- 作成日 : 2022年7月8日
是正勧告とは?従わない場合はどうなる?
「是正勧告」とは、労働基準法違反がある場合に行われる行政指導のことです。労働基準監督署による立ち入り調査(臨検)に基づいて出されます。行政処分ではないため強制力はないものの、是正勧告を受けると指導に従って職場環境や労働条件の適正化・改善を行う必要があります。よくある是正勧告の内容は、長時間労働、残業代の未払い、36協定違反などです。
目次
是正勧告とは?
「是正勧告」は、職場環境や従業員の労働条件に問題がある場合に出される行政指導です。法律違反の状態になっているため、是正勧告を受けた会社は速やかに必要な対策を講じる必要があります。そのまま放置しておくと悪質だとして処分されたり、危険な状況であることから事故が引き起こされたりします。長時間の残業などから従業員の健康が損なわれるなど、労災につながる恐れもあります。
是正勧告を受けないように職場環境や労働環境を適切に維持することが求められますが、万が一是正勧告を受けてしまった場合には真摯に受け止め、必要な対応をしなければなりません。そのためには是正勧告について正しい知識を持っておく必要があります。
是正勧告の読み方
是正勧告は「ぜせいかんこく」と読み、労働基準監督署による立ち入り調査(臨検)の結果に基づいて出される行政指導です。行政処分に過ぎないため、法的な強制力はありません。このため無視しても直ちに罰せられるということはありませんが、労働基準監督官は司法警察権を持っており、是正勧告を放置した場合、送検され刑罰を受ける可能性があります。是正勧告を受けた場合は、すぐに必要な対応をすることが求められます。
是正勧告でよくあるケース
労働基準監督署による立ち入り調査(臨検)では、労働時間や賃金、就業規則のチェックが重点的に行われます。これらについての労働基準法違反が多くあるからで、是正勧告が発出されるケースには次のようなものがよくあります。
労働時間の違反 | ・労働基準法の定めを超えて、長時間労働をさせている ・36協定の締結なしに時間外労働をさせている |
---|---|
賃金の違反 | ・残業代について時間外労働の割増賃金を支払っていない ・労働時間を短く申告させ、正当な残業代を支払っていない ・労働時間の切り捨てを行っている |
36協定の違反 | ・締結した36協定を労働基準監督署に届け出ていない |
就業規則の違反 | ・就業規則の作成・届出・従業員への周知がなされていない ・記載内容に不備がある |
有給休暇の違反 | ・有給休暇が付与されていない ・取得の妨害がみられる |
是正勧告が行われる流れ
是正勧告は、いきなり出されるわけではありません。定められた手順で労働基準監督署による立ち入り調査(臨検)が実施され、その結果、必要と認められる場合に出されます。是正勧告が出される流れを理解すると、いざという場合に慌てずに対応できます。
労働基準監督署の調査連絡が入る
是正勧告は労働基準監督署による立ち入り調査(臨検)の結果に基づいて出されます。臨検はあらかじめ連絡がある場合もあれば、事前連絡なしに行われる場合もあります。臨検日時等の事前連絡があるのが通常ですが、隠蔽の恐れがあると判断された場合には抜き打ちで臨検が入ります。隠蔽とは書類の改ざんや廃棄、従業員通しの口裏合わせなどです。
臨検の連絡があった場合は必要書類を揃えたり、対応のために担当者を待機させておいたりする必要があります。
労働基準監督署による調査の実施
労働基準監督署による立ち入り調査(臨検)には、定期監督・申告監督・災害時監督・再監督の4つがあります。
- 定期監督
- 申告監督
- 災害時監督
- 再監督
年度ごとに決定される監督計画に基づき、実施される調査です。対象となる会社は任意に選ばれ、全般的な調査が行われます。事前連絡はある場合とない場合の両方があります。
労働基準監督署に対して、労働者から申告があった場合に行われる調査です。申告内容に基づく調査で、申告があったことは隠される場合と明らかにされる場合があります。申告者に対して報告する必要があるため、厳しく調査されます。
労働災害の発生により、原因究明や再発防止を目的に行われる調査です。
調査の結果により是正勧告が発出された場合に、きちんと是正されたか確認するための調査です。是正がなされていない場合、刑事事件に切り替えられることがあります。
違反がある場合、是正勧告書が交付される
臨検は、就業規則やタイムカードといった帳簿・帳票の確認、担当者からの業務についての聞き取り、労働者からの詳しい事情聴取などが行われます。調査の結果、法律違反があると是正勧告書が交付されます。法律違反までではなくても改善が必要な場合には、指導票が交付されます。
是正勧告書記載の内容について、改善・対応を行う
是正勧告書が交付された場合は、指摘事項について改善や対応を行う必要があります。提出して改善・対応を行ったことの報告義務があり、期日までに報告書が提出できるように改善や対応は速やかに行う必要があります。
是正報告書を提出する
対応や改善の結果を報告するため、提出しなければならないのが是正報告書です。是正報告書に定められた書式はありませんが、行政指導に従って適切に是正したことを明らかにするため、次の事項を書くことが求められます。
- 法律違反の内容
- 是正内容
- 是正の完了日
是正勧告書とは?指導票との違い
労働基準監督署による臨検に基づいて発出されるものには、是正勧告書のほかに指導票があります。是正勧告は、法律違反があった場合に発出されるものであるのに対し、指導票はまだ法律違反にはなっていないものの問題になっている事項に対して発出されます。
例えば、労働基準法の定めを超える長時間にわたって従業員に残業をさせている場合は、是正勧告書発出の対象となるのに対し、長時間の残業は法律の定めの範囲内ではあるものの継続していくと法律違反となるような場合には、指導票が発出されます。
是正勧告を無視した場合は?
是正勧告書には法的強制力はなく、無視したことですぐに処分が行われたりはしません。しかし、労働基準監督署による調査の結果を軽んじることになり、それなりの不利益を被ることが考えられます。是正勧告書を無視することによる不利益には、以下のようなことが考えられます。
是正勧告が再度行われる場合がある
是正勧告を無視して是正報告書の提出を怠ると、再監督の対象になります。是正勧告を無視したため悪質であるとみなされ、調査はより厳しく行われます。是正勧告を受けた事項がそのままになっている可能性が高く、是正勧告が再び出される事態が引き起こされます。
是正勧告を出す労働基準監督官は、書類送検を行う権限も与えられているため、継続して無視すると送検手続きが取られる可能性もあります。
民事訴訟や刑事事件に発展する可能性が高い
是正勧告は、労働基準法などが守られていない場合に発出されます。前述のように是正勧告を放置した場合、送検され刑罰を受ける可能性があります。また権利が奪われたとして労働者から民事訴訟を起こされたり、労働基準法違反などの刑事事件に発展したりする可能性が高いことにも注意が必要です。
是正勧告を受けたら速やかに対応しよう
従業員が安全に仕事に従事できるよう、会社には職場環境や労働条件を一定水準に維持する責任があります。そのためには労働基準法をはじめとする関連法律を遵守し、適切な労働環境とする必要があります。労働基準監督署による調査で法律違反があると、是正勧告を受けます。
是正勧告は法的効力を持たない行政指導に過ぎませんが、無視すると再監督が行われます。再び法律違反が指摘されれば是正勧告も再度発出され、より厳しい処分を受けなければならなくなります。こういった事態になるのを防ぐため、是正勧告を受けたら速やかに対応しましょう。
よくある質問
是正勧告とはなんですか?
労働基準監督署による調査で法律違反が見つかった場合に出される行政指導です。 詳しくはこちらをご覧ください。
是正勧告書とはなんですか?
是正勧告の内容を書面に記したもので、交付された会社は必要な対応を行い、是正報告書を提出しなければなりません。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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