- 更新日 : 2023年12月12日
源泉控除対象配偶者とは?わかりやすく解説(事例付き)
源泉控除対象配偶者には、給与所得者本人の合計所得金額が900万円以下で、所得金額が95万円以下の生計を一にする配偶者が該当します。多くの場合、配偶者控除や配偶者特別控除の適用対象になり、納税者本人の所得税を少なくできます。
これらの控除を受けるには、年末調整で扶養控除等申告書の源泉控除対象配偶者欄に氏名などを記入し、申告する必要があります。
目次
源泉控除対象配偶者とは?
源泉控除対象配偶者とは、以下の要件を満たす者を指します。
- 納税者の合計所得金額が900万円以下であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 合計所得金額が95万円以下であること
- 青色事業専従者として給与の支払いを受けている、または白色事業専従者でないこと
納税者本人の所得金額が900万円を超えた場合や、配偶者の所得金額が95万円を超えた場合は、源泉控除対象配偶者には該当しません。
納税者と配偶者の所得が給与によるもののみである場合は、納税者の給与収入が1,095万円以下、配偶者の給与収入が150万円以下であれば、源泉控除対象配偶者の要件を満たします。
配偶者が源泉控除対象配偶者に該当するケース
例1)納税者の給与収入が1,000万円、配偶者の給与収入が150万円の場合
配偶者が源泉控除対象配偶者に該当しないケース
例1)納税者の給与収入が1,100万円、配偶者の給与収入が180万円の場合
例2)納税者の給与収入が1,200万円、配偶者の給与収入が150万円の場合
源泉控除対象配偶者と同一生計配偶者との違い
その年の12月31日時点で、以下の4つの要件をすべて満たす人が同一生計配偶者に該当します。
同一生計配偶者には納税者の所得金額についての要件はなく、配偶者の合計所得金額が48万円を超えるか否かで同一生計配偶者に該当するかどうかが判断されます。配偶者の所得が給与によるもののみである場合、給与収入が103万円以下であれば同一生計配偶者の要件を満たします。
源泉控除対象配偶者のメリット・デメリットは?
源泉控除対象配偶者に該当すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。納税者の配偶者が源泉控除対象配偶者である場合の、年末調整で受けられる控除や所得税の計算、源泉控除対象配偶者が気を付けなければならないことについて、見ていきましょう。
源泉控除配偶者のメリット
納税者の所得税支払額を少なくできることが、源泉控除対象配偶者のメリットです。配偶者が源泉控除対象配偶者に該当する場合は扶養親族に1人を加算できるため、扶養控除金額が増えることで所得税を少なくすることができます。また多くの場合、配偶者控除や配偶者特別控除も受けることができます。
・配偶者控除の額
納税者の所得金額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
控除対象配偶者 | 一般の場合 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
老人の場合 | 48万円 | 32万円 | 16万円 |
・配偶者特別控除の額
納税者の所得金額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配偶者の所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
源泉控除配偶者のデメリット
源泉控除対象配偶者のデメリットとして、働き方が制限されることが挙げられます。源泉控除対象配偶者のメリットは配偶者特別控除を受けられることですが、配偶者特別控除は所得金額によっては控除金額が減り、一定額を超えると受けられなくなります。そのため所得を抑える必要があり、働き方が制限されます。
年末調整での源泉控除対象配偶者の欄の書き方
年末調整においては、扶養控除等申告書に設けられている記入欄に指示されている内容を記入し、源泉控除対象配偶者の申告を行う必要があります。記入が求められるのは源泉控除対象配偶者の氏名、フリガナ、個人番号(マイナンバー)、生年月日、所得の見積額、住所です。以下のように記入します。
出典:各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)|国税庁
「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を加工して作成
源泉控除対象配偶者について理解し、年末調整をスムーズに進めましょう
納税者の合計所得金額が900万円以下で、かつ配偶者の合計所得金額が95万円以下の場合、その配偶者は源泉控除対象配偶者に該当します。源泉控除対象配偶者は配偶者控除や配偶者特別控除の適用対象となり、納税する給与所得者の所得税計算において控除額を増やし、所得税を少なくすることができるというメリットがあります。ただし、所得が基準を超えてしまうと控除を受けられなくなるため、働き方が制限されるというデメリットがあります。
源泉控除対象配偶者は、年末調整において扶養控除等申告書の記入欄に氏名などを記入して申告します。源泉控除対象配偶者となる要件や申告方法を理解し、年末調整をスムーズに進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
源泉徴収票と給与支払報告書の違いを提出先等の観点で解説!
年末調整が終わった後、やってくるのが源泉徴収票の作成や給与支払報告書の作成です。この二つの帳票は同じ情報を記載しますが、それぞれ提出する先や目的が異なります。ここでは、源泉徴収票と給与支払報告書との違いを解説するとともに、給与支払報告書の書…
詳しくみる寄付金控除は年末調整の対象? ふるさと納税についても解説
NPO法人への寄付など、寄付金を支払った場合は寄付金控除が受けられます。しかし年末調整の対象ではないため、別途確定申告が必要です。年末調整だけで確定申告をする必要のない方がふるさと納税を行った場合には、確定申告不要で控除が受けられる特例制度…
詳しくみる国民年金保険料の前納制度とは?年末調整での控除方法とともに解説!
年末調整では、社会保険料が所得控除されることはご存じの方は多いでしょう。具体的には、公的年金では厚生年金保険料が該当しますが、国民年金保険料が控除対象となるケースもあります。国民年金は、厚生年金と異なり、保険料を前納すれば保険料を割引しても…
詳しくみる年末調整の計算方法と流れを解説!端数処理などの具体的なケースも
年末調整では、さまざまな控除額の計算をしなければなりません。どのような計算順序で進めていけばよいのでしょうか?この記事では、年末調整に必要な各種申告書を示すとともに、配偶者特別控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除な…
詳しくみる年末調整で住宅ローン控除を受ける際に必要な書類と記入例
雇用者は、提出された書類をもとに、各従業員の最終的な控除額を決定し、その年の所得税額を精算します(年末調整)。 年末調整時の控除項目のひとつである住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、初年度と2年目以降とで取り扱いが異なります。住宅借入…
詳しくみる2020年版(令和2年)の年末調整の仕方を解説!変更点や注意点はある?
2020年(令和2年)の年末調整に関する主な改正事項は、給与所得控除額の引き下げ、基礎控除額の引き上げ、所得金額調整控除の創設、扶養控除や配偶者控除の合計所得金額要件の変更及び、ひとり親控除の創設など、例年に比べ改正事項が多くなっております…
詳しくみる