• 更新日 : 2022年10月18日

社会保険の加入義務とは?対象者の条件やパート・アルバイトの適用範囲拡大についても解説!

社会保険の加入義務とは?対象者の条件やパート・アルバイトの適用範囲拡大についても解説!

公的医療保険(健康保険)、年金保険(国民年金、厚生年金保険)をあわせたものを社会保険と呼び、労災保険や雇用保険などの労働保険と区別するのが一般的です。社会保険は、条件に当てはまれば加入が義務付けられています。

ここでは社会保険の加入対象となる人と適用事業所の範囲を確認するとともに、加入の流れについて解説します。

社会保険の加入義務がある「強制適用事業所」とは?

強制適用事業所とは、事業主や労働者の意思に関わらず、社会保険に加入する義務のある事業所のことを指します。株式会社や合同会社などの法人は、雇用する従業員の人数に関わらず強制適用事業所となります。したがって、社長1名の場合であっても、法人であれば社会保険の加入手続きを行わなければなりません。

個人の事業所の場合、農林漁業・サービス業などの一部の業種を除き、常時雇用する従業員が5人以上の場合に、強制適用事業所となります。農林・水産・畜産業、飲食店や理容業、旅館のような接客娯楽業、寺や神社といった宗教業などは非適用業種と呼ばれ、雇用する人数に関係なく、強制適用事業所とはみなされません。

ただし、公認会計士、弁護士、行政書士などいわゆる士業と呼ばれている業種については、これまでは非適用業種とされていましたが、2022年(令和4年)10月1日から国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴い、社会保険の適用業種に追加されました。

「任意適用事業所」との違いは?

任意適用事業所とは、上述の強制適用事業所に該当しないものの、半数以上の従業員が適用事業所になることに同意し、事業主の申請により厚生労働大臣の認可を受けた事業所のことをいいます。任意適用の申請では、健康保険と厚生年金保険のどちらか一方だけ申請することも認められています。

強制適用事業所と任意適用事業所は、あくまで適用事業所となる前提が異なるだけで、加入したあとの保険給付、被保険者の対象範囲、保険料等の扱いについて違いはありません。また、任意適用事業所となれば、適用事業所になることについて同意をしなかった従業員についても、社会保険の加入手続きが必要となりますので注意しましょう。

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社会保険の加入対象となる被保険者は?

社会保険の適用事業所に常時雇用される人は、国籍や性別・年金受給の有無に関わらず、健康保険・厚生年金保険の被保険者となりますので、会社は加入手続きを行わなければなりません。ただし、健康保険は75歳未満、厚生年金保険は70歳未満の従業員が対象です。

ここでいう「常時雇用」は、事業所で常時勤務し、給与や賃金などが支払われている労働者を指します。このとき、雇用契約書の有無は関係なく、報酬が支払われている使用期間中も加入するべき対象として扱われます。

【社会保険の加入対象となる被保険者】

  • 法人の代表者
  • 役員、管理職
  • 正社員
  • 試用期間中の社員
  • 外国人従業員

従業員のいない個人事業主は社会保険の加入義務がある?

従業員を雇用していない個人事業主の場合、適用事業所とはみなされません。しかし、日本は「すべての国民は何らかの社会保障制度のもとに生活する権利がある」という考えであり、国民皆保険制度を採用していますので、何らかの公的医療保険に加入する必要があります。個人事業主が加入する社会保険の選択肢は以下の通りです。

健康保険

基本的に、個人事業主が加入する健康保険は市町村が運営する「国民健康保険」です。それ以外の選択肢としては、従事する業種の健康保険組合への加入、もしくは、前職で加入していた健康保険の任意継続、または配偶者の扶養に入る選択肢があります。

介護保険

40歳以上の個人事業主の場合、介護保険への加入義務があります。介護保険料は、国民健康保険料の支払いと合わせて納付します。65歳以上の場合は、年金を受給していれば年金から天引きされる形で介護保険料を納付します。

年金保険

個人事業主は、「国民年金」に加入します。また、個人事業主の場合は、国民年金に合わせて「国民年金基金」の公的年金制度への加入や、「確定拠出年金」に加入する選択肢もあります。

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パート・アルバイトの社会保険の加入条件は?

パート・アルバイトなどの「パートタイム労働者」の場合は、いわゆる正社員との労働時間を比較して、週の所定労働時間および月の所定労働日数が、4分の3以上になる場合には社会保険の加入対象となります。

また、4分の3に満たない場合でも、従業員が以下の短時間労働者の要件に全て該当する場合には、被保険者となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 勤務期間1年以上またはその見込みがある
  • 月額賃金が8.8万円以上・学生以外
  • 従業員501人以上の企業に勤務している(特定適用事業所)
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2022年10月以降、パート・アルバイトの社会保険適用範囲が拡大!

2022年(令和4年)10月以降、段階的にパート・アルバイトの社会保険適用範囲が拡大されます。

特定事業所の範囲

法人の場合、同一の法人番号(会社全体)で雇用する社会保険被保険者の総数が、以下の条件に合致する場合に特定適用事業所となり、パート・アルバイト等の短時間労働者の要件に合致する従業員を社会保険に加入させる必要があります。

2022年10月からは「常時101人以上を雇用する事業所」、2024年10月からは「常時51人以上を雇用する事業所」です。なお、個人事業主の場合は現在の事業所の被保険者数でカウントします。

【特定適用事業所の範囲】

現行2016年10月~2022年10月~2024年10月~
常時501人以上常時101人以上常時51人以上

短時間労働者の要件の範囲

2022年10月以降、短時間労働者の要件のうち、「雇用見込み」の部分の適用範囲が拡大されます。これまでは「継続して1年以上雇用される見込み」でしたが、今後は「継続して2カ月を超えて雇用される見込み」となります。

現行2016年10月~2022年10月~
週20時間以上変更なし
月額8.8万円以上変更なし
継続して1年以上雇用される見込み継続して2カ月を超えて雇用される見込み
学生でないこと変更なし
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社会保険の加入手続きは?

健康保険と厚生年金の加入手続きはまとめて行うことができます。事業所は2つの保険への加入義務が発生した日から5日以内に、事業所所在地を管轄する年金事務所に届出を提出します。

なお、登記上の所在地と実際に事業を行う所在地が一致しない場合は、実際に事業を行っている所在地を管轄する年金事務所に提出します。

社会保険加入のための必要書類

社会保険の加入手続きでは、以下の書類を提出します。

  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
  • 法人(商業)登記簿謄本(コピー不可)
  • 個人事業所の場合は事業主の世帯全員の住民票(コピー不可・マイナンバーの記載のないもの)

※任意適用事業所の場合は、さらに提出必要書類が追加されます

なお、実際に事業を行っている事業所の所在地と登記上の所在地が一致しない場合は法人(商業)登記簿謄本ではなく、「賃貸借契約書のコピー」などの所在地が確認できる書類が必要です。

社会保険の加入義務があるのに未加入だった場合はどうなる?

年金事務所は、適宜、企業の社会保険適用や従業員の加入状況を調査しています。そのため、適用事業所であるにも関わらず、従業員の未加入が発覚した場合、過去2年にさかのぼって保険料が徴収されることになります。

また、事業主が故意に従業員の加入手続きを行わないなど、悪質と判断されたケースでは、健康保険法第208条に基づき、事業主に6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることにもなりかねません。

社会保険の未加入は、企業の社会的信用を傷つけるだけではなく、従業員に大きな不利益をもたらすものです。条件に合致する事業所は、速やかに適用事業所の手続きを行い、加入条件に合致する従業員を雇用したら、確実に加入申請をしましょう。

パート・アルバイトを含め社会保険の適用範囲を確認しよう

社会保険の加入手続きが遅滞すると、従業員が大きな不利益を被ることになりかねません。2020年10月以降は、パート・アルバイトの短時間労働者について社会保険の適用範囲が段階的に拡大されます。変更の範囲を確認し、自社の従業員で加入漏れがないように気を付けましょう。

よくある質問

社会保険の加入義務がある「強制適用事業所」とは?

強制適用事業所とは、事業主や労働者の意思に関わらず、社会保険に加入する義務のある事業所のことを指します。株式会社や合同会社などの法人は、雇用する従業員の人数に関わらず、強制適用事業所となります。詳しくはこちらをご覧ください。

2022年10月以降のパート・アルバイトの社会保険の適用範囲は?

雇用期間に関する条件が、「1年以上の継続見込み」という点について2カ月以上」に短縮されます。またパート・アルバイトが社会保険加入となる特定適用事業所の規模が「常時雇用101人以上」まで広がります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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