• 更新日 : 2023年10月27日

自己効力感とは?高い人低い人の特徴や高める方法、自己肯定感との違い

自己効力感とは?高い人低い人の特徴や高める方法、自己肯定感との違い

自己効力感は、個人の信じる力や自己評価に深く関わる重要な心理的要素です。自己効力感は成功や成長の鍵ともいわれ、どのように育成されるかを理解することは、個人や組織の発展に寄与します。

この記事では、自己効力感に焦点を当て、自己効力感の高い人と低い人の特徴、自己効力感を高める方法、そして自己肯定感との違いについて解説します。

自己効力感とは?

自己効力感は、個人が特定のタスクや挑戦に取り組む際に、自分が成功できると信じる度合いを指します。これは単に「自分は頑張れる」という自己評価ではなく、具体的な能力や過去の経験、今の状況などを元にした自分の能力の確信度を示します。

例えば、以前似たようなタスクを成功させた経験がある人は、新しいタスクでも成功できるという自己効力感を持ちやすい傾向があります。逆に、過去の失敗経験が影響して、自分の能力に自信が持てない場合、自己効力感は低くなります。

自己効力感の概念は、アルバート・バンデューラ教授によって提唱されました。彼は社会的認知理論の中でこの概念を詳しく研究し、人々の行動やモチベーション、学習のプロセスと自己効力感との関連性を明らかにしました。バンデューラは、自己効力感が高い人は困難な状況にも前向きに取り組む傾向があり、それによって成功体験を増やし、さらに自己効力感を高めるというポジティブな循環が生まれると指摘しています。

自己効力感が重要な理由

ビジネスの現場では、日々の業務やプロジェクト、新しい取り組みなどさまざまな課題に直面します。このとき、自己効力感が高いと、難しそうな課題でも取り組む意欲が湧き、解決策を探求する姿勢を保つことができます。

一方、自己効力感が低いと、挑戦する気持ちが湧きにくく、諦めることが多くなるかもしれません。結果として、業績向上やイノベーションの実現に直結するため、組織としてはメンバーの自己効力感を高める取り組みが重要となります。

自己肯定感との違い

自己肯定感とは、自分自身の価値を高く評価したり、自分を受け入れたりする感覚を指します。自己効力感が「自分はこのタスクを成功させることができる」という具体的な信念に関連しているのに対し、自己肯定感はより広範な「自分は価値がある、大切な存在である」という自己評価に関わります。

言い換えれば、自己効力感は特定の能力やタスクに対する自信を、自己肯定感は自分自身の存在全体に対する自信を示すものといえます。両者は密接に関連しているものの、焦点としている範囲や意味合いが異なります。

自己効力感の3つのタイプ

自己効力感には、いくつかのタイプがあります。ここでは、自己統制的自己効力感、社会的自己効力感、学業的自己効力感の3つのタイプを紹介します。

自己統制的自己効力感

自己統制的自己効力感は、個人が自分の感情、欲求、行動を管理・制御する能力に対する信念を指します。具体的には、自分の感情を適切にコントロールしたり、誘惑に対して抵抗したりする能力に自信があるかどうかを示すものです。

このタイプの自己効力感が高い人は、ストレスの多い状況や困難な局面でも冷静に行動し、自分の目標に対して一貫した行動を取り続けることができます。また、健康や生活習慣の改善、タスクの計画と達成など、日常生活の中での自己統制が必要な場面での成功体験が、この自己効力感を高める要因となります。

社会的自己効力感

社会的自己効力感は、個人が他者との関係やコミュニケーションの中での自分の役割や能力に対する信念を指します。これは、他者との対人関係を築く能力、チーム内での協力やリーダーシップの発揮、または他者を説得するスキルなどに自信があるかどうかを示すものです。

社会的自己効力感が高い人は、人間関係のトラブルを適切に解決したり、グループ活動の中で積極的な役割を果たしたりすることが得意です。人との関わり合いの中での成功体験や、対人スキルのトレーニングが、この自己効力感を高める要因となることが多いです。

学業的自己効力感

学業的自己効力感は、学びの状況や学業の達成に関する自分の能力への信念を指します。このタイプの自己効力感は、テストのスコア、プロジェクトの完成、新しいスキルや知識の習得など、学びの成果に関連して形成されるものです。

学業的自己効力感が高い人は、新しい情報の習得や独自のアイデアを発展させることに自信を持ち、学習の際にも主体的に取り組むことができます。過去の学習の成功体験や、具体的なフィードバック、励ましの言葉などが、この自己効力感を高める要因として挙げられます。

自己効力感が高い人の特徴

自己効力感が高い人には、どのような特徴があるのでしょうか。5つの特徴を挙げて解説していきましょう。

「自分ならできる」という気持ち

自己効力感が高い人は、多くの場面で「自分ならできる」という確固たる自信を持っています。この感覚は単なる楽観主義とは異なり、過去の経験や実際のスキル、知識を基盤とした実質的な自信です。このため、彼らは新しいタスクや状況に直面したとき、他の人がためらう場面でも果敢に取り組むことができるのです。この確信は、他者からの信頼や尊敬を獲得することにもつながります。

チャレンジ精神が旺盛

自己効力感が高い人は、未知の領域や新しい取り組みに対しても積極的にチャレンジする傾向があります。彼らは、困難な状況や問題を解決する過程で得られる成果や経験を価値あるものと捉えているため、避けるのではなく積極的にそのチャレンジを受け入れるのです。このような行動は、組織やチームのイノベーションや成長を促進する要因となります。

ストレスに強い

自己効力感が高い人は、プレッシャーやストレスの多い状況下でも冷静に行動することができる特徴を持っています。彼らは自分の能力や経験を信じているため、困難な状況でもパニックにならずに的確な判断と行動を取ることができます。このような態度は、クリティカルな状況でも冷静な判断が求められる場面でのリーダーシップの発揮に役立ちます。

失敗を恐れず立ち向かう

過去の成功体験や困難を克服した記録を振り返り、自信をつけることができます。失敗に対する恐れが少ないため、新しい挑戦にも積極的に取り組み、その結果、成果を上げることが多いです。また、他の人と比較するのではなく、自己評価に従って行動する傾向があり、これが自己効力感の高い人たちの成功につながる要因の一つです。

失敗しても立ち直りが早い

自己効力感が高い人の特徴の一つは、失敗しても立ち直りが早いことです。彼らは失敗を単なる挫折ではなく、学びの機会と捉えます。失敗から得た教訓を次に活かし、新たな試みに取り組む勇気を持っています。このような姿勢は、自己効力感を高めるために重要です。

自己効力感が低い人の特徴

逆に自己効力感が低い人は、次のような5つの特徴を挙げることができます。

「自分にはできない」という気持ち

自己効力感が低い人は、新しい課題や挑戦に取り組む際に、自己評価がネガティブであることが特徴です。彼らは自分に対して自信を持てず、「私は十分な能力がない」「これは私には無理だ」と考えます。このようなマイナス思考が、行動を起こす意欲をそぎます。結果として、新たなスキルを習得したり、課題を克服したりする機会を逃すことがあります。

やる前から諦める

自己効力感が低い人は、挑戦的な課題に取り組む前から、失敗を予測し、諦めることがあります。彼らは自己効力感が低いため、困難な課題に取り組むことを避ける傾向があります。このため、成長の機会を逃し、スキルの向上が制限される可能性が高まります。

ストレスに弱い

低い自己効力感を持つ人々は、挑戦や困難に遭遇すると、ストレスに弱いという特徴があります。自己効力感が低いため、困難な状況に対処する自信が不足し、不安や抑うつに陥りやすいです。ストレスへの対処能力が低いため、パフォーマンスや健康に悪影響を及ぼすことがあります。

失敗を恐れるあまり挑戦を避ける

自己効力感が低い人は、失敗を極端に恐れ、新しいことに挑戦することを避けることがあります。彼らは失敗を避けることを優先し、安全なゾーンにとどまることが多いです。これは成長や学びの機会を制限し、スキルの発展を阻害します。

立ち直りが遅い

失敗や困難に直面した際、自己効力感が低い人は、立ち直りが遅いことがあります。彼らは過去の挫折を持ち越し、自信を回復するのに時間がかかります。これは次回の挑戦に対する意欲を低下させ、自己成長の妨げとなります。

自己効力感の測定方法

自己効力感を測定するためには、さまざまな方法が存在しますが、ここでは4つの方法を紹介します。自己効力感の測定方法は、研究目的や状況によって、これらの方法を組み合わせて使用することで、より精度の高い測定が可能となります。

質問紙調査

質問紙を用いた調査が最も一般的で広く利用されています。これらの質問紙には、自己効力感に関連する質問が含まれており、回答者は自己効力感についての評価を行います。有名な自己効力感の測定尺度には、アルバート・バンデューラによって開発された「自己効力感尺度」(Self-Efficacy Scale)があります。質問紙を用いることで、自己効力感の特定の領域やタスクに関する評価を行うことができます。

行動観察

行動観察は、実際の行動を観察する方法です。被験者が特定の課題に取り組む際の自己効力感を評価します。特定のスキルやタスクに関連する行動のパフォーマンスを観察し、評価することで行われます。例えば、教育分野では、学生の課題へのアプローチや学習行動を観察し、自己効力感を評価します。

インタビュー

質問紙調査や行動観察に加えて、面接やインタビューも自己効力感の測定に利用できます。被験者に直接質問し、彼らの自己効力感について詳細な情報を収集します。インタビューを通じて、個人の信念、自己評価、過去の成功体験、失敗体験などを理解し、自己効力感を評価します。

自己評価尺度

被験者が自己効力感を数値で評価する尺度を用いる方法もあります。被験者は、0から10のスケールなどで、自分の自己効力感を評価します。この方法は簡便で、被験者の主観的な評価を直接取得できます。

自己効力感を高めるには?

自己効力感を高めるための方法も複数あります。ここでは、4つの方法を紹介しますが、これらの方法を組み合わせて実践することで、より効果的に自己効力感を向上させ、新たな挑戦に自信を持つことができるでしょう。

小さな成功体験を積み重ねる

自己効力感を高めるために重要なステップは、小さな成功体験を積み重ねることです。小さな目標を設定し、それを達成することで、自信がつきます。成功体験を通じて、自分ができることや問題を解決できることを実感し、自己効力感が向上します。この過程で、自己評価が高まり、より大きな課題にも取り組む勇気を持つようになります。

身近な人の成功体験を観察する

身近な人々の成功体験を観察し、学ぶことも自己効力感の向上に寄与します。他の人が困難を乗り越え、目標を達成する姿を見ることで、自分もできるという信念が育まれます。モデルとなる成功事例から学び、その行動を自分自身に取り入れることで、自己効力感が向上し、新たな挑戦に対する自信が生まれます。

ポジティブな言葉をかける

自分に対してポジティブな言葉やアファーメーションを使うことは、自己効力感を高めるのに役立ちます。ネガティブな自己評価や自己疑念に対抗するために、自分に対して「私はできる」「成功するだろう」といった言葉を使います。これらのポジティブな言葉は、自己評価を向上させ、自己効力感を増強します。

生活を整え健やかな環境に身を置く

自己効力感は精神的な健康とも関連しています。健康な生活習慣、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動などは、身体的な健康を保つのに役立ちます。身体的な健康が整っていると、ストレスに対処しやすく、自己効力感を維持しやすくなります。また、健康な生活環境を整えることで、ポジティブな気分やエネルギーが増加し、自己効力感を高める要因となります。

社内で自己効力感を高め人材育成を図るには?

企業が従業員の自己効力感を高め、人材育成を促進するためには、どうすればよいのでしょうか。5つの具体的な方法を紹介します。

挑戦的なプロジェクトの提供

従業員に対し、彼らの現状のスキルや能力より上の挑戦するプロジェクトやタスクを提供します。これにより、新たなスキルを習得し、自己効力感を高める機会が提供されます。プロジェクトの成功は自己効力感の向上につながり、成長を実感させます。

継続的なフィードバックと評価

定期的なフィードバックや評価を通じて、従業員の成果を認め、向上点を示します。建設的なフィードバックは自己効力感を向上させ、従業員が自分の成長に積極的に取り組む刺激となります。

スキル開発プログラム

企業がスキル開発プログラムを提供することで、従業員は新しいスキルや知識を習得し、自己効力感を高める機会を得ます。これは、専門的なトレーニングや教育プログラムを通じて実現できます。

メンターシップとコーチング

上司やシニア従業員によるメンターシップやコーチングプログラムを導入することで、従業員は経験豊富な人からの指導とサポートを受ける機会が増えます。メンターシップは自己効力感を向上させ、キャリアの発展を加速させます。

目標設定と進捗モニタリング

個別の目標を設定し、従業員に進捗状況をモニタリングする機会を提供します。目標達成のプロセスを通じて、従業員は自己効力感を高め、達成感を味わいます。

仲間との共同作業

チームプロジェクトや協力的な作業を奨励します。仲間とともに仕事を進めることで、従業員は相互のサポートを受け、自己効力感を高めることができます。チームメンバーの成功体験からも学びがあります。

自己効力感を高めよう! これが従業員と会社の成長の鍵になる

自己効力感は、挑戦に対する信念と行動のエンジンです。高い自己効力感を持つ人は、失敗を学びの機会と捉え、自己肯定感を高める方法に焦点を当てることができます。一方で、低い自己効力感を持つ人は、挑戦を避け、成長の機会を逃す傾向があります。組織としては、従業員が小さな成功を積み重ね、挑戦的な環境で自己効力感を高めるように仕向けることが重要であり、それが会社の成長にもつながることを知っておきましょう。


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