• 更新日 : 2017年4月17日

所得税の税率改定で何が変わる?

平成25年度の税制改正で、平成27年から適用される所得税の最も高い税率が40%から45%に引き上げられることになりました。今回は、所得税の税率改定で何が変わるかについて解説していきます。

所得税の計算方法

税率が変更されることで、何が変わるかを知るうえで、まずは所得税の計算がどのようになされるのかを理解しておく必要があります。

所得税は年間収入の合計金額から経費を引いて「所得」を出し、そこから所得控除を差し引いて「課税所得」を算出します。

収入 − 経費(給与所得控除等)= 所得
所得 − 所得控除 = 課税所得

そして、「課税所得」税率を掛けて「所得税額」をだし、そこから「税額控除」を差し引くことで「納税額」を計算するというのが基本です。
※給与所得者は必要経費の代わりに給与所得控除が認められています。

課税所得 × 税率 = 所得税額
所得税額 – 税額控除 = 納税額

累進課税

日本では、所得が高い人、つまりたくさんお金を稼ぐほど税率が高くなっています。これを累進課税といいます。

累進課税には2種類あり、一定の額を超えた場合に全体に税率を掛ける単純累進税率と、一定の額を超えた分だけに高い税率を掛ける超過累進税率とがあります。

所得税では超過累進税率を採用しています。

平成26年分の所得税に適用される税率は、5%、10%、20%、23%、33%、40%の6段階に分かれていて、所得の額に応じて税率が上がるようになっています。つまり、収入の高い人ほど税金をたくさん支払わなければなりません。

所得税の具体的な計算

文字だけの説明だとわかりにくいので、速算表を使って所得税を計算してみましょう。

上記の速算表の見方としては、「課税される所得金額」というのは、先ほど説明した「課税所得」のことです。いわゆる年間収入そのものではなく、収入から経費または給与所得控除を差し引いて、さらに生命保険料控除などの所得控除を差し引いて求められる金額になります。

税率」の欄は、課税される所得金額に応じた税率を示しています。ここで、間違いやすいのは、たとえば、課税所得が500万円の場合、500万円全体に20%が課税されるのではないということです。課税所得が500万円の人も195万円までは5%、195万円超から330万円の部分は10%、330超から500万円の部分に20%が課せられるということです。

ただ、このような計算は非常に面倒なので、税率の差額をあらかじめ計算しておいて「控除額」として掲載されています。控除額を求めるには、全体に高い税を掛けたときに取りすぎている分を引けばいいので、本来の税率と高い税率の差分を本来高い税率のかからない額にかけることで求められます。

たとえば、「97,500円」という控除額は、(10% − 5%)× 195万円=97,500となります。「427,500円」という控除額は、(20% − 10%)× 330万円 + 97,500円 = 42万7,500円となります。この計算式自体は重要ではないので覚える必要はありません。

それでは、課税所得530万円の人を例に実際に速算表を使って計算してみましょう。

課税所得が530万円なので、課税所得が「330万円を超え 695万円以下」の欄ということがわかります。したがって、税率は20%で、控除額は42万7,500円になります。下の計算のとおり、納税額は63万2,500円となります。

530万円 × 20% − 42万7,500円 = 63万2,500円

速算表を使うと、計算が非常に簡単なことがわかったと思います。

なお、ここでは詳しい説明は省略していますが、東日本大震災の復興費用に充てるため、平成25年から所得税と合わせて復興特別所得税が差し引かれています。復興特別所得税は所得税の2.1%の税率となっています。

所得税率 × 1.021 = 合計の税率

所得税の税率改定の影響

平成27年からは最高税率が引き上げになります。速算表も次のようになります。

変わった部分は、課税される所得金額が4,000万円超で45%の税率という枠が追加されました。課税所得が4,000万円超ということなので、対象になる人の数は少ないと思われますが、たとえば5千万円課税所得がある人の場合、次の計算のとおり、およそ50万円も増税されることになります。

従 来 5千万円 × 40% − 279万6,000円 = 1720万4,000円
改定後 5千万円 × 45% − 479万6,000円 = 1770万4,000円

まとめ

今回の所得税の税率の改定により影響を受ける人は、社会全体から考えるとそれほど大きな影響はないのかもしれませんが、税率改定というのは重大な事項ではあるので、知識として覚えておいて損はありません。今後も改定の可能性はありますので、頭に入れておきましょう。


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