• 作成日 : 2018年12月3日

裁量労働制の疑問を解決!休日出勤や深夜業、休憩時間はどう考える?

裁量労働制と休日出勤・深夜業

裁量労働制においては、「業務遂行の方法や時間配分を大幅に労働者に委ねている」ため、いつ、どのくらいの時間労働するかは、基本的に労働者の裁量に委ねられています。一方で、休日労働・深夜業の割増賃金規定が適用が除外されているわけではありません。
例えば、労働者が日中の勤務時間の業務を少なくして、恣意的に休日出勤や深夜業を行った場合でも、割増賃金を支払うのか、といった問題が考えられます。反対に、業務量過多のため、労働者が日中の時間ではとてもこなしきれずに、やむなく休日労働・深夜業を行うこともあるでしょう。

まず、労働者の恣意的な対応については、就業規則に「休日や深夜に勤務する場合は予め所属長の許可を得る。」といった定めを設けるのが通例でしょう(東京労働局などのモデル就業規則文例参照)。専門業務型裁量労働制を導入する際に締結する労使協定や、企画業務型裁量労働制を導入する際の労使委員会の決議においても、休日労働・深夜業の事前許可制などは就業規則に従うことを明記して、恣意的な乱用を防ぐべきでしょう。
一方で、労働者が日中フルに働いていてもなお休日出勤・深夜業が相次ぐのであれば、業務量や業務の内容、人員配置などに問題がある可能性があります。労使協定や労使委員会決議の見直しまで踏み込んで検討が必要な場合も考えられます。次のようなポイントを検討し、業務体制を構築し直す必要があるかもしれません。

(1)裁量労働制の業務にふさわしい内容なのか
(2)人員配置は適切なのか
(3)対象労働者が当該裁量労働制の業務にふさわしい知識・能力を持っているか、配置転換などの必要がないか、など

ワーク・ライフ・バランス、労働者の健康管理の観点からも休日出勤・深夜業が常態的に続くことは避ける工夫が必要でしょう。

裁量労働制と休憩時間

裁量労働制であっても休憩時間の定めは適用されます。ただし、裁量労働制が適用される場合、実労働時間ではなくみなし労働時間で考えますので、みなし労働時間が6時間を超え8時間までの場合は45分以上の、みなし労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与えなければなりません。
裁量労働制が適用される従業員に対して「一斉休憩(事業場全員が一斉に休憩を取得する)の原則」を適用するのは、制度と馴染まないため、「一斉休憩の適用除外に関する労使協定」を従業員代表との間で締結し、休憩時間をいつ取るかについても従業員側に委ねるほうが望ましいでしょう。
一方で、休憩時間の取得を従業員任せにし、実態としては全く休憩していないといった事態にならないよう、休憩時間の取得有無に関しては、使用者側が適宜確認をし、過重労働に陥っていないか、配慮する必要があると思います。

裁量労働制と安全配慮義務、健康・福祉の確保措置

裁量労働制の導入にあたっては、健康福祉の確保の措置、苦情処理の措置を設けることが使用者に義務付けられています。労働契約法第5条の安全配慮義務の具体化の一つと見ることができるでしょう。概要は次の通りです。

(1)健康・福祉の確保措置:対象労働者の勤務状況・健康状況に応じた代償休日または特別休暇の付与、健康診断の実施、有給休暇の連続取得の促進、相談窓口の設置、産業医等による指導助言、必要な場合には適切な部署に配置転換
(2)苦情処理の措置:相談窓口、取り扱う苦情の範囲の明確化

特に休日出勤が度重なるような場合には、通常の振替休日や代休のほか、代償休日や特別休暇の付与、有給休暇の連続取得の促進、などの措置を積極的に考えるべきでしょう。

これに関連し、2019年4月1日に施行される働き方改革関連法の中で、企業は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の年次有給休暇を取得させることが義務づけられました。有給休暇は、労働者が希望すれば取得できるものですが、そもそも「労働者自身が取得の希望を言い出しにくい」という状況から、現在、有給休暇の取得率は50%程度にとどまっています。裁量労働制が適用される労働者の健康・福祉の確保措置の一環としても、有給休暇を定期的に取得することで、心身ともにリフレッシュし、結果として業務効率の向上につなげていくことが望まれます。

裁量労働制対象労働者の健康・安全管理は必要

裁量労働制が適用される労働者には、業務の遂行方法や労働時間の配分が大幅に委ねられます。一方で、会社が従業員の時間管理を一切行わなくてもよいというものではなく、在社時間や出退勤の時間を把握し、過重労働に陥っていないか、きちんと休憩や休日はとれているか確認し、労働者の安全・健康確保の措置を行う必要があります。
裁量労働制対象となる労働者の高度なスキルや専門知識を生かすためにも、裁量労働制を適切に活用し、会社・労働者双方にとってより良い働き方を実現していきましょう。

<参考>
東京労働局「『企画業務型裁量労働制』の適正な導入のために
東京労働局「『専門業務型裁量労働制』の適正な導入のために
厚生労働省パンフレット 「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」有給休暇の取得義務づけについて4頁

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