して扶養削除を行うとともに、市区町村に「種別変更届」を提出してください。その際、資格喪失証明書など資格を喪失した日がわかる書類、年金手帳や基礎年金番号通知書など基礎年金番号がわかる書類、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類などの添付書類を必ず携行しましょう。
自ら厚生年金に加入し第2号被保険者となる場合は、自身の勤務先に「被保険者資格取得届」を提出しましょう。資格取得届を受理した日本年金機構が扶養削除と種別変更を行うため、扶養者の勤務先に国民年金第3号被保険者関係届を提出する必要はありません。
なお、被扶養配偶者である妻または夫が60歳に到達し第2号被保険者の資格を喪失した場合、60歳以上65歳未満の間は国民年金に「任意加入」することで将来の年金受給額を増やすことも可能です。
海外転出したとき
令和2年4月1日より国内居住要件が追加されたため、海外転出する場合は国民年金第3号被保険者関係届を提出し、扶養削除しなければなりません。ただし、下記の条件に該当するような、日本国内に生活基盤があると認められた場合は「海外特例」として引き続き年金制度に扶養加入することが可能です。
- 海外に留学する学生
- 海外に赴任する第2号被保険者に同行する方
- 観光、保養、ボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する方
- 海外赴任中に第2号被保険者と身分関係が生じ2に該当する方と同等と認められる方
- 1~4に該当する方に加え、渡航目的その他の事情を考慮し日本国内に生活基盤があると認められる方
参考:健康保険法等の一部改正に伴う国内居住要件の追加(令和2年4月1日施行)|日本年金機構
国民年金第3号被保険者関係届を提出する方法
ここからは、実際に国民年金第3号被保険者関係届を提出する方法を紹介します。まず、国民年金第3号被保険者関係届の様式を取得しましょう。最寄りの年金事務所で受領するか、日本年金機構のWebサイトからダウンロードすることで取得することが可能です。
配偶者を扶養に入れる場合は、「配偶者である被扶養者欄(第3号被保険者)」の「該当」に丸を付けましょう。扶養削除する場合は同欄の「非該当」に丸を付けてください。
記載が完了したら、勤務先の事業所等を経由し所管の年金事務所に提出しましょう。手続きは窓口持参や郵送に加え、電子政府の総合窓口「e-Gov」や、日本年金機構が無償で提供している「届書作成プログラム」を利用して電子申請することも可能です。
不整合期間とは
不整合期間とは、第3号被保険者が扶養から外れ第1号被保険者となったにもかかわらず、必要な届け出を怠ったために第3号被保険者の状態が継続し年金記録に不整合が生じることです。不整合期間を解消するには、第1号被保険者への種別変更手続きを行い、国民年金保険料を支払わなければなりません。保険料の納付を怠ると、将来無年金や低年金などの不利益を被る可能性があります。下記に該当する場合は、事業所等を経由し日本年金機構に「被扶養配偶者非該当届」を提出してください。
- 第3号被保険者の収入が増加し扶養から外れた場合
- 第2号被保険者と離婚した場合
扶養に入ったもしくは扶養から外れた場合は速やかに第3号被保険者関係届を提出しよう
国民年金第3号被保険者関係届について解説しました。国民年金第3号被保険者関係届とは、厚生年金加入者である第2号被保険者の配偶者を扶養に入れる場合に提出が必要な書類です。配偶者の収入増加や離婚等で扶養から外れる場合も、同様に提出しなければなりません。日本は全国民が何らかの年金制度に加入する国民皆年金制度を採用しているため、第3号被保険者の資格を取得もしくは喪失した場合、14日以内に国民年金第3号被保険者関係届を提出することが義務付けられています。期限に遅れても直ちに罰則を受けるわけではありませんが、不整合期間が生じて将来の年金受給額が減ってしまう恐れがあります。扶養に入る、もしくは扶養から外れる場合は確実に国民年金第3号被保険者関係届を提出し、将来の年金受給に備えましょう。
よくある質問
国民年金第3号被保険者関係届とは?
厚生年金加入者である第2号被保険者の配偶者を扶養に入れる場合、もしくは扶養から外れる場合に提出しなければならない書類です。提出期限は14日以内と定められているため気をつけましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
不整合期間とは?
第3号被保険者が扶養から外れ第1号被保険者となったにもかかわらず、国民年金第3号被保険者関係届の提出を怠ったために第3号被保険者の状態が継続し、年金記録に不整合が生じることです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
雇用保険の加入条件を解説!加入に必要な手続きや各種書類も紹介
雇用保険とは、事業主と労働者や労働者であった方へ適切な給付を行う公的保険制度です。パートやアルバイトといった名称に関係なく、従業員が雇用保険の加入要件に該当している場合、事業主は対象者を雇用保険に加入させないといけません。本記事では、雇用保…
詳しくみる労災保険料の支払い手続きや計算方法について解説
労災保険は、労働者保護を目的とした強制保険で、労働者が1人でもいる事業は労災保険に加入しなければなりません。保険給付の対象となるのは労働者で、労災保険料は全額を事業主側が負担します。労災保険料は賃金の総額に労災保険料率をかけて計算され、概算…
詳しくみる被扶養者異動届の書き方は?家族が加入・外れる場合の記入例を解説
被扶養者異動届は、健康保険や厚生年金保険の被保険者である従業員に対して、被扶養者を追加するときや削除するとき、氏名が変更になったときなどに必要な書類です。勤務先を経由して年金事務所などに提出します。どのような基準を満たすときに必要か、また、…
詳しくみる転職で空白期間がある場合の健康保険や年金の手続きは?保険証切り替えについても解説!
退職してから転職まで期間が空く場合、任意継続や家族の扶養に入ることを選択しない場合は、一度国民健康保険に切り替える必要があります。国民健康保険加入の手続きは14日を過ぎても行えますが、退職日翌日までさかのぼって保険料を徴収されます。今回は、…
詳しくみる社会保険の資格喪失届とは
社会保険の資格喪失届とは、従業員が退職や解雇、死亡などにより社会保険のうちの健康保険・厚生年金保険の資格を喪失する場合に提出する書類です。なお、被保険者本人が資格喪失届を提出する必要はありません。 社会保険の資格喪失届が必要な場合 社会保険…
詳しくみる雇用保険被保険者資格喪失届の書き方や提出方法について解説
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員の退職時に事業主が会社所在地を管轄するハローワークに提出しなければならない書類です。事業主は、雇用保険の基本手当給付額決定に必要な離職証明書とともに、10日以内に提出しなければなりません。電子申請義務化の…
詳しくみる