• 更新日 : 2025年1月10日

職場でのパワハラはどこに相談する?窓口ごとの特徴や相談の流れを解説

社内でパワハラに遭っている、もしくはパワハラと感じる扱いを受けている場合、早めに適切な窓口に相談することが大切です。しかし、いったいどこに相談すればいいのでしょうか。どのように相談すればいいのでしょうか。

この記事では職場でのパワハラに遭った際の相談窓口や、相談の流れについて解説します。

職場でパワハラを受けた場合の相談窓口は?

職場でパワハラを受けた際の相談先としては主に会社内の相談窓口、会社外の相談窓口、弁護士や社会保険労務士などの専門家という3種類が挙げられます。それぞれの特徴について見ていきましょう。

会社内の相談窓口

身近な相談先としては会社内のパワハラ相談窓口が挙げられます。2019年に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、事業主に対してパワハラに遭っている従業員からの相談に対応する体制の構築が義務付けられました。

参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律|e-GOV法令検索

相談先は人事労務部門、管理職や従業員から選出されたパワーハラスメント相談員、コンプライアンス担当部門、社内の産業医やカウンセラー、労働組合など、会社によって体制はさまざまです。

外部の相談窓口

会社内ではなく会社外にもパワハラについて相談できる窓口はさまざまあります。詳しくは後述しますが、厚生労働省の地方機関である各都道府県の労働局、各都道府県庁、法務省、日本司法支援センターなど、さまざまな機関が窓口を設けパワハラに関する相談を受け付けています。また、会社外の労働組合である合同労働組合(ユニオン)といった団体にも相談することができます。

参考:ユニオンネルサポート

参考:日本労働組合総連合会

弁護士・社労士などの専門家

弁護士や社労士に相談するというのも一つの手です。弁護士は法律の専門知識を活かして訴訟や法的手続き、紛争の解決や交渉などを代行し、法的なアドバイスをしてくれる専門家です。社労士は社会保険や労務関係の専門家であり、労務管理や労使問題のトラブル解決をサポートしてくれます。どのようなケースで弁護士や社労士に相談すればいいのかについては後ほど詳しく解説します。

会社内の窓口に相談するメリット・注意点

先ほどもご紹介したように、事業主に対しては従業員からパワハラに関する相談を受け付ける体制を構築することが法律で義務付けられています。そのため、基本的にどの会社であってもパワハラ相談窓口が設けられており、従業員はそれを利用することが可能です。ここからは社内の窓口に相談するメリットと注意点について見ていきましょう。

メリット

メリットとしてはまずスピーディーに相談できるという点があります。外部の窓口に相談する場合、窓口に出向いたり電話や問い合わせフォームなどで問い合わせをしたりしなければならず、解決まで時間がかかる可能性もあります。

担当者が社内の事情を詳しく知っているため、状況を理解されやすいという点もメリットです。

また、素早い対応も期待できます。パワハラの行為者に直接働きかけたり上層部に報告して処分を下したりしてくれる、配置転換を検討するなどの対策が早急にできるのは社内の相談窓口ならではです。

注意点

社内窓口に相談する際の注意点としては、パワハラの行為者側に相談していることがわかってしまう可能性があるということです。相談したことで相手が逆上し、パワハラがエスカレートする恐れもあります。

第三者に相談するケースと比較して中立性が担保されにくいという点にも注意が必要です。会社にとってはパワハラの相談者も行為者も重要な人材であることには変わりません。パワハラの行為者に忖度した対応をする、行為者側を支持して相談者側の話を聞かないという事態もあり得ます。

また、何も対応してくれない可能性があることにも注意が必要です。担当者に知識がなくどうしていいかわからない、他の業務が忙しく後回しにされる、行為者に忖度しているなどの理由で、相談しても対応してもらえないケースも報告されています。

パワハラを相談できる外部の窓口

社内の相談窓口には相談しにくい、あるいは実際に相談してみたけど改善されなかったという場合は以下のような外部の窓口に相談してみましょう。多くは公的な機関が運営しているので安心して悩みを打ち明けることができます。

総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーとは各都道府県に設置された地方労働局が運営している、労働問題に関する相談窓口です。パワハラはもちろん、セクハラ、外国人差別、性的指向・性自認に関する労働問題、職場でのいじめや嫌がらせ、不当な解雇や雇止め、配置転換、賃金の引き下げ、採用に関する事柄など、さまざまな問題を相談することもできます。

予約は不要で、土・日・祝日・年末年始(12月29日~翌年1月3日)以外であれば開庁しています。最寄りの窓口に相談すれば問題ありませんが、女性の相談員に相談したい場合は女性相談員が在籍している窓口に訪問するか電話で相談しましょう。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

個別労働紛争のあっせんを行う都道府県労働委員会

個別労働紛争のあっせんを行う都道府県労働委員会とは、労使紛争の解決をあっせんする組織のことを指し、各都道府県に設置された労働委員会のほか都道府県知事部局、都道府県労働局などが労働者と雇用主との間に入って問題解決を目指します。

各都道府県労働委員会によって受付日時、対応の方法や流れは異なります。専用のオンライン申出フォームを利用するか、あっせん申出書を郵送もしくは持参することで、労働委員会が事業主との間に入って話し合いを進めてくれます。

参考:個別労働関係紛争のあっせん|厚生労働省 中央労働委員会

みんなの人権110番

みんなの人権110番とは法務省が所管する法務局、地方法務局、支局が運営している電話相談窓口です。パワハラやセクハラをはじめ、差別や虐待、ネット上の誹謗中傷などの人権問題に関する相談を受け付けてくれて、相談者の人権が侵害されていると認められた場合は必要な支援措置をとってくれます。

電話番号は全国共通で0570-003-110、受付時間は平日8:30から17:15までで、インターネットでの相談も受け付けています。

参考:みんなの人権110番|法務省

労働条件相談ほっとライン

労働条件相談ほっとラインは厚生労働省の委託事業です。労働問題に関する専門知識を有した相談員がパワハラやセクハラ、違法な長時間労働や過重労働、賃金不払いなどの労働問題の相談を受け付け、法令を踏まえて適切な対処方法や支援機関の紹介をしてくれます。

電話番号は全国共通で0120-811-610、受付時間は平日に関しては17:00から22:00、土日・祝日は9:00から21:00ですが、12月29日から翌年1月3日までは受付休止となります。日本語のほか英語、中国語、スペイン語など13ヶ国語に対応し、外国人からの相談も受け付けています。

参考:労働条件相談ほっとライン|厚生労働省

こころの耳

こころの耳は厚生労働省が運営している、働く人々のメンタルヘルスに関する情報を提供しているポータルサイトです。職場でのパワハラに関する相談窓口の紹介や、メンタルケアの方法、メンタルに起因する疾患に関する情報、ストレス、疲労蓄積度のセルフチェックができるコンテンツなどが掲載されています。

パワハラによって心身に不調をきたさないためには、ご自身でケアをする必要があります。このサイトを見ることでセルフメンタルケアの方法やメンタルに不調をきたした際の対処方法がわかります。

参考:こころの耳|厚生労働省

パワハラについて弁護士・社労士に相談できること

職場でのパワハラに関しては上記の窓口のほか、弁護士や社会保険労務士という専門家にも相談することができます。以下では弁護士や社労士にどのような相談ができるのか、どのようなニーズに対応してくれるのかについて見ていきましょう。

社労士

社会保険労務士は社会保険の手続きや就業規則の作成、労務管理などのサポートを行う専門家です。個々の社労士だけでなく、全国47都道府県の社会保険労務士会に設置されている総合労働相談所に相談すれば、パワハラ防止についての助言・相談を受けることができます。

会社で働き続けたいけどパワハラは止めてほしい、職場環境を改善してほしいと考えられている方には有効な相談先といえます。

弁護士

弁護士は訴訟などの法的手続きや交渉の代理を担う法律の専門家です。例えば、パワハラを止めさせるよう会社側や行為者と交渉する際には、弁護士が間に入って対応するため、パワハラに合った人たちの強い味方となってくれます。

また、弁護士はパワハラによって心身に不調をきたして損害賠償や慰謝料、治療費などを請求する場合は民事訴訟を、犯罪として告発したい場合は刑事訴訟を代行してくれます。特にパワハラによって深刻な被害が生じている場合、法的な措置をとりたい場合、時間外労働の強要や賃金の不払いや引き下げ、不当解雇、あるいは暴力や暴言などの違法行為が生じている場合は非常に有効な相談先といえます。

公務員・教員の相談窓口

前述の総合労働相談コーナーや都道府県の労働委員会は、民間の事業者に雇用された労働者からの相談を受け付けています。ただし、国家公務員や地方公務員に関しては一部の職員を除き対象外です。

一般職の国家公務員は人事院や各府省内の人事担当部局の窓口に、地方公務員は各公共団体に設けられた人事委員会や人事担当部局の窓口に、教員は服務監督権限を有する都道府県もしくは市町村の教育委員会の窓口に相談する必要があります。

また、地方公務員の方は全日本自治団体労働組合(自治労)の相談窓口にも相談できます。自治労とは公務員を対象とした労働組合で、労働相談ダイヤルではパワハラをはじめ不当な人事や賃金カット、解雇について相談することができます。

参考:自治労の労働相談ダイヤル|全日本自治団体労働組合

パワハラを窓口に相談する際の流れ

相談窓口にパワハラに関する相談をする場合はまず電話や問い合わせフォーム、メールなどで連絡してみましょう。特に「どこに相談していいかわからない」「パワハラに該当するかわからない」と悩まれている方は、問い合わせをすることで支援の対象となるかどうかを判断してもらえるでしょう。

次に窓口に出向き担当者と面談します。悩みごとや事実関係をヒアリングしたうえで、解決に向けて方向性をアドバイスしてくれるでしょう。

対応方法は相談窓口によって異なりますが、会社側や行為者に対して調査を行い、間に入って話し合いを進めていく、パワハラ行為を止めるよう働きかける、その後の再発防止策について検討・実施をサポートするなどの措置をしてくれます。なお、これはあくまで一例です。どのような対応をしてくれるかは相談先によって異なるので、担当者から詳しい説明を受けましょう。

相談にあたり準備しておくもの

パワハラ相談する際に、ご自身がどのような状況に置かれているのかを整理しましょう。どのような行為を誰から受けているのか、それはいつから始まったことなのか、それによってどのような影響が生じているのか(例:体調の変化など)をまとめてメモしておくと相談がしやすくなり、担当者も状況が把握できて適切な対応を受けやすくなります。

また、パワハラの証拠を持参すると良いでしょう。パワハラに該当する言動を記録した録音や動画、メールやメッセージアプリの記録、タイムカードなど勤務状況がわかるもの、病院の診断書(パワハラが起因して心身に不調をきたした場合)などの証拠があると事実関係が明らかになり、後々訴訟などの法的措置をとる場合にも有利になります。

職場でパワハラに遭っているなら抱え込まずに相談を

職場でのパワハラに悩んでいる、あるいはパワハラに該当すると思われる行為をされている場合は、一人で悩まず早めに相談しましょう。特に外部窓口であれば会社側や行為者に相談したことが発覚せず、第三者が間に入ってくれるので安心です。

これからパワハラの相談をする予定の方の中には、「ここに相談してもいいのだろうか……」「パワハラじゃないかもしれないけど……」という心配があるかもしれませんが、専門家が話を聞いて適切な対応方法をアドバイスしてくれるので、心の支えになるでしょう。事態が深刻になる前に早く相談してください。


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