• 更新日 : 2024年1月30日

時短勤務とは?制度の内容や適用対象、期間などを解説!

時短勤務とは、1日単位の所定労働時間を短縮して勤務することです。短時間勤務と呼ばれる場合もあります。働き方改革や少子化対策が求められる中、育児・介護休業法により制度を設けることが義務付けられています。この記事では時短勤務の定義や、対象者の要件や措置の内容等法律による定め、申請手続き、給与・賞与計算の考え方などについて解説します。

時短勤務とは?

時短勤務とは1日単位の所定労働時間を短縮する勤務のことで、短時間勤務という呼び方をする場合もあります。

育児・介護休業法により、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、時短勤務制度(1日の労働時間は原則6時間)を設けることが事業主に義務付けられています。また要介護状態の家族を介護するための時短勤務制度の設定も同様に義務付けられています。介護目的の場合は、時短勤務制度のほか、フレックスタイム制や時差出勤制度などを設けることも可能です。

フレックスタイム制との違い

時短勤務と同様に、柔軟な働き方が可能な制度として有名なものがフレックスタイム制です。フレックスタイム制とは、一定の期間(3ヶ月以内)についてあらかじめ定められた労働時間の範囲で、労働者が毎日の始終業時刻と労働時間を自ら決めて働ける制度です。

フレックスタイム制と時短勤務の大きな違いは、1日の労働時間が固定されているかどうかという点です。

時短勤務では、原則1日6時間働くことになり、労働時間が固定されています。一方、フレックスタイム制では、一定の期間についてあらかじめ定められた労働時間の範囲内であれば、1日の労働時間を柔軟に設定することが可能です(全労働者が勤務しなければならないコアタイムを設定した場合は、その時間帯を労働時間にする必要はあります)。

一定の期間について定められた労働時間を勤務すればよいため、ある日は予定があり短時間の勤務とした場合は、別の日にその分を埋め合わせるために長く働くことができればよいということになります。

育児・介護休業法との関わり

時短勤務は、育児・介護休業法において事業主に義務付けられている制度です。2009年の法改正により、3歳に満たない子の養育のための時短勤務制度を設けることが義務付けられました。当初は従業員100人以下の事業主には適用が猶予されていましたが、これらの事業主にも2012年に適用され、現在は全ての事業主に義務付けられています。また、2017年には介護目的の時短勤務制度等の措置も義務付けられました。

育児・介護休業法で定める時短勤務制度の概要については以下の通りです。

育児のための時短勤務制度

子が3歳に達する日まで、1日の所定労働時間を原則6時間とする短時間勤務制度を設けることが義務付けられています。

なお、後述の時短勤務の対象者から除かれる労働者のうち、業務の性質や実施体制から考えて時短措置が困難な業務に従事する労働者に対しては、以下の代替措置を設けることが義務付けられています。

  • 育児休業制度に準ずる措置
  • フレックスタイム制度
  • 始終業時刻の繰上げ・繰下げ
  • 事業所内保育施設の設置運営、ベビーシッター費用の負担など

参考:育児・介護休業法の概要|厚生労働省

介護のための時短勤務等の制度

要介護状態の対象家族を介護する労働者に対して、以下のいずれかの措置を取ることが義務付けられています。

  • 所定労働時間の短縮
  • フレックスタイム制度
  • 始終業時刻の繰上げ・繰下げ
  • 労働者が利用する介護サービス費用の助成、その他の準ずる制度

なお、対象家族1人につき、利用開始日から連続する3年以上の期間内で2回以上利用できる制度でなければなりません。

参考:育児・介護休業法の概要|厚生労働省

時短勤務の対象者 – 対象になるための5つの要件

育児のための時短勤務制度の対象となるには、以下の5つの要件全てに該当する必要があります。

  1. 3歳未満の子供を養育していること
  2. 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
  3. 日々雇用される者(いわゆる「日雇労働者」または30日以内の期間を定めて雇用される労働者)でないこと
  4. 短時間勤務が適用される期間に育児休業をしていないこと
  5. 労使協定により適用除外とされた以下の労働者でないこと
    • 勤続1年未満の労働者
    • 週の所定労働日数が2日以下の労働者
    • 業務の性質や実施体制から考えて時短措置が困難な業務に従事する労働者(※)

※国際線等の客室乗務員等、労働者数が少ない事業所で当該業務に従事できる労働者が著しく少ない業務、流れ作業や交替制勤務の製造業で、短時間勤務の労働者を組み込むことが困難な場合など。(厚生労働省指針)

参考:妊娠出産・母性健康管理サポート「母性健康管理に関する用語辞典 短時間勤務制度」|厚生労働省

介護のための時短勤務制度の対象となるには、以下の3つの要件全てに該当する必要があります。

  1. 要介護状態である対象家族を介護していること
  2. 日々雇用される者でないこと
  3. 労使協定により適用除外とされた以下の労働者でないこと
    • 勤続1年未満の労働者
    • 週の所定労働日数が2日以下の労働者

参考:育児介護休業法のあらまし|厚生労働省

時短勤務を利用できない要件

前述の要件に該当しない場合には、時短勤務を利用することができません。なお、適用除外となる各要件について労使協定に定める必要があります。労働基準監督署への届出は不要です。

育児のための時短勤務制度の適用除外については、「業務の性質や実施体制から考えて時短措置が困難な業務に従事する労働者」の対象が厚労省の指針によっても不明確であるため、慎重に吟味の上で定めなければなりません。また、適用除外を定める場合は、どのような代替措置を用意するかも含めて労使協定を締結する必要があります。

時短勤務の申請手続き・手順

時短勤務については、育児目的、介護目的いずれの場合も、労働者が事業主に申し出ることにより利用できる制度です。

申請手続きなどについては、育児・介護休業法に定めがないため、あらかじめ就業規則等に定めておき、その内容に従って行う必要があります。事業主において申請手続きを定める際には、育児・介護休業法が定める他の手続きを参考にすることが求められています。

なお、育児・介護休業法では時短勤務の申出を行ったことや時短勤務の措置が講じられたことを理由として、労働者に対して解雇などの不利益な取扱いをしてはならないことが定められています。

時短勤務の際の給与計算方法

時短勤務の労働者の給与計算方法の概要は以下の通りです。具体的な減給率や計算方法について、就業規則などに定めておくことが推奨されます。

  • 基本給
    所定労働時間に比例して減額される形になります。

    基本給×時短勤務の労働時間÷所定労働時間で算出します。

  • 労働日数や労働時間を支給基準とする手当(通勤手当など)
    実労働日数や実労働時間を基に算出します。
  • 職務に関する手当(役付手当、資格手当など)
    実労働日数や実労働時間での計算に馴染まないため、就業規則などでルール化します。
  • 家族関連の手当(家族手当、扶養手当、住宅手当など)
    時短勤務の場合に減額することに馴染まないため、支給額を変えないのが一般的です。

また、時短勤務に伴い給与が低下した場合に行う社会保険料関連の手続きが2点あります。社会保険料の算定に用いる標準報酬月額の改定(育児休業等終了時改定)と、給与が低下した期間分の厚生年金の額の算定にあたり、低下前の給与の額に基づき計算する標準報酬月額の特例に関する手続きです。いずれも労働者から事業主経由での申出が必要です。

時短勤務の適用期間の延長はできる?

育児に関する時短勤務制度は子が3歳に達する日までの措置が義務付けられています。3歳以降小学校入学までの間については、時短勤務などの措置が努力義務とされています。努力義務に従って時短勤務制度を設けている会社では、時短勤務の適用期間の延長は可能です。

なお、3歳以降小学校入学までの間の子について努力義務とされている措置は、時短勤務だけではありません。育児休業制度、所定外労働時間の制限に関する制度、始業時刻変更等の制度(始終業時刻の繰上げ、繰下げ、フレックスタイム制など)もあります。時短勤務制度を設けることが難しい場合、代わりにこれらの制度を設けてもよいということになります。

時短勤務の期間に賞与はある?

賞与は労働基準法などで支給が義務付けられていませんが、支給する場合には時短勤務の労働者に対する賞与の支給方法などのルールを明確化しておく必要があります。一般的には以下の考え方をとります。

  • 基本給を基準として支給する場合(基本給×〇ヶ月分のようなケース)
    給与計算の場合と同じ考え方で、短時間勤務の労働者の基本給に基づき算定します。
  • 業績基準で支給する場合
    業績の達成度合いが同じ場合に、短時間勤務の労働者とフルタイムの労働者の支給額に差を設けることはできません。同じ基準に基づき算定する必要があります。
  • 上記の2つの基準双方に基づき支給する場合
    基本給基準で支給する賞与額と、業績基準で支給する賞与額を上記の算定方法に基づき別々に算定した上で、合算します。

時短勤務制度を設けることは事業主の義務

育児や介護を行う労働者が利用できる時短勤務制度を設けることは、育児・介護休業法に定める事業主の義務です。就業規則などに確実に定めるとともに、時短勤務の対象労働者の適用除外を設ける場合の労使協定については、十分に注意の上で締結しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事