• 更新日 : 2025年1月28日

派遣スタッフは育休が取れる?3ヶ月更新など契約期間ケース別に解説

派遣スタッフも育休は取得可能です。

しかし、派遣特有の事情(契約期間、派遣先との関係など)から、取得にあたって注意すべき点もいくつかあります。

たとえば、契約更新のタイミングや、育休中の給与、復職後の就業先などが気になるポイントでしょう。

そこで本記事では、派遣スタッフの育休取得条件、期間、給付金、手続きの流れ、注意点などを解説します。

人事担当者の方も、派遣で働く方も、安心して育休を取得・活用するために、ぜひ最後までご覧ください。

派遣スタッフは育休が取れる?

育休は労働者の権利です。

そのため、育児・介護休業法により、雇用形態に関わらず一定の条件を満たせば、派遣スタッフでも育休を取得できます。

次項で、育休の取得条件や期間について詳しく解説します。

育休の取得条件

派遣スタッフであっても育休は取得できますが、育休取得の対象者について労使協定が締結されている派遣会社では、派遣スタッフが育休を取得するには、下記の条件を満たす必要があります。

【原則】

  • 子が1歳6ヶ月になる日までに、労働契約が満了することが明らかでないこと(契約更新の見込みがあること)

【労使協定が締結されている場合】

  • 同一の派遣元事業主に1年以上雇用されていること
  • 週の所定労働日数が2日以下でないこと

これら一定の条件に該当する従業員からの育休取得の申出を拒否することは、育児・介護休業法によって認められています。

そのため、雇用期間に定めのある派遣スタッフであっても、派遣会社との雇用契約が更新される可能性が高ければ、育休を取得できる可能性が高いと言えます。

育休の期間

育休の期間は、原則として子が1歳になるまでです。

ただし、保育所に入れないなどの一定の理由がある場合は、最長で子が2歳になるまで延長可能です。

育休期間の延長を希望する場合は、期間満了日の1ヶ月前までに派遣会社に申し出る必要があります。

また、産休と続けて育休を取得する場合は、産休の手続きと同時に育休の申請を行えば、手続きがスムーズに進められます。

派遣スタッフの育休、こんな場合は取れる?

派遣スタッフの育休取得は、下記のような契約期間や雇用状況によって判断が異なります。

  • 派遣会社での雇用期間が1年未満の場合
  • 1年以内に雇用契約が終了
  • 週の労働日数が2日以下

次項で、それぞれのケースごとの育休取得の可否について詳しく解説します。

派遣会社での雇用期間が1年未満の場合

派遣での雇用期間が1年未満の場合であっても、原則として育休を取得できますが、先に解説した育児休業の対象者についての労使協定が締結されていることが多いため、現実的には取得するのが難しいです。

また、派遣期間が通算1年以上となる見込みがあれば、育休開始時点で1年以上でなくても、派遣会社での雇用が1年以上となった時点で育休を取得できる可能性があります。

そのため、派遣1年未満で育休を取得したい場合は、派遣会社に相談し、契約更新の見込みなどを確認すると良いでしょう。

1年以内に雇用契約が終了

1年以内に雇用契約が終了する場合、子が1歳6ヶ月になる日までに、労働契約が満了することが明らかでないこと(契約更新の見込みがあること)という要件を満たさないため、育休を取得することはできません。

ただし、更新が確実ではないものの、更新の可能性がないと断言することもできない場合は労働契約が満了することが明らかではないため育休を取得できます。

そのため、更新が契約される可能性については十分に確認する必要があります。

週の労働日数が2日以下

週の労働日数が2日以下の場合でも、育休を取得できる可能性はあります。

原則の育休の取得条件は、週の労働日数ではなく、子が1歳6ヶ月になる日までに労働契約が満了することが明らかでないことです。

そのため、週の労働日数が少なくても、上記の条件を満たしていれば育休を取得できます。

しかし、労使協定で「1週間の所定労働日数が2日以下の従業員」という内容が締結されている場合は、企業側が育休の申し出を拒否できます。

派遣スタッフが育休中に契約満了の場合はどうなる?

育児・介護休業法に基づく育休は、雇用契約を前提とした制度であるため、契約が終了すれば育休も終了します。

育休中に契約満了になるケースだけではなく、契約が更新されないケースもあります。

例えば、育休取得の申し出時点では派遣先との派遣契約が今後も継続することが見込まれていたため育休を許可したものの、先方との派遣契約が打ち切りになり、他の派遣先も用意できない場合などです。

上記のようなケースでも、契約終了の時点で育休が終了となります。

そのため、育休開始前に契約期間と更新の可能性について、派遣会社に確認しておいた方が良いでしょう。

派遣スタッフの育休中の給与はどうなる?

派遣スタッフが育休を取得した場合、派遣会社からの給与は支給されません。

育休は労働契約に基づく労働義務が免除される期間であり、給与の支払い義務も発生しないためです。

ただし、育休期間中は一定の要件を満たせば、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

この給付金が、育休中の生活を支える重要な収入源となります。

育休期間中の給与については、派遣会社からの支給はないものの、育児休業給付金という制度があることを覚えておきましょう。

派遣スタッフが産休・育休でもらえるお金一覧

派遣スタッフが産休・育休中に受け取れるお金があります。

具体的には、大きく分けて下記の種類があります。

  • 出産育児一時金
  • 出産手当金
  • 出産準備金・子育てクーポン
  • 育休手当(育児休業給付金)
  • 出生時育児休業給付金(産後パパ育休)

これらの給付金は、出産や育児にかかる費用を補助し、安心して出産・育児に専念できる環境を整えることを目的としています。

次項で、それぞれの一時金や手当について詳しく解説します。

出産育児一時金

出産育児一時金は、健康保険から支給される給付金で、出産費用の一部を補助するものです。

被保険者または被扶養者が出産した場合に支給され、支給額は原則として子ども1人につき50万円です。

ただし、産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合は48.8万円となります。

なお、多胎妊娠の場合は、胎児の数に応じて支給されます。

出産手当金

出産手当金は、出産のために会社を休み、給与の支払いがなかった期間に健康保険から支給される給付金です。

支給対象となるのは、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以後56日までの間で、会社を休んだ期間です。

支給額は、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30日で割った金額の3分の2相当額となります。

出産準備金・子育てクーポン

出産準備金・子育てクーポンは、2023年から始まった「出産・子育て応援交付金」事業で給付されるもので、「出産・子育て応援ギフト」とも呼ばれます。

これは、妊娠届出時と出生届出時にそれぞれ給付される、合計10万円相当のクーポンやギフトのことです。

自治体によって給付方法(現金またはクーポン)や利用できるサービス・商品が異なります。

ベビー用品の購入、産後ケア、一時預かり、家事支援サービスなどに利用できる場合が多いです。

給付額は子ども1人につき最大10万円相当で、妊娠届出時に出産応援ギフトとして5万円相当、出生届出時に子育て応援ギフトとして5万円相当が2回に分けて支給されます。

なお、多胎妊娠の場合でも、妊娠届出時の給付額は5万円相当です。

育休手当(育児休業給付金)

育児休業給付金は、育休中の生活を支援するために雇用保険から支給される給付金です。

支給を受けるためには、下記の要件を満たす必要があります。

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 育休開始日前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること
  • 育休期間中、各支給単位期間(原則1ヶ月)において、休業開始前の1ヶ月あたりの賃金の8割以上が支払われていないこと

給付金の支給額は、育休開始から6ヶ月間は休業開始前賃金の67%、それ以降は50%となります。

たとえば、休業開始前の賃金が月30万円の場合、最初の6ヶ月間は月20万1千円、それ以降は月15万円が支給されます。

支給期間は、原則として子が1歳になるまでですが、保育所に入れないなどの理由がある場合は、最長2歳まで延長可能です。

なお、給付金の申請手続きについては、派遣会社を通して行うのが一般的です。

出生時育児休業給付金(産後パパ育休給付金)

出生時育児休業給付金は、いわゆる「産後パパ育休」を取得した場合に支給される給付金です。

男性の育児参加を促進することを目的としています。

支給額は、育児休業給付金と同様に、休業開始前賃金の67%です。

支給期間は、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能で、分割して2回まで取得できます。

派遣スタッフが産休・育休を取る流れ、手続き

派遣スタッフが産休・育休を取得する際には、いくつかの段階を踏む必要があります。

スムーズに産休・育休に入るためには、下記の流れを把握しておきましょう。

  1. 妊娠が判明したら派遣会社に連絡
  2. 出産予定日に基づき産休・育休の手続き
  3. 出産、産休・育休期間
  4. 復職の時期を派遣会社と相談

次項で、各ステップについて詳しく解説します。

①妊娠が判明したら派遣会社に連絡

妊娠が判明したら、速やかに派遣会社に連絡しましょう。

連絡する際には、妊娠の事実だけでなく、出産予定日や今後の働き方についての希望なども伝えるようにしましょう。

派遣会社によっては、産休・育休に関する説明やアドバイスを受けられる場合もあります。

早めに連絡すれば、派遣会社との連携をスムーズに進められ、安心して出産・育児に臨めます。

②出産予定日に基づき産休・育休の手続き

派遣会社への連絡後、出産予定日に基づいて産休・育休の手続きを行いましょう。

具体的な手続きは派遣会社によって異なる場合がありますが、一般的には下記の書類の提出が求められます。

  • 母子健康手帳のコピー
  • 医師の診断書
  • 育児休業申出書

これらの書類を提出すれば、産休・育休の取得が正式に認められます。

手続きの詳細は派遣会社から説明があるので、指示に従って進めましょう。

③出産、産休・育休期間

産休は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以後56日までの期間です。

育休は、原則として子が1歳になるまでの期間取得できます。

保育所に入れないなどの事情がある場合は、最長2歳まで延長可能です。

なお、給付金の手続きも忘れずに行いましょう。

④復職の時期を派遣会社と相談

育休期間が終了する前に、復職の時期について派遣会社と相談しましょう。

復職後の働き方や、派遣先への復帰が可能かどうかなどを確認します。

派遣契約の状況によっては、同じ派遣先への復帰が難しい場合もあります。

その場合は、派遣会社から別の派遣先を紹介してもらうなどの対応が考えられるため、早めに相談してスムーズに職場復帰ができるようにしましょう。

派遣スタッフの育休で気をつけたいポイント

派遣スタッフが育休を取得する際には、正社員とは異なる点に注意が必要です。

特に下記の3点は注意が必要です。

  • 育休明けに同じ派遣先で就業できるとは限らない
  • 育休中に派遣契約が終了すると給付金が受け取れない
  • 育休後に時短勤務ができない場合がある

次項で、それぞれ気をつけたいポイントについて詳しく解説します。

育休明けに同じ派遣先で就業できるとは限らない

派遣スタッフの場合、育休明けに必ずしも同じ派遣先で就業できるとは限りません。

派遣契約は、派遣スタッフと派遣会社、派遣会社と派遣先の間の契約によって成り立っています。

そのため、育休中に派遣先の業務状況が変わったり、契約期間が満了したりすると、同じ派遣先に戻るのが難しくなる場合があります。

育休に入る前に、派遣会社と契約期間や更新の可能性について確認しておきましょう。

育休中に派遣契約が終了すると給付金が受け取れない

育児休業給付金は、育休後に職場復帰することを前提に支給されるものなので、育休中に派遣契約が終了した場合はそれ以降給付金を受け取れません。

給付金を受け取るためにも、育休に入る前に、契約期間と更新の可能性について派遣会社に確認しておきましょう。

育休後に時短勤務ができない場合がある

育休から復帰後、時短勤務を希望する場合でも、派遣の場合は必ずしも希望通りにならない可能性があります。

時短勤務制度は正社員や契約社員・派遣社員であっても適用される制度であり、企業側は派遣社員だからという理由で拒否することはできません。

しかし、労使協定によって以下の内容を締結している場合は、時短勤務制度の適用外となる可能性があります。

  • 雇用された期間が1年未満であるもの
  • 週の所定労働日数が2日以下のもの
  • 業務の性質又は業務の勤務体制から考慮すると所定労働時間の短縮の制度の適用が困難だと認められる業務に携わるもの

派遣会社は適用除外となる従業員のために、フレックスタイム制や始業・終業時間の繰り上げ繰り下げといった対策を講じる必要があります。

育休復帰後の時短勤務を希望している場合は、対応可否や適用除外になった場合の対策について派遣会社に相談しておきましょう。

法改正【2025年4月~】育休手当の給付額が実質10割に

2025年4月から、育児休業給付金に関する法改正が施行され、給付額が実質的に10割になる制度が導入されます。

これは、育休中の経済的な不安を軽減し、より安心して育児に専念できる環境を作るためです。

現行の制度では、育休開始から6ヶ月間は休業開始前賃金の67%、それ以降は50%が支給されていますが、改正後は、一定の条件を満たせば給付額が引き上げられます。

具体的な内容については、次項で詳しく解説します。

出生後休業支援給付

2025年4月から新たに導入される「出生後休業支援給付」は、育児休業給付金に上乗せして給付が行われる制度で、実質的な給付額が引き上げられます。

出生後休業支援給付を受けるための主な条件は、下記の通りです。

  • 子の出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得すること
  • 育休開始前賃金の8割以上が支払われていないこと

出生後休業支援給付の支給額は、育休開始前賃金の13%ですが、育児休業給付金(67%)と合わせると、合計で80%です。

さらに、社会保険料の免除(約15%)、雇用保険料と所得税が発生しないことと合わせると、支給額は実質手取り賃金の10割相当になります。

たとえば、休業開始前の賃金が月30万円の場合、育児休業給付金として20万1千円、出生後休業支援給付として3万9千円、合計24万円が支給されます。

社会保険料免除分を考慮すると、手取り額は休業前とほぼ同水準となるでしょう。

出生後休業支援給付制度は、男性が育児に積極的に参加することを後押しする効果も期待されており、男性も女性も対象です。

申請方法については、事業主が育児休業給付金と同時に手続きを行います。

派遣スタッフの育休を正しく理解して安心して働ける環境を整えよう!

育休を取得しやすい環境は、派遣スタッフの満足度を高め、長期的な就業に繋がります。

また、企業にとって、派遣スタッフの育休を正しく理解すれば、手続きや復職後の対応もスムーズに進められるでしょう。

派遣スタッフが安心して育児に専念できるように、育休の取得条件や給付金、復帰後の働き方など、事前にしっかりと情報を収集しておきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事