• 作成日 : 2022年4月8日

会社が年末調整をしてくれない場合はどうする?

会社が年末調整をしてくれない場合はどうする?

年末調整は、会社員が毎月、給与から源泉徴収されてきた概算の税額と、1年間に本来納付すべき税額との差額を清算する手続です。控除が適用されれば、過払い分の税金は還付されて返ってくるため、楽しみにしている会社員の方も少なくないと思います。

しかし、年末調整は会社が税務署に対して行う手続です。会社が年末調整 してくれない場合は還付されません。また、従業員が対象となっていない場合もあります。

今回は、会社が年末調整をしてくれない場合について詳しく解説してきます。

会社が年末調整をしてくれないことはある?

会社が年末調整をしてくれないケースは、いくつか考えられます。

ケース1:源泉徴収していても年末調整しなければならないことを会社側が認識していない

毎月の給与の支払いの際に所得税を源泉徴収し、翌月10日までに国に納税していても、こうしたことはあります。会社が年末調整するためには、従業員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出させなければなりません。

この申告がされていなければ、各種の控除が受けられず、年末調整も行われないことになります。

起業間もない会社や個人事業の場合、ビジネスを軌道に乗せるのに手一杯で、細かい事務手続まで配慮できないことはあるものです。

このような場合は、従業員のほうから年末調整の必要性を話せば、税理士等の専門家への依頼や会計サービスの導入など、適切に処理してくれると思われます。

ケース2:年末調整どころか源泉徴収の認識もない

会社によっては、従業員の給与を源泉徴収すらせずに全額支払うところもまれにあります。

特にパートやアルバイトのような非正規従業員については、給与の金額に関係なく一律このような扱いをしているケースは多いかもしれません。

冒頭に述べたように、年末調整は、毎月、給与から源泉徴収されてきた概算の税額と、1年間に本来納付すべき税額との差額を清算する手続ですから、全額給与を支払っていれば清算という発想におよばないことが想像できます。

パートやアルバイト、正社員に関係なく、年収が103万円(月額88,000円)を超えれば、税法上の基礎控除給与所得控除の合計額を超えるため、所得税が発生します。

にもかかわらず会社が源泉徴収せず、国に納税しなければ、無申告状態ということになります。

この場合もケース1と同様、単に知らなかったということであれば、従業員から必要性を話すことで解決することが多いと思います。

ケース3:会社が故意に年末調整しない

厄介なのは、知っていながら故意に年末調整しないケースです。多くは、年末調整に関わる事務手続が煩雑で、手間と時間がかかるというのが理由かと思います。

故意に源泉徴収すらしない、あるいは年末調整しないという場合、コンプライアンス意識が欠如しているため、従業員では対処できないことが少なくないでしょう。

その違法性や対処法については、あらためて解説します。

また、税法上、年末調整の対象とならない人もいますが、これについても後述します。

会社が年末調整をしないのは違法?

所得税法では、個人の所得税は確定申告によって納税することが原則とされています(所得税法120条1項)。

その一方で、給与所得者(会社員)については、確定申告は不要としています(所得税法121条1項)。給与のような所得については、支払者が所得税を徴収して納税する源泉徴収制度を定めているからです(所得税法183条)。

しかし、給与額の変動、所得税控除対象者の数の増減、従業員個人で加入する生命保険や地震保険の保険料の控除などがあれば、本来の納税額と源泉徴収済みの税額は一致しないのが普通です。給与所得者については、この不一致は年末調整によって清算され、その年の所得税の納税が完結することになります(所得税法190条)。

また、制度全体の仕組みとしては、あくまでも納税者は給与の支払者である会社であり、給与所得者は国との関係では納税者ではありません(国税通則法2条5号)。したがって、本来の納税額と源泉徴収済みの税額に不一致があっても、原則として確定申告では清算できないということになります。清算手段としては、給与の支払者である会社による年末調整しかないというのが、税法上の大前提なのです。年末調整で税金の過払いがあった場合に、給与所得者に還付を行うのが国ではなく、会社であるのはそのためです。

ちなみに源泉徴収制度は、次のような理由で導入されています。

  • 税の徴収が確実であること
  • 支払われる給与が課税対象であるため課税標準が確実であること
  • 給与の支払者単位で納税を取りまとめるため、徴収するための経費が少なくて済むこと
  • 給与の支払いごとに徴収するため、毎回の負担が少ないこと

源泉徴収された税金は、毎月10日までに国庫に納付されることから、国家財政の観点からも税収の均等化、安定化という点でも大きく寄与しているといえます。

さて、会社が年末調整をしないのは違法かという問題ですが、こうした背景から所得税法では給与支払者に義務が課されているため、会社が年末調整をしないことは同法違反となります。

罰則としては、次のようなものがあります。

年末調整を行わず、従業員から正しい税額を徴収しなかった場合
1年以下の懲役または50万円以下の罰金(所得税法第242条)

引用:所得税法|e-Gov法令検索
年末調整をしなかった理由として、「知らなかった」「忙しくて時間がなかった」という言い訳は通用しません。罰則は減免されないでしょう。

なお、源泉徴収していながら所得税を税務署に納付しなかった場合は、10年以下の懲役または200万円以下の罰金(もしくはその両方)が科せられる可能性があります(所得税法240条)。

年末調整の対象ではないことも

年末調整は、原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人の従業員全員について行います。

ただし、以下に該当する場合は年末調整の対象とはなりません。

  1. 本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
  2. 災害減免法による源泉所得税等の納税猶予や還付を受けている人
  3. 2カ所以上から給与の支払いを受けており、ほかの勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出している人
  4. 年の中途で退職したが、年末調整の対象となるケースに該当しない人
  5. 国内に住所がないか、現在まで引き続いて1年以上の居所がない人(非居住者)
  6. 継続して同一の雇用主に雇用されていない人(日雇労働者)

上記「4」の「年末調整の対象となるケース」とは、次に該当する場合を指します。

  • 死亡により退職した人
  • 著しい心身障害のために退職した人で退職の時期からその年中に再就職が不可能と認められ、かつ、退職後その年中に給与の支払いを受けないこととなっている人
  • 12月に支払期の到来する給与の支払いを受けた後に退職した人
  • パートタイマーとして働いている人などが退職した場合でその年中に支払いを受ける給与の総額が103万円以下の人(退職後その年中にほかの勤務先等から給与の支払いを受けると見込まれる人は除きます)

詳細については以下の記事を参照してください。

会社が年末調整をしてくれないときの対処法

コンプライアンス意識が希薄な会社の場合、故意に年末調整をしないところもあります。このような場合、前述のように従業員が違法だといったところで対応してくれないケースが少なくないでしょう。強く主張することで退職を余儀なくされる可能性もあります。

では、ことを荒立てずに対処するにはどうすればよいのでしょうか。

管轄の税務署に相談する

年末調整しなければならないにもかかわらず、それをしないというのは所得税法違反になります。会社が明らかに故意に違反行為をしているのであれば、対応は行政機関にしてもらうのがベストです。

コンプライアンス意識が欠如している会社の場合、源泉徴収税の納付漏れがあるケースも少なくありません。

国税局や所轄税務署では、面接、電話、郵送で課税漏れや徴収漏れに関する情報を受け付けています。もちろん、国税職員には厳格な守秘義務が課されているため、情報内容を外部に漏らすことはありません。

また、情報提供を容易にするため、国税庁ホームページには「課税・徴収漏れに関する情報の提供」が設けられており、情報提供フォームに必要事項を入力し、送信する方法もあります。

参考:国税庁「課税・徴収漏れに関する情報の提供」

情報提供することで所轄税務署から会社に行政指導がなされ、事態の改善につながる可能性が大いにあると考えます。

源泉徴収票を手に入れ、確定申告を行う

なかには事を大袈裟にしたくない、という人もいるかもしれません。とりあえず、納付済みの源泉所得税の清算さえできればいい、というのであれば、自分で確定申告をする方法があります。

源泉徴収すらしていない会社であれば、税務署で対応してもらうほかありませんが、そうでなければ、まずは会社に源泉徴収票を発行してもらいましょう。

勤務先には発源泉徴収票の発行が義務付けられており、一般的には12月分の給与明細とともに交付されます。源泉徴収票には「給与所得控除後の金額」と「所得控除額の合計額」という欄がありますが、ここが空欄であれば、年末調整がされていないことになります。

源泉徴収をしているのであれば、よほどのことがなければ源泉徴収票を発行してくれるはずです。もし、発行してくれないということであれば、やはり税務署の手を借りることになります。

「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すれば、会社に行政指導がなされます。確定申告の際に、源泉徴収票の添付は必要ありませんが、記載されている情報を確定申告書に記載する必要があるのです。

確定申告の期限は2月16日から3月15日です。確定申告書は税務署で入手できますが、国税庁ホームページからダウンロードすることも可能です。国税庁ホームページには「申告手続の流れ」解説されていますので、一読したうえで「確定申告書等作成コーナー」を利用するのがよいでしょう。

参考:国税庁「申告手続の流れ」
参考:国税庁「確定申告書等作成コーナー」

申告書は、自分の住所地の管轄税務署に提出します。

なお、源泉徴収された所得税が過払いの場合、確定申告しなければ還付がないだけで罰則の適用は受けません。

しかし、会社から源泉徴収された税額が本来納付すべき所得税の税額を下回る場合は、納付額が不足していることになります。罰則の適用を受けることになるので注意しましょう。

会社が年末調整をしてくれないときの対処法を知っておこう!

年末調整は会社の義務であり、年末調整しないというのは少数派です。しかし、それでも運悪く、そうした会社に当たってしまう可能性もあります。放置するのではなく、適切に対処することが大切です。

よくある質問

会社が年末調整をしてくれないケースはありますか?

会社の認識不足のほか、故意に年末調整をしない場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください。

会社が年末調整をしてくれない場合、どうすればよいですか?

所轄税務署への相談や、源泉徴収票を入手して確定申告する方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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